田舎の炭鉱町から希望の鳥が羽ばたく“ブリティッシュ・ドリーム”
映画『リトル・ダンサー』は、1984年のイギリス北部のダラム炭鉱を舞台に、11歳の少年ビリー・エリオットが偶然目にした、“バレエ”のレッスンで踊ることに興味をもち、練習に参加するうちにその素質を開花させていく物語です。
バレエの指導者、ウィルキンソンはビリーの素質を見過ごさず、ロイヤルバレエ学校のオーディションを受けさせるため、無償でレッスンをしますが・・・。
本作は『めぐりあう時間たち』(2002)、『愛を読むひと』(2008)のスティーブン・ダルドリー監督が手掛けた、長編映画初監督作品です。
ビリー・エリオット役のジェイミー・ベルは、出演条件である「イギリス北東部の訛りを持つ、ダンスが得意な少年」を満たし、約2,000人の候補者から選ばれました。
映画『リトル・ダンサー』の作品情報
(C) 2000 Tiger Aspect Pictures (Billy Boy)Ltd.
【公開】
2000年(イギリス映画)
【監督】
スティーブン・ダルドリー
【脚本】
リー・ホール
【原題】
Billy Elliot
【キャスト】
ジェイミー・ベル、ジュリー・ウォルターズ、ゲイリー・ルイス、ジェイミー・ドラヴェン、アダム・クーパー、ジーン・ヘイウッド、スチュアート・ウェルズ、マイク・エリオット、ニコラ・ブラックウェル、コリン・マクラクラン、ジャニーン・バーケット、メリン・オーウェン
【作品概要】
スティーブン・ダルドリー監督は長年、舞台監督として培ってきた演出方法で、ビリーの心の機微を大胆かつドラマチックに作品に落とし込み、初監督にしてアカデミー賞監督賞にノミネートを果たします。
ジェイミー・ベルも得意なダンスと共に、卓越した演技力で15歳にして、英国アカデミー賞とロンドン批評家協会賞の主演男優賞を受賞しました。
見どころはそんなダルドリー監督の演出に、ジェイミーが応える形で繰り広げられた、ダンスシーンです。大人の騒動に巻き込まれ、不満を抱きながらも、反抗すらできない心情を見事に表現しています。
映画『リトル・ダンサー』のあらすじとネタバレ
(C) 2000 Tiger Aspect Pictures (Billy Boy)Ltd.
1984年ダラム炭鉱で働く作業員たちは組合が打ち出した、採炭効率の低い炭鉱を閉鎖することに反発して、ストライキ運動を敢行しています。
ビリーは炭鉱で働く父と兄が毎日ピリピリしている中、レコードプレーヤーで兄が大切にしているレコードを聴きながら、自己流でダンスを踊り、家のことや認知症の祖母の世話をしています。
兄のトニーは炭鉱のストライキでリーダー的な存在です。父は炭鉱ではもう石炭はでないと、落胆をしており炭鉱の再開はないと思ってます。
ビリーはピアノを自己流で弾くのも好きでしたが、父はその音色さえもうるさく感じ、ビリーに辛くあたります。ピアノの上には母親の写真が飾られていて、ビリーはジッとみつめます。
そんな、大人の騒動などどこ吹く風・・・。ビリーは毎週50ペンスもらい、ボランティアのボクシングクラブに通っていますが、練習熱心でないため強くも上手くもありません。
ある日、同じ建物のバレエ教室の生徒たちが、ボクシングクラブの一角を間借りしに来ます。バレエのレッスン場が、ストに参加している作業員の炊きだしを作っているためです。
ビリーは居残り練習をさせられますが、隣りでバレエのレッスンが始まると、ピアノの音色の方が気になり、身体はピアノのリズムでサンドバックを叩きます。
バレエのウィルキンソン先生に運動場の鍵を渡そうと、レッスンの様子を見ていたビリーは、同級生でウィルキンソンの娘デビーに踊ってみたら?といわれ、最初は嫌がっていたものの、そのうちバーをもって真似し始めます。
ウィルキンソンはビリーの体幹の良さに目をつけ、足の向きや角度を手取足取り教えはじめます。
レッスンの帰り道にビリーの足取りは弾んでいます。ウィルキンソンが彼に“50ペンス”払いなさいというと、ボクシングの分しかないと言います。ビリーは「楽しかった?」と聞かれますが、デビーの手前答えられませんでした。
ビリーの母は1年前に亡くなっていて、祖母はママはアステア(フレッド・アステア)のファンだったと話します。
デビーはビリーにバレエを勧めてみます。ビリーは「男がバレエなんて・・・」と、抵抗感をみせます。すると、デビーは“ウェイン・スリープ”のバレエは運動のようだと教えます。
そう聞いたビリーは翌週から、バレエのレッスンに参加するようになり、移動図書館でバレエ専門の本を“くすねて”用語やポーズを研究し、家でも練習するようになりました。
特に“ピルエット”と呼ばれる回転が、できるようになるため毎日毎日、練習を重ねてやっとできるようになった、ビリーはバレエを踊ることが好きになり、日常の動作が踊りになるほどのめりこみます。
以下、『リトル・ダンサー』ネタバレ・結末の記載がございます。『リトル・ダンサー』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
(C) 2000 Tiger Aspect Pictures (Billy Boy)Ltd.
