2018年7月14日公開の映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』は、押見修造の漫画を映画化した作品で、作者の実体験を基にした青春ストーリーです。
上手く言葉が喋れない志乃と、ミュージシャンを夢見ているのに音痴な加代。コンプレックスを抱える主人公ふたりの、ある出会いがきっかけで変化していく彼女たちの変化を繊細に描いています。
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映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』の作品情報
【公開】
2018年(日本映画)
【監督】
湯浅弘章
【キャスト】
南沙良、蒔田彩珠、萩原利久、小柳まいか、池田朱那、柿本朱里、中田美優、蒼波純、渡辺哲、山田キヌヲ、奥貫薫
【作品概要】
押見修造の同名漫画を映画化した作品で、『幼な子われらに生まれ』の南沙良と『三度目の殺人』の蒔田彩珠の2人をダブル主演で実写映画化した青春映画。
コンプレックスを持つふたりの不器用な女子高生が主人公。人との係わりを避けてきたふたりが互いに手を取り合い、小さいけれど大きな1歩を踏み出していく姿を描いています。
林海象監督や押井守監督らの基で助監督を務めてきた湯浅弘章監督が商業映画デビューを果たし、脚本は映画『百円の恋』の足立紳が担当。
原作者の押見修造の実体験が基になっており、幅広い世代に感動を与えた人気作となっています。
原作者・押見修造のプロフィール
映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』の原作者である押見修造は、群馬県出身の漫画家。
『スーパーフライ』(2003)で漫画化デビューし、その後も数多くの連載作品を生み出しました。
押見修造作品は、テレビ化や映画化されているものが多く、2009年ドラマ『漂流ネットカフェ』、2014年映画『スイートプールサイド』などが映像化されています。
2018年7月現在、カルト系漫画『ハピネス』とサイコサスペンス漫画『血の轍』を連載中。
監督・湯浅弘章のプロフィール
湯浅弘章は、大学在学中にミュージックビデオや自主制作映画の監督を経て、押井守監督や、深作健太監督の撮影監督を務めるようになりました。
2007年には商業映画『真・女立喰師列伝/草間のささやき』で、監督デビューし以後、数多くの撮影監督を務めるほか、ミュージックビデオやショートムービーの監督をも手がけています。
尚、湯浅弘章最新の監督作品は、2018年7月19日スタートの、日本テレビ系ドラマ『探偵が早すぎる』です。
『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』の主なキャスト
大島志乃役/南 沙良
主人公の大島志乃は、喋ろうと思うと言葉が詰まってしまうため周囲と馴染めず、いつもひとりぼっちで学校生活を送っている高校1年生の少女。
高校の新学期の自己紹介でも、言葉が上手く喋れないことで笑われてしまいます。
大島志乃役を演じているのは、雑誌「nicola」専属モデルで活躍し『幼な子われらに生まれ』(2017年)で女優デビューした南沙良。
この作品で、浅野忠信演じる主人公の娘役を演じ、その演技力の高さが認められ本作の主演に抜擢されました。
主食と称するほどのお菓子好きであり、二次元や仏像鑑賞が趣味の16歳の少女で、二階堂ふみや満島ひかりなどの個性派女優を目標としているとの事です。
女優として注目を集めている今、今後の活躍にも期待したいですね。
山田加代役/蒔田彩珠
山田加代は、ギターが大好きでミュージシャンを目指しているものの、音痴というコンプレックスをもっていました。。ある時、志乃の歌声に魅了されバンドを一緒にやらないかと誘います。
山田加代役を演じているのは、7歳でデビューした蒔田彩珠。阿部寛主演のドラマ『ゴーイング・マイホーム』での演技が、是枝監督に高く評価されました。
家族とふざけることが大好きだという蒔田彩珠。
