Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

Entry 2019/10/07
Update

白石和彌映画『ひとよ』あらすじと感想レビュー。佐藤健×鈴木亮平×松岡茉優のらしくないダラしなさは新鮮

  • Writer :
  • 村松健太郎

映画『ひとよ』は、11月8日(金)より全国ロードショー!

女優で演出家でもある桑原裕子が主宰する「劇団KAKUTA」が2011年に初演したヒューマンな舞台を映画化。

次男役を佐藤健、長男役を鈴木亮平、長女役を松岡茉優、母親役を田中裕子がそれぞれ演じ、ある事件によって崩壊した家族の様と体現します。

また、その脇を佐々木蔵之介、音尾琢真、筒井真理子が固めた演技にも注目です。

映画『ひとよ』の作品情報


(C)2019「ひとよ」製作委員会

【公開】
2019年(日本映画)

【原作】
桑原裕子

【脚本】
髙橋泉

【監督】
白石和彌

【キャスト】
佐藤健、鈴木亮平、松岡茉優、佐々木蔵之介、筒井真理子、MEGUMI、浅利陽介、音尾琢真、田中裕子

【作品概要】
話題作を連続して発表し続ける白石和彌監督の2019年待望作。桑原裕子による「劇団KAKUTA」が2011年に初演を作品を原作に映画化。

過酷な状況にあった家族を大きく変えたある“ひとよ”=“一夜”とそれから先の時間を生きる人々を描きます。

映画『ひとよ』のあらすじ


(C)2019「ひとよ」製作委員会

15年前のある大雨の夜、稲村タクシーの営業所では3兄妹が母の帰りを待っていました。

そこに帰宅してきた母親のこはるは震える声で「さっき、お父さんを殺しました」と告げます。

父親の家庭な暴力はすさまじく、酔えば子供で容赦なく苛烈な暴力を浴びせ、家族は怯えて暮らしていました。そしてついにこはる夫を手にかけたのです。

こはるはこれから出頭する、15年後には戻ってくると言って3兄妹を残して去っていきます。

その後、長男の大樹は地元の電気工務店の娘と結婚、雇われ専務として過ごしています。吃音のある大樹は大人になっても引っ込み思案な部分が抜けません。

次男の雄二は小説家になる夢を持って上京しましたが、実際には風俗系のフリーライターの仕事しかしていません。

妹の園子は地元のスナックで働いています。

それか15年後のある夜、こはるが帰ってきます。

社名は変わったものの、コツコツとタクシー会社を親戚や昔馴染みに心から感謝しながらこはるはまたかつての家で暮らし始めます。

タクシー会社には社長の丸井、事務員の柴田、雄二たちと昔なじみの牛久や歌川、それに入ったばかりのまじめな中年の堂下が働いています。

こはるに対してどうしたものが分からないでいる大樹と園子は雄二を呼び出します。

雄二は密かに自身の体験を記事にしていいて、それがタクシー会社の嫌がらせの材料になっていたりもします。

大樹も電気工務店の娘と結婚し、一女を授かっていますが、とっさに出てしまう暴力で夫婦仲は冷え切っています。

大樹は夫婦の関係を取り戻したいと思ってはいますが、自分の中にある暴力性に父親を重ねてしまい自己嫌悪に近い感情を抱いていいます。

園子は母親の帰宅を心から喜びますが、兄たちと世間たちの事件への鬱屈した思いを感じていました。

そんなある夜、酒もたばこやらないまじめなはずの堂下が泥酔した状態でタクシー会社に乗りつけ、こはるを連れて去りますが…。

映画『ひとよ』の感想と評価


(C)2019「ひとよ」製作委員会

多作な白石和彌監督なので、常連組と言うべき俳優もたくさんいるのですが、今回はほぼほぼ新顔が揃っています。

常連組で言えばTEAMNACSの音尾琢真ぐらいでしょう。硬軟自在の俳優さんですが、今回もいい味を出しています。

