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Entry 2018/10/22
Update

映画『The Little Stranger』ネタバレ感想レビュー。【ザ・リトル・ストレンジャー】

  • Writer :
  • こたきもえか

お化け屋敷の秘密と聞くと、ぞくりとしつつも思わず好奇心をくすぐられませんか?

今回取り上げるのは大きな寂れた屋敷に住むある呪われた家族を描いた、ホラー映画よりも恐ろしい物語『The Little Stranger(原題)』です。

ゴシック、ミステリー好きはたまらない本作の魅力をご紹介します。

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映画『The Little Stranger』の作品情報


© Focus Features

【公開】
2018年:日本公開未定(アメリカ・イギリス・フランス合作映画)

【原題】
The Little Stranger

【監督】
レニー・エイブラハムソン

【キャスト】
ドーナル・グリーソン、ルース・ウィルソン、シャーロット・ランプリング、ウィル・ポーター、リヴ・ヒル、ハリー・ハーデン・ペイトン、アンナ・マデリー、リチャード・マケイブ、ジョシュ・ディラン

【作品概要】

本作を手掛けるのは『ルーム』(2015)で第88回アカデミー賞作品賞、監督賞、脚色賞にノミネート、第44回トロント国際映画祭観客賞をはじめ数々の賞を受賞したレニー・エイブラハムソン。

主人公のファラデー医師を演じるのは『アバウト・タイム』(2013)『ブルックリン』(2015)、また「スター・ウォーズ」シリーズにてハックス将軍を演じているドーナル・グリーソン。

グリーソンはエイブラハムソン監督の作品に出演するのは『FRANK-フランク-』(2014)に続き2作目。

共演は何十年もデカダンス作品として人気を誇る『愛の嵐』(1974)に出演し、『さざなみ』(2015)や『レッド・スパロー』(2017)など近年も活躍する大女優シャーロット・ランプリング。

そして『レヴェナント : 蘇えりし者』(2015)『デトロイト』(2017)など話題作に出演する注目の若手俳優、ウィル・ポーターです。

また『マンマ・ミーア!ヒア・ウィー・ゴー』(2018)に出演するジョシュ・ディランもわずかですが出演しています。

映画『The Little Stranger』のあらすじとネタバレ

1947年のイギリス。ファラデー医師は、古びた屋敷ハッドレス領主館に住むエアーズ家を往診します。

かつては栄えた名家のエアーズ家も今では没落の道をたどっており、屋敷に住むのは女主人のエアーズ夫人と娘のキャロライン、息子のロデリック、メイドのベティ。

体調を崩したメイドのベティの診察に訪れたファラデーを洒落っ気の無い格好をしたキャロラインが出迎えました。

弟のロデリックは戦時中王立空軍に所属していましたが大やけどをし、不自由な生活をしています。

キャロラインは戦後の財政難で“令嬢”の立場にありながら自ら家事を担う立場に追いやられていました。

ファラデーはロデリックの酷い怪我を知り、電気ショック法で治療することを提案します。

ファラデーの母親は、かつてこの屋敷のメイドでした。

1919年、幼いファラデーはエアーズ家で開かれたパーティーに出席したことを思い出します。

そこにいたエアーズ家のもう1人の娘スーザンのこと。そして好奇心に駆られたファラデーは屋敷をこっそり発見し、鏡の枠を壊してしまい、母親にこっぴどく叱られたこと。そのスーザンは幼い頃に亡くなっていました。

ある日エアーズ家はパーティーを開き、親類たちとともにファラデーも招かれました。

引きこもりがちなロデリックは顔を見せようとしません。穏やかに進むパーティーでしたが、キャロラインの飼っているラブラドールが豹変し子供を襲ったことで事態は急変します。

ファラデーが応急処理をしたおかげで子供は一命を取り留めましたが、そのラブラドールを安楽死させなければなりませんでした。

ロデリックはこの屋敷には何か超自然的な力が潜んでいるとファラデーに打ち明けますが、ファラデーは信じようとしません。

ロデリックは屋敷の売却を密かに考えていました。その夜ロデリックの部屋で火事が起こり、彼は精神病院に収容されてしまいます。

エアーズ家と密接に関わる中で、ファラデーは娘のキャロラインとロマンチックな関係になりつつありました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『The Little Stranger』ネタバレ・結末の記載がございます。『The Little Stranger』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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ファラデーは医師たちが集うパーティーにキャロラインを連れて行きます。