また、是枝裕和監督の『三度目の殺人』で福山雅治演じる重盛の娘ゆか役で、蒔田彩珠の名前を記憶にされている方も多いのではないでしょうか。
今後大きく活躍が注目される若手女優です。
映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』のあらすじ
大島志乃は、入学した高校の自己紹介で最初の一言がなかなか発音が出来ずに、話そうとすればするほど言葉が上滑りしてしまい、クラスの笑いものになってしまったのです。
そんな志乃は、周囲になじむことが出来ず、いつもひとりで行動していました。
ある日のこと、志乃がひとり校舎裏で昼食を食べていると、同じクラスの山田加代が歌の練習をしに来ます。
志乃は加代の邪魔をしたのではと詫びようとするも言葉に出ません。
加代は喋れないなら紙に書けばいいと、志乃に紙とペンを渡しました。
面白いことを書いたら、紙とペンをあげるという加代に、志乃は茶目っ気のある言葉を書いたのです。
この出会いをきっかけに、ふたりは仲良くなっていきました。志乃の歌声を聴いた加代は、志乃をバンドに誘い「しのかよ」を結成。
加代がギターを、志乃がヴォーカルを担当し、文化祭への出演を目標にした猛特訓が始まりました。
ある時、駅前で志乃の美声を初披露をしていた日のことです。
新学期での自己紹介で、志乃を馬鹿にした同じクラスの菊地強に見られてしまい、志乃は加代を置き去りにして逃げるように家に帰ってしまいました。
その後、菊地強が強引に志乃と加代のユニットに加わってしまったのです。
それからというもの、志乃は喋るどころか歌うことも出来なくなってしまいました。
志乃は、「しのかよはもう辞める。ひとりで居ればよかった。友達にならなければよかった」と地面に書き残すと、加代が止めるのも聞かずに立ち去ってしまったのです。
学校が夏休みに入り、志乃は街でバッタリ菊地と出会ってしまいました。
逃げようとする志乃を菊地が引き止め、加代のところに一緒に行こうと誘いますが、志乃は拒否します。
すると菊地は、自分は周りが見えなくなる性質であること、かつて志乃を馬鹿にしたことを謝った上で、ユニットに入ったのは志乃と話がしたいとおもったからだと告げたのです。
その上で、自分が志乃に好意があることを伝えようとするのですが、志乃は「うるさい」と言ってその場を去ってしまいました。
そして文化祭当日。しのかよでエントリーしていたものの、ひとりでステージに立つ加代の横には志乃の姿はありません。
音痴な歌に大爆笑されながらも加代は一生懸命ギターを弾きながら歌います。
耐え切れなかった加代がステージから立ち去ろうとした時。
客席の後方がざわめき始めました。
加代が向けた視線の先には志乃が立っており、身振り手振りで何かを伝えようとしていたのです。
志乃が加代に言いたかった言葉とは…。
映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』の感想と評価
上手く言葉が喋れないという志乃と、音痴というコンプレックスを持つふたりが出会ったことで、加代の音痴を志乃がフォローし、居場所がなくいつもひとりぼっちだった志乃の心の隙間を加代が埋めることで、ふたりが抱えるコンプレックスを解消してくという希望のある作品です。
お互いがありのままの姿を受け入れることで、加代も人前で歌うことの勇気を貰い、その姿を見た志乃も、自分は自分なんだという強い心を持つことが出来ました。
傷つくのが怖いからと逃げることは簡単ですが、それに向かっていく勇気を手に入れた彼女たちからは、感動や希望をもらえることは間違いありません。
また、この作品では作者の湯浅弘章自身にも吃音があったことから、「吃音」という言葉は使われていません。
個人のことでありながらも、誰にでも当てはまるような物語にしたかったという原作者の強い思いが込められているのです。
まとめ
『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』は、2018年7月14日公開となった感動作です。思春期真っ只中にある彼女たちが、コンプレックスとどのように向き合っていくのか、どのようにして乗り越えていくのかを、是非劇場でご覧ください。