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Entry 2021/10/15
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『ウィリーズ・ワンダーランド』ネタバレ結末評価とあらすじ感想。悪ノリスラッシャー映画で我らがニコラス・ケイジまたも怪演で殺人ロボットを瞬殺す|B級映画 ザ・虎の穴ロードショー61

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  • 20231113

連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第61回

深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞することも可能です。

そんな気になるB級映画のお宝掘り出し物を、Cinemarcheのシネマダイバーがご紹介する「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第61回はあのニコラス・ケイジ主演作の『ウィリーズ・ワンダーランド』

世界中の映画ファンから”怪優No.1″と認めれらたニコラス・ケイジ。あらゆるジャンルの映画で熱演を披露する姿は圧巻、誰が何と言おうがB級映画界のカリスマスターです。

頼まれれば(ギャラを積まれれば?)どんな映画にも出演するとも言われる彼が、本作には製作にも参加。何が彼のツボに入ったの?と興味深々の作品を紹介しましょう。

今回、俺たちのニコラス・ケイジは何をやらかしてくれるのか?”カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2021″で上映された作品を紹介します。

【連載コラム】「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」記事一覧はこちら

映画『ウィリーズ・ワンダーランド』の作品情報


(C)2020 LSG2020, Inc. All rights reserved.

【日本公開】
2021年(アメリカ映画)

【原題】
Willy’s Wonderland

【監督】
ケビン・ルイス

【キャスト】
ニコラス・ケイジ、エミリー・トスタ、ベス・グラント、デビッド・シェフテル、クリス・ワーナー、リック・ライツ

【作品概要】
廃墟と化したテーマパークでの清掃を引き受けた男。しかしそこは、悪夢のアニマトロニクスが潜む世界だった…。ニコラス・ケイジが遊園地の人形たちと死闘を繰り広げる、悪ノリホラー・アクションコメディです。

主演は園子温監督ハリウッドデビュー作、『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』(2021)に主演のニコラス・ケイジ。監督はショーン・ヤングとジョン・サヴェージが出演した映画『The Drop』(2006)のケビン・ルイス。

ドラマ『マヤンズ M.C. 〜サンズ・オブ・アナーキー外伝〜』(2018~)のエミリー・トスタに、『ドニー・ダーコ』(2001)や『リトル・ミス・サンシャイン』(2006)などの作品で、強烈な印象を残す個性派女優ベス・グラントが共演した作品です。

映画『ウィリーズ・ワンダーランド』のあらすじとネタバレ


(C)2020 LSG2020, Inc. All rights reserved.

人間大のアニマトロクスたちが、子供たちを楽しませる映像が映し出されます。楽し気な音楽が流れる廃墟を、男女が逃げていました。男は捕まり、隠れていた子供に気付いた女も悲鳴を上げます。血しぶきがモニター画面に飛び散ります…。

人気のない道を、男(ニコラス・ケイジ)は猛スピードで車を走らせていました。車は道路上に仕掛けられたスパイクストリップ(トゲでタイヤをパンクさせる罠)を踏み停止します。

現れた修理工場の男ジェド(クリス・ワーナー)の話では、保安官の車からスパイクストリップを盗んだ子供のイタズラとのこと。男は話しかけられても返事をしません。

車を回収したトラックは、”ウィリーズ・ワンダーランド”のあるヘイズビルの町に近づいていました。

同じ頃リブ(エミリー・トスタ)は、”ウィリーズ・ワンダーランド”に火を放とうとしてルンド保安官(ベス・グラント)に逮捕されます。連行されるリブは、ジェドの車に乗る男と目を合わせます。

無口な男はジェドの修理工場に着きました。壁には無数の行方不明者の手配書が貼ってあります。カードもATMも使えない環境で、修理代の現金払いをジェドから要求された男。

