3月3日(土)よりシアター・イメージフォーラム他にて全国順次公開となる映画『デイヴィッドとギリアン 響きあうふたり』をご紹介します。
アカデミー賞受賞作『シャイン』のモデルとなったピアニスト、デイヴィッド・ヘルフゴットのリアルライフと、妻ギリアンとの夫婦の絆を描く感動的なドキュメンタリー映画です!
1.『デイヴィッドとギリアン 響きあうふたり』の作品情報
【公開】
2018年(ドイツ・オーストリア・スウェーデン合作映画)
【原題】
Hello I Am David!
【監督】
コジマ・ランゲ
【キャスト】
デイヴィッド・ヘルフゴット、ギリアン・ヘルフゴット
【作品概要】
11年の闘病生活を経て奇跡の復活を果たした天才ピアニストで、映画「シャイン」のモデルとなったデイヴィッド・ヘルフゴットのリアルライフと、妻ギリアンとの深い夫婦愛を追ったドキュメンタリー。
2.映画『デイヴィッドとギリアン 響きあうふたり』のあらすじ
スウェーデンのエンブルー・コンサートホール、ドイツのシュトゥットガルト・リーダーハレといった会場で、ピアニスト・デイヴィッド・ヘルフゴットを迎えたシュトゥットガルト交響楽団のヨーロッパ・コンサートツアーが開催され、デイヴィッドは観客から大きな喝采を受けていました。
彼は、観客や、通りかかっただけの人にも次々と声をかけ、自己紹介して、握手をしたり、ハグしたり、時にはキスまでしながら、相手の名前を尋ねたり、出身地を聞いたりします。時には人生哲学を語ることも。
側にはいつも妻のギリアンが付き添っています。
デイヴィッドは、幼少期より神童とうたわれ、数々のコンクールで入賞し、アメリカ留学を勧められますが、父が反対し、断念、その後、父の反対を振り切って、世界屈指の音楽大学、英国王立音楽大学に特待生として入学。
音楽の殿堂ロイヤル・アルバート・ホールでのコンサートは大成功となりますが、直後に精神を患ってしまいます。
11年間も精神病院に入院し、その間音楽を断たれていたため、ピアニストとしての再起は不可能だろうと思われていました。
しかし音楽の力と1984年に出会った妻・ギリアンの深い愛と助けにより、再び人生とコンサートのステージにカムバックを果たしたのです。
よそのお宅の納戸や引き出しを覗きたがったり、コカ・コーラに執着したり、ギリアンがインタビューを受けている時にピアノを弾きたがって駄々をこねたりする姿は、聞き分けの悪い子どものようにも見えます。
「困った人ね」と言いながら落ち着いて対応しているギリアンはインタビューに次のように答えています。
「彼はピアノの稽古中は川や木や鳥を想像するの。頭の中には音符ではなくその曲のイメージを思い浮かべている。
如何に難しい曲を弾いているか自覚はしていない。この世界を子どものように生きているのよ」
指揮者のマライアス・フォレムニーは「はじめて演奏を聴いた時、素晴らしく澄んだ音色に感動しました。
彼の音楽を聞かずに、彼に対して偏見を持つべきではない。音楽業界が彼を異端児扱いするのは問題だと思います」と語っています。
心理療法士のラルフ・バレスは「プロの心理療法士ですが、彼を患者として見たことはありません。
この世界には彼のようなアウトサイダーが必要。彼のような独創的な人が足りないのです」と述べています。
一風変わった天才ピアニスト像が浮き彫りにされますが、彼の魅力はそれだけではありません。
コジマ・ランゲ監督は、デイヴィッドとギリアン夫婦に密着、交流しながら、プライベートから演奏まで、彼らの様々な魅力を画面に刻みつけていきます。
2.映画『デイヴィッドとギリアン 響きあうふたり』の感想
ピアニスト・デイヴィッド・ヘルフゴットをモデルにしたスコット・ヒックス監督の映画『シャイン』は、1997年の第69回アカデミー賞7部門にノミネートされ、デイヴィッドを演じたジェフリー・ラッシュが主演男優賞を受賞しています。
日本でも大ヒットを記録しました。
『シャイン』でデイヴィッドがギリアンと出逢うのは物語の3分の2を過ぎた頃でした。
参考映像:『シャイン』(1996)
そういう意味では、本作『デイヴィッドとギリアン 響きあうふたり』のドキュメンタリーの方は、「その後のヘルフゴット夫妻」をみつめた作品と言ってもいいでしょう。
まず、二人がとても幸せそうなのに心打たれました。そして、デイヴィッドの近くにいると、人々が決まって笑顔になるのです。
コジマ・ランゲ監督が街中ではよそよそしいと感じたドイツの人々でさえ、シュトゥットガルト・リーダーハレのデイヴィッドの素晴らしい演奏に魅了され、陶酔したような、心がフルに満たされたような、幸せいっぱいの笑顔を浮かべます。
それだけでなく、今度は観客が舞台に歩み寄って、握手を求めるのです。
映画の中で、ギリアンの息子のスコットさんが、体調を崩したギリアンの代わりに一週間、デイヴィッドのコンサートツアーに同行した時の話しをしています。
人見知りで家族の中で最もデイヴィッドに馴染んでいなかった彼が、デイヴィッドと行動を共にすることで、優しい人柄に触れ、演奏を聴いて涙を流し、彼ほど優しく素晴らしい男はいないと語るのです。
観ていて筆者も同じような感覚を憶えました。映画を観るという行為は、映画と旅をすることと言い換えられるかもしれません。
まさにスコットさんと同じように、デイヴィッドに魅了されていったのです。
映画の中で人々が見せる笑顔と同じ笑顔をこの作品を観て、浮かべていたのです。
ギリアンのインタビューも、興味深い発言が多数ありますが、中でも、「彼に対する愛も深まっていったの」と発言したあと、その言葉に自ら驚き、恥じらう様子がとても素敵でした。
映画を見終わった時、あなたもデイヴィッド・ヘルフゴットの人柄に心打たれているに違いありません。
そして、ギリアンとの深い愛を感じ取ることでしょう。
是非、映画館でご覧になり、感動を味わってください!
3.まとめ
コジマ・ランゲ監督は、ハンブルク州立オペラ劇場の児童合唱団のメンバーとして、若い頃から世界中を旅して回っていたのだそうです。
監督デビュー作品は、4人のアルゼンチン出身の音楽家を扱ったドキュメンタリー映画『CHAMAMÉ』(2006)。数多くの映画祭で上映され国際的な注目を集めました。
本作においても演奏シーンは臨場感に溢れ、とりわけドイツのシュトゥットガルト・リーダーでの演奏は圧巻!です。
映画を観た多くの人が、デイヴィッド・ヘルフゴットが奏でる音色に心を持っていかれることでしょう。
映画『デイヴィッドとギリアン 響きあうふたり』は3月3日(土)よりシアター・イメージフォーラム他にて全国順次公開されます!