数々のアダルトビデオ、アントニオ猪木を追ったドキュメンタリー『猪木道』の制作に関わってきた小路谷秀樹監督が次に手がけた作品は、なんと「UFO」でした。
「月面異星人遺体動画」に触発された小路谷監督が、UFO存在の真偽をUFOを呼べる男とUFOの存在を信じる人びとを取材した、ドキュメンタリー映画『虚空門 GATE』。
しかし、本作は誰も予想していなかった展開が繰り広げられていきます。
UFOはいるのかいないのか、その先に繰り広げられる衝撃の展開とは?今回は前代未聞のUFOドキュメンタリー『虚空門 GATE』を紹介します。
映画『虚空門 GATE』の作品情報
【公開】
2019年(日本映画)
【製作・監督・撮影・編集】
小路谷秀樹
【キャスト】
庄司哲郎・林泰子・竹本良・巨椋修・大森敏範・宇宙大使くん
【作品概要】
アダルトビデオやプロレスなど様々なドキュメンタリー作品を制作してきた小路谷秀樹監督が、UFOを追うドキュメンタリー映画に臨み、一般映画デビューとなる作品。
小路谷監督は月面異星人遺体動画に触発され、真偽をUFO研究家に訪ねますが、動画は偽物であるという意見を多数得ます。小路谷監督は、それをきっかけにUFO遭遇体験者への取材を始めますが…。一般人の常識を問う『虚空門 GATE』は前代未聞のUFOドキュメンタリーです。
映画『虚空門 GATE』のあらすじとネタバレ
「月面異星人遺体動画」に触発された小路谷監督は、「UFOの映像を撮影したい」という思いの元UFOの調査を始めます。
そのため、全国のUFO遭遇の体験者に取材を重ねますが、UFOを断定するような情報は、なかなか得ることができませんでした。しかし、調査を続ける中で「UFOを呼べる男」庄司哲郎と出会います。
庄司は俳優で芸術家です。小路屋監督は庄司と一緒にUFO調査を始めたところ、調査中に大量のUFOが出現。他の同行者たちも、その姿を確認しました。
庄司はスマートフォンでのUFO撮影に成功しますが、小路谷監督のカメラにはUFOは写っていませんでした。
数ヶ月後、UFO撮影のリベンジを果たしたい小路谷監督は、再びUFOの撮影に向かいます。しかし、同行予定の庄司は現れませんでした。
そこに、覚醒剤所持の容疑で庄司が逮捕されたという連絡が入り、そのことはワイドショーでも取り上げられました。
庄司は冤罪を主張しますが、判決は有罪。それには、庄司の恋人の林泰子やアパートの大家も動揺します。しかし、有罪の可能性が高い庄司哲郎のことを、林は庇い続けました。
7ヶ月後、庄司は出所し、アパートの大家やUFO研究家仲間に謝罪に向かいます。そして、愛猫に一番の謝罪の気持ちを表明。
庄司の覚醒剤所持容疑の真偽は分からないままだったにも関わらず、UFO研究家仲間と林は庄司の無罪を信じ続けました。
その後、小路谷監督と庄司は再びUFOの撮影を試みます。庄司は次々とUFO写真の撮影に成功しますが、調査の最中、庄司に新たな驚愕の新事実が発覚します。
当初、UFOを追っていた本作は次第に「UFOを呼べる男」庄司哲郎を追うドキュメンタリーへと変貌を遂げていきます。
映画『虚空門 GATE』の感想と評価
そもそも何の話だったのか?
本作品『虚空門 GATE』は、“いったい、これは何の話なのか?”と、途中から困惑する観客も多いのではないでしょうか。
UFOを追うドキュメンタリー作品として始まったはずが、庄司の逮捕をきっかけに「UFOを呼べる男」庄司哲郎を追うドキュメンタリーへと変貌していきます。
いったい本作で描かれていたことは何だったのかと言えば、「UFOがいるかいないか?」「庄司哲郎は有罪か無罪か?」「庄司哲郎はインチキか本物か?」ということではありません。
では、何が描かれていたのか。それは、二元論の影響が全く及ばない神秘的な世界の存在でした。
庄司が冤罪ではなかったとしても、撮影していた写真が全てインチキだったとしても、庄司には林からの無償の愛が注がれ続けていました。
また、庄司と彼の愛猫との間には強固な絆が存在し続け、富士山での撮影では30年に一度と言われるような絶景に、偶然に出会いました。
そして、沖縄では庄司達の元に大量のUFOが出現し、小路谷の撮影も成功へと至りました。
本編を見ている最中には、どうしても「庄司は善なのか?悪なのか?」という目線で見てしまいがちですが、次第に「善か?悪か?というような二元論」が及ばない、神秘的な世界の存在を実感していくことは間違いないでしょう。
観客に問う神秘的な世界
本作で問われていたのは、説明することができない神秘的な世界の存在。このことは、2016年公開の森達也監督の映画『FAKE』でも同様に示唆されていたことです。
『FAKE』においても、印象に残るのは佐村河内夫妻の絆でした。「真実か?偽りか?」という二元論の当てはめられた世界を超越する夫婦の絆は、『虚空門 GATE』における庄司と林の姿にも重なります。
現代の社会では、どうしても「善か?悪か?」「真実か?偽りか?」など、単に二元論で物事の判断がされがちです。
『虚空門 GATE』は、観客に二元論の及ばない世界の存在を認知することができるかどうか?ということを問いかけます。
映画の最後には、沖縄で大量発生したUFOの映像と、エンディング曲(HumanCube『光と闇の物語』『キオク』)が、非常に象徴的です。
『虚空門 GATE』のポスターには「UFOなんて あたりまえに飛んでいるよ」と示されています。まさに、二元論の外にあたり前に存在する世界に目を向けることができるかどうかを、示唆しているのでしょう。
まとめ
今回は小路谷秀樹監督による、前代未聞のUFOドキュメンタリー『虚空門 GATE』を紹介しました。
「月面異星人遺体解剖動画」から始まった本編は、「UFOを呼べる男」庄司を通して、私達の持つ二元論的な価値観への問題定義へと発展していきました。
まさに、社会の持つ規定の価値観への問題定義といっても過言ではありません。
2019年、最大の問題作と評されることも多い『虚空門 GATE』ですが、その評価にもふさわしい衝撃作でした。