現金を持ち合わせぬ男に、彼は働き口を手配すると言います。電話した相手に1人捕まえたと告げるジェド。

ジェドは男を”ウィリーズ・ワンダーランド”に連れて行きます。現れた男テックス(リック・ライツ)は、閉鎖されたこのテーマパークを再開しようとしていました。

無口な男に一晩”ウィリーズ・ワンダーランド”を清掃してくれれば、車の修理代を出そうと申し出るテックス。男は承知し、テックスと握手します。

廃墟に入ったテックスは案内ビデオを再生しました。テーマパークのメインキャラ、イタチのウィリーがアニマトロクスで動く動物キャラクターを紹介するビデオでした。

ワニのアーティ、妖精のサラ、カメレオンのキャミー、ゴリラのガス、おやすみナイト(騎士)、ダチョウのオジー、カメのテイト…賑わった昔を懐かしむテックス。

何も語らぬ男にテックスは話し続けます。ある日子供がアニマトロクスの人形と遊んで怪我をした、それを母親たちの団体が訴え、”ウィリーズ・ワンダーランド”は閉鎖されました。

男の背後で人形が動いたのでしょうか。テックスは男を清掃用具置き場に案内すると、従業員の証のテーマパークのTシャツを手渡しました。

男にキッチンにある物は自由に食べろ、無理せず休憩を取って働け、朝になったら迎えに来ると言い残し出て行くテックス。

外に出たテックスは門を施錠し、ジェドに男の悲鳴は耳障りだと告げ立ち去りました。

ルンド保安官の自宅に手錠で拘束されたリブを、若者たちが助けに現れます。彼女を救った若者たちは、遊びではなく使命感を持ち”ウィリーズ・ワンダーランド”を焼き払おうとしていました。

男はダサいテーマパークのTシャツに着替えると、清掃員として働き始めます。背後で何かが動く気配を感じますが仕事を続け、腕時計のアラームで休憩に入り、冷やしたエナジードリンクを飲み干し時間が来ると、几帳面に働きだす男。

働いていると明らかに何か動く気配がします。迫ってきたダチョウのオジーをモップの柄で叩く男。すると、お前の顔を喰ってやると叫んで、ダチョウのアニマトロクスが襲ってきました。

モップで抵抗する男の頬をダチョウは傷付けました。流れた血を見た男はニヤリと笑ってモップの柄を折り、かけ声を出してダチョウを殴ります(映画が始まって以来、ここで初めて発声したニコラス・ケイジ)。

絶叫しつつダチョウをしばき倒しアニマトロクスを破壊した男、汚れたTシャツは新しいものに着替えます。やはりこの男、几帳面です。

その夜ルンド保安官は、副保安官のエヴァン(デビッド・シェフテル)と勤務に就いていました。一方破壊したダチョウをゴミ箱に棄てようとして、建物の扉が開かないと気付いた男。

男は動じることなく、休憩を告げるアラームを聞くとキッチンに移動し、エナジードリンクを1缶開けました。男は次にトイレの清掃に向かいます。

落書きだらけのひどく汚れたトイレですが、男は几帳面に落書きを消し、黄ばんだ便器を磨きます。この男、清掃もただ者ではありません。

外から明るいテーマパークの音楽が聞こえてきます。ステージの上ではアニマトロクスたちが、誕生日を迎えた子供を祝う歌を歌っていました。

男が電気のスイッチを切ると、人形たちは動きを止めました。物音がしたトイレに入ると、新しく鏡に書かれた「お前の誕生日」の文字を見つける男。

かくれんぼをしよう、との声が響き渡ります。トイレの個室ドアが独りでに閉まり、男を嘲るアニマトロクスの声がします。個室を調べる男の前にゴリラのガスが現れます。

ゴリラと素手で渡り合った男は、ラバーカップ…トイレの詰まりを直す”すっぽん”です…を手に反撃に転じます。倒され俺たちは友達だろ、と言ったアニマトロクスを蹴り倒し破壊する男。

