連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第5回
深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信サービス【U-NEXT】で鑑賞することも可能です。
そんな気になるB級映画のお宝掘り出し物を、Cinemarcheのシネマダイバーがご紹介する「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第5回は、ジョーダン・ルービン監督のキモカワじゃない、コワカワで、モフモフなコメディ映画『ゾンビーバー』です。
「ハングオーバー」シリーズの製作陣が贈る、前代未聞のゾンビを扱ったコメディ映画『ゾンビーバー』。このインパクトと、耳に残るタイトルで日本でもスマッシュ・ヒットを飛ばした怪作。
また、ジョーダン・ルービン監督は、日本での公開時「びーばー!ふぃーばー!ゾ〜ンビーバ〜!!」と、これまた耳に残ったプロモーション映像を繰り出しました。
可愛いビーバーとゾンビが奇跡的な融合するという設定のほか、ゾンビーバー人間?、ゾンビ熊も次々と登場するという、ファンにはたまらない痛快でお下品なゾンビコメディ映画『ゾンビーバー』をご紹介します。
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映画『ゾンビーバー』の作品情報
【全米公開】
2014年(アメリカ映画)
【原題】
Zombeavers
【脚本】
ジョーダン・ルービン、ジョン・カプラン、アル・カプラン
【監督】
ジョーダン・ルービン
【キャスト】
レイチェル・メルビン、コートニー・パーム、レクシー・アトキンズ、ハッチ・ダーノ、ジェイク・ウィアリー、ピーター・ギルロイ、レックス・リン
【作品概要】
放蕩な若者たちがゾンビ化したビーバーに襲われる様を描いたホラー。メアリー役を『HEROES』のレイチェル・メルヴィン、ゾーイ役を『SUSHI GIRL』のコートニー・パーム、ジェン役を『テッド2』のレクシー・アトキンスが演じ、脇役のスミスに『ジャンゴ 繋がれざる者』のレックス・リンが務めます。
また『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』『ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える』の製作陣のクリス・ベンダーとJ.C.スピンク、また『キャビン・フィーバー』のエヴァン・アストロフスキーが製作に参加。
撮影は『ゾンビ・ガール』『DRONE ドローン』などのジョナサン・ホールが担当しています。
映画『ゾンビーバー』のあらすじとネタバレ
ある日、田舎道を走行する1台のトラック。運転席と助手席にいる2人は、いい加減で、お下劣なおしゃべりをしながら運転していたせいで、道路に飛び出してきた鹿にぶつかり轢き殺してしまいます。
その弾みで、積み荷に乗せてあった工場の汚染廃棄物が勢いよく揺れ、その1つのタンクが川に落ちてしまいます。
有毒な化学物質を輸送していた2人は、そのことに気がつくこともなく走り去って行きました。
一方のタンクは下流へとドンブラコ、ドンブラコと流れて行き、ビーバーが生息していた湖にたどり着きます。
そこには可愛いビーバーが巣作りでこしらえたダムがあり、2匹のビーバーの前でタンクの中から、怪しげな緑色の液体が吹き出しました。
その後、大学生の女の子メアリー、ゾーイ、ジェンは、女子会キャンプのために、メアリーのいとこの所有する小屋に到着します。
山小屋にあるトイレに入り、ゾーイはこっそりとスマホを取り出しますが、携帯電話の電波が届かない田舎の環境に苛立ちを覚えます。それは次にトイレに入ってきたジェンもまた同じでした。
この女子会キャンプを企画したメアリーは、スマホや男たちもいない環境で、誰からも邪魔されない週末の2日間を過ごしたいと主張しました。
その後、彼女たち3人は、山小屋の前にある湖に向かい、水遊びなどの泳ぎに興じます。開放的なゾーイはトップレスになり、誰もいない大自然を満喫しますが、どこからともなく女の子3人を覗き見する視線がありました。
そんな矢先、メアリー、ゾーイ、ジェンは、野生のビーバーの作ったダムを発見します。
そのダムの近くにジェンが泳ぎ出して行き、可愛いビーバーの姿を見たいといいます。しかし、何と、その対岸には威嚇している大きな熊がいることに気がつき、3人は恐怖に驚きます。
偶然にも地元に住むハンターのスミスが、ライフルを発砲。熊を怖がらせて森に退散させました。
そして、スミスは田舎だからといっても、子どもいるし、森は危険だと水着になるなと彼女たち3人に説教をしました。そして、ビーバーは危険な動物だから近づくことは止めろと忠告しました。
その晩のこと、3人の女の子たちの彼氏や元彼である、サム、トミー、バックの3人が山小屋に到着。そして、山小屋にいたメアリー、ゾーイ、ジェンを悪戯で怖がらせます。
事態にイライラしたメアリーは、男3人に去るように命じます。しかし、彼らが来ることを前もって知っていたゾーイは留まることを主張して彼氏とイチャつきます。
やがて、山小屋は乱痴気騒ぎに発展しますが、そんな中、ジェンが浴室のバスタブでシャワーを浴びようとすると、凶暴なビーバーに襲われますが、トミーがそのビーバーを野球のバットで撲殺します。
ジェンはメアリーに、何か狂犬病をとは違った恐ろしさだったと語ります。彼らはビーバーの死体をゴミ袋に入れ、山小屋の外のポーチに置きました。
しかし、翌朝になると、そこにあるはずのビーバーの死体が入ったゴミ袋は消えていることに、皆は気がつきます。
