連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第21回
深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞することも可能です。
そんな気になるB級映画のお宝掘り出し物を、Cinemarcheのシネマダイバーがご紹介する「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第21回は、ジョン・ライド監督がハイ・ファンタジーを舞台とした、闇の勢力から世界を守る異種族同士の結束描くファンタジー・アクション映画『エルフ物語 ゴス・アズールの化身』です。
神々の闘いが激化し土地は荒れ果て、わずかに生き残った種族は散り散りに生きながら得ていた、第二紀の世界が舞台です。平和な国へと向かうはずだった世界に、“シャドウ”と呼ばれる闇の勢力が陰謀を企みますが……。
ファンタジーの世界には欠かせない、エルフ族、ドワーフ族、オーク族そして、人間達が活躍するファンタジー映画は「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズをはじめ数々作られています。
映画『エルフ物語 ゴス・アズールの化身』は、その中の“エルフ”がヒロインとなって、闇の勢力と戦う壮大なファンタジー・アクションです。
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映画『エルフ物語 ゴス・アズールの化身』の作品情報
【公開】
2013年(アメリカ映画)
【原題】
SAGA Curse of the Shadow
【監督】
ジョン・ライド
【脚本】
ジェイソン・ファーラー、キーナン・グリフィン
【キャスト】
ダニエル・チャクラン、 リチャード・マクウィリアムス、 ポール・D・ハント、ジェームズ・C・モリス、イヴ・マウロ
【作品概要】
映画『エルフ物語 ゴス・アズールの化身』は、『オゾンビ』(2012)、『サバイバー』(2014)、『ノックアウト』(2016)でもタッグを組んだ、ジョン・ライド監督と主演のダニエル・チャクランのコンビ作品です。
映画『エルフ物語 ゴス・アズールの化身』のあらすじとネタバレ
人間の一部は予言者に仕える騎士団を結成し、エルフとドワーフは同盟を結んだことで、戦争は終結しオークは辺境の地へ追いやられました。
世界は平和を取り戻し復興へと向かうはずでした。巷では古代の悪魔を蘇らせようとする、闇の動きが噂されその陰謀の首謀者シャドウが、“西”に出現したと予言者は啓示します。
シャドウの正体と陰謀の実態を暴くため、予言者は“西”へと使者を向かわせ、不思議な導きによって3人の異種族が巡り会い、異種族間にある因縁の壁を乗り越え、自らの宿命と闘いながら悪に立ち向かいます。
その辺境の地の砂漠に黒いローブをまとい、乳青色の目をした何者かが竜を巧みに操り、飛来するオークをボーガンで撃ち落としました。
落下したオークは負傷しますが、狙撃者から逃れようとします。しかし、謎の狙撃者はオークを追い詰め、まとったローブを脱ぎ捨てます。
謎の狙撃者の正体は若い女のエルフでした。
エルフはオークの指名手配書に記された罪状を読み上げ、オークを成敗するために闘いを挑みます。激しい応戦を繰り返し、エルフはオークにとどめを刺しました。
オークは死ぬ際に「ただで殺られると思うなよ」と言い、その後エルフはオークを斬首しました。すると首を切られた体から黒い霧が立ち、そのままエルフの左手首に入り込むと、怪しい黒い印を残したのです。
エルフは手首に痛みを覚えますが、オークの首を持ってその場を立ち去りました。
また、ある険しい崖山を登る1人の若い男の人間がいます。彼は辿り着いた洞穴の中に入って行き、「ギャマック!」と叫ぶと、洞穴の奥から小さな人影が見え、突然、銃で発砲してきました。
小さな人影は「跡をつけてきたのか? ケルタス。騎士団の使いか?」と聞きます。
ケルタスはギャマックに聞きたいことがあると答えますが、ギャマックは“シャドウ”以外には何も話さないと言い、再び発砲してきました。
洞窟に逃げ込んだケルタスはギャマックと闘いながら聞きます。「殺すつもりはない。シャドウが“北の地”に集結しているのはなぜだ?」。ギャマックは答えます。「数日もすれば“死の神”が目覚めるはずだ。そうすれば全てがわかる」
ケルタスは“予言者”の騎士団として、北の地のシャドウの動きを探るよう、ギャマックのところに来たのです。ギャマックはシャドウの仲間である証として、手首の黒い印を見せシャドウの仲間になるよう誘います。