汚れたTシャツはまた新しいものに着替える、とても几帳面なこの男。ゴリラの残骸を片付け、他のアニマトロクスはステージ上だと確認します。

腕時計のアラームが鳴ると休憩に入り、エナジードリンクを飲み爪を磨く男。ピンボールマシンをプレイしますが、アラームの音で休憩を終えました。

“ウィリーズ・ワンダーランド”の前に車が停まり、リブを含む6人の若い男女が降りました。建物の周囲にガソリンを撒き火を点けようとしますが、中の男を助けてからだと言うリブ。

リヴは塞がれたガラス窓を叩き、清掃中の男に逃げろと声をかけます。反応した男はリブの顔を覗き込みますが、黙ったまま仕事に戻ります。

彼女の仲間は失礼な奴だ、自己責任だと火を放とうとします。何とか助け出そうと主張するリヴに、中に入るには危険だと警告する仲間たち。

それでも男を見殺しにはできません。リブは自分が中に入るので、皆は救出方法を考えてくれと言いました。

黙々と掃除する男を助けようと、こんな時のお約束でダクトから建物に忍び込むリブ。廃墟とは思えぬほど綺麗で広い空間のダクト内ですが、広さが災いしたのかワニのアーティが襲ってきます。

必死に逃れテーマパーク内部に脱出したリブ。そこは森の中を模した空間でした。彼女は何かがいると気付きました。

彼女の前に現れたのは妖精のサラでした。動物型のアニマトロクスと違い、人間に近いサラは機敏に動いてリヴを翻弄し、彼女は悲鳴をあげます。

清掃中の男はその声に気付きます。悲鳴を聞いた彼女の仲間たちはあれこれ言いますが、リブの恋人クリスに従い助けようと屋上に登ります。

森の部屋に入った男の前にリブが現れました。彼女は人形に襲われる前に逃げるよう言いますが、何も語らず部屋を出て清掃に戻る男。

屋上に上がったクリスは恋人を救う計画を立てますが、アーロンもダンも反対だと言い出すボビー。彼の恋人キャシーが彼をたしなめますが、俺たちはリブとクリスに振り回され迷惑だと言うボビー。

帰ろうとするボビーにクリスは飛び掛かりますが、拍子に屋上が崩れ5人とも転落、テーマパークのボールプールに落ちました。

結局全員が”ウィリーズ・ワンダーランド”の中。無事なリブを見て喜んだクリスは、外で救出方法を探すはずが、これではどう逃げるつもりと彼女に責められ、立場がありません。

音楽と共にステージ上のアニマトロクスが動き出しました。リブはナイフで刺そうとしますが、清掃の男に捕まり阻止されます。あなたを助けたいのになぜ無視する、と叫ぶリヴですが、アーロンは人形が2体少ないと気付きました。

人を襲う人形が倒されたと気付き、この男はただ者ではないと気付くリヴ。一方テーマパークの雰囲気に酔いしれたキャシーと共に、2人きりになろうとハッピールームに向かう冷静だったはずのボビー。

リブは男に車がパンクして、ここを掃除すれば修理代を出すと言われたはずと告げます。彼らは20年間同じ手口で人をこの場所に送り込んでいる、あなたは生贄で殺され食べられると言葉を続けたリブ。

しかし男は何もしゃべらず、無視して清掃の準備を続けます。リブはこの町には暗い歴史があり、ここは呪われた場所だと説明しました。

“ウィリーズ・ワンダーランド”をオープンした、ジェリー・ウィリスは連続殺人鬼でした。仲間となる異常犯罪者を育てた彼は、彼らと共にここで凶行を繰り返します。

子供の誕生日を祝う家族をハッピールームに誘い込み、そこで殺害するのが彼らの手口でした。大勢の行方不明者が出て周囲に異臭が漂い、ついに捜査の手が伸びました。

警察が突入した時、ジェリーと仲間たちは悪魔の儀式を行い自殺していました。彼らは儀式で魂を無生物、アニマトロクスの人形に移せると信じて死んだのです。

10年後、新オーナーのテックスがテーマパークを再開します。彼は過去を隠そうとしますが、アニマトロクスたちは異常な動きを見せ、凄惨な事件が次々起こり再度閉鎖されました。

