父と娘の止まった時間が動き出す〈愛と再生〉の物語…。
第65回ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞した気鋭の女性監督マウゴシュカ・シュモフスカの初の日本劇場公開となる『君はひとりじゃない』をご紹介します。
CONTENTS
映画『君はひとりじゃない』の作品情報
【公開】
2015年(ポーランド)
【原題】
Body/Cialo
【監督】
マウゴシュカ・シュモフスカ
【キャスト】
ヤヌシュ・ガヨス、マヤ・オスタシェフスカ、ユスティナ・スワラ、エバ・ダウコフスカ、アダム・ボロノビチ、トマシュ・ジェンテク、マウゴジャタ・ハイェフスカ・クシシュトフィク、エバ・コラシンスカ、ロマン・ガンツアルチィク、ブワディスワフ・コバルスキ
【作品概要】
第65回ベルリン国際映画祭銀熊賞(監督賞)を受賞し、ポーランドのアカデミー賞にあたるイーグル賞を総なめにした、父と娘の再生を描いた人間ドラマ作品。
主演を務めるのは、ポーランドを代表する名優であるヤヌシュ・ガヨス。共演にマヤ・オスタシェフスカや新人のユスティナ・スワラを迎え、メガホンを取るのは、『ジュリエット・ビノシュ in ラヴァーズ・ダイアリー』でその溢れんばかりの才能を見せつけた気鋭の女性監督マウゴシュカ・シュモフスカ。
映画『君はひとりじゃない』のキャスト一覧
ヤヌシュ / ヤヌシュ・ガヨス
1923年9月23日生まれで現在77歳のポーランド人俳優ヤヌシュ・ガヨス。
大学在学中の1964年にスクリーンデビューを果たし、テレビシリーズの『四人の戦車兵と一匹の犬』に出演し、注目を集めました。
1982年には、巨匠アンジェイ・ワイダ監督の『鉄の男』やリシャルト・ブガイスキ監督の『尋問』に出演。
その後も『自由と呼ぶ映画館からの脱出』(1990)、クシシュトフ・キェシロフスキ監督『トリコロール/白の愛』(1994)など、数多くの傑作映画で存在感を発揮しました。
本作『君はひとりじゃない』でポーランドのアカデミー賞と言われる第18回イーグル賞主演男優賞を受賞するなど、現在のポーランド演劇界におけるトップ俳優としてその名を轟かせています。
そんなヤヌシュ・ガヨスが演じているのは、妻を亡くしたことで感情が表に出なくなった検察官のヤヌシュ。
事件で死体を扱っても何も感じることがなくなり、摂食障害を患う娘・オルガにはどう接していいのか分からずにいるヤヌシュの何とも言えぬ表情に注目です!
アンナ / マヤ・オスタシェフスカ
ポーランド・クラクフ出身の女優マヤ・オスタシェフスカは、1972年9月3日生まれで現在44歳。
映画だけでなく、舞台女優としても名を馳せており、世界的にも有名な「Nowy Teatr(新劇場)」の専属としても活躍されています。
ロマン・ポランスキー監督の『戦場のピアニスト』(2002)に出演していた他、アンジェイ・ワイダ監督の『カティンの森』で主演を務めるなど、ポーランドでその名を知らぬものはいない女優であるといえるでしょう。
第18回イーグル賞主演女優賞を受賞した本作『君はひとりじゃない』では、セラピストのアンナを演じています。
ヤヌシュの娘・オルガを担当することになるアンナですが、彼女にはある特殊な能力があり…。
それが霊と交信することでした。しかし、アンナ自身も過去に息子を亡くしており、ぽっかりと心に穴が開いているという状態のようで、自らの心の傷にどう向き合っているのかに注目して見ていきたいと思います。
オルガ / ユスティナ・スワラ
ポーランド・ワルシャワ出身のユスティナ・スワラ(1990年生まれ)は、本作が女優デビュー作となっています。
監督のマウゴシュカ・シュモフスカが偶然「Facebook」で彼女を見かけ、オルガ役に抜擢したという経緯があるそうですね。
彼女が演じているのは、母を失ったことで心に傷を抱え、摂食障害を患ってしまったヤヌシュの娘オルガ。
母の死後、完全に心を閉ざしてしまい、肝心の父親はオルガと対照的に太っていくばかり。
摂食障害が深刻化してしまい、精神病院に入院。そこでセラピストのアンナと出会い、彼女がどう変化していくのか…その辺りが注目ポイントになってきそうですね!
