映画『BOYS/ボーイズ』は特集上映「のむコレ3」内にて公開。
初恋という、言葉にするだけで懐かしくむず痒く、ほろ苦い思い出とともに忘れてしまった多幸感が押し寄せる一生に一度の出来事。
恋の始まりを描いた数々の素晴らしい映画群の中に、オランダからやってきた作品『BOYS/ボーイズ』が加わりました。
特集上映「のむコレ3」内で、シネマート新宿では2020年1月17日(金)より、シネマート心斎橋では1月2日(木)よりロードショーの映画『BOYS/ボーイズ』をご紹介します。
映画『BOYS/ボーイズ』の作品情報
【日本公開】
2020年(オランダ映画)
【原題】
Jongens
【監督】
ミーシャ・キャンプ
【キャスト】
ヘイス・ブローム、コ・サンドフリット、トン・カス、フェルディ・ストフミール
【作品概要】
『BOYS/ボーイズ』はオランダでテレビ映画として2014年に製作されましたが話題を呼び、急遽劇場公開された作品です。
シアトル国際映画祭で喝采を浴びたのちイギリス、フランス、アメリカ、台湾、韓国とアジアでも次々と劇場公開されました。
第33回オランダ映画祭でオランダ映画批評家賞と最優秀助演男優賞を受賞、最優秀主演男優賞にもノミネートされています。
出演は注目の若手俳優ヘイス・ブロームとコ・サンドフリットです。
映画『BOYS/ボーイズ』のあらすじとネタバレ
15歳の少年シーヘルは、寡夫の父親テオと兄のエディと3人で暮らしています。
エディは母を亡くしてから素行が荒れ気味で、父親に禁止されているバイクに夢中になっています。
地元の陸上競技チームに所属しているシーヘルは、親友のステフと共に全国選手権のリレーチームに選ばれました。
他に選ばれたのはトムとマークという少年たち。これから集中的に4人でトレーニングに励むことになります。
ある日の練習帰り、4人は近所の川に泳ぎに行くことにしました。夕食の時間になり帰ろうとしますが、マークだけは川に残ると言います。
トムとステフと自転車を走らせたシーへルでしたが、マークの元へ帰り、彼らはキスをしました。
シーへルは混乱して自分はゲイではないと主張し、マークはもちろんそうではないだろうと答えます。
川でのことがあった後も2人は同じチームとして友人同士。マークの家に遊びに行ったシーヘルは彼の幼い妹とも仲良くなりました。
ステフは地元の女の子キムとデートを始め、マークはキムの友達のジェシカという女の子が自分に好意を向けていることを知り、なんとなくデートをすることに。それでもマークに対する感情は複雑なままです。
ある週末、チームはトレーニングで遠征に出かけました。
夜、眠れないシーヘルとマークは海を見に出かけ、部屋に戻って互いの腕にキスをして休みました。その様子をステフは静かに見つめていました。
彼らが家に帰った後、ステフとキム、シーヘルとジェシカは移動遊園地でダブルデートをします。そこでシーヘルはばったりマークに会い、マークはシーヘルに彼女がいることに驚きます。
シーヘルはマークとの関係がバレるのを恐れ、ジェシカにぬいぐるみを取ってあげることで無視しようとします。
映画『BOYS/ボーイズ』の感想と評価
少年たちのみずみずしい恋心
ひと夏に経験する初めての恋、男性同士の間に生まれる恋慕を描いた映画というと、アカデミー賞脚色賞を受賞し世界各地で話題になった『君の名前で僕を呼んで』(2017)が挙げられますが、本作『BOYS/ボーイズ』が制作されたのはそれより3年前の2014年のこと。
大人への階段を上っている15歳の少年たちがみずみずしい官能と慈愛を持って映されており、海や林、川と夏の自然と呼応して輝く姿が非常に美しく、多幸感に溢れています。
刹那的に尖ってバイクを乗り回す兄エディと異なりいつも自転車にまたがるシーヘルやマークはもどかしそうですが、自分自身を受け入れて文字通り“(兄から)盗んだバイクで走りだす”ラストシーンはトニー・スコット監督のラブストーリー『トゥルー・ロマンス』(1993)の疾走感を想起させるようなもの。
ほろ苦いものではなく、自らを受容して新しい日常を送ることになるであろう“これから”の示唆、シーヘルとマークがどんな名称がつく関係であれ幸福をかみしめている姿に胸が高鳴ります。
劇中でマークが歌う『You Are My Sunshine』と音楽もストレートに愛を歌うもので、少年/少女時代にのみ訪れてきっと二度とはやってこないであろう純粋でまっすぐな喜びが描かれていることに感動を覚えます。
映像を支配する“青色”
本作の美を増長させているのは全編にわたって映像を支配している青色。
空の青、トレーニングチームのユニフォーム、インテリア、川、蒼然の夜…。
同性同士の恋愛を描いた映画には青が象徴的に使われています。
ウォン・カーウァイ監督の『ブエノスアイレス』(1997)のイグアスの滝や『ブロークバック・マウンテン』(2005)のデニムジャケット、『ムーンライト』(2016)の月夜に光る黒人少年の肌、海、『アデル・ブルーは熱い色』(2013)に『君の名前で僕を呼んで』(2017)の空、ポスター。
同性愛者であったイギリスの名匠デレク・ジャーマン監督の遺作は『BLUE ブルー』(1993)は全編が青色のみの映像です。
時代を超えて優しく柔く彼ら/彼女らを見守り続けている青色は、これからも様々な愛の形に寄り添っていくに違いありません。
まとめ
初恋、家族間での葛藤、自己受容と成長という普遍的なテーマを真剣に、美しい青色で覆って軽やかに綴った作品『BOYS/ボーイズ』。
長らく忘れていた迸るような幸福と疾走感がいつまでも胸に残り続ける作品です。
映画『BOYS/ボーイズ』は、特集上映「のむコレ3」内で、シネマート新宿では2020年1月17日(金)より、シネマート心斎橋では1月2日(木)よりロードショー。