高橋秀綱監督作品『このまちで暮らせば』
最近、映画の中で土地柄を強く前に出した映画が多い。
フィルムコミッションが定着したこともあるが、下手な宣伝キャンペーンより映画のスクリーンに街並みを写しこむことのPR効果の高さを感じる人が増えているからだろう。
そこで、地方自治体が自発的に映画を誘致して映画を盛り上げることで、結果的に地元を強くPRしようと利用してくる流れもでき始めている。
この辺りの流れは、2013年の映画『県庁おもてなし課』でもよくわかる。
ご当地映画の傾向は
“餃子”でご当地映画
例えば、今年2018年6月22日公開の『キスできる餃子』は、宇都宮を舞台にした餃子店を営むシングルマザー(=足立梨花)の物語。
宇都宮といえば餃子の町、その部分を敢えて、前面に打ち出して盛り上げた。
映画は宇都宮で先行公開されたのちに全国公開がされる。
伊坂幸太郎原作のご当地映画
似たような例でいえば、2007年に『アヒルと鴨とコインロッカー』があり、2010年には『ゴールデンスランバー』、そして2012年には『ポテチ』の伊坂幸太郎の仙台サーガの映画化。
前二者『ゴールデンスランバー』と『ポテチ』は仙台で先行公開された。
『ゴールデンスランバー』は東宝の全国公開映画ということで、流石に先行公開はなかったものの主演の堺雅人&竹内結子が登壇した仙台プレミア上映が行われた。
北海道のご当地映画はどうでしょう
こういったものの究極な例を挙げると大泉洋主演の北海道を舞台にした諸作品。「探偵はBARにいる」シリーズ、『しあわせのパン』(2012)、『ぶどうのなみだ』(2014)など。
北海道ローカル番組『水曜どうでしょう』が全国的に波及していき、全国区になった大泉洋は拠点を東京中心に移しながらも、北海道という土地柄を強く感じさせる稀有な立ち位置の主演級俳優。
古くから知っている北海道民からすれば、まさに“おらが郷のスターがおらが郷を舞台にした映画に主演している”ということになるのだから、その思い入れの強さは何倍にもなる。
映画『このまちで暮らせば』
2018年7月14日から公開される映画『このまちで暮らせば』も、黒川温泉や小国杉を抱える九州熊本の南小国町を舞台にした親子の物語。
代々植樹と剪定、そして伐採を繰り返して育まれる森と人の成長と親子の繋がりを重ねあわせた物語になっている。
この映画も地元の全面協力で作られた映画で、地元出身のベテラン俳優勝野洋が出演しているところも地元に根をはった映画だということが感じられる。
林業に関わり、自分の在り方を模索する若者二人を若手俳優の注目株の笠松将と芋生悠が演じている。
土地柄と映画をうまく盛り込んだ映画が多いなか、スクリーンに主人公たちの背景に移る日本各地の風景を楽しむのもいい映画の楽しみ方と言っていいだろう。
映画『このまちで暮らせば』のあらすじ
熊本県にある南小国町。ある思いを胸に、一人前の林業作業士を目指している青年、樹。
彼は母親町子と不仲となり、福岡にある実家から家出をしてきました。
師匠の茂に樹は両親はいないと嘘をついて暮らしています。
ある日、樹を訪ねて母親の町子がやって来ました。
師匠の茂に嘘がばれてしまった樹、しかも、東京から逃げて来た茂の孫娘の緑からも責められてしまう始末。
それでも母町子を受け容れようとしない樹は、町子は命に関わる病気であると茂から知らされます…。
まとめ
熊本県阿蘇郡南小国町の全面的な協力を得て、地元出身のベテラン俳優勝野洋も出演し、まさにご当地映画ともいうべき本作は完成42分の短編映画です。
高橋秀綱監督の『このまちで暮らせば』は、2018年7月14日(土)より、新宿K’scinemaにて1週間限定ロードショー。