第31回東京国際映画祭の日本映画スプラッシュに選出されたイッセー尾形主演『漫画誕生』。
“近代漫画の父”と呼ばれ、いま現在に至る漫画を職業として確立し、歴史から忘れられていった男・北沢樂天。
新進気鋭の大木萠監督と、名優・イッセー尾形がタッグを組み、フィクションドラマ、ドキュメント映像、漫画などの様々な表現を織り交ぜながら、樂天の人物像を浮き彫りにしていきます。
CONTENTS
映画『漫画誕生』の作品情報
【公開】
2019年(日本映画)
【監督】
大木萠
【脚本】
若木康輔
【キャスト】
イッセー尾形、篠原ともえ、稲荷卓央、橋爪遼、森田哲矢(さらば青春の光)、東口宜隆(さらば青春の光)、福永マリカ、緒方賢一、モロ師岡
【作品概要】
デビュー作の『花火思想』(2014)が高い評価を受けた大木萠監督が、激動の時代を駆け抜けた実在の漫画家・北沢樂天の人生を描きます。
主人公北沢樂天の壮年期を根強いファンを持つイッセー尾形、青年期を橋爪遼が演じ、彼の妻・いのを、枠にとらわれない幅広い活動を展開している篠原ともえが全編にわたってひとりで演じます。
“生きるため”に仕事として漫画を描き続けた樂天。
その足跡を辿りながら、謎と波乱に満ちた知られざる人生を追います。
映画『漫画誕生』のあらすじ
“日本近代漫画の祖”とされ、わが国最初の職業漫画家として明治から昭和初期にかけて活躍した北沢樂天(1876~1955)。
“漫画”を職業として確立し、かつて一世を風靡した漫画家は、なぜ歴史から忘れられてしまったのか。
明治・大正・昭和と激動の日本を生き抜き、弟子たちや多くの漫画家と漫画文化に影響を与えた、謎多きその人生とは…。
“神様”を生んだ漫画家・北沢樂天の生涯
北沢樂天は明治9(1876)年、大宮宿の旧家・北沢家の四男として、東京の神田に生まれました。
小さい頃から絵を描くことが好きだった樂天。
19才のときに外国人向けの英字新聞の会社に入り、同紙の漫画欄を担当していたオーストラリア人の漫画家から西洋漫画を学び、そののち漫画欄を引き継ぎます。
23才で樂天は、福沢諭吉が創刊した新聞を発行する時事新報社に入社。
新聞記事を分かりやすく伝えるため、絵画部員として新聞に絵を描きました。
特に樂天が描く時事漫画コーナーは大人気で、当時ポンチ絵やおどけ絵と呼ばれ評価の低かった風刺画を、きちんとした絵と内容で大人から子供まで楽しめる“漫画”へと発展させました。
樂天は29才の時、日本初のカラー漫画雑誌『東京パック』に漫画を描きました。
政治、社会の問題、文化などいろいろな話題を取りあげて描き上げたところ、大反響を呼び、日本国内のみならずアジア各地でも販売され、多くの人々が樂天の漫画を楽しみました。
このように樂天は、近代日本漫画のルーツにあたる重要な漫画家のひとりであり、漫画を職業として成功させた人といわれています。
また、弟子を育てることにも熱心で、時事新報社を退職すると自宅を弟子たちの活動のために提供し、後進を指導し、支援しました。
今の新聞や雑誌の漫画は、もとをたどると樂天の漫画に通じます。
樂天の漫画から影響を受けた漫画家たちもたくさんいました。
あの“マンガの神様”こと手塚治虫も、樂天の影響を受けたひとりです。
しかし現在その名を知る人間は多くありません。
一体何故?
映画『漫画誕生』ではその謎に迫り、失われた歴史を紐解きます。
“第一人者”ד第一人者”=∞
日本における、一人芝居の第一人者、イッセー尾形。
その役作り、人間への観察眼には目を見張ります。
軽妙でいて哀愁が漂う。
シニカルだけど憎めない。
彼の演じる人物たちは欠点だらけですが、どこか寂しくて愛おしい、惹きつけてやまない引力があります。
出演したマーティン・スコセッシ監督の『沈黙ーサイレンスー』(2016)では、映画を気に入らなかった批評家も含め、ほぼ全員がイッセー尾形の演技のすばらしさに言及していました。
「彼の演技はこの映画で最高」、「とても狡猾でありつつ、楽しくもある演技。日本のベテラン俳優でコメディアンでもあるイッセー尾形の、芸人魂が光る」「オスカーに価する」と批評家たちの大絶賛を受けたイッセー尾形。
また、テレビドラマ『カルテット』(2017)の第1話のゲストで出演した際にも強烈な印象を残しました。
彼が演じた自称余命9か月のピアニストの去り際の背中は、人を欺きながらも孤独な道を歩んできたピアニストの人生が浮かび上がってきました。
そんなイッセー尾形は、『漫画誕生』の撮影にあたってこうコメントしています。
「映画に入るまでは知らない人物でしたが、台本の中で生きているうちに、とても馴染んでいきました。自分の目の前にある仕事に全力を尽くす。たとえそのせいで煙たがられても淡々と。友情を覚えた、と言ってもいいと思います」
北沢樂天の「自分の目の前にある仕事に全力を尽くす」姿勢。
なんだかイッセー尾形の役者人生と重なるものがありますね。
日本の漫画の第一人者・北沢樂天を、一人芝居の第一人者・イッセー尾形が演じる。
一体どのような相乗効果をもたらすのか、果てのない可能性を感じます。
篠原ともえがイッセー尾形の妻に
かつて10代で、奇抜でカラフルなファッション、超個性的なハイテンションで“シノラー”ブームを巻き起こしたと篠原ともえ。
現在も歌手、タレント活動と並行して俳優、衣装デザイナーと才能を広く発揮しています。
“シノラー”全盛期も、彼女はその見た目とは裏腹に、とても礼儀正しく、美しい言葉を使う姿勢が評価されていました。
その彼女の本質である品の良さが、今でも活躍し、支持されている要因の一つなのでしょう。
篠原が今回演じるのは、なんと20代から60代の樂天の妻!
30代も後半になり、さらに落ち着いた魅力を増した篠原ですが、この役の年齢の振り幅は圧巻です。
生涯を通じて夫・樂天を支え続けた妻・しの。
篠原ならではの明るく上品なキャラクターに仕上がっている点に注目です。
東京国際映画祭レッドカーペットで激写!
10月25日に開幕した、第31回東京国際映画祭。
レッドカーペットイベントが、東京・六本木ヒルズアリーナにて開催されました。
激写した華やかな様子を写真でお届けします!
まとめ
東京国際映画祭での上映が決定した映画『漫画誕生』。
世間に軽んじられていた風刺画を、“漫画”として1つの文化に育て上げた北沢樂天の人生を描いた作品です。
夫婦愛、師弟愛、漫画愛に満ちた映画と期待してやみません。
日本映画スプラッシュに選出されたことで、2019年の本格的な上映に向けて動き出した本作。
今後の動きも見逃せない1作です。