美術史上最も異彩を放つ奇想ワールドは誰のために何のために描かれたのか?
没後500年を迎えた今なお、謎に満ちた画家ヒエロニムス・ボス。
ボッシュと推察されている肖像(1560年頃)
日本の美術ファンからも人気のある画家ヒエロニムス・ボス(ボッシュ)。
同時代の初期フランドル派とは一線を画した作風は、シュルレアリスムの特徴でもある幻想的な雰囲気を想起させてくれます。
また彼の描いた世界観は、後世のピーテル・ブリューゲルを始めとする画家に大きな影響を与えているのはあまりに有名な話。
ドキュメンタリー映画『謎の天才画家ヒエロニムス・ボス』は、プラド美術館の全面協力を得て画家の素顔に迫る作品です。
今作では美術ファンに愛され続けるボッシュの代表作にして、最大の問題作「快楽の園」の真相にも迫っていく…。
1.映画『謎の天才画家ヒエロニムス・ボス』の作品情報
【公開】
2017年(スペイン・フランス映画合作)
【原題】
El Bosco. El jardín de los sueños
【撮影・監督】
ホセ・ルイス・ロペス=リナレス
【キャスト】
ラインデルト・ファルケンブルグ、オルハン・パムク、 サルマン・ラシュディ、セース・ノーテボーム、ルネ・フレミング
【作品概要】
映画製作をロペス=リ・フィルムズが行い、スペインのマドリードにあるプラド美術館の全面協力で完成させたドキュメンタリー映画。
2.映画『謎の天才画家ヒエロニムス・ボス』のあらすじ
2017年にボスの没後500年を記念したイベントが世界中で開催されました。
プラド美術館全面協力のもと撮影され、いまだ決定的な解釈のなされていないボスの最も有名で魅力的な作品「快楽の園」が世界中のクリエイターに与えた影響を検証し、謎に満ちたボスという作家の創作の謎に迫ります。
幻想的な世界に身をゆだね、人生の「天国」と「地獄」に想いを馳せる90分間です。
3.画家ヒエロニムス・ボスとは?
美術ファンに人気のある三連祭壇画「快楽の園」
ヒエロニムス・ボス(Hieronymus Bosch)は、1450年頃に生まれ、1516年8月9日に亡くなった、ルネサンス期のネーデルラント(フランドル)の画家。
本名はイェルーン・ファン・アーケン(Jeroen van Aken)といい、日本ではヒエロニムス・ボスを“ボッシュ”と表記されることもあり、ボッシュの愛称で広く知られています。
ベルギーの国境近くにあるス・ヘルトーヘンボスの画家一族のもとに生まれた彼は、父親アントニス・ファン・アーケンは画家、母親は仕立て屋の娘でした。
ボッシュの周囲にも画家は多くいたようで、祖父ヤン、兄のホーセン及び、3人の叔父たちも画家であったそうです。
また、ボッシュが絵画修業をしていた頃の資料など、明確な情報はありません。
一般的には父親の営む工房で絵画技術を身に付けたとされていますので、今作『謎の天才画家ヒエロニムス・ボス』では、そのあたりの謎にも触れられていることでしょう。
ボッシュの代表作として有名である「快楽の園」(1480~1500年頃)は、プラド美術館に所蔵されていて、その作品は普通の板絵のほか、三連祭壇画の形式を持つものがいくつかあります。
板絵の左側にはキリストの姿を用いた神がアダムにイブを娶わせている“エデンの園”があり、右側に“地獄”を描いたようで、胴体が卵の殻になった男、人間を丸呑みにして排泄する怪鳥などの奇怪なイメージで描かれています。
中央の板絵は“快楽の園”としての現世と一般的には考えられていて、多くの男女が様々な快楽に耽っている様子が描かれています。
この絵画が持った趣旨も様々に推測されることから、今作『謎の天才画家ヒエロニムス・ボス』では、どのように解釈されるのか楽しみです。
そのほか、プラド美術館には「乾草車」(1490~1500年頃)や「東方三博士の礼拝」(1510年頃)も所蔵していて、ボッシュの考察にこれらの作品が登場するのか、注目したいところですね。
まとめ
プラド美術館の全面協力のもと、画家ボッシュの謎が大きく解き明かされる今作『謎の天才画家 ヒエロニムス・ボス』は、ホセ・ルイス・ロペス=リナレス監督の渾身の一作。
監督自ら撮影を行なった点にも注目で、ホセ・ルイス・ロペス=リナレス監督が何を見つめ、見抜きたかったのか興味をそそられます。
昨今では多くの美術館をドキュメントした映画がブームとなっていますが、画家ボッシュの謎を解き明かすこの作品は、美術ファンのあなたの期待も大きい作品ではないでしょうか。
映画公開日は12月予定で、シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー!劇場公開の詳細な日程などに関しては、メディア解禁後に再度このサイトでお知らせいたします。
『謎の天才画家 ヒエロニムス・ボス』を、ぜひお見逃しなく!