しかしテックスはここを取り壊しません。悪魔と契約した彼は仲間の住人と手を組み、殺人鬼の魂を宿した人形たちに生贄をささげ続けたのです。

ここでようやくボビーとキャシーがいないと気付いた若者たち。その頃殺人者たちの自殺現場と知ってハッピールームに入り、その雰囲気に興奮するキャシー。

気分が高まり、死亡フラグなのに関係を持とうとするボビーとキャシー。話を聞いても黙ったまま、掃除の手を休めぬ男に呆れるリブたち。

音楽が流れ始めステージの前に立ったリブたちに、イタチのウィリーは6人の若者を犠牲にする、と揶揄する歌を歌い始めます。

アーロンは背後から迫ったおやすみナイトに刺し殺されます。クリスとダンを逃がしたリブの身にも危険が迫ります。

また休憩タイムに入り、エナジードリンクを飲むとピンボールゲームをプレイする清掃の男。彼はこの後どう行動するのでしょうか。

そして彼は、現在までまともな言葉を何1つ発していません。どうする、ニコラス・ケイジ!

以下、『ウィリーズ・ワンダーランド』ネタバレ・結末の記載がございます。『ウィリーズ・ワンダーランド』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2020 LSG2020, Inc. All rights reserved.

ボビーとキャシーは想像通り、この手映画の最強死亡フラグである行為にはげんでいました。彼らがいるハッピールームに、いつの間にか現れているワニのアーティ。

ダンは妖精のサラに襲われ、ゲームコーナーに隠れたクリスは保安官事務所に電話をかけます。電話に出たルンド保安官は、テーマパークにいると聞くやイタズラだと切りました。

無視しようとした保安官も、リブに誘われてこの場所に来たと聞かされ、副保安官エヴァンと共に”ウィリーズ・ワンダーランド”に向かいます。

人形たちに翻弄されたダンは、カメのテイトに襲われ命を落とします。おやすみナイトに襲われたリブを、ようやく休憩時間を終えた男が助けました。

ナイトの頭を何度も壁に打ち付け、引きずり倒すと剣で首を切断した男。その姿を見守るリブ。

ハッピールームのボビーにワニのアーティが襲い掛かり、キャシーは返り血を浴びました。今さらですが、家に帰りたいと叫び出すキャシー。

リヴと男がハッピールームに入った時、ボビーとキャシーはこと切れていました。男はワニのアーティに巴投げをくらわし、タコ殴りにして口をこじ開けてアニマトロクスを破壊します。

ゲームセンターに隠れたクリスに、カメレオンのキャミーが迫ってきます。キャミーはこの醜い体に魂を囚われた。魂を解放したいと望んでいると語りかけました。

その言葉を信じたクリスに、助けてくれればあの世のことを教えると告げるカメレオンのキャミー。

テーマパークに向かうパトカーで、銃を向ける相手はイタチのウィリーだと語るルンド保安官。信じないエヴァンに真実を語ります。

アニマトロクスが人を襲い始めた後、町の人々は超常現象が起きていると悟りました。しかし世間は信じません。テックスは”ウィリーズ・ワンダーランド”を更地にしようとしますが、工事業者とその家族は喰い殺されました。

その後誰も解体工事を引き受けません。やむなく町の住民はテーマパークが朽ち果てるまで放置することにします。

すると血に飢えた人形たちは町に姿を現し、人を襲うようになりました。多くの犠牲者が出た後、住民たちは取引をします。生贄を捧げるので住人を襲わないで欲しいと。

こうして住人たちは、身寄りのない者や運の悪いよそ者をテーマパークに誘いこみ、生贄にして平穏を得ていました。しかし時に生残者も現れます。ある日惨劇の後、保安官が助け出した少女がいました。