ギャマックは「命が奪われていくたびにシャドウの力は強くなる。クルモンの隊が“器”を運んでくれば、神さえも太刀打ちできないだろう」こう言うと、ケルタスに火を付けた火薬の樽を投げます。
しかし、冷静なケルタスはその樽をギャマックに投げ返し、彼は自爆して腕を片方失いました。ケルタスは情報を得ると再び動き出します。
北の荒野にいるオークのクルモン隊では、クルモンがムルグルットが命令に背き、シャドウの命じるままに人間を攻撃したことで、人間からの報復に懸念します。
ムルグルットは“終わったことだ”と開き直り、それよりも器をシャドウに渡せば高額な報酬が得られると、クルモンに持ちかけます。
クルモンは「器を渡せば我らは滅ぼされる。我々は戦士だ盗賊や殺人者ではない!シャドウの奴隷になって闇の陰謀に陥るな!」と檄を飛ばします。
しかし、ムルグルットは反乱を起こし少数派のクルモン族と闘います。クルモンは「神の末裔の私を私を殺すというのか?」というと、ムルグルットは彼を気絶させどこかへ運ばせました。
その頃ケルタスは予言者と交信していました。予言者はドワーフ(ギャマック)から聞いた情報を問い、死の神”ゴス・アズール”を復活させるために、オークの部族に“器”を運ばせていることを伝えます。
予言者は「悪しき者が再び世界を手中に収めようとしている。阻止しなければ混乱と戦いの神に荒らされ、死の神が下界から解放された時、生けるものは滅ぼされる」と予言します。
ケルタスは次なる導きを乞うと、シャドウの使いを“ドレノン将軍”が捕えたから、情報を聞き出すよう命じ、“失敗は許されない”と言います。
映画『エルフ物語 ゴス・アズールの化身』の感想と評価
映画『エルフ物語 ゴス・アズールの化身』は、神々たちの争いが終わったあとの混沌とした時代の話を、キャスト数やCGシーンも最小限で抑えた、低予算映画です。
その代わりにロケ地となった広大な自然を活かすことで、ファンタジーの壮大な世界観をうまく表現できた作品と言えます。
見どころはファンタジー界の“ローグ”は、無知で悪の象徴となっているところ、戦士クルモンが武士道的な思考で登場し、人間やエルフと友好的な関係になるところでしょう。
また、人間にある信仰心で聖者に仕え心を委ねる性質、エルフのように猜疑心が強く、誇り高い性質などは協調的に表現していました。
ローグは見た目の悪さや一部の知性の欠如だけで、全体像の判断をされてしまい誤解が生じ、猜疑心の強いエルフに攻撃され、逆に悲劇的な結末を迎えます。この設定は現実世界にあるような差別と似ていて、わかりやすい比喩的な表現でした。
また、高潔な者を信じ誇りをもって働いたとしても、いとも簡単に見捨てられ、なんの報いもない哀れな人間というのも実在します。しかし、その努力も無駄にはならず、認めてくれる人もいるという希望的な要素も含んでいます。
現実の中には裏の部分で悪い企みをする輩もいて、常に危うさのある社会です。それをファンタジーの世界の中のように、異人種であっても協力しあえれば、悪に立ち向かい闇に犯されることはないと呈しています。
“悪”の定義も奥が深く何を悪とするか……という意味では考えさせられる部分はありつつ、弱り目に祟り目という通り、混沌とし何を信じていいかわからない時には、その心の隙を狙う悪者は出現するという構図を示していると言えます。
本作はファンタジー界の象徴“エルフ”を主人公とした、アクションアドベンチャー作品でした。各種族がコンパクトに登場し残虐なシーンも少なく、児童書のような優良感がある家族向きの作品と言えるでしょう。
まとめ
映画『エルフ物語 ゴス・アズールの化身』は、オーク族との争いで家族や仲間を失った孤独なエルフが、賞金稼ぎとなって憎きオークの首を捕り、悪の呪いをかけられても悪に屈っせず、強い気持ちで復讐に挑むヒロインとなり大活躍する物語でした。
また、ネミットは憎きオークを許し、嘘をつく人間を信じて仲間と認めた勇気あるヒロインです。それは女性に対する、弱々しいイメージを払拭してくれるキャラでした。
映画『エルフ物語 ゴス・アズールの化身』は「ロード・オブ・ザ・リング」や「ナルニア国物語」のように、CGやセットを駆使した作品ではありませんが、ファンタジーに欠かせない種族達の特徴を現実におきかえて観たとき、協調性の大切さを訴えているとてもよくできた作品です。
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