一方で、初参加組を見れば、いい意味でルーズなキャラクターでいい佐藤健や松岡茉優の新たな一面を見るこができます。

隠れた二面性を持つ鈴木亮平の裏表の出方も独特のタイミングで新鮮です。

筒井真理子、韓英恵、MEGUMIといった脇に回る助演女優陣もとてもいい味を出しています。


(C)2019「ひとよ」製作委員会

そして、何よりも田中裕子の母性とおおらかさです。

白石監督作品なので、どこか殺伐とした雰囲気も変わらずあるのですが、彼女の独特のおおらかさが作品全体に不思議な温かみを与えてくれます。

まとめ


(C)2019「ひとよ」製作委員会

地方を舞台に罪と罰、暴力と傷、家族と犯罪。本作と同年公開の『凪待ち』をはじめ、白石和彌監督が今までもいろいろな形で描いてきたテーマですが、今回は今までにない温もりのある作品に仕上がりました。

何といっても田中裕子と言う存在が大きいのですが、今までにない白石作品となり監督の新境地を見ることができます。

『るろうに剣心最終章』を控える佐藤健、『燃えよ剣』を控える鈴木亮平、『蜜蜂と遠雷』が話題の松岡茉優。

重厚な作品がある一方で、いい意味でリラックスした肩の力が抜けた姿を見せています。

らしくないだらしなさ、情けなさがとても新鮮です。

なかなか悲惨な話でもあるのですが、どこかまぁいいかというような突き抜け感もあり、一風変わった映画になりました。

関連記事

ヒューマンドラマ映画

映画『ファヒム パリが見た奇跡』内容解説。実在の天才チェス少年を描き難民問題への向かい方を問う

映画『ファヒム パリが見た奇跡』は2020年2020年8月14日(金)より全国順次ロードショー! バングラデシュから父とともに脱出し、フランスで新たな生活を目指していた少年・ファヒム。希望のカギは、彼 …

ヒューマンドラマ映画

映画『死の天使 ヨーゼフ・メンゲレ』あらすじ感想と評価解説。ナチスの悪名高い医師の逃亡から“裁かれなかった悪”の辿った運命を描く

2026年2月27日(金)より映画『死の天使 ヨーゼフ・メンゲレ』は、シネマート新宿、シネスイッチ銀座ほか全国公開! 歴史的な悲劇の舞台ともいえる第二次世界大戦時のアウシュビッツ強制収容所。その中で「 …

ヒューマンドラマ映画

映画『コロンバス』あらすじネタバレと感想。モダニズム建築を通し、小津安二郎が描いた“家族の系譜”を現代的に受け継ぐ

透明性と光だ!静謐なタッチの長編作 主演はジョン・チョーとヘイリー・ルー・リチャードソン ブレッソン、ヒッチコック、小津安二郎などの研究者だったコゴナダ監督がカメラを持ち、長編デビューを果たした映画『 …

ヒューマンドラマ映画

映画『BLUE/ブルー』ネタバレ感想と結末解説のあらすじ。松山ケンイチの演技力でボクシング関係者を慈しむ

理想と現実の間に悩みながらも努力を尽くす挑戦者たちの生き様を描く! 『犬猿』(2018)などの作品で知られる吉田恵輔監督が、自身が30年以上も取り組んできたボクシングを題材に脚本を執筆。拳闘シーンの殺 …

ヒューマンドラマ映画

Netflix映画『最高に素晴らしいこと』ネタバレ感想と考察解説。ラストまで“心の病との闘い”をエル・ファニングとジャスティス・スミスで描く

心の傷みを知っているから「大事な人を助けたい」。その思いが見えなかった世界を明るくする青春物語。 今回は事故で大切な姉を亡くしてしまった主人公が、不登校がちなクラスメイトによって立ち直るまでの、心の触 …

Cinemago|想像力の海へ、シネマダイビング。
ACT1|次の物語は、人からはじまる。
Cinemagoオンラインショップ|DVD・鑑賞チケット・オリジナルグッズ
『血を吸うスマトラオオコンニャク』
【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学