少女の名はリブでした。保安官らに育てられ成長した彼女が、”ウィリーズ・ワンダーランド”を焼き払おうとしたのです。

リブはカメレオンのキャミーの前に立つクリスを目撃します。彼はキャミーと取引したと説明しますが、それは偽りでアニマトロクスに殺害されたクリス。

リブに迫るカメレオンのキャミーの前で、ファイティングポーズをとった清掃の男。しかし腕時計のアラームが鳴ると、彼女に取り上げたナイフを渡し、休憩に入ります。

唖然としたリブは必死に抵抗しましす。やがて休憩を終えた男が戻ってきて、カメレオンの舌を掴んで振り回し、叩きつけました。

カメレオンのキャミーの体を引きずる男とリブの前に、妖精のサラとカメのテイトが現れます。しかし男は一撃でなぐり倒します。キャミーを処分しようとする彼の前に現れ、銃を突き付けるルンド保安官。

保安官はイタチのウィリーに謝り、これは街の住人の意志ではないと告げ、テーマパークに手錠をかけた男を残し、リブと助手のエヴァンと共に去ろうとします。男は黙ったままで、抗議の声もあげません。

窮地に陥ったのはアニマトロクスの方だ、とリブが説明してもルンド保安官は耳を貸しません。本当の両親もこうして殺したのかという抗議も無視して助手に彼女を連行させ、自分はここで成り行きを見守る事にした保安官。

両手の自由を失った男の前にカメレオンのキャミー、妖精のサラが現れます。能天気な音楽が流れる中、男は人形たちと向き合いました。

連行されるリブは、男を見殺しにするのかと保安官助手のエヴァンを責めました。口論となり車を停めたエヴァンが”ウィリーズ・ワンダーランド”に戻ろうとした時、カメのテイトが彼を襲います。

男は足技で妖精のサラを倒し、手の自由を取り戻すとカメレオンのキャミーに挑みます。保安官助手は殺されましたが、カメのアニマトロクスを倒したリブ。

結局2体のアニマトロクスを始末した男は、汚れたTシャツを新しいものに着替えて清掃を開始します。テーマパークは綺麗になりました。

念入りに掃除をした男は、犠牲となった若者たちの遺体も回収し並べます。さっぱりした部屋で男がステージのイタチのウィリーに向き合った時、休憩を告げるアラームが鳴ります。

やはりエナジードリンクを飲み、ピンボールマシンをプレイしながら、妙なダンスを踊り出す男(ニコラス・ケイジ、これを即興で踊りました)。

休憩時間は終わりました。居眠りから目覚めたルンド保安官は、建物から出てゴミを始末する男を見て驚きます。

こうなったら非常手段、と保安官は男に銃を突き付け、建物の中に戻してイタチのウィリーの餌食にしようとしました。

しかしウィリーはルンド保安官の背後に立っていました。保安官の体を真っ二つに切断するアニマトロクス。

吹き出した血が男のダサいTシャツを汚します。血に飢えた人形は、男が片付けたイスを蹴散らしながら迫ってきます。

誕生日を祝う歌が不気味に流れる中、鋭いイタチの爪で攻撃され傷付く男。彼の体はボールプールに沈みました。

アニマトロクスが去ると、ボールの海から復活する男。彼はキッチンに戻るとエナジードリンクの缶を詰めた麻袋と、折って束ねたモップの柄を持ち、凶暴なイタチの人形に立ち向かいます。

柄と缶の入った麻袋で、アニマトロクスをぶちのめす男。執拗に頭部に打撃を与え続けて最後にもぎ取りました。

翌朝。完璧に直した男の車を運転して、”ウィリーズ・ワンダーランド”の前に現れたジェド。その車を自分のものにするつもりでいるテックス。

中を確認したテックスは美しくなったテーマパークを見て驚きます。生き残った男は彼から車の鍵を受け取り、ジェドを睨みつけて外に出ました。

リブも姿を現します。彼女を見つめた男は言葉を発さず車に乗り込みました。リブが助手席に乗り込むと、男は大音量で音楽を流し車を走らせます。

言葉も無いテックスとジェドですが、今回掃除人として雇った生贄こそ、男の中の男と認め脱帽します。もう呪われたアニマトロクスもいない、テーマパークは再オープン出来ると笑顔で語り合います。