ある日、ビリーの父ジャッキーがストライキのデモに参加している時、ボクシングのトレーナーがやってきて、“50ペンス”が厳しいなら無料で練習を見ると話しかけます。
ジャッキーは何のことかわからないでいると、ビリーが練習に来ていないことを知り、トニーに最近変わった様子がないか訊ねますが、“基本変わった子”だと返します。
翌朝、ビリーは朝食も食べずに家を出ていくと、ジャッキーは不審に思いボクシングの練習場へ行きます。するとそこで女の子たちに混じって、バレエのレッスンをうけるビリーをみつけてしまいました。
ビリーはジャッキーに呼ばれて、強制的に家に連れ帰らされます。そして、なぜバレエなどしているのか問い詰められます。
ジャッキーは男の子ならサッカーやボクシングなどをするものだと言いますが、ビリーはなぜ“バレエ”をしてはいけないのか、その理由が知りたいと迫ります。
しかし、ジャックは口ごもりその理由は、ビリー本人がわかっているはずだと怒りだし、答えないと殴るとまで言います。ビリーには何が言いたいのかはわかっていました。
「ゲイとはかぎらない。スポーツ選手に負けない人だっている!例えばウェイン・スリープみたいな!」と、自分がゲイではなくスポーツとしてやっていると答えます。
それでも偏見の拭えないジャッキーは、“50ペンス”を捻出してきた苦労を言いそうになり、バレエもボクシングもしないで、家で祖母の面倒を見ているよう言いつけます。
ビリーは父に反抗できず、バレエを辞めることを伝えにウィルキンソンの家を訪ねると、ウィルキンソンは“もったいない・・・”と、つぶやきます。
夕食を共にすることになったビリーは、デビーの父からウィルキンソンがビリーのことを“ジーン・ケリー”の再来だと絶賛していると聞きます。
そして、父が炭鉱で働きストライキ活動では、暮らしは大変だろうし、炭鉱が廃坑になるのも近いと話します。ビリーには深刻さがよくわからずにいましたが、石炭は採掘するのに金がかかり、採れる量が少なければ廃坑にならざるを得ないと教えます。
ビリーは家の近くまでウィルキンソンに送ってもらいます。車を降りる時に彼女はビリーにはバレエの素質があると、ロンドンのロイヤルバレエ学校の受験を勧めました。
そして、ニューカッスルでオーディションが行われると伝えますが、バレエを始めたばかりのビリーは無理だと答えます。
ウィルキンソンは学ぶのは入学してからで、要は素質であり表現力があるかないかだと言います。それでもビリーは父親の反対を恐れ、話せないと答えます。
ウィルキンソンが説得すると言っても無理だというビリーに、無償で個人レッスンをすると言います。そして、月曜日の早朝から受験に向けて練習がはじまります。
ウィルキンソンはビリーにレッスン初日に、“大切にしているもの”を持ってくるように言ってました。いくつか持ってきた中に、“18歳になった時のビリー”に宛てた、母からの手紙があり、ビリーはウィルキンソンに読むよう渡します。
メッセージは母としての愛にあふれた内容で、ビリーは暗唱していました。「すばらしい方だったのね」と、ウィルキンソンは言いますが、ビリーは“普通の母親”だと答えます。
ビリーはトニーの持っていた“アイ・ラブ・トゥ・ブギ”のカセットを課題曲に、レッスンを開始します。
(C) 2000 Tiger Aspect Pictures (Billy Boy)Ltd.
