伝説のお笑いコンビ“ローレル&ハーディ”の、切なくも輝かしいラストステージ。
20世紀初頭のハリウッド映画創成期を支えたお笑いコンビ「ローレル&ハーディ」。
彼らの晩年を描いた、『僕たちのラストステージ』が、2019年4月19日(金)より新宿ピカデリーほかで全国公開されました。
CONTENTS
映画『僕たちのラストステージ』の作品情報
【日本公開】
2019年(イギリス・カナダ・アメリカ合作)
【原題】
Stan & Ollie
【監督】
ジョン・S・ベアード
【キャスト】
スティーヴ・クーガン、ジョン・C・ライリー、ニナ・アリアンダ、シャーリー・ヘンダーソン、ダニー・ヒューストン、ルーファス・ジョーンズ
【作品概要】
ハリウッドの映画創成期を支えたアメリカの伝説的お笑いコンビ、“ローレル&ハーディ”の晩年を描く伝記ドラマ。
スタン・ローレル役を「ナイト ミュージアム」シリーズのスティーブ・クーガン、オリバー・ハーディ役を『シカゴ』(2002)や『ゴールデン・リバー』(2018)のジョン・C・ライリーが、それぞれ演じます。
そのほか、映画プロデューサーのハル・ローチ役に『ワンダーウーマン』(2017)のダニー・ヒューストン、スタンの妻イーダ役に『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』(2016)のニナ・アリアンダなどが脇を固めます。
監督は、『フィルス』(2013)のジョン・S・ベアード、脚本を『あなたを抱きしめる日まで』(2013)のジェフ・ポープが担当しました。
映画『僕たちのラストステージ』のあらすじ
1937年、スタン・ローレルとオリバー・ハーディによるお笑いコンビ、“ローレル&ハーディ”は、舞台では毎回満員な上、主演映画も世界中で上映され大ヒットするという人気を博していました。
コンビの売り出しに一役買った映画プロデューサーのハル・ローチと、契約の金銭面で揉めるなどのトラブルを抱えつつも、2人はキャリアの絶頂期を迎えていました。
それから時は流れて1953年。イギリスでホールツアーを開始しようとする2人でしたが、世間からは既に忘れ去られた存在に。
宿泊ホテルもグレードが下がれば、いざ舞台に立っても客席はまばら。
実はこのツアーは、スタン脚本によるロビン・フッドのパロディ映画製作の資金を取り付けるためのPRも兼ねていたのです。
そのため、苦境が続くも予定通り地道にイギリス中を回る2人。
それが功を奏したか徐々に客足が戻り、その勢いを買ってロンドンの劇場での2週間公演が決まります。
しかし、スタンは資金繰りを依頼していた映画プロデューサーから契約を白紙にされたにもかかわらず、それをオリバーに言い出せません。
一方のオリバーも、妻にアクセサリーをプレゼントしようとするも手持ち金が足りず、競馬に手を出すほど経済的に困窮していました。
お互いがそれぞれ悩みを抱える中、2人の妻がアメリカから到着。
ロンドン公演も無事に終えた2人は、地元有志が開いたパーティに呼ばれますが、しかしそこで妻同士の口論が勃発します。
それをきっかけに、スタンとオリバーもこれまでたまっていた鬱憤をぶつけ合い、オリヴァーはコンビ解散を申し出てしまうのでした。
問題山積みとなったロンドンツアーは無事終えることができるのか。はたして2人のコンビはどうなってしまうのか…。
伝説の名コンビ、ローレル&ハーディとは?
