映画『オー・ルーシー!』は、4月28日(土)ユーロスペース、テアトル新宿他にてロードショー。
節子43歳は独身。職場では話し相手はおらず、自宅に戻れば一人暮らしの部屋は物だらけで友だちが来ることもない。
そんな味気ない毎日を過ごしていた節子だが、怪しげな英会話教室のレッスンに行き、金髪ウィッグをかぶった彼女は「ルーシー」になった瞬間一変。
ハグしてくれたイケメン講師ジョンを求めて東京からカリフォルニアへ!
映画『オー・ルーシー!』の作品情報
【公開】
2018年(日本・アメリカ合作映画)
【脚本・監督】
平栁敦子
【キャスト】
寺島しのぶ、南果歩、忽那汐里、役所広司、ジョシュ・ハートネット
【作品概要】
第67回カンヌ国際映画祭シネフォンダシオン部門で上映された平柳敦子監督の同名短編映画を、長編として自身によるリメイク化。
主演を桃井かおりから寺島しのぶに迎えて主人公節子役に、キャストに南果歩、忽那汐里、役所広司が出演し、節子の恋する英会話教師ジョンに『ブラックホーク・ダウン』や『ブラック・ダリア』のジョシュ・ハートネットが助演を彩ります。
2016年サンダンス・インスティテュート、NHK脚本賞受賞作品。
映画『オー・ルーシー!』のあらすじ
節子は東京に暮らす43歳の会社員。職場で上司や後輩とは必要最低限の会話しかせず、単調な業務をこなす毎日。
一人暮らしのマンションに帰宅すれば、部屋は物で溢れかえり、訪ねて来る友人もいませんでした。
そんな変わらぬ毎日だが、出勤の途中にサラリーマンが電車に飛び込む現場を目撃してしまい、いつもより憂鬱さを増したある日。
節子は姪の美花から、彼女が通えなくなった英会話教室を代わりに受講し、前払いした授業料の肩代わりして欲しいと頼まれてます。
無料体験ができると聞かされ、美花に言われた場所に行くとそこは雑居ビル。
英会話教室は暗く怪しげな雰囲気なところでした。
受付を済ませ恐る恐る指定された301室に入った節子は、アメリカ人講師のジョンから親密なハグとともに迎えられます。
金髪ヴィッグと「ルーシー」というアメリカンネームを与えられます。
このジョンとの出会いより、節子の中で眠っていた感情が目を覚まします。
英会話講師のジョンに恋したことで節子の退屈な暮らしは一変します。しかし、幸せな気分もつかの間、ジョンはこともあろうか美花と一緒にアメリカに帰国したと知らされます。
落胆した節子は自暴自棄隣、退職する同僚の送別会で暴言を吐き、ますます会社にいづらくなります。
そして、節子は会社に休暇申請を申し出て、アメリカに行くことを決意しますが…。
映画『オー・ルーシー!』の感想と評価
節子と“ルーシー”という2人の女の子
ベルリン国際映画祭最優秀女優賞を受賞した演技派女優として知られる寺島しのぶ。
彼女が演じた『オー・ルーシー!』の主人公の節子は、43歳で独身。話し相手となる職場の同僚や、プライベートでも友人もいません。
そんな節子が怪しげな英会話教室に通い、講師のジョンから“ルーシー”というアメリカンネームを名付けられます。
この作品を見ていて印象深いのは、節子がよく鏡を見ている姿です。
彼女は金髪ヴィッグをかぶり“ルーシー”に変身して、自身の心の中にいる、“もう一人の自分”を見つめているように見えてきます。
本作では節子という人物の二面性を描いた作品となっています。
口数も少なく物静かな節子と、英会話教室という学びの環境で積極的に会話をしなければならないルーシーは、全く正反対のキャラクターではありますが、実はどちらもが本当の節子なのでしょう。
寺島しのぶの新たな演技力(女の子)
あえて、女性ではなく、“女の子”と書きますが、講師ジョンから“ルーシー”の名前を与えられた節子は、少女のような煌めきの表情を見せます。
平栁敦子監督とボリス・フルーミンの書いた脚本の巧みさは、もちろんありますが、節子が女の子のように見えてくるのは、演技派女優の寺島しのぶならでは高い表現力の“可愛らしさ”でしょう。
節子(ルーシー)の1人でいる表情、姉妹でいる時の行動、姪の美花に感じる嫉妬などの仕草、あまりにチャーミングで本当に素敵の一言。
寺島しのぶの過去作に見られた、2004年の『愛の流刑地』や2010年の『キャタピラー』などの大胆なエロティックさが、女優寺島しのぶの“一つの武器”であると同時に女性の魅力と思い込んでいました。
しかし、本作の寺島しのぶが演じた43歳で独身の節子は、男社会を生き抜くために大人となり、自身を律する女性たちの代表のようにも見えてきます。
どなたでも心の奥底に住んでいる“もう1人の女の子”を解放するかのように少女、それこそがルーシーであり、節子のアメリカへの小さな冒険と言えるでしょう。
あなたが女性なら、節子の二面性にある可愛いらしい女の子ような姿に「あるある」と頷き、またチョッとイタイ場面もあるはずです。
でも、この作品の終わりにはそんな女の子が成長した様子が伺えます。そこはあなたの目で感じてくださいね!
多くの大人の女性、そして心に“ルーシーという女の子”がいるあなたに観ていただきたいオススメの作品です。
まとめ
本作『オー・ルーシー!』の英会話講師ジョンを演じたのは、ジョシュ・ハートネット。
彼は2001年に『パール・ハーバー』や『ブラックホーク・ダウン』、2006年には『ブラック・ダリア』などの大作映画に出演したことを覚えているでしょう。
そんなジョシュがこの作品では、アメリカ人のダメ男ジョンを演じています。
自らをハグ魔だと言い、ハグはアメリカ流の挨拶の流儀だと語る彼は、女性にダラシなく責任感のない男性です。
元妻やそれ以外の女性たちのことも心からは愛してはいません。
そんなジョンですが、英会話教室の節子に自らが名付けた“ルーシー”によって、愛する女の子の存在に気付いたようなです。ここはチョッと注目ですよ。(しっかりハグしてます)
最後になりますが、『オー・ルーシー!』の中には“ルーシー”のほかに、英会話講師ジョンによってアメリカンネームを付けられた“トム”と男性も登場します。
さてさて、“トム”の心にはどんな少年が住んでいるのでしょう。また、どんなハグを見せるのでしょう、要注目です!
大人の映画ファンのあなたに鏡写しで、もう一度人生を学びほぐさせてくれるオススメ作品。
映画『オー・ルーシー!』は、4月28日(土)ユーロスペース、テアトル新宿他にてロードショー。
ぜひ、お見逃しなく!