ある日の明け方前、トニーが支度をして出かけようとしますが、工具箱からハンマーを持ち出し、それをジャッキーにみつかり、何をするつもりなのか問い詰められます。
トニーは成り行きまかせではコケにされると、息巻き仕返しすると答えますが、リーダー格のトニーは警察からマークされているし、暴力はダメだとジャッキーは制止します。
しかし、トニーはそんな父に反発し、母が亡くなってから腰抜けになったとなじると、ジャッキーはトニーを殴ってしまいます。
一部始終を見ていたビリーは、家族の中で何かが変わろうとしている現実に不安を覚え、バレエの練習に身が入らなくなります。
練習不足なビリーをウィルキンソンは見抜き、“努力不足”や“集中力の欠如”と責め立てます。ビリーは苛立ち彼女の指導を命令だと反発し、“叶わなかった自分の夢”を押し付けていると、暴言を吐いてしまいます。
たまらずウィルキンソンはビリーの頬を叩いてうつむきます。ビリーは我に返ると無言で、彼女の肩にうなだれます。
彼女はやり場のない苛立ちを抱えているビリーを理解し、彼の襟足をなでながらお互いに冷静になる時間を経て、練習を再開します。
レッスンの帰り道、ビリーはウィルキンソンのカーステレオで、“白鳥の湖”の音楽とその悲恋の物語を聞きます。
ビリーのレッスンは仕上げを迎え、いよいよオーディション前日になります。ところがストライキと警察隊との攻防は激化し、トニーはとうとう逮捕されてしまいます。
オーディションどころではなくなったビリーは、ウィルキンソンの家に電話をしますが、出たのがデビーとは知らず、オーディションに行けないと伝えます。
ウィルキンソンは約束の時間に来なかったビリーの家を訪ねると、釈放されたトニーとジャッキーと共に帰宅してきたところに出くわします。
ウィルキンソンはロイヤルバレエ学校のオーディションがあったことを話し、ジャッキーの知るところになります。ジャッキーは無言でしたが、ビリーはバレエダンサーになりたいと意思の表明をします。
トニーは彼女に11歳の子供に変なことを吹き込むなと抗議し、彼女は暴力と酒浸りな環境にいる方が可哀そうだと反論し、ビリーには将来有望な才能があると訴えます。
ウィルキンソンはトニーが侮辱的なことをまくしたてたため、出て行ってしまいました。ビリーは再び八方ふさがりになってしまい、クリスマスイブの晩を迎えます。
ジャッキーは妻のピアノを破壊し、暖炉の燃料にして悲しみに暮れ、ビリーは最悪なクリスマスだと、親友のマイケルに話します。
マイケルはどこかの劇団に入って、家を出たらどうかと提案します。そして、ビリーのかじかんだ手を自分の懐に入れて温めてあげました。
ビリーはマイケルに“ゲイ”なのか訊ね、バレエをやっているけど自分はゲイじゃないと言うと、マイケルはビリーの頬にキスをして、誰にも言わないでと頼むと、ビリーは微笑みながら「当たり前だ」と言って、ボクシングジムに行こうと誘います。
ビリーはマイケルにチュチュを渡し、バレエを教えていると、酒場から帰ってきた、ボクシングのトレーナーが、灯りがついていることに気がつき、2人の様子を見てしまいます。
そして、一緒にいたジャッキーに知らせて中に入ります。ビリーは父の姿に気がつきますが、今度は逃げも隠れもしません。逆に今まで習得したダンスの全てを、ジャッキーに披露します。
その姿を見たジャッキーは黙って外に出てどこかに向かい、ビリーは追いかけてパパと叫ぶと、家に帰るよう言います。
ジャッキーはウィルキンソンの家を訪ねて、ロイヤルバレエ学校のことを聞きます。彼女は才能が認められれば、学費は奨学金が出ると話し、旅費が問題なら自分が出すと言います。
そんな彼女にジャッキーは保護者面するなと言ってしまいますが、ウィルキンソンはいい加減に意地を張るなと反論します。
ジャッキーは彼女にこれまでのことを感謝しつつ、学校に行かせるかどうかは、親である自分が決めなんとかすると宣言します。
ビリーのベッドサイドに座るジャッキーを不安げな顔でみつめるビリー、ジャッキーは何も言わず優し気な表情で見つめ返すだけでした。
(C) 2000 Tiger Aspect Pictures (Billy Boy)Ltd.
