連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第9回
深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信サービス【U-NEXT】で鑑賞することも可能です。
そんな気になるB級映画のお宝掘り出し物を、Cinemarcheのシネマダイバーがご紹介する「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第9回は、デヴィッド・スレイド監督が演出を務めた、映画『30デイズ・ナイト』です。
デヴィッド・スレイド監督が、スティーヴ・ナイルズによる同名のコミックを原作として描く、2007年製作のアメリカのヴァンパイア・ホラーアクション映画『30デイズ・ナイト』。
太陽が24時間昇らない日々が30日間続く、アラスカ州バローに現れたヴァンパイアに、保安官夫婦率いる住民が立ち向かう壮絶なサバイバルものである本作は、具体的にどういった内容なのでしょうか。
今回は、大人気映画「スパイダーマン」シリーズを手掛けたサム・ライミが製作した、映画『30デイズ・ナイト』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。
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映画『30デイズ・ナイト』の作品情報
【公開】
2009年(アメリカ映画)
【原作】
スティーヴ・ナイルズによるコミック『30デイズ・ナイト』
【監督】
デヴィッド・スレイド
【キャスト】
ジョシュ・ハートネット、メリッサ・ジョージ、ダニー・ヒューストン、ベン・フォスター、マーク・ブーン・ジュニア、マーク・レンドール、アンバー・セインズベリー、クレイグ・ホール、マヌー・ベネット、ミーガン・フラニック、ジョエル・トベック、エリザベス・ホーソーン、ナサニエル・リーズ
【作品概要】
『ブラックホーク・ダウン』『ハロウィンH20』『マイナス21℃』などに出演する、期待の若手俳優ジョシュ・ハートネットと、「スパイダーマン」シリーズを手掛けたサム・ライミ監督がタッグを組んだ、究極のヴァンパイア・ホラーアクション映画です。
サム・ライミ監督は本作の製作を担当し、同名のコミック『30デイズ・ナイト』の原作者であるスティーヴ・ナイルズが本作の脚本を務めます。
映画『30デイズ・ナイト』のあらすじとネタバレ
膝ぐらいの高さまで降り積もった雪の中を歩く謎の男は、険しい顔で見つめる、ある街を目指して歩き続けます。
その街とは、アメリカ最北の居住区であるアラスカ州バロウ、隣町まで128kmも離れている人跡未踏の荒れ地です。
152人の住民が住むバロウは、毎年の冬に30日間に及んで太陽が沈む「極夜」があり、その期間中は街から出られなくなってしまいます。
太陽が拝める最後の日、バロウを守る保安官のエバン・オルソンは、相棒であり友人のビリー・キトカ副保安官と一緒に、四駆のパトカーに乗ってパトロールをしていました。
すると雪の中に燃やされた携帯電話が埋もれていたり、配管路で事故があったり、住民のジョン・リースとその妻アライが飼っている犬ぞり用の飼い犬が全て惨殺されていたり、ヘリコプターの操縦士ウィルソン・ブロが所有するヘリコプターの操縦桿とプロペラが盗まれていたりと不審な事件が相次いで起きます。
一方、エバンの元妻で保安官のステラ・オルソンは、消防の仕事をしにこのバロウを訪れていましたが、飛行機の最終便へ乗るために空港へ急ぐ途中で事故に遭ってしまうのです。
それは住民のマレカイが運転する重機が、突如ブレーキが故障してステラの車に衝突してしまったというもので、2人とも無事でしたが、ステラの車が壊れてしまいました。
そこでステラは、仕方なく元夫のエバンに連絡を取り、空港まで送って欲しいと言うと、エバンからビリーに送らせると返答されます。
ビリーが運転する四駆のパトカーに乗り、空港まで辿り着けたステラでしたが、最終便には間に合わず、渋々バロウでビリーかエバンの家に泊まって30日間過ごすことにしました。
エバンは一先ず、弟のジェイクと祖母のヘレン・マンソンが留守番をしてくれている保安官事務所へ戻ったあと、ルーシー・イゴスが営む「イゴス・ダイナー」へ向かいます。
そこでは、物語の冒頭で登場した謎の男が、ルーシーに血が滴る生肉を強引に要求しており、エバンは駆けつけたステラと協力して男を逮捕しました。
その頃街中では、観測所にいた住民のガス・ランバートや、女友達と歩いていたゲイブとアーロンが、謎の集団に襲われて、首に咬みつかれて死亡する事件が起きます。
保安官事務所の牢屋に男を閉じ込めたあと、エバンたちはいきなりパソコンが動かなくなったり、電話が不通になるアクシデントが起きて困惑しました。
すると不敵な笑みを浮かべる男は、「最悪な奴らが来るぞ、まずはガスを。窓を塞げ。今度こそ仲間になるぞ」と意味深な言葉を告げてくるのです。
エバンがその言葉の意味を問いかけた瞬間、今度は街全体が停電となってしまい、とりあえずエバンは男が言うガスの安否を確かめるために観測所へ急行します。
しかしそこには、夥しい量の血痕の先に、棒のようなものにくし刺しにされているガスの生首が晒されていました。
エバンはすぐさま街を巡回し、住民に「戸締りをして外出はしないてくれ。銃には念のため弾丸の装填を。発電機が家にない住民はとりあえずダイナーに集まってくれ」と、警告と共にそう促します。
その間にも夕食の準備をしていたアライが、ジョンの必死の救出もむなしく、突如キッチンの窓を突き破って襲ってきた敵に、隣家の軒下に引きずり込まれて殺されてしまいました。
エバンの帰りを、ステラたちとボードゲームをしながら待っていたジェイクは、奇妙な言葉を話し続ける男に苛立ってゲームの駒を投げつけます。
すると男は、その駒を鍵代わりにして脱走を企み、それを阻止しようと近づいたジェイクの首を絞めてきたのです。
そこへ保安官事務所へ戻ってきたエバンが、躊躇なく男の肩を銃で撃ち、ジェイクを救出してから、男を檻に手錠で拘束してから尋問します。
しかし男は、「この街を襲う襲撃者を意味する奴ら」が誰かは答えず、ただ「お前は死ぬ、もうここから逃げられない」としか言いません。
エバンはこのままじゃ埒が明かないと思い、ステラと一緒にまだ外にいるビリーの元へ四駆のパトカーを走らせますが、その道中で敵に襲われてしまい、慌てて来た道をバックして引き返します。
そんなエバンの元へ、ヘレンから助けを呼ぶ無線が届き、エバンたちはすぐに保安官事務所へ帰りますが、部屋の隅に大量の血痕があるだけでジェイク達の姿はありません。
一方、外には住民たちを襲う謎の集団がおり、その中心にいるマーローという男は、独自の言葉で「首は胴体から切り離せ、仲間にしてはならぬ。探し求めた絶好の狩場だ」と話していました。
そう、バロウの住民やジョンの飼い犬を殺し、ヘリを壊して逃げ道を塞いだのは、この暗闇の中を人間の血を吸って生きるヴァンパイアたちだったのです。
ヴァンパイア集団のリーダーであるマーローは、襲った住民の家にあったレコードを、蓄音器の針の代わりに自らの鋭い爪で音を奏でたことを合図に、暗闇に潜ませた仲間に住民を襲うよう仕向けます。
大勢の住民がヴァンパイアたちに殺されていくなか、何とかダイナーに逃げ込めたダグ・ヘルツやジェイクら住民たち、そこへエバンたちが駆けつけてきました。
エバンたちは話し合った結果、防壁で囲った屋根裏部屋がある住民のゲイルの家が安全かもしれないと考え、エバンとステラがヴァンパイアたちを引きつけている隙に、住民たちはその隠れ家へ向かうことに決めます。
ところが、クマ用の罠と発煙筒を積んだ四駆のパトカーを走らせた途端、エバンたちはヴァンパイアたちに襲われ、横転させられた車から引きずり出されて殺されそうになってしまうのです。
そんな2人を助けたのは、除雪車で敵に突っ込んできた住民のボウ・ブロワーであり、彼は2人を除雪車に乗せて隠れ家へ向かいます。
無事に隠し扉にある階段を登って、ジェイクたちと合流できたエバンたち、そこでエバンはジェイクから、ヘレンがヴァンパイアに殺された話を聞きました。
映画『30デイズ・ナイト』の感想と評価
30日間に及ぶ極夜の生活、毎年の冬に訪れるその生活が、ヴァンパイアたちによって生きるか死ぬかのサバイバル生活に変えられてしまうのです。
いつどこからヴァンパイアたちに襲われ、住民が殺されるか分からない恐怖だけでもとても怖く、謎の男がバロウを陸の孤島にしようとした目的が明らかにされていないのが余計に恐怖心を煽ってきます。
一瞬も気を抜くことが出来ないのは、エバンたちだけでなく観る人もそうなってくるほど、他のヴァンパイア映画よりもさらにホラーテイストに仕上がった作品でした。
銃で撃っても殴っても死なないマーロー達ヴァンパイア、彼らが住民を惨殺するシーンは観ているこちらもゾッとするほど怖く、グロテスクな死に様ばかりなのでR15+指定がかかるのも頷けます。
恐怖心を押し殺して皆を助けるために敵と戦うエバン、その勇気に感化されたボウの決死の作戦シーンは感動するほど格好良かったので、このシーンで彼の事を好きになったファンも多いことでしょう。
感動したり怖かったりする本作の中には、エバンがヴァンパイアになってしまった住民のジョンとカーターを、友人のビリーさえも斧で殺さなくてはいけない辛く悲しいシーンも描かれていて、とても切ないです。
しかも主人公のエバンが最後、住民を守るために自らヴァンパイアとなって敵と戦い、誰も襲わずステラに抱きしめられたまま、太陽光に焼かれて死んでいく様は必ず号泣します。
まとめ
本作はヴァンパイア対人間の30日間に及ぶ極夜の中でのサバイバルバトルが描かれており、気づいた時にはもう敵に襲われてしまうという恐怖とスリルが盛り沢山の作品でした。
一瞬も気が緩められない、瞬き禁止のサバイバルアクション、エバンたちと同じ恐怖が観る人すべてに襲い掛かってきて、時間が経つにつれて少しの物音もビクついてしまうほど恐怖が増していきます。
その中でホッと心が温まるのは、エバンとステラの保安官夫婦が家族の絆を取り戻すシーンと、ボウが決死の覚悟でマーローたちに挑むシーン、住民たちがお互いを思いやり助け合うシーンです。
強い絆で結ばれた住民たちとエバンに負けず、マーローだって人間には無慈悲で残酷なものの、仲間のヴァンパイアがやられた際は悲しむ素振りを見せるなど、仲間想いな一面が見られてヴァンパイア側に好感が持てるシーンもありますよ。
ヴァンパイア映画の中で最もスリリングで恐ろしいほど怖く、なおかつ人間同士の絆も観たいと求める人へ、このR15+指定がかかったホラー作品をオススメします。
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