いつもの質素な服装ではなくドレスに身を包み、パーティーを楽しむキャロラインを見て顔をほころばせるファラデー。

不器用でなかなか進展しない彼らでしたが、ファラデーはキャロラインと結婚することを決意しました。

そんな中エアーズ家にはロデリックの言った通り、不可解な現象が次々と起こりつつありました。

ある日エアーズ夫人は壁のいたるところに、“Suki”という幼い筆跡を発見します。

亡くなった娘スーザンがまだ自分の近くにいると信じるエアーズ夫人。

それだけではなく、屋敷の呼び鈴が一斉に鳴り出したり、不気味な物音がしたりといわゆる“ポルターガイスト”のような現象が頻発するようになりました。

ある日、エアーズ夫人が上階の一室に何者かによって閉じ込められるという恐ろしい事件が起きます。

ファラデーやキャロラインによって助け出された後も、夫人の体は勝手に切り裂かれると言った異変が起こり、手首を自分で切ったか切られたか、間も無くして死んでしまいました。

葬儀に出席したロデリックは、キャロラインにあの屋敷を出るか、それか次に死ぬだろうと警告します。

6週間後に結婚する予定のファラデーとキャロライン。結婚の話を持ち出したファラデーにキャロラインは、今はそれどころではないと言います。

キャロラインを失いたくないファラデーは、キャロラインのためにドレスを作り持って行きましたが彼女は受け取ることを拒否。

君は今混乱していて、まともに考えることができないんだとファラデーは言いますが、キャロラインはきっぱりと結婚自体を拒否してしまいます。

そして屋敷を売る決断をしたことも伝えました。

その夜、キャロラインは不気味な気配に引きつけられるように、母が閉じ込められた部屋のある上階へと向かいます。

キャロラインはそこで信じがたいものを目にし、「あなた!」彼女は一言そう叫び、転落して息絶えました。

結婚が無しになり、その日が家に戻らなかったファラデーは、翌朝キャロラインが死んだことを知ります。

審問でベティはキャロラインが上へ昇っていく音で目を覚ましたことを証言、検視官は自殺の判定を下しました。

後日何も無くなったエアーズ家を一人訪ねるファラデー。子供の頃に見た屋敷の鏡は今では埃をかぶって曇っています。

そんなファラデーを上から見つめる小さな人影。それは1919年、パーティーでこっそり屋敷に忍び込んだ、幼いファラデー少年でした。

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映画『The Little Stranger』の感想と評価

本作はイギリスの小説家、『荊の城』や『夜愁』などのミステリー小説で知られるサラ・ウォーターズによる『エアーズ家の没落』を原作としています。

舞台は1900年代半ばの、かつては“古き良き”立派な豪邸だった、今では寂れてしまった屋敷。戦争の煽りを受け今ではメイドも十分に雇うこともできず、家の娘も家事を担う状況。

エアーズ夫人がエレガントな衣装に身を包んでいるのに比べ、キャロラインは終始決して“令嬢”らしいとは言えないいでたちです。

丁寧に手入れをする人手があり、財政が安定していなければ大きく立派な屋敷を相続することは恐ろしいもの。

息子のロデリックは大やけどを負い、雇えるメイドは若いベティだけ。『The Little Stranger』で描かれる屋敷はいつ崩れてもおかしくない不安定なものと言えるでしょう。

そんな屋敷がそれぞれの登場人物の心理と重なり、最後には誰もいなくなってしまう…。

仄暗く退廃的な雰囲気、登場人物の心理を読ませない後頭部のショット、“見えない誰か”の存在を感じさせる空間の映像は、物語に漂う負のオーラを最大限に引き出しています。

物静かな医師のファラデー。彼は“何か訳あり”な家族、屋敷に踏み込んだ部外者であり、問題を探っていくいわば探偵役のように初見では思えるでしょう。

しかし屋敷に踏み入ったことのある彼の過去、彼の行動と屋敷の内部で起こる事件を交差させて描くことにより、徐々に彼が完璧な部外者、入りたくとも決してその屋敷には踏み入れることない人物だと気が付かされます。

幼い日に好奇心で入った大きな屋敷。大人になり医師となった今でも、出身階級が低い彼は上流階級に入ることはできない、ずっと“The Little Stranger(小さな部外者)”でした。

キャロラインと結婚し屋敷を手に入れ、内部者となることを望んだファラデー。

経済が困窮する今そんなことをできるわけもなく、内から広がる負に支配される住人たちは皆傷口が広がり、滅んでゆきます。

『The Little Stranger』はそんな絶望的な人々の心理と状況をエレガントかつ不穏な世界観で描いた映像作品です。

まとめ

イギリス、片田舎のじっとりとした薄暗い空気が伝わってくる、戦争の傷跡を抱えた人々の哀しく寂しい物語『The Little Stranger』。

日本公開された際には、名優たちが魅せる身の毛のよだつ怪奇な世界をぜひご堪能ください。

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