ジェンは逃げたような血の足跡があることから、単に野生生物に食べられたのではないと主張しますが、皆は聞く耳を持ちませんでした。
ジェンは湖の岸辺に残り、彼女をのぞく全員が湖に泳ぎに向かいます。湖の中央にある浮台で日光浴をするサムとメアリーは、ジェンに自分たちの浮気事件について、話すかどうかについて議論を交わします。
しかし、メアリーはそんな事実は無かったと突っぱねました。そんな矢先、湖で泳いでいたバックの足を何者かが噛みつき、一帯に赤い血が広がります。
それはビーバーの仕業であることが分かると、皆は慌てて浮台に上がります。それは昨晩、ジェンを攻撃したビーバーと同じだと感じた彼女は山小屋に走り戻りました。
するとキッチンで凶暴化したビーバーと遭遇。手にしたナイフでビーバーを刺し、カウンターに固定しますが、それでもジェンに襲いかかり、固定されたビーバーの身体は真っ二つに引き裂かれます。
サムは、浮台の周りで泳ぐ無数のビーバーから気を散らそうと、ゾーイの愛犬ゴズリンを湖に生贄として投げ込み、その隙に彼ら5人は湖を泳いで渡り山小屋に逃げ込み、ビーバーが電話回線を切ったことに気づきます。
夜になり、このままゾンビビーバーが山小屋を囲んでいる状況では、何も解決しないと考えたトミーは、足を切断されたバックを連れて病院に行き、助けを呼んでくると提案をすると、ゾーイも彼に同行すると言い出しました。
トミーとゾーイは負傷したバックに肩を貸しながら、用心深く山小屋のそばにある自動車に乗り込み、山道を降りていきます。
しかし、ビーバーが倒したであろう木で道路は塞がれて降り、彼らはそれ以上先には、行くことはできませんでした。
トミーは自動車から降りて、近くに止まっていたトラックに向かいますが、別の倒れて来た木の下敷きになり、押しつぶされてしまいます。
映画『ゾンビーバー』の感想と評価
下ネタギャグやダジャレはお好きですか?
本作『ゾンビーバー』は、どのような作品なのか? ズバリ! この作品は鑑賞者の好みによって、大きく評価の分かれる作品です。
今回、B級映画コラムの中で紹介しましたが、劇中冒頭からそのセンスは、あまりにもジョーダン・ルビン監督の自信に満ちて光っているからです。
廃棄物処理のタンクを載せたトラックに乗車した運転手と助手席の会話は、「ウンコ」などの下品なもので始まり、その後も、山小屋での女子大生の会話でも「ウンコ」の話しが続いて登場します。
これを単に「ウンコ」大好きな子どものおバカさ、幼さと取るか、ジョーダン監督は、高尚なギャグへの前振りとしてのカマしと取れるかで、『ゾンビーバー』を見た感想は大きく変わることでしょう。
また、「ウンコ」と「ウンコ」に挟まれたタイトルクレジットのアニメーションも、美しく楽しいもので、確かなセンスを感じさせる滑り出しで物語は始まります。
そして、「ゾンビーバー」というダジャレの作品タイトル、あるいはラストのオマケのオチも蜂がゾンビになる「ゾンビー」ですから、これが面白いと理解できない方には、全編に流れるハイセンスなギャグを、下品で卑猥だと感じてしまうかもしれません。
本作『ゾンビーバー』は、あえてヌイグルミ感丸出しの怪物ゾンビと、“大人が真面目に遊んで作った”コメディ映画であり、ホラーコメディと呼ぶよりも、海外のジョーク好き、もしくはモンティ・パイソンの番組や映画好きに観ていただきたい作品なのです。
ジョーダン・ルビン監督とは
『ゾンビーバー』を監督したジョーダン・ルビン
ジョーダン・ルビン監督は、ニューヨークで生まれで、ニューヨーク大学を卒業しました。また、ジョーダンは在学中に、スタンダップコメディでキャリアを開始します。
また、『40歳の童貞男』や『エイミー、エイミー、エイミー! こじらせシングルライフの抜け出し方』のジャド・アパトートも交流があります。
2014年に『ゾンビーバー』で初の長編映画デビューを果たし、トライベッカ映画祭でのワールドプレミアで上映されました。
2019年には、殺人マシーンと化したドローンが起こすサスペンススリラーを、1980年代ホラーへの思いをたっぷりに描いた『DRONE ドローン』でも監督を務めています。
参考映像:『DRONE ドローン』
まとめ
本作『ゾンビーバー』は、ホラーコメディ映画というよりも、アメリカンジョークのコメディ作品です。
ですから、エドガー・ライト監督の2004年のゾンビ映画『ショーン・オブ・ザ・デッド』や、2009年のルーベン・フライシャー監督の『ゾンビランド』などの作風を期待して観るのは、コメディとしても少し筋違いなのです。
このようなゾンビ映画をB級映画として、同じように制作したかったというよりも、初期のまだコメディアンであった頃のウッディ・アレンのコメディのような扱いで本作を観ることをお薦めいたします。
最低最悪な人間たち(アメリカ人)が織りなす、下品で卑猥なギャグ、ぬいぐるみ感のあるゾンビーバーの微笑ましさ、残酷でキレのある笑いなど。これらを自ら楽しめる人たちのためにある映画です。
名作『ゼロ・グラビティ』をパロディにした『ゾンビーバー』ポスター
「ギャグ」が面白いから笑うというものではなく。「笑う」ことが楽しくて面白いからギャグを楽しむものです。それは寄席に行ったり新喜劇の舞台を楽しみに行くようなものです。
そうでないと『ゾンビーバー』を駄作だ、クダラナイ、面白くないと、あなた自身の頭がギャグで、オカシイ人間と笑われてしまいますよ。
ジョーダン・ルビン監督の『ゾンビーバー』のように、大人になっても手にしたぬいぐるみでゾンビごっこを楽しんではいかがでしょうか。笑うと、くだらない愚痴や不満がなくなり幸せになれるかも…。
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