Stan & Ollie AKA Laurel & Hardy pic.twitter.com/wCJlhShcwh
— Laurel and Hardy (@Stan_And_Ollie) 2019年1月17日
元々道化師としてデビューしたスタン・ローレルと、映画での脇役専門だったオリバー・ハーディ。
この2人を組ませたのは、本作の冒頭に登場する映画プロデューサーのハル・ローチでした。
2人が“ローレル&ハーディ”として本格的に活動を開始した1927年は、奇しくも世界初のトーキー(有声)映画『ジャズ・シンガー』が公開された年でもあります。
それまでのサイレント(無声)映画のスターが、トーキーに移行しても成功するケースは少なく、あの“喜劇王”チャールズ・チャップリンも、トーキー映画が主流となった1930年代後半になっても、サイレントにこだわり続けたほど。
そんななか2人は、今でいう漫才のボケ・ツッコミスタイルを確立し、かつサイレント時代からのパントマイムを盛り込んだドタバタ劇が好評となりました。
日本では“極楽コンビ”の愛称で親しまれましたが、100本以上もの出演作が作られながらも、国内で公開されたのは20を満たしません。
しかし、彼らが一体となって織りなすパフォーマンスは、今日ある世界のエンターテインメントの基盤になっているのは、間違いないでしょう。
浮き沈み激しいショウビジネスに身を置く者たち
そんなスタンとオリバーが主人公の本作ですが、メインで描かれるのは彼らの人気絶頂期ではなく、すでにピークを過ぎた1953年。
チャップリンやバスター・キートンが、この時期にはもうドラマ性の高い作品にも出演するようになっていた一方で、2人ははあくまでコメディにこだわります。
過去の人扱いされている2人の舞台を見に来る客こそ減っているも、絶妙のコンビネーションを見せれば確実に受ける。
その芸はすっかり身に沁みついていて、仕事でもないのに、宿泊する安ホテルのフロントでもチェックインするやり取りで、応対の女性を笑わせてしまう。
本作では、彼らが本物のエンターテイナーであることを丹念に描きます。
「興行は水もの」と呼ばれるほど博打性が高いショウビジネス。
集客が不入りとなって赤字を抱えてしまう時もあれば、一転して満員御礼となって大当たりする時もあります。
劇中、2人のエージェントである興行主が、「ショウほど素敵な商売はない」と、その魅力を語ります。
しかし、一方でスタンが、その言葉に反するかのように「(エンターテイナーとなった以上)何があってもショウを続けていかなければならない(Show must go on)」と呟きます。
華やかにして厳しい、ショウビジネスに身を置く者たちの実情にも触れます。
もう1組の絶妙コンビにも注目
スタンとオリバー以外にも注目すべき点は、2人を支える妻たちでしょう。
元ダンサーだったスタンの妻イーダと、元スクリプターだったオリバーの妻ルシール。
表向きは友好関係を築く2人ですが、あくまでもそれは夫の前だけであって、内心は夫の相方への評価は厳しい。
また、自身もダンサーとして映画出演していた過去を自慢するイーダと、スタンに対してもあれこれ口出しするお喋りなルシールは、まさに水と油の関係として描かれています。
しかし、そうした彼女たちの言動の根底にあるのは、困難な状況にある夫を想ってのこと。
イーダ役のニーナ・アリアンダとルシール役のシャーリー・ヘンダーソンは、そうした関係性が自然に出るようにと、一緒に共同生活を過ごして呼吸や間合いを作っています。
彼女たちの存在もまた、スタンとオリバーのようなコンビとなっているのです。
親友ではないものの、いざとなったら支え合える
『僕たちのラストステージ』という邦題が表しているように、本作ではローレル&ハーディの最後の舞台がクライマックスとなっています。
ただ、実際の2人はその後もテレビなどで単発的にコンビ出演をしていますし、2人がプライベートではどういった関係性を築いていたのかについては、不明な点もあるようです。
プロデューサーのフェイ・ウォードは、「本作で初めて2人を知る人がいたとしても、彼らが今日のコメディに何を残したのか伝えることを念頭に置いた」と語っています。
プライベートは仲が悪くても、いざ舞台に上がれば抜群のコンビネーションを見せる漫才コンビは今もいます。
親友ではないかもしれないが、無意識のうちに阿吽の呼吸が出来上がっている――本作で描かれている時代こそ日本でいう昭和ですが、テーマ自体は普遍的なものなのです。
令和時代になっても通じるコンビ愛を描く『僕たちのラストステージ』は、2019年4月19日(金)より新宿ピカデリーほかで全国順次公開。