連載コラム「邦画特撮大全」第7章
前回は第1作『秘密戦隊ゴレンジャー』(1977)から第5作『太陽戦隊サンバルカン』(1981)までの、スーパー戦隊シリーズ黎明期について分析しました。
今回はシリーズの“成長期”に位置する、『大戦隊ゴーグルファイブ』(1982)~『電撃戦隊チェンジマン』までの4作について分析していきます。
CONTENTS
巨大ロボ戦に新設定『大戦隊ゴーグルファイブ』
シリーズ第6作『大戦隊ゴーグルファイブ』(1982)では巨大ロボ戦の描写に新たな要素が加わりました。
それは敵怪人が巨大化せず巨大ロボットに搭乗するという設定です。
第4話までは等身大の敵怪人(モズー)と別デザインの巨大ロボット(コング)がそれぞれ登場します。
しかし第5話以降はさまざまな事情から、怪人とロボットのデザインは下半身を除き同じデザインになってしまいます。
またスタッフ面で大きな変更があったのも本作です。
それまでプロデューサーを務めていた吉川進、メイン脚本を務めていた上原正三の両名が本作をもってスーパー戦隊シリーズから離れてしまいます。
2人が離れた理由は、メタルヒーローシリーズの第1作『宇宙刑事ギャバン』を制作するためです。
そのため本作からスーパー戦隊シリーズのプロデューサーは鈴木武幸、メイン脚本は曽田博久に変更。本作以降、鈴木は『超力戦隊オーレンジャー』(1995)までの13年間、曽田は『地球戦隊ファイブマン』までの9年間、スーパー戦隊シリーズの屋台骨を支えることとなります。
アニメブームを受けて『科学戦隊ダイナマン』
シリーズ第7作『科学戦隊ダイナマン』(1983)は、人類とは別の進化を辿った地底人・ジャシンカ帝国との戦いを描いた物語。
放映当時は『機動戦士ガンダム』などの影響で空前のアニメブームの真っただ中。このアニメブームを受けて鈴木は本作の敵怪人デザインに、若手デザイナーであった出渕裕を起用します。
出渕は本作と同時期に『戦闘メカ ザブングル』(1982)『聖戦士ダンバイン』などのアニメに参加しており、アニメブームを支えていた1人です。
『ダイナマン』から第10作目『超新星フラッシュマン』(1986)まで4年間、出渕は戦隊怪人のデザインを担当します。
出渕の参加により特撮の敵キャラクターに、アニメ的なエッセンスが加わる事になりました。
実は鈴木、『闘将ダイモス』(1978)や『サイボーグ009』(1979)などのアニメーション作品のプロデュースも一時期担当していました。鈴木が出渕と知遇を得たのも『闘将ダイモス』だったのです。
『ダイナマン』はキャラクターのデザイン面だけではなく、物語面にも大きな変化が見られます。
シリーズ前半は基本的に一話完結の物語が展開していました。しかし後半での物語展開には大きな変化が見られます。
ジャシンカの尖兵・進化獣に代わる強敵・メカシンカの登場、それに対抗するためダイナマンが編み出す新必殺技。
ダイナマン、ジャシンカ帝国双方と闘う悪のヒーロー“ダークナイト”、下剋上を目指すジャシンカ帝国の新幹部・女将軍ゼノビアの登場。
ジャシンカ帝国が狙う“レトロ遺伝子”と遠山博士の謎……。このような要素を導入し、『ダイナマン』はドラマの縦糸を強化していったのです。
今観ても挑戦的『超電子バイオマン』
こうした大河ドラマ的な物語展開は、続くシリーズ第8作『超電子バイオマン』(1984)でさらに強化されます。
郷史郎/レッドワンと彼の父・郷伸一郎、敵・新帝国ギアの首領ドクターマンと彼の息子・蔭山秀一。
対比的に描かれる2組の親子の因縁がドラマの根幹部分に関わります。ゲストキャラクター・新頭脳ブレインやプリンス、機械でありながら人の心を持った彼らが辿る悲劇の背景にも上記の親子の因縁があるのです。
前作に登場した“ダークナイト”の流れを受けて本作にもバイオハンター・シルバという、第3勢力の立ち位置にあるライバルキャラクターが登場。物語をさらに盛り上げます。
そして上記の事項とは別に、本作には特筆すべき点が2つあります。
1つは女性メンバーの増員でしょう。戦隊メンバーはそれまで男性4人・女性1人という構成でした。
しかし『バイオマン』は小泉ミカ→矢吹ジュン/イエローフォー、桂木ひかる/ピンクファイブと女性メンバーが2人に増えたのです。
そして2つ目。『バイオマン』には毎回倒される等身大の敵怪人が登場しないという点です。
代わりに敵幹部が毎回巨大ロボットに乗って出撃し、バイオマンと戦闘するというもの。一般的なスーパー戦隊シリーズのフォーマットとは大きく違うもので、現在の視点から考えてもかなり挑戦的な企画です。
こうした試みは功を奏しメインの視聴者層である幼児・児童の他、10代や女子層にも好意的に受け止められたと言われています。
魅力的な敵キャラクター『電撃戦隊チェンジマン』
シリーズ第9作『電撃戦隊チェンジマン』(1985)は主人公たちを“地球守備隊”に所属する軍人に設定するなど、前作『バイオマン』と比較すると全体的にシンプルな印象を受けます。また等身大の敵怪人の登場、その巨大化は本作から復活します。
チェンジマンの敵は地球に侵攻して来た大星団ゴズマ。ゴズマはさまざまな異星人の混成組織で、その多くは首領・星王バズーに制圧された星々の人間です。
地球方面軍司令官のギルークと女王アハメスの2人はかつて反乱軍のリーダー。副官シーマもバズーによって制圧されたアマンガ星の王女。
彼らは単なる悪役として設定されておらず、その出自と苦悩がしっかりと描かれ物語にも大きな影響を与えています。
特に航海士ゲーターと副官ブーバの2人。若干ネタバレになりますが、まずゲーター。彼は当初コメディリリーフだったのですが、妻子の度重なる説得からゴズマを裏切るか苦悩。
妻・ワラジーのお腹に赤ちゃんがいる事から改心し、最終的にはチェンジマンの味方になります。
副官ブーバはシーマを“ブルバドス活人剣”でアマンガ星の王女の姿に戻し、その後自身は剣飛竜/チェンジドラゴンとの一騎打ちの果て落命してしまいます。
そして元に戻ったシーマも、ゴズマを裏切りチェンジマンの味方になるのです。
このように『チェンジマン』に登場する敵組織は一枚岩ではなく、さらにそれぞれのキャラクターもそれまでのシリーズに比べ魅力的に描かれています。
いかがでしたでしょうか?
『大戦隊ゴーグルファイブ』から『電撃戦隊チェンジマン』までの期間は、それまでのシリーズをベースに試行錯誤を繰り返していた時期と言えるでしょう。
次回の邦画特撮大全は…
シリーズ第10作『超新星フラッシュマン』から『地球戦隊ファイブマン』、スーパー戦隊の“成熟期”を取り上げる予定です。
お楽しみに。