新年の挨拶に初詣は行かれましたか?今回ご紹介する『ラサへの歩き方〜祈りの2400㎞』は、五体投地(ごたいとうち)という、巡礼の姿を描いた作品。
チベット民の巡礼の祈り姿は、あまりに途方もないロード・ムービー、きっと、あなたの心を揺さぶるはずです!
映画『ラサへの歩き方 〜祈りの2400㎞』の作品情報
【公開】
2016年(中国映画)
【脚本・監督】
チャン・ヤン
【キャスト】
ヤンペル、ニマ、ツェワン、ツェリン、セパ
【作品概要】
チベットの小さな田舎村から、聖地ラサとカイラス山へ向かう2400キロの巡礼の旅を、実在のチベット民の出演で描いたロードムービー。
監督は、『こころの湯』『胡同のひまわり』のチャン・ヤン監督です。
映画『ラサへの歩き方 〜祈りの2400㎞』のあらすじとネタバレ
親族の葬儀を終えたヤンペルは、死ぬ前に聖地ラサへ行きたいと家族に話します。
それを聞いた老人や子ども、妊婦を含む村人の3つ家族が同行することが決まりました。
広大な自然の中どこまでも続く一本道、巡礼する家族たちの荷物を積んだトラクター。
その運転手を除いた全員が、「五体投地(ごたいとうち)巡礼」の出発するのです。
腹部を保護する厚手のエプロンと、手を板で保護した巡礼の姿の彼らは、日中は祈りを繰り返して歩き、夜は道端にテントを張って眠りにつきます。
老若男女、同じように祈りの歩調を合わせ、誰のことも急かしたりすることはありません。
祈りの道中に、車に乗った見ず知らずの中年男から、五体投地の約束事に口うるさく指導する者がいても、その言葉の通りに、やり直すことも大切な巡礼の禊です。
その後、大切な荷物を乗せたトラクターが、事故にあい壊れてしまいます…。
映画『ラサへの歩き方 〜祈りの2400㎞』の感想と評価
チベットの山奥にある小さな村で生活する3つの家族。彼らが聖地ラサと、聖山カイラスの巡礼に向かう様子を描いた作品です。
しかし、2400キロメートルもの距離を、ただ歩くのではありません。
「五体投地」という、合掌して、両手、両膝、額の五体を大地に投げ出して、うつ伏せになり、その後に立ち上がるという動作を繰り返した祈りを捧げて歩くのです。
他者への祈りを捧げる期間は、約1年。この作品は、途方もない巡礼を見せてくれます。
また、登場する巡礼者は、同じ村に住む11人の老若男女たち。実在する村人が本人役を演じており、家族構成やその背景など全て事実に基づいています。
チャン・ヤン監督は、あえて、フィクション映画でありながら、ドキュメンタリーの記録のような斬新な手法で描いた点が見どころ。
カメラは、常に登場人物を客観視することを意識において撮影を行い、決して感情に踏み込見ません。
劇映画にありがちな、登場人物の喜怒哀楽や、主人公の成長の姿といった、劇的なカタルシスを排除して、観客に、シンプルに祈りの姿を見せることで、強く人生とは何かを問いかけています。
まとめ
この作品は、政治的な主義主張は描かれません。
しかし、「五体投地の巡礼」という、日常の風景が静かに淡々と描かれることで、少数民族の持つチベット精神へ敬意に圧倒されます。
そのことが、少数民族の弾圧を行う政権に対する強いメッセージだと見る事もできる作品。
映画というメディアの検閲に厳しい中国。例えば、映画は、電気がないと上映できず、観られないメディア。
聞くところによると、“政府を批判する映画(自主制作)”を上映する映画祭では、政権側が、1つの町をまるまる停電にする妨害工作を行うそうです。
『ラサへの歩き方 〜祈りの2400㎞』は、政権批判を描いていないと、検閲が判断して、国外上映が可能になった奇跡的な作品。
ぜひ、チベット族の小さな家族たちの物語に、目を向けて見てください。
きっと、あなたの心にも何かが残る作品。オススメの1本です!ぜひご覧ください‼︎