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Entry 2019/02/05
Update

Netflix映画『ローマROMA』あらすじと評価解説。アカデミー賞監督のキュアロンが最も自伝的ヒューマンドラマを描く

  • Writer :
  • Moeka Kotaki

2019年、アカデミー賞授賞式が近づいてきました。

今回ピックアップするのはNetflix製作のヒューマンドラマ映画『ROMA/ローマ』です。

静粛な映像美で綴られる本作がなぜこんなにも心を揺さぶるのか、考察と共に魅力をご紹介します。

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映画『ROMA/ローマ』の作品情報


Netflixオリジナル映画『ROMA/ローマ』

【公開】
2018年 メキシコ・アメリカ合作映画(日本公開 : Netflixにて配信)

【原題】
Roma

【監督】
アルフォンソ・キュアロン

【キャスト】
ヤリッツァ・アパリシオ、マリーナ・デ・タビラ、マルコ・グラフ、ダニエラ・デメサ、カルロス・ペラルタ、ナンシー・ガルシア、ディエゴ・コルティナ・アウトレイ

【作品概要】
手掛けるのは『ゼロ・グラビティ』(2013)でアカデミー賞10部門にノミネートされ、監督賞や撮影賞、視覚効果賞など最多7部門を受賞したメキシコ出身の映画監督アルフォンソ・キュアロン。

「ハリー・ポッター」シリーズの3作目『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』(2004)の際にはアカデミー視覚効果賞にノミネート、『トゥモロー・ワールド』(2006)ではアカデミー賞脚色賞、撮影賞、編集賞でノミネートされており独特の迫力溢れる映像をはじめとして高い評価を受けています。

主人公の家政婦クレオを演じたヤリッツァ・アパリシオは、本作にキャスティングされる前は保育士学校を修了したところだったという経歴の持ち主。

本作でシカゴ映画批評家協会賞や放送映画批評家協会賞など数々の女優賞にノミネートされました。

クレオの雇い主ソフィアを演じた女優マリーナ・デ・タビラは、第91回アカデミー賞助演女優賞にノミネートされています。

Netflixで配信された『ROMA/ローマ』は第76回ゴールデングローブ賞では外国語映画賞、監督賞を、第75回ヴェネツィア国際映画祭では最高賞である金獅子賞を獲得しました。

また第91回アカデミー賞外国語映画賞ではメキシコ代表作として出品され、最終選考9作品に残っています。

映画『ROMA/ローマ』のあらすじとネタバレ


Netflixオリジナル映画『ROMA/ローマ』

1970年、クレオはメキシコシティのコロニア・ローマで住み込みの家政婦として働き、ソフィアと4人の子供、ソフィアの母のテレサ、同じく家政婦であるアデラと暮らしています。

ソフィアの夫で医者であるアントニオは、カナダのケベックへ出張中。

ソフィアとアントニオの関係は良好ではありません。

アントニオは一時的に帰宅した後すぐにまたケベックへと発ちました。

休暇中、クレオとアデラはボーイフレンドのラモンとフェルミンと共に映画館へ。

クレオとフェルミンは映画館には入らず代わりに部屋を借りることにします。

全裸のフェルミンは武術の技をクレオに披露します。

両親が幼い頃に死にスラムで育ったフェルミンは武術に出会ってから世界が変わったといいます。

後日、クレオは映画館にて自分が妊娠している可能性があることをフェルミンに告白します。

しかしフェルミンは映画『大進撃』が終了間際であるにもかかわらずトイレに行くと言って席を立ったまま戻らず、クレオが外で待っていても現れませんでした。

ソフィアに相談すると彼女はクレオを医者に連れて行き、そこで妊娠が確定します。

季節は年末となり、ソフィアはクレオ、アデラ、子供達を連れて新年を祝うために友人の大農園に行きます。

しかし新年を祝うパーティの間に森で火事が発生、人々は消火活動を行わなければなりませんでした。

街に戻り、クレオは子供達と祖母のテレサを『宇宙からの脱出』を鑑賞するために映画館に連れて行きます。

しかし街ではぐれた子ども達を追いかけていたクレオは、若い女と一緒にいるアントニオを目撃してしまいました。

ソフィアは子供達にアントニオとの別居を隠そうとしますが、次男が電話での会話を盗み聞きして知ってしまいます。

ソフィアはほかの子供達に事実を明かさないように次男に頼みました。

ラモンを通じてフェルミンを野外の武術訓練場で発見したクレオ。

訓練が終わりクレオが話しかけに行くと、フェルミンは赤ん坊の父親が自分であることを認めず、二度と会いに来ないようきつく脅します。

以下、『ROMA/ローマ』ネタバレ・結末の記載がございます。『ROMA/ローマ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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ある日クレオはテレサに連れられてベビーベッドを見るために街に出かけました。