2人が乗った車の後ろに、ゴミ箱に捨てられた袋の中から現れた妖精のサラがいました。サラがガソリンに火を点けると、車は吹き飛びました。

男は口を開けたエナジードリンクの缶をリブに渡します。目の前にリブに叩きのめされたカメのテイトが現れますが、それを愛車で跳ね飛ばしバラバラにする男。

2人を乗せた車が走り去った後、エンドロールと共にテーマパーク感あふれる、”ウィリーズ・ワンダーランド”のお誕生日ソングが流れ出しました…。

映画『ウィリーズ・ワンダーランド』の感想と評価


(C)2020 LSG2020, Inc. All rights reserved.

強い!絶対強い。正義の味方、我らがニコラス・ケイジ!…という、掟破りにカッコいい映画でした。ケイジファンは大満足、それ以外の方は開いた口がふさがりません。

凄腕の流れ者風のドライバーがカルト集団の類と闘う姿は、ケイジ主演のマーベル映画『ゴーストライダー』(2007)、そのマーベルヒーローより無敵な主人公を演じた『ドライブ・アングリー3D』(2011)を思い起こさせます。本作、ケイジファンは見逃せません。

俳優でもあるG・O・パーソンズが、脚本を書いたことから本作のプロジェクトは始まります。当初自身のキャリアを築くための短編映画の脚本として書きましたが、彼は長編映画化して欲しいと望みます。

そこで彼は未製作のホラー・ミステリーなどの、ジャンル映画の脚本を紹介するサイト「BloodList」に送ります。ここで本作は、映画化希望脚本の上位に紹介されていました。

この脚本に目を付けたのがニコラス・ケイジ。彼が本作を大いに評価し、製作に一役買ったことで本作の撮影がスタートします。ケイジは本作に『ドライブ・アングリー3D』と同じ匂いを感じたのかもしれません。

製作陣の悪ノリを付け加えて映画が誕生


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誰が見ても80年代スラッシャー映画のオマージュ、パロディに思える本作。脚本を読んだ監督のケビン・ルイスもその要素を実感し、人々に「ニコラス・ケイジvs”チャッキーチーズ”」として売り込む作品だと考えます。

“チャッキーチーズ”はアメリカの有名なレストラン&ピザチェーン。ゲームセンターを併設し、着ぐるみキャラなどがターゲットであるファミリー客を迎えることで有名な、テーマパークレストランです。

いま一つ判らない方は、映画『トイ・ストーリー』(1995)に登場する宇宙ステーション風ピザ・レストラン、”ピザ・プラネット”のような店舗をイメージして下さい。

子供には夢のような、同時に悪夢のようなイメージを与える空間だとお判り頂けましたか? 重要なのは登場する8体のアニマトロクス。脚本に描かれたキャラクターの一部は、ニコラス・ケイジが大好きな爬虫類に変更したと監督は語っています。

ちなみに殺人アニマトロクス”ワニのアーティ”は、ロシアの人形アニメ『チェブラーシカ(日本劇場公開版)』(2010)に登場する、”ワニのゲーナ”にインスパイアされたものです。

このように積極的に、映画の悪ノリに参加したニコラス・ケイジ。4週間の準備期間の後、20日間で撮影された厳しいスケジュールですが、撮影には熱心に参加していました。

ただ掃除しているだけの姿が、面白い俳優なんて他にいるでしょうか、と話す監督。ケイジが黙々とトイレを掃除するシーンを編集するのは楽しく、さまざまなショットの撮影に夢中になったが、ケイジはそれに応えてくれたと語っています。

