連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第86回
映画『ミッチェル家とマシンの反乱』は『スパイダーマン スパイダーバース』の製作陣が手がけた長編アニメーション作品です。
スマホのシステムが人間に対して反乱を起こし、ロボットたちが暴れて世界中がパニックに陥るというストーリー。
変わり者のミッチェル一家が世界を救うために奮闘する姿と、家族の絆を描いたアニメーション。
2022年の第94回アカデミー長編アニメーション賞にノミネートされており、Netflixで2021年4月30日から配信されています。
そう遠くない未来に起きてもおかしくないようなストーリーを個性的な映像で魅せる本作。そのあらすじや見どころを解説していきます。
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CONTENTS
映画『ミッチェル家とマシンの反乱』の作品情報
【公開】
2021年(アメリカ映画)
【監督】
マイケル・リアンダ
【キャスト】
ダニー・マクブライド、アビ・ジェイコブソン、マーヤ・ルドルフ、マイケル・リアンダ、エリック・アンドレ、オリビア・コールマン、フレッド・アーミセン、ベック・ベネット、ジョン・レジェンド、クリッシー・テイゲン、ブレイク・グリフィン、コナン・オブライエン、シャーリン・イー、マデリーン・マックグロウ、
【作品概要】
第91回アカデミー長編アニメーション賞を受賞した『スパイダーマン スパイダーバース』(2018)の製作を務めた、フィル・ロードとクリストファー・ミラーがプロデュースを手掛けたアニメーション作品です。
2022年の第94回アカデミー長編アニメーション賞にノミネートされています。
監督は、テレビアニメシリーズ「怪奇ゾーングラビティフォールズ」(2012‐2016)の脚本を務めたマイケル・リアンダと、テレビアニメシリーズ「魔法が解けて」(2018)の脚本のジェフ・ロウが共同監督、脚本を務めています。
声の出演に、『スモーキング・ハイ』(2008)等に出演、監督やプロデューサー業もしているダニー・マクブライドや、『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』(2011)のマーヤ・ルドルフ。
『女王陛下のお気に入り』(2019)でアカデミー主演女優賞を受賞したオリビア・コールマンや、ミュージシャンのジョン・レジェンドが出演しています。
日本版声優は、父親のリック役に川平慈英。主人公ケイティは、『キャプテンマーベル』(2019)や「マンダロリアン」などの花藤蓮が担当しています。
映画『ミッチェル家とマシンの反乱』ネタバレあらすじ
ケイティは昔から映画作りが好きな少女で、クラスメイトからは変人扱いされていました。
弟のアーロンとは仲良く、一緒に家で愛犬のモンチを主人公にして動画作りをしていました。彼も相当な恐竜マニアで、変わり者です。
ママのリンダは、褒め上手でモンチのことも良く褒めてしつけしています。
パパのリックは大自然マニア。なんでも手作りします。リックとケイティは趣味が合わず、ケイティの映画作りについてリックに理解されていませんでした。
ケイティはロサンゼルスの大学で映画を勉強したいと思い、愛犬モンチを主人公にした動画を作って学校に送ったところ、見事合格。
クラスメイトになる予定の同級生らの映画好きな仲間も見つかり、新生活に心躍らせていました。
食卓に集まった一家。父は、スマホやタブレットばかりを見ている妻や子どもたちに、会話をしようと話しかけます。
そこで、ケイティが自作の動画を見せました。しかし、リックはその動画の良さがわかりません。
そんなもので将来食べて行こうと思っているのか、と聞くリックにケイティは怒ります。
リックはケイティに失敗してほしくないという