翌日、ジャッキーは“スト破り”をして、作業員登録をして炭鉱に戻ろうとしますが、送迎のバスに乗っているところを、トニーにみつかってしまい、彼は掘削場まで追いかけてきて、仲間を裏切るのかと責め立てます。
ジャッキーは炭鉱に未来はなく自分達はしかたないが、11歳のビリーには才能があるかもしれない、ビリーの夢を叶えてあげたいと泣き崩れます。
トニーはジャッキーの気持ちを受入れ、金の工面はなんとかするから、スト破りだけはしないでほしいと懇願し、家に連れて帰ります。
そして、トニーもビリーに言います。母が生きていたらきっとオーディションに行かせただろうと・・・。
ボクシングジムのトレーナーは貯めていた、練習代の50ペンスをビリーにカンパします。婦人会も50ポンド集めると協力的でしたが、困難なことは目に見えています。
ジャッキーは宝石箱を取り出して、泣きながら妻の貴金属を手にします。それを質屋にもって行き換金します。
こうしてビリーはジャッキーと2人で高速バスに乗り、ロンドンのロイヤルバレエ学校のオーディションに向いました。
会場には何年もオーディションに向け、努力を重ねた受験生がいます。ビリーはとても場違いな感じを受け、物怖じしてしまい実力を出し切れずにいました。
実技の試験が終わると、妙に馴れ馴れしい子が声をかけてきて、ビリーは不安や困惑でイラ立ち、その子を殴ってしまい、試験の結果に影響すると告げられます。
親子面接が始まりますが、ビリーには積極性もアピール性もありません。ウィルキンソンからの推薦状には、高い評価がされていて、家の事情も記されていると伝えられます。
ジャッキーは面接官に技術的な面と同様に、学業もハイレベルが求められるため、家族の全面的なサポートが必要があると、そうする覚悟があるか確認されます。
面接が終わり退室しようとしたとき、1人の面接官がビリーに、踊っている時の気持ちを問いかけます。
ビリーは踊り出すと何もかも忘れ、全てが消えると自分が変わっていき、体の中が炎えあがると・・・ボクはただ宙を飛ぶだけ、鳥のように電気のように・・・そう電気のように。
こう答えたビリーに気をつけて帰るよう言い、ジャッキーには激励の言葉をかけます。
ビリーは受かる気がまったくしませんでした。時が経ったある日、エリオット家に郵便が届きます。待ちに待ったロイヤルバレエ学校からの通知です。
家族はビリーが帰宅するのを待ち、ビリーは封書を受け取ると、別室へ入っていきます。そして、封を開けて中を確認すると飽和状態になってしまいます。
ビリーが部屋から出てこないので、ジャッキーが扉をあけると、半泣き状態のビリーは家族をみつめ「受かった」とつぶやきます。
旅立ちの日、ビリーはバレエのレッスン場へ行き、ウィルキンソンに合格の報告をします。ビリーは寂しくなると弱音を吐きますが、「あなたには大きな未来があるの、飛び出していきなさい。」と励まします。
ビリーはマイケルの家を訪ねますが、彼は出てきません。ところが少し離れると出てきてビリーを呼びます。ビリーはマイケルの頬にキスをして「またな」といって去ります。
10数年後、25歳になったビリーは、『白鳥の湖』のプリンシパルとして舞台に立ちます。父ジャッキーと兄トニーが劇場に駆けつけると、隣りの席にはマイケルもいます。
白鳥の湖のオーケストラに合わせ、鳥のように舞うビリーの姿を観たジャッキーは、感慨深く眼に涙を浮かべ声を震わせました。
映画『リトル・ダンサー』の感想と評価
(C) 2000 Tiger Aspect Pictures (Billy Boy)Ltd.