店への道のりで彼女らはデモをしている学生たちを見かけます。

クレオとテレサが家具屋を物色している間、路上では学生たちと警察が暴動に発展し、若者たちによって構成される集団によって抗議者が次々と殺されて行きます。

ある抗議者の男女が店内にやってきて隠れますが追ってきた若者たちにより見つかり、客の目の前で男は射殺。

その若者たちの中にはフェルミンの姿もあり、彼はクレオに銃を向けて去って行きました。

直後にクレオは破水してしまいます。

テレサとクレオはすぐに車で病院に向かおうとしますが、暴動のせいで渋滞しておりなかなか進みません。

やっと着いた病院。

クレオは途中で会ったアントニオに励まされます。

分娩室に運ばれますが赤ちゃんの心音が聞こえません。

医者たちは手術に乗り出したものの死産に終わりました。

赤ちゃんをクレオが抱きかかえた後、医師たちは赤ちゃんを連れて行きました。

ソフィアは大きすぎるフォード・ギャラクシーを売却し、小さな車を購入します。

彼女はギャラクシーが引き取られる前にトゥスパンのビーチへの家族旅行を提案し、クレオも誘いました。

旅行先でディナーのテーブルを囲みながら、ソフィアはアントニオと別居し、この旅行中に彼は私物を自宅から持ち去ると子供達に告げます。

翌日、ビーチでクレオは泳ぐ子供達を見守っていましたが、子供2人が溺れそうになり、彼女は泳げないにも関わらず海に入り救出します。

駆けつけたソフィアと子供4人、クレアは固く抱擁し、自分の本音を吐露します。

「私、赤ちゃんは欲しくなかった。」

一家が自宅に帰ると、アントニオは本棚を持ち去って自宅から居なくなっていました。

彼らは寝室の割り当てをやり直します。

クレオはアデラに話がたくさんあると言いながら、家事の支度を始めました。

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映画『ROMA/ローマ』の感想と評価


Netflixオリジナル映画『ROMA/ローマ』

本作はキュアロン監督の故郷メキシコ、ローマ地区を舞台にとある家族の一年間と、動乱だった当時の社会を並行させてモノクロの映像美で描き出します。

キュアロン監督の自伝的作品でもある『ROMA/ローマ』。

主人公クレオはミシュテカ語を家政婦どうしで時折話す先住民系の女性で、彼女のモデルとなったのはキュアロン監督の実家で働いていた家政婦です。

子供達はクレオを慕い、最後には父親を除き、家族皆が温かい絆で結ばれますが、ゆっくり座る時間があったかと思えばすぐにお茶を要求される、妊娠中であるにも関わらず大きな荷物を運ぶも任されっぱなしなど、中流家庭とクレオ達の間の格差も描かれています。

音楽は使用せず、当時のローマ地区の匂いや騒音、また大自然の脅威と美しさ、男性の真っ裸、飼っている犬の糞と何もかもそのままに映し出します。

物語は塀に囲われた家の中=家族内で起こる出来事を中心に進行しますが、クレオやソフィアたちの視点から今社会で何が起こっているか観客は読み取ることができます。

家の前を通過する軍のパレードや、クレオに大きなショックを与える後半の暴動シーン。

これは1971年6月10日に起こった“血の木曜日事件”“コーパスクリスティの虐殺”と呼ばれる学生運動弾圧事件です。

クレオの恋人だったフェルミンが所属しているのは“ロス・アルコネス(鷹の軍団)”という政府の青年組織

劇中にもあるように彼らは訓練を受け、大半は血の木曜日事件に参加し容赦なく虐殺を行いました。

監督の自叙的作品であるからこそ、このような当時の社会問題、人種問題が真実の重さとして伸しかかります。

そんな本作を象徴する表現のひとつが“水”です。

クレオが中庭の掃除のために流している水のカットで映画は始まり、皿洗いの水、雨、割れたコップからあふれる液体など全編に水が流れ続けています。

そして最後に待ち受けるのは大きな海と荒波です。

キュアロン監督の過去作で、ロードムービーの傑作『天国の口、終わりの楽園。』(2001)にこのような台詞があります。

人生は波のようなもの。流れに身を任せて

オープニング、クレオが流す水は画面を静かに浸しては流れてゆき、浅瀬の穏やかな波のよう。

真面目で平穏を望むクレオは感情を表だって出すことも出せることもなく、妊娠や男の失踪、雇い主からの叱責、死産と降りかかる出来事をじっと受け止めてゆきます。

しかし最後彼女は子供達を助けるため、泳げないにも関わらず文字どおり大きな荒波に逆らうのです。

無事に子供達と岸辺に戻ることができしっかりと抱き合い、やっと自らが抱えていた赤ちゃんに関する思いを吐露することができたクレオ。

その後の彼女の表情は安らぎと共に、強くしなやかな生きるエネルギーを感じさせます。

「人生は波のようなもの。だけれど、時には荒波を乗り越えなければいけないこともある」

そしてその先には新しい希望が待っている。

水と波の描写はそんなメッセージを含んでいるのではないかと考えられます。

まとめ

ネット配信作品で初、映画祭を席巻している映画『ROMA/ローマ』。

日常に降りかかる些細な辛いこと、外で回り続ける動乱の社会、パーソナルな経験と世に渦巻く出来事が生々しく伝わってくるのは真実が込められているからこそ。

映画は終わっても人生は続く、また明日もあると手を握りしめてくれるような作品です。

長回しの圧巻の映像はぜひ劇場で味わいたいもの…。

2019年のアカデミー賞発表、映画『ROMA/ローマ』に注目です。

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