Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2018/09/11
Update

平成仮面ライダーを演じたイケメン俳優②『クウガ』『電王』からその魅力を紹介|邦画特撮大全13

  • Writer :
  • 森谷秀

連載コラム「邦画特撮大全」第13章

前回は仮面ライダー俳優をジュノンボーイ出身、2.5次元作品出演経験者、若手俳優ユニット所属者の3点に分けて分析しました。

今回は平成仮面ライダーを演じた俳優の魅力を具体的に紹介していきます。

しかし平成仮面ライダーを演じた俳優の数は膨大です。

劇場版で一度変身した人間も“仮面ライダー俳優”と呼称するのであれば、その数は一気に増大します。また近年の劇場版にのみ登場する仮面ライダーは、勝村政信、片岡愛之助、陣内孝則、吉川晃司とベテラン俳優が多いです。

今回はテレビシリーズで仮面ライダーを演じた俳優、仮面ライダーを演じたことがブレイクの切掛けとなった人物に限定し、彼らの魅力を紹介します。

【連載コラム】『邦画特撮大全』記事一覧はこちら

自然体の演技オダギリジョー『仮面ライダークウガ』

仮面ライダークウガ 第01話

平成仮面ライダーの記念すべき第1作目は『仮面ライダークウガ』(2000)。本作の主人公、五代雄介/仮面ライダークウガを演じた俳優はオダギリジョーです。

五代雄介は本来争いを嫌う穏やかな性格の人物で、普段は居候先の喫茶ポレポレの手伝いをしています。

無差別に人々を襲っていく敵・グロンギのやり方に怒りを覚え、「みんなの笑顔を守るため」に彼らと戦う事を決意しました。

『仮面ライダークウガ』という作品自体の魅力を一言でいうと“リアリティ重視”です。

仮面ライダーであるクウガと警察が協力する、クウガが技の名前を叫ばないなどの他、キックで敵を倒す点や採石場で戦うことにも理由づけがなされています。

オダギリジョーは自然体の演技で、飄々とした雰囲気の五代雄介を演じました。

例えば「変身!!」という掛け声ですが、オダギリは自然な流れでサラリと「変身!!」と発しています。

基本的に「変……身!!」というようにタメを作ったり、異様に力強く叫んだりはしませんでした。

こうしたオダギリの自然体の演技が“リアリティ重視”の作風と合致したのです。

『クウガ』はリアリティを重視した作風のため敵が人間を襲う様子が生々しいなど、子供向け番組としては過激な描写も多々あります。

ですがオダギリジョー演じる五代雄介の飄々とした雰囲気や、五代と他の登場人物とのやり取りが作品全体の雰囲気を和らげていました。

また『クウガ』は平成ライダーで唯一の単独ライダーです。クウガ以外に仮面ライダーが登場しません。ただし他の仮面ライダーシリーズ同様に、五代雄介/仮面ライダークウガと共に戦う仲間たちは登場します。

その代表はやはり五代雄介のバディである刑事・一条薫です。一条を演じたのは葛山信吾。1990年に開催された第3回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストのグランプリ受賞者です。

オダギリジョーと葛山は同時期に放映されていた『未来戦隊タイムレンジャー』(2000年)の永井大らと共に、母親層から人気を集めその後も続く“イケメンヒーロー”の火付け役となりました。

一方でオダギリが『クウガ』への出演を“黒歴史”にしていると囁かれていました。

しかし公式プロフィールには『仮面ライダークウガ』がしっかりと記載されています。

また2016年発売の「仮面ライダークウガBlu-ray BOX 2」に収録された特典映像でインタビューに答えている他、さまざまな媒体でオダギリ自身の口から『クウガ』について語っています。

オダギリジョー本人が2014年に出演したラジオで黒歴史説を否定しました。

1人+4体役 佐藤健『仮面ライダー電王』

仮面ライダー電王 第01話

時の運行を守るため、未来からの侵略者・イマジンと闘う『仮面ライダー電王』(2007)。

仮面ライダー電王に変身する野上良太郎は、気弱で腕力もなく不運続きの少年で“仮面ライダー史上最弱”と言われていました。

野上良太郎を演じたのは佐藤健。佐藤は『電王』の前年に放映されたドラマ『プリンセス・プリンセスD』(2006)で俳優デビューしたばかり。

ちなみに『プリンセス・プリンセスD』には佐藤健と同じく『電王』に出演している中村優一、石黒英雄も出演していました。

野上良太郎/仮面ライダー電王はイマジンというキャラクターの力を借りて戦います。

鬼の姿をしたチンピラのようなモモタロス。カメのような姿をしたキザで女好きのウラタロス。クマのような姿をした人情もろいキンタロス。
竜のような姿で甘えん坊なリュウタロス。この4体の力を借りて変身するのです。

イマジンたちは良太郎が仮面ライダーに変身している時だけでなく、生身の時にも憑依できます。

その時の人格は、良太郎ではなく憑依しているイマジンになるのです。つまり佐藤健は1人5役を演じているのです。

イマジンが憑依した状態の良太郎は、声が佐藤健ではなくイマジンを演じる声優によるものになります。

またイマジンごとに良太郎の服装が変わり、髪には各イマジンのパーソナルカラーのメッシュが入ります。

見た目や声が変わるとはいえ、佐藤健は野上良太郎含め5人の人格を演じなければなりません。

しかし佐藤健はデビュー間もないにも関わらず見事に演じ分けたのです。

また良太郎に憑依するイマジンは基本4体ですが、第23話・第24話と劇場版『俺、誕生!』に登場したジーク、桜井侑斗/仮面ライダーゼロノスの契約イマジン・デネブ(TVシリーズ40話のみ)にも憑依されます。

制作側は「仮面ライダーは若手俳優が演じる」という前提もあり、憑依するイマジンたちが極端な性格でそれぞれの人物像が重ならないよう配慮がなされました。

そんな制作側の心配も、佐藤健の見事な演技力に払拭されたのです。

いまや人気・実力ともにあるオダギリジョーと佐藤健。

2人の出発点と言える“仮面ライダー作品”をもう一度見直したり、未見の方は触れてみたりしてはいかがですか。

次回の邦画特撮大全は

次回の邦画特撮大全は“2度ヒーローに変身”した事をテーマに、仮面ライダー出身俳優を紹介したいと思います。

お楽しみ。

【連載コラム】『邦画特撮大全』記事一覧はこちら

関連記事

連載コラム

映画『ダム』あらすじ感想と評価解説。アリ・チェリ監督がナイル川のダム作りを寓話的に描く|東京フィルメックス2022-2

東京フィルメックス2022『ダム』 第23回東京フィルメックス(2022年10月29日(土)~11月6日(日)/有楽町朝日ホール)のコンペティション9作品のひとつとして上映された『ダム』。 「リアリズ …

連載コラム

映画『ブラックウィッチ』ネタバレ結末感想とラストあらすじ考察。ガチ怖魔女ホラーのおぞましい真実が暴かれる|B級映画 ザ・虎の穴ロードショー52

連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第52回 深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞す …

連載コラム

映画『海抜』あらすじ感想と評価レビュー。大学の卒業制作から生まれた力強い作品|銀幕の月光遊戯 51

連載コラム「銀幕の月光遊戯」第51回 2018年に開催された第31回東京国際映画祭「日本映画スプラッシュ部門」に、史上最年少の22歳で招待された高橋賢成監督の鮮烈なデビュー作品『海抜』が11月23日( …

連載コラム

『名も無き世界のエンドロール』小説ネタバレと結末で書かれた原作内容を解説。実写化で登場人物のプロポーズ大作戦は成功するのか|永遠の未完成これ完成である21

連載コラム「永遠の未完成これ完成である」第21回 映画と原作の違いを徹底解説していく、連載コラム「永遠の未完成これ完成である」。 今回紹介するのは、第25回小説すばる新人賞を受賞した行成薫の小説『名も …

連載コラム

映画『夜明け前のうた』感想評価と内容解説。“私宅監置”で消された沖縄の障害者の“実態と理由”を追うドキュメンタリー|映画という星空を知るひとよ57

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第57回 映画『夜明け前のうた 消された沖縄の障害者』は、かつて日本に存在した精神障害者を隔離する制度「私宅監置」の実態に迫ったドキュメンタリーです。 「私宅監 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学