炭鉱の周囲では、大人達が死活問題の闘争に明け暮れ、ビリーだけでなく子供たちはおざなりになっていますが、クラブ活動で見守る体制になっていました。
町全体が混沌と疲れきっている中、“ダンスのレッスン”が悠長にも見え、そのギャップが未来のない大人と、未来のある少年を投影していました。
このイギリス国内の炭鉱各地でおきたストライキ運動は、1984年から1985年にかけて実際に起きたできごとです。
この炭鉱ストライキを題材にした映画には『パレードへようこそ』(2014)、『ブラス!』(1996)などもあります。
『パレードへようこそ』はロンドンで暮すゲイやレズビアン達が、炭鉱ストを支援するため募金を募りますが、差別的な扱いをされた実話が元の映画です。
『ブラス!』は廃坑から10年経った、炭鉱の町が音楽を通じてどのように、再生していくかを問う映画です。
『リトル・ダンサー』には、1年にも及ぶ“炭鉱ストライキ”という社会問題と、同性愛者たちによる権利の主張が活発になってきたころと重なり、性別を超えたヒューマニズムへの希望が込められているように感じます。
また、炭鉱の町の未来を考えた時、どう現状と向き合い生活を立て直していくのか?『ブラス!』と通じる面も垣間見れました。
同性愛者の悲恋『白鳥の湖』
本作のラストでは、ビリーがプリンシパル(主役)に昇格した姿で、父と兄に感謝の気持ちを伝えます。
加えてゲイだとカミングアウトしたマイケルには、同性愛者の悲恋を描いた『白鳥の湖』で踊ることで、ビリーのマイケルへの友情が感じられました。
このラストシーンのビリー役は、英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパルだった、アダム・クーパーが起用されています。
彼は実際に上演された、マシュー・ボーン作『白鳥の湖』のオリジナルキャストで、ザ・スワン(主役)を踊りました。アダム・クーパーも11歳でダンスを始め、16歳でロイヤルバレエ学校に入学し、才能を開花させてきました。
女性を魅了しダンサーが憧れる“ダンサー”
ビリーの友達でウィルキンソンの娘、アビーは“ウェイン・スリープ”はスポーツ選手のようなダンサーだと表現し、ウィルキンソンはビリーを“ジーン・ケリー”の再来と称賛しました。
ビリーはどんなダンサーを目指したのでしょうか?ビリーの亡くなった母は“フレッド・アステア”のファンだったと、聞いていた彼は純粋にアステアのようなダンサーになりたいと思ったことでしょう。
“ジーン・ケリー”はアステアと共に、ブロードウェイの全盛期を支えたダンサーで、2人は終生にわたって尊敬し合っていました。
ウェイン・スリープは幼い頃、フレッド・アステアやジーン・ケリーに憧れて、タップダンスに力を入れました。そして、彼もまた条件を満たした才能で奨学金を受け、ロイヤルバレエ学校で学びます。
ウェイン・スリープは、イギリスが誇る伝説のバレエダンサーであり、『リトル・ダンサー』のビリーは、彼がモデルだと言われています。
まとめ
(C) 2000 Tiger Aspect Pictures (Billy Boy)Ltd.
映画『リトル・ダンサー』は、炭鉱の歴史に幕を下ろし始めた1984年が舞台で、イギリスの産業を支えてきたという作業員の誇りが、1年ものストライキへと突き進ませました。
それに見合った報酬と保障があって当然と考えますが、現実は時代と共に急激に変化し、庶民に順応を求めます。大人達はその急激な波に右往左往と飲まれていました。
仲間同士が疑心暗鬼になり、大人の意地の張り合いは、未来のある子ども達から夢や希望、才能さえも摘もうとしていました。
幸いビリーの才能をウィルキンソンが見出したことで、ダンサーという夢に向わせます。その熱意が頑固な父と、過激な行動に向っていた兄に光を射し、家族の絆を固く結ぶ物語でした。
14歳のジェイミー・ベルと「ハリー・ポッター」シリーズで、ロンの母親役でお馴染みの、ジュリー・ウォルターズとのダンスシーンは、楽しさを見出した瑞々しさがありました。
ビリーのダンサーへの飛躍は、ジェイミーがこの映画のオーディションを受け、俳優として飛躍したことと重なります。