映画『君はひとりじゃない』のあらすじ
父・ヤヌシュと娘のオルガは、母親を亡くし、現在は2人暮らし。
検察官をしているヤヌシュは、妻を亡くして以降、死に対して無頓着となってしまい、事件現場で死体を見ても何の感情も沸いてきません。
一方のオルガは、完全に心を閉ざしてしまい、摂食障害を患ってしまいます。
これまでは母親という存在がいたおかげで何とか関係を保てていた2人でしたが、ヤヌシュにとっては娘にどう接して良いものやら分からず、互いの溝は深まるばかりでした。
摂食障害が深刻化し、日に日にやせ細っていくオルガの姿を目の当たりにしたヤヌシュは、彼女を精神病院へと入院させることに。
その病院で彼女のリハビリを担当するのは、セラピストのアンナでした。
グループセラピーにより、感情を表現させるような練習を積極的に取り入れていたアンナは、少しずつオルガの心を解きほぐしていきます。
オルガが入院中、ヤヌシュの方は相変わらずで、新生児が生み捨てられていたような凄惨な現場を見た後でも平気で食事をとり、同僚からも軽蔑の眼差しを送られていました。
そんなヤヌシュは、オルガとはまるで対照的に太っていくばかり。
セラピストのアンナには、ある特殊な能力があり、患者やその家族たちを癒していくことに成功していました。
彼女は霊と交信することで、患者たちに(死者の言葉を記した)手紙を送っていたのです。
ある集会ではアンナの患者はこんな感謝の言葉を述べていました。
「アンナを通して息子から10通の手紙を受け取っている。最初はこんなことが起きるとは信じられなかった。今は心が安らかになった。」
そんなアンナにも、実は心にぽっかりと穴が開いていました。
それは、息子を亡くしたこと。今は犬のフレデクと共に寂しい暮らしを送っており気丈には振舞っているものの、大きな心の傷を抱えていたのです。
ある日、ヤヌシュの家で水が出しっぱなしになったり、かけてもいないレコードが鳴ったりと、奇怪なことが次々と巻き起こり始めます。
そのことを知ったアンナは、母の霊と交信し彼女の言葉を聞くべきだと、2人に持ち掛けました。
しかし、ヤヌシュは「あの子に妙な期待を持たせないで欲しい」と拒絶。
だがある晩に、妻とヤヌシュしか知るはずのないことが書かれた手紙が引き出しに入っていたことから、彼は妻との交信をアンナに依頼します。
そして、ヤヌシュとオルガ、アンナの3人は互いに手を取り合い、交霊を始めるのでした…。
映画『君はひとりじゃない』公開はいつから?
映画『君はひとりじゃない』は、2017年7月22日(土)より劇場公開がスタートすることが決定しています。
前売券はすでに発売が開始されており、各劇場窓口の他、「major」(https://www.major-j.com/cinema_information.php?id=M20170415020)でもオンライン購入が可能です。
特典として、『君はひとりじゃない』オリジナル便箋セットが付いてきますので、ご検討中の方はお早目のご購入をお勧めいたします。(※数量限定につき)
一応全国公開とはなっていますが、劇場数としては非常に限られている上、各劇場によって公開日が異なります。
今現時点で7月22日(土)から公開が開始されるのは、以下の5館のみ。
関東地区
シネマート新宿
YEBISU GARDEN CINEMA
横浜ニューテアトル
中部地区
名演劇場
近畿地区
シネマート心斎橋
この他にも公開が決定している劇場はございますが、現時点で「順次公開」としか発表されておりませんので、詳細につきましては各劇場にお問い合わせくださいませ。(劇場情報はコチラ)
監督を務めたマウゴシュカ・シュモフスカがベルリン国際映画祭銀熊賞(監督賞にあたる)を獲得した作品であるだけに、非常に期待が持てる内容となっていますが、日本での公開規模はかなり小さいようです。
2015年公開の作品ですから、日本での公開が大幅に遅れている時点で扱いの優先順の低さが窺い知れますね。
こういった良作が見逃される傾向が非常に強いのが日本の特徴的な部分であり、非常に残念な部分でもあるのですが、小規模でもなんとか長期間公開が続くことを願うばかりです。
映画『君はひとりじゃない』試写会はある?
映画『君はひとりじゃない』試写会は、2017年6月20日(火)と6月21日(水)に東宝東和試写室にて開催が予定されておりますが、すでに募集は締め切られており、今現在応募可能な懸賞は確認されておりません。
その他、新たな情報が入り次第、随時更新してまいります。
まとめ
ポーランド映画というと、アンジェイ・ワイダやロマン・ポランスキー(初期作品)、イエジー・スコリモフスキなどの名前が浮かびますが、世間一般的には馴染みがないというのが正気な所でしょう。
しかし、少々のとっつきにくさ(入りにくさ)はあっても、どれも名作揃いであることは間違いなく、今回のマウゴシュカ・シュモフスカ監督もそんな流れを汲んでいるだけに、かなり期待が持てると思われます。
注目の映画『君はひとりじゃない』は、2017年7月22日(土)より全国順次公開が開始されます。ぜひ劇場で、父と娘の愛と再生の物語をご覧ください!