2015年にヨーロッパで起こった無差別テロ「タリス銃乱射事件」。
現場に居合わせ、犯人を取り押さえた3人の若者の幼少時代から事件に遭遇するまでの半生を描く実話がモチーフの作品です。
映画『15時17分、パリ行き』は、2018年3月1日より公開!今回はあらすじと見どころを紹介します。
CONTENTS
1.映画『15時17分、パリ行き』の作品情報
【公開】
2018年(アメリカ映画)
【原題】
『The 15:17 to Paris』
【監督】
クリント・イーストウッド
【キャスト】
アンソニー・サドラー、アレク・スカラトス、スペンサー・ストーン、ジェナ・フィッシャー、ジュディ・グリア、レイ・コラサニ、P・J・バーン、トニー・ヘイル、トーマス・レノン、ポール=ミケル・ウィリアムズ、ブライス・ゲイザー、ウィリアム・ジェニングス
【作品概要】
2015年8月21日、フランスのパリへ向かう高速列車「タリス」の中で、銃と刃物で武装した男に立ち向かった3人の若者。
3人の少年時代のエピソードや、事件に遭遇することになるヨーロッパ旅行の過程などを交えて、無差別テロを止めた勇気ある若者の実話を描くヒューマン・ドラマ。
監督は『アメリカン・スナイパー』や『ハドソン川の奇跡』の巨匠クリント・イーストウッド。脚本は第90回アカデミー賞脚色賞にノミネートされた新人脚本家のドロシー・ブリスカル。
2.アメリカの良心と呼ばれるクリント・イーストウッド監督
参考映像:初監督作品『恐怖のメロディ』(1971)
クリント・イーストウッド(Clint Eastwood)は、1930年5月31日生まれにカルフォルニア州のサンフランシスコ出身。
陸軍除隊後にロサンジェルス・シティ・カレッジにて演技を学び、1964年に公開された、セルジオ・レオーネ監督の『荒野の用心棒』が世界的に大ヒットを記録し、一躍知名度を上げます。
1971年公開のドン・シーゲル監督の『ダーティハリー』で、汚れ仕事ばかりを任されるアウトローな刑事ハリー・キャラハンを演じ、世界的なトップスターに上り詰め、その後、「ダーティハリー」は人気シリーズとなります。
監督を務めた作品は、1971年の映画『恐怖のメロディ』で初監督デビューを果たします。
その後も『荒野のストレンジャー』(1973)や『ガントレット』(1977)、また80年代に入ってからは、『ペールライダー』(1985)や『バード』(1988)など、時代ごとに秀作を生み出し、監督としての実力をつけてきました。
参考映像:アカデミー監督賞『許されざる者』(1992)
やがて、1992年の監督作品『許されざる者』で、見ごと第65回アカデミー賞の作品賞・監督賞ほかを受賞しました。
00年代に入ってからもイーストウッド監督の勢いはとどまることを知りません。
2003年の監督作品『ミスティック・リバー』で、人間の内面に宿る心の闇を描き、第56回カンヌ国際映画祭に正式出品され高い評価を得て、第76回アカデミー賞の監督賞と作品賞にもノミネートされました。
また、2004年の監督作品『ミリオンダラー・ベイビー』では主演も務め、第77回アカデミー監督賞と作品賞を受賞。そのほか主演男優賞にもノミネートされています。
2006年には硫黄島の戦いを、日米それぞれの視点から描いた2部作『硫黄島からの手紙』『父親たちの星条旗』を製作し高評価を得ます。
2008年の監督作品『チェンジリング』は、第61回カンヌ国際映画祭でプレミア上映され、パルム・ドール賞にノミネートされ、特別賞を受賞しています。
近年では、2014年の映画『アメリカン・スナイパー』や2016年の『ハドソン川の奇跡』など、実話を題材にした作品を多く発表しており、87歳を迎えた現在でも精力的に映画を制作しており、いずれも高い評価を得ています。
3.映画『15時17分、パリ行き』のあらすじ
2015年8月21日、パリ行きの特急列車内で、イスラム過激派の男が自動小銃を発砲、554人の乗客全員をターゲットにした無差別テロに、乗客は絶望と恐怖を感じて怯えます。
車内を極限の緊張状態が支配する中で、休暇を利用して旅行中だった、スペンサー・ストーン、アレク・スカラトス、アンソニー・サドラーの幼なじみ3人が、武装テロに立ち向かいます。
銃と刃物で武装した危険な男を相手に、3人はどのようにして戦うのかったのか。そして、命がけの行動に出た、幼なじみ3人の絆とは…。
4.『15時17分、パリ行き』の見どころ
実際に起きた無差別テロ事件を映画化
本作は、2015年8月21日に実際に起きた無差別テロ「タリス銃乱射事件」を描いています。
554人の乗客を乗せた、アムステルダム発パリ行きの高速国際鉄道タリス内で、イスラム過激派の犯人が自動小銃AK-47を発砲しました。
3人が負傷しましたが、偶然居合わせた米海兵隊員のアンソニー・サドラー、米オレゴン州兵のアレック・スカラトス、大学生のスペンサー・ストーンの3人の若者によって犯人は取り押さえられます。
スペンサー・ストーンは、その際にカッターナイフで切りつけられ、頭や首などに多数の傷を負い。親指は切断寸前という重傷を負いました。
欧州テロ対策当局の発表によると、男は多くの弾薬を持っていた為、多くの死傷者が出る可能性もありました。
3人の若者が無差別テロを食い止めたとして、多くの報道機関がこのニュースを報じ、フランス政府から最高勲章のレジオン・ドヌール勲章を授与、ホワイトハウスにも招待されるなど、その勇気ある行動が称賛されました。
主演は実際にテロを阻止した3人の若者
本作の最大の見どころが、事件の当事者を本人たちが演じているという点です。
当初3人はテクニカル・アドバイザーとして参加しており、彼らの話を受けて俳優が演技をするという形でオーディションを進めていました。
イーストウッド監督は、3人のオーディションを進める中で「3人の若者たち自身に演じてもらうことこそ、もしかすると面白い試みなのでは?」という発想を得ます。
映画『ハドソン川の奇跡』で、実際の現場にいた人々をエキストラとして参加させた、イーストウッド監督ならではのリアリティの解釈と、発想法です。
3人は当初、不安がっていたそうですが、イーストウッド監督の「ほかの誰でもない、自分自身でいること」という希望を伝えられ了承しました。
ハリウッド映画史上初とも言える試みに、イーストウッド監督はこのように述べています。
「これがうまくいくかどうかなんて分かりませんでした。ただこの3人と一緒に歩みたいと感じただけ。そしてその決断は連鎖し、最終的に多くの実在の人物たちが本作には登場しています。特急列車タリスの人々も含め、誰もがあの時に戻り、役に立とうとしてくれました」
本作では、主演の3人に加え、事件発生時に実際に特急列車タリスに居合わせた乗客たちも出演、事件が起きた場所で撮影されています。
イーストウッド監督は、主演3人の演技のリアリズムについても語っています。
「彼らの持つリアリティをそのまま映画に採り入れたら面白いんじゃないかとね。彼らがリラックスして、映画で描かれる出来事を追体験すれば、プロの役者に負けないリアリティを再現してくれるんじゃないかと思った。実際、その通りの結果になったよ」
リアリティを追求するだけであれば、俳優にもそれに近いことは可能だったのかも知れません。
しかし、本人がふたたび同じ状況を体験することで、それは再現するという行為すら超えて、人間の本質にあるものを浮かび上がらせようと
イーストウッド監督が試みたのではないでしょうか。
どのような手応えを感じたのかスクリーンでの様子を早く見てみたいですね。
まとめ
現在、無差別テロは世界的な脅威になっています。
近隣諸国との緊張状態が続く日本の現状を考えると、本作で描かれている事は、決して遠い国の特別な話ではありません。
平和な日常が無差別テロによって、一瞬で破壊される可能性は常にあり、イーストウッド監督自身「我々は狂った時代に生きている」と感じており、大量の武器を所持していた犯人を、普通の若者たちが止めたこの事件を映画化した意義を、以下のように語っています。
「ろくでもない現代において、素晴らしい結末を迎えた事件だからこそ、伝える価値があると思ったんだ」
イーストウッド監督は、どのようなメッセージをこの映画に込めたのでしょう。
また世界的な脅威を前にした我々は、この作品から何を感じるのでしょうか?
ハリウッドの常識を覆した方法で、徹底的なリアルさにこだわった『15時17分、パリ行き』。
2018年3月1日より全国公開されます。