80年代のグラインドハウス映画へのオマージュである本作は、その雰囲気を再現したくてVFXは美しくしなかったと語る監督。

“ダチョウのオジー”は人形ですが、他のアニマトロクスはスーツアクターが演じ、迫力とチープさがクロスする、ケイジとの愉快なバトルシーンが生まれました。

音楽が描いたスラッシャー映画の世界


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本作ではニコラス・ケイジは一言もしゃべりません。このアイデアを聞いたケイジは賛同し、監督もお気に入りの設定でした。

しかしケイジが何も語らない以上、何かが彼の感情を代弁し、何かが彼の行動に正当性を与えねばなりません。監督はその役割は音楽のEmoi(エモイ)と、編集のライアン・リーバートが果たしてくれたと話しています。

プロデューサーの1人、グラント・クレイマーを通じ本作に参加したEmoi。グラント・クレイマーはかつて、まさに本作のような悪ノリホラー、カルト映画化した『キラー・クラウン』(1987)に出演した人物でした。

『キラー・クラウン』が大好きだったEmoiは、彼にそんな雰囲気の映画の企画があれば、ぜひ参加したいと頼みます。この言葉がきっかけで彼は、本作の音楽に参加できたのです。

まず最初に劇中で使われたバースディソングを作り、製作者に提出したEmoi。監督はすぐに気に入り、正式に契約する前にセットでの撮影に使用した、と当時を振り返っています。

バースディソングの中で、”イタチのウィリー”として歌ったEmoiは、そのまま劇中の”イタチのウィリー”の声優を務めることにもなりました。

劇中でケイジがしゃべらない以上、彼の心を代弁するのは音楽だと監督と話したEmoi。その時、音楽の基本コンセプトも監督から伝えられます。この映画はパンクロックだが、同時に流れ者が女性を救う西部劇でもある、と。

同時に80年代を感じさせるさまざまな音楽、例えばピンボールマシンの音楽などを提供します。近年80年代のホラー映画をリメイク・スピンオフした作品が数多く作られているが、当時の雰囲気を背景まで再現している作品は少ないと語るEmoi。

現代が舞台の映画であり、表面的には80年代の物が無い『ウィリーズ・ワンダーランド』。その中で80年代ホラー映画を感じさせる働きをしたのが音楽だ、とEmoiは説明しています。

確かに劇中に流れる音楽と、美術スタッフの描いたテーマパークを飾る絵や、ピンボールマシンのビジュアルが、現代と80年代ホラーの世界をつないでいると実感できるでしょう。

まとめ


(C)2020 LSG2020, Inc. All rights reserved.

ニコラス・ケイジのファン必見。彼のドヤ顔、ダサイTシャツ姿に萌える方なら、なお必見の『ウィリーズ・ワンダーランド』。ケイジ伝説を彩る映画の1本だと、確信を持ってお薦めします。

B級映画ファンが愛して止まない、俺たちのニコラス・ケイジ。しかし心無い一部の者は、ギャラにつられて仕事を選ばない俳優だと批判しています。

その意見をケビン・ルイス監督も音楽のEmoiも、私が知る彼の出演映画関係者も皆が否定しています。特に年若いスタッフほど、彼の製作現場での態度に感銘を受けていました。

現場では精力的でさまざまなアイデアを出し、他人の意見に応じた演技を提供し、自分の意見に固執しない俳優として誰もが信頼を寄せています。

リップサーブスだと考慮しても、同じ現場のスタッフからここまで支持される俳優は珍しい、と紹介させて頂きます。

最も現場でのアドリブ的演技が、最初から形を決めて撮影に入る映画監督とは相性が良くないのかもしれません。

しかし本作の監督は、彼は素晴らしい俳優であり、同時に製作現場のクルーの一員であり、そして人間的に素晴らしい人物だと強調しています。

ですから、本作のピンボール・ゲームプレイ中の変なダンスは、どうか許してあげて下さい。あれこそニコラス・ケイジ流、面白かった!と思える人。あなたこそ本物のファンです。私はあのシーンで大笑いしました。

【連載コラム】「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」記事一覧はこちら






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