映画『ベロニカとの記憶』は2018年1月20日より、東京・シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国で順次公開。
『めぐり逢わせのお弁当』のリテーシュ・バトラ監督が演出を務め、アカデミー賞助演男優賞俳優のジム・ブロードベントと、ベルリン国際映画祭銀熊賞のシャーロット・ランプリング共演で贈る作品です。
奇妙な遺品が呼び覚ます、40年前の青春の秘密。人生の謎を自ら解き明かす感動のミステリーとは?
CONTENTS
1.映画『ベロニカとの記憶』の作品情報
【公開】
2018年(イギリス映画)
【原作】
ジュリアン・バーンズ「終わりの感覚」
【原題】
The Sense of an Ending
【監督】
リテーシュ・バトラ
【キャスト】
ジム・ブロードベント、シャーロット・ランプリング、ミシェル・ドッカリーハリエット・ウォルター、エミリー・モーティマー、ビリー・ハウル、ジョー・アルウィン、フレイア・メイバー、マシュー・グード
【作品概要】
2011年にブッカー賞を受賞したジュリアン・バーンズの原作「終わりの感覚」を、インド映画『めぐり逢わせのお弁当』で知られるリテーシュ・バトラ監督が映画化したミステリードラマ。
映画『アイリス』のジム・ブロードベント、『さざなみ』のシャーロット・ランプリングによる名優が共演が見どころです。
2.映画『ベロニカとの記憶』の主なキャスト
ジム・ブロードベント(トニー・ウェブスター役)
ジム・ブロードベントは1949年5月24日にイギリス・リンカン生まれ。
1999年に『トプシー・ターヴィー』でヴェネツィア国際映画祭男優賞を獲得。その後も2001年に『アイリス』で米国アカデミー賞とゴールデングローブ賞を受賞します。
また同年の『ムーラン・ルージュ』でBAFTA賞(英国アカデミー賞)の助演男優賞を受賞するなど、イギリスを代表する名優です。
ほかにも誰もが知る「ハリー・ポッター」シリーズ(2009、2011)や、「パディントン」シリーズ(2014、2017)、『ブルックリン』(2015)などに出演しています。
懐かしいところでは元モンティ・パイソンのメンバーだったテリー・ギリアム監督『バンデットQ』(1981)、『未来世紀ブラジル』(1985)にも出演していました。
今回ジムは60歳を過ぎ隠遁した高齢のトニー役を演じますが、忘れていた過去を前に、どのような表情や演技を見せてくれるのか、楽しみですね。
シャーロット・ランプリング(ベロニカ・フォード)
シャーロット・ランプリングは1946年2月5日にイギリス・エセックス州生まれ。
1965年の『ナック』で映画デビュー以来、半世紀に渡って映画界の第一線で活躍しています。
2015年の『さざなみ』では、ベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞を果たします。またこの作品で女優生活51年目にして初の米国アカデミー賞ノミネートされました。
長い女優業のなかでも、1974年の『愛の嵐』のドイツ将校を魅了する娼婦ルチア役は鮮烈なものでした。
また、2000年のフランソワ・オゾン監督の『まぼろし』のマリー役、2003年の『スイミング・プール』サラ・モートン役も忘れられない作品です。
『さざなみ』のケイト役では、トム・コートネイ演じるジェフに翻弄される役柄でしたが、今回『ベロニカとの記憶』ではどのような繊細な演技を見せてくれるのか楽しみですね。
3.映画『ベロニカとの記憶』のあらすじ
60歳を過ぎて、1人静かに引退生活を送るトニーのもとに、ある日、見知らぬ弁護士から手紙が届きます。
あなたに日記を残した渡女性がいると記されていて、その女性とは40年も前に別れた初恋の人ベロニカの母親でした。
遺品の日記はトニーの学生時代の親友のものでした。なぜベロニカの母親のもとにその日記があったのか。そこには一体何が書かれているのか…。
長い間忘れていた青春時代の記憶、若くして自死した親友、初恋の秘密など…。
ベロニカとの再会を果たすことにより、トニーの記憶は大きく揺らぎ始めます。
過去の謎があきらかになった時、トニーは人生の真実を知ることに…。
3.リテーシュ・バトラ監督のプロフィール
『めぐり逢わせのお弁当』(2013)
リテーシュ・バトラは、1979年6月12日にインドのムンバイ生まれます。
2013年に自ら脚本を書いた自作の長編デビューした『めぐり逢わせのお弁当』は、インドのお弁当にまつわる状況をユニークに描き、カンヌ国際映画祭の批評家週間でプレミア上映されます。
また、同作はBAFTA賞(英国アカデミー賞)では非英語映画賞にノミネートもされました。
2017年に長編第2作にあたる本作に続き、ロバート・レッドフォードやジェーン・フォンダ、またマティアス・スーナールツ共演による第3作『夜が明けるまで』を制作させNetflixで配信しています。
同年にバラエティ紙の「注目すべき10人の監督」に選出されました。
4.映画『ベロニカとの記憶』の感想と評価
リテーシュ・バトラ監督は、本作『ベロニカとの記憶』を制作するにあたり、原作『終わりの感覚』が一人称で書かれていたように、映画でもトニーの一人称で、彼の視点を中心に描いたそうです。
またよく練られた脚本を現場で丹念に撮影したものを、さらに編集段階で可能な限りミニマルにして多く語らないようにカットしたそうです。
そのことで映画をご覧になるあなたの鑑賞の余白(想像させる部分)を多くしたのでしょう。
リテーシュ監督は映画を観る観客に、次のようの感じて欲しいそうです。
「人生はやり直しができるんだ、ということについて考えてみてもらいたい。それから、人生で、それまで自分が思っていたことが、全く違うものに見えることがあるかもしれないということ。
この映画に登場する主人公には、どんなに小さい役にでもそれぞれにそれぞれの人生を映し出してみたつもりだ。観客の皆さんが何からの形で、自分の人生と重ねてくれたらうれしい」
「人生はやり直しができる」それは自身の過去の否定することではなく、肯定したうえ異なる視点を身に付けることなのではないでしょうか。
リテーシュ監督が述べるように、作品に登場するキャラクターにあなたの生きた過去を少し重ねることで、見えてくることを味わってみてはいかがでしょうか。
また、リテーシュ監督はベロニカを演じた女優シャーロット・ランプリングについて次のような印象を持っています。
「シャーロット・ランプリングの演じたベロニカのキャラクターは、映画の中では、小説よりも悲劇的には描いていない。というのも、僕は、彼女はトニーよりもある意味よりよい人生を送ったと思ったからね。この映画の中に登場する女性達は、男性よりも、強くて、人生が何たるかをより理解している人達だ。
だから、シャーロットのような女優はぴったりだったんだ。なぜなら彼女は映画の中では、悲劇的な役を演じたことが多かったから。でも、だからこそそれを重く背負い過ぎない感じで演じてくれると思った。実際、完璧だった。彼女は、役を演じながら真実を探求し続けるタイプの女優だった。本当に偉大な俳優だけが持っている才能を持った人だと思ったよ」
これは言わずもがなですね。きっとあなたも女優シャーロットについてはそのように感じているのではないでしょうか。
彼女は不思議とこれまで演じてきた役柄は、まるで点と点が結ばれるような雰囲気がスクリーンから香り立つ女優。
リテーシュ監督のおっしゃる通り、「彼女は映画の中では、悲劇的な役を演じたことが多かった」だからこその“ある種の軽み”をバランスよく演じられるのがシャーロットの真骨頂ですね。
また、もうひとりのベロニカ役のフレイア・メーバーについて、リテーシュ監督はこのように語ります。
「フレイア・メーバーも素晴らしい女優だった。すごく細かいところに拘った演技ができる人だった。また彼女と仕事したいと思う。真実は何なのかを探求し、常に予期してないようなことをしてくれる女優だった」
このようにフレイアのこともリテーシュ監督はお気に入りの女優のようで、フレイアと若き日のジムを演じた俳優ビリー・ハウルの共演のコラボレーションも充実して楽しかったとも話しています。
ベロニカ役を演じたシャーロットとフレイアの演技は、ちょっと意識して観て起きたいところですね。
まとめ
本作の演出を務めたリテーシュ・バトラ監督は、あなたをはじめとする日本のファンに次のようなメッセージも贈っています。
「この映画を作っている時、僕が大事だと思っていたのは、人生で二度目のチャンス、やり直しを与えるということ。それから、人生についてある見方をしていたものが、あることによって、それを全く違う方向から見なくてはいけなくなってしまうこと。つまり、もうひとつの真実があったことを知るということ。だから、撮影している時に、それを自分の人生に置き換えて考えていた。
もちろん、日本の観客の皆さんがこの映画を見て、何を感じてくれるかは自由です。でも、楽しんで見てもらえたらうれしい。実際の人生は、映画のようにいかないことも多いけれど(笑)」
人生はやり直しがきく。そして、ひとつの方向からしか見えなかったものが、歳月が経ったことも加味されもうひとつの真実があったことに気が付くとすれば、それはあなたにとって何なのでしょう。
映画『ベロニカとの記憶』は2018年1月20日より、東京・シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国で順次公開。
オスカー俳優の名優ジム・ブロードベントの演じたトニー役とともに、ベロニカに逢いに行きませんか。
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