来るのかな?新幹線!花巻に!?
映画『ネクタイを締めた百姓一揆~新花巻駅設置を巡る14年間の物語』は、東北新幹線の新花巻駅設置を巡り、奮闘した花巻市民たちの14年間に渡る活動を描いた作品です。
当時の国鉄の新幹線基本工事計画には予定されていなかった花巻駅。現在の場所に「新花巻駅」として設置が決まるまでには何があったのでしょうか。
自分の住む町を未来ある町にしたい!市民たちの熱い思いは、14年の時をかけ多くの人々の心を動かしていきます。
新幹線では全国でも稀な「請願駅」となった「新花巻駅」誕生の物語『ネクタイを締めた百姓一揆~新花巻駅設置を巡る14年間の物語~』を紹介します。
CONTENTS
映画『ネクタイを締めた百姓一揆~新花巻駅設置を巡る14年間の物語』とは
1964年(昭和39年)、日本国有鉄道(国鉄)は、東京・新大阪をつなぐ東海道新幹線を開業。そして、1971年(昭和46年)、東京・盛岡をつなぐ東北新幹線基本工事計画を発表。
岩手県花巻市は、新幹線停車駅設置有力候補の噂で盛り上がっていました。「新幹線止まったら、いっぺえ客くるど!」。
しかし結果は、駅の設置はなし、新幹線は花巻の地を素通りです。誰もが諦めかけた時、立ち上がった男たちがいました。
子供たちの未来のため、町の発展のために、田舎の男たちはネクタイを締め大きな権力に挑みます。まさにその姿は百姓一揆。果たして、花巻市に新幹線は止まるのか!?
映画『ネクタイを締めた百姓一揆~新花巻駅設置を巡る14年間の物語』の作品情報
【日本公開】
2020年(日本映画)
【原作】
渡辺勤「新花巻駅物語り~甚之助と万之助~」
【監督・脚本】
河野ジベ太
【キャスト】
金野佳博、千田秀幸、城戸直行、藤原俊春、小原良猛、堀切和重、中村真澄、高橋広朗、山下正彦、穂坂栄一、高橋哲郎、熊谷義昭、佐藤正明、東海林浩英、小野智明、小岩悟
【作品概要】
東北新幹線の新花巻駅設置を巡る14年間の史実を基にした劇映画『ネクタイを締めた百姓一揆~新花巻駅設置を巡る14年間の物語~』。
岩手県在住の有志たちにより、地元企画・地元製作された長編映画となりました。キャストもスタッフも大半の者は、映画製作初経験という状況の中、約2年をかけて完成。作品は、門真国際映画祭2018で最優秀脚本賞を、第4回賢島映画祭では特別賞を受賞しています。
映画『ネクタイを締めた百姓一揆~新花巻駅設置を巡る14年間の物語』のあらすじ
日本国有鉄道(国鉄)は、東海道新幹線開通の成功をうけ、昭和46年(1971年)に東北新幹線基本工事計画を発表します。
岩手県内の新幹線停車駅候補は3カ所です。「盛岡、一関は決まりだべ。あどは、花巻、北上、水沢のどれがだ。花巻には、空港もあっぺし、止まるべな!」。花巻市民は皆、期待に胸を膨らませていました。
昭和46年、10月。いよいよ、東北新幹線停車駅、決定の日がやってきました。結果は、盛岡、一関、そして北上市が選ばれました。
新幹線は花巻市を素通り、しかも市内から離れた矢沢を通るらしい。市民も諦めかけたその時、立ち上がった男たちがいました。
「花巻の未来の子供たちのために、何としても花巻に新幹線を止めるべ」。国家百年の計と熱き思いのもと「東北新幹線問題対策花巻市民会議」を発足させます。
花巻市長に、岩手県知事にと直談判に駆けずり回る花巻市民会議のメンバーでしたが、もう決まったことだからと追い返されます。
「こうなれば、国鉄本社にいぐべ」。メンバーは、ネクタイを締め汽車に乗り込みます。「まるで百姓一揆だな」。思いは一つでした。
いざ国鉄側の対応はと言えば、「総合的判断です」の一言でした。この計画は、事前に行われた地質調査を加味したものです。路線を市内に変更し、その上、駅の建設まで行うとなれば、予算もかさみます。
地元に戻ったメンバーに、さらなる試練が訪れます。地権者たちとの衝突、本業の経営難、青年会議所の若者たちは着いて行けないと離れていきます。
それでも、花巻市民会議のメンバーは前に進もうと、もがき続けていました。
昭和48年、日本は第一次オイルショックが起こり、日本高度成長期が終焉を迎えます。
昭和50年、国鉄の労働組合によるストライキが過熱。しかし、もはや郵送は車の時代へと移り変わっていました。国鉄は赤字を抱え、のち昭和62年に分割民営化となります。
時代の流れに翻弄され、夢半ばにして亡くなった同士もいました。それでも、花巻市民会議メンバーの思いは受け継がれ、百姓一揆の武器は、鍬や槍ではなく、市民の切望する声、署名となり国鉄に届きます。
昭和57年、東北新幹線大宮・盛岡間が開業。花巻を通り過ぎる新幹線を見ながら、「これがもう少しで止まるぞ」と、つぶやく花巻市長の姿がありました。
新しい駅名は「新花巻駅」。花巻に新幹線が止まったのは、それから3年後でした。
映画『ネクタイを締めた百姓一揆~新花巻駅設置を巡る14年間の物語』の感想と評価
新花巻駅の設置に、こんな物語があったなんて。岩手県民ですら知らなかった史実が、岩手県在住の有志の皆さんによって映画化されました。
キャストもスタッフも大半が素人という、この映画製作自体が、リアル『ネクタイを締めた百姓一揆』のようです。
その地に住むものが、土地の歴史や風土を踏まえ、どういう町にしたいのか考え行動することを「まちづくり」と言います。
東北新幹線・新花巻駅設置に向け、諦めなかった花巻市民会議のメンバーは「まちづくり」の原点を教えてくれました。
そして、その思いは受け継がれ、「この物語を後世に伝えたい」という思いで市民により製作されたこの映画は、まさに「まちづくり」の一環と言えるのではないでしょうか。
自分たちの住む町を愛し、未来に希望を持てる町にしたい。そこには共通の熱い思いが感じられました。
演じているキャストの皆さんは、大半が演技も初めてという方々ばかり。プロの俳優の演技とは行きませんが、その佇まいはよりリアリティがあり、実在する人物と合わせやすく、迫力あるものになっています。
登場人物も皆、個性的で魅力的な人物ばかりで、リアルな方言でのセリフは、とても温かみがありユーモアに溢れています。
それぞれが主人公の群像劇は、時代が流れても上手く交わり、熱い思いと共に繋がって行きます。14年という時間が上手に表現されていて、観ていて分かり易かったです。
また、この映画のみどころは、新幹線開業という日本の高度経済成長期の勢いや、その後の田中角栄首相の日本列島改造論、第一次オイルショック、中曽根改革による国鉄民営化など、昭和の時代背景がしっかりと描かれており、歴史ものとしても楽しめます。
東北新幹線大宮・盛岡が開通した当初。子供会の皆で新幹線に乗って、東京ディズニーランドに遊びに行ったことを思い出しました。花巻はまだ・・・素通りでした。
まとめ
計画のない駅は、出来るのか。新花巻駅設置を巡る14年間の物語『ネクタイを締めた百姓一揆~新花巻駅設置を巡る14年間の物語~』を紹介しました。
子供たちの未来のため、町の発展のために、新幹線の駅を作るという「まちづくり」に、力を注いだ者たちの14年間の物語。その勇姿は、自分たちの町を改めて考えるきっかけになるはずです。
地元を愛する市民が声をあげ、地元の歴史を残す映画を作る。岩手県花巻市には「まちづくり」の精神が確かに受け継がれています。
映画『ネクタイを締めた百姓一揆~新花巻駅設置を巡る14年間の物語~』は、地元・岩手県の5つの映画館での先行上映を経て、2020年11月6日(金)よりアップリンク渋谷にて公開されます。
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