映画『ある町の高い煙突』は6月14日(金)ユナイテッド・シネマ水戸、シネプレックスつくば先行公開、6月22日(土)より、有楽町スバル座ほか全国ロードショー!
『八甲田山』『剱岳』で知られる新田次郎の同名小説を映画化。日立市に実在する当時としては世界最大の大煙突建設と20世紀初頭の日本の工業化と公害発生の物語を描きます。
主演は無名塾の井出麻渡が抜擢され、師匠の仲代達矢と共演しています。元々、仲代達矢に出演を依頼するために無名塾の公演に向かった製作者陣がほれ込んだ逸材です。
また共演には、小島梨里杏、渡辺大、吉川晃司、大和田伸也、小林綾子、渡辺裕之、六平直政、伊嵜充則、石井正則など実力派が並びます。
CONTENTS
映画『ある町の高い煙突』の作品情報
【公開】
2019年6月22日(土)(日本映画)
【原作】
新田次郎
【監督】
松村克弥
【脚本】
松村克弥、渡辺善則
【キャスト】
井手麻渡、渡辺大、小島梨里杏、吉川晃司、仲代達矢、大和田伸也、小林綾子、渡辺裕之、六平直政、伊嵜充則、石井正則、螢雪次朗、斎藤洋介、遠山景織子、篠原篤、城之内正明、大和田健介、たくみ稜
【作品概要】
昭和の文豪・新田次郎の同名小説を原作に、日立鉱山の煙害と戦った地元村民たちの実話を映画化しました。
監督は、「日本近代美術の父」岡倉天心を描いた『天心』で知られる松村克弥。
映画『ある町の高い煙突』のキャラクターとキャスト
関根三郎(井出麻渡)
煙害に苦しむ地元住民のリーダーとなる青年。実際に日立鉱山煙害に対して日立に立ち向かった関右馬允がモデルとなっています。
加屋淳平(渡辺大)
地元住民との交渉役を務める日立鉱山庶務係。実在する日立鉱山の角弥太郎がモデルとなっています。
木原吉之助(吉川晃司)
理想家肌の若き経済人。「地元を泣かせるようでは事業成り立たない」という想いから理想郷を目指しています。日産コンツェルンの創始者・久原房之助がモデルとなっています。
加屋千穂(小島梨里杏)
加屋の妹。素性を知らない中で三郎と知り合い、惹かれ合います。
関根兵馬(仲代達矢)
三郎の祖父。日立との交渉役を務めていました。
映画『ある町の高い煙突』あらすじとネタバレ
明治末期、日本国策事業として銅山の開発が全国各地で進んでいます。茨木・日立市にもまた、「怪物」と恐れられた若き起業家・木原吉之助によって日立鉱山が開業されました。
しかし、鉱山から排出される有毒ガスによる煙害によって地元の農業は大打撃を受けます。
祖父の兵馬が鉱山採掘の許可に判を押したことから、この問題に深い縁がある関根三郎は、旧制一校出身という輝かしいキャリアを捨てて、地元の交渉役の責任者になることを決意します。
私財を投じて煙害調査を進める三郎に、地元の若者たちもついていきます。
日立鉱山側の窓口となったのは加屋という名の庶務係の職員。その物言いに最初は警戒する三郎ですが、やがて、会社をつぶしてでも誠実に対応するという大胆な加屋の発言が彼自身の本心から来ているものだと知ると、二人はやがて立場を超えて煙害問題に立ち向かっていく同志となっていきます。
また、三郎は調査で村のあちこちを回っている中で千穂という女性と出会い、惹かれ合っていきます。のちに千穂が加屋の妹だと知って三郎は驚きますが、それでも二人の距離は縮まっていきます。
映画『ある町の高い煙突』の感想と評価
地味ではありますが見られるべき映画
同時期に公開される『二宮金次郎』(五十嵐匠監督・合田雅吏主演)などもそうですが、地味ではあるものの芯のある映画が作られるというのはある意味、まだまだ日本の映画制作は健全なのかなと思わせてくれます。
メインキャストを務める若手を吉川晃司や仲代達矢というスター俳優が支えてくれているのもうれしいなと思います。
シネコンなどにはかかることはまずない映画でしょうが、ドキュメンタリーとは違ってちゃんとドラマになっており、映画にも入りやすいので、機会があれば是非劇場でご覧になってほしい映画です。
ちなみに、この日立の大煙突は72年にその役割を終えた後も残り、1993年の倒壊まではその威容を見ることができました。
現在は50メートルほどの遺構となっていますが、倒壊から一年後には記念碑も建てられ、地元のシンボル、そして公害問題のモデルケースとして今も語り継がれています。
まとめ
「満足感を得られる映画」というと、多くの方は派手さ、或いは過激さが氾濫している作品を連想するでしょう。しかし、それらの作品から得られるのは、あくまでウンザリする派手さ、過激さで胃もたれを起こしたかような「満腹感」でしかなく、心の内に新たな色彩が足されたかのような「満足感」を得ることはできません。
では、「満足感を得られる映画」とは一体どのようなものでしょうか。その明確な答えは、存在しないのかもしれません。
しかしながら、映画『ある町の高い煙突』からは、その「満足感」を感じとることができたのです。
派手さも過激さもない、けれど映画としての確かなる芯を持つ作品。それが映画『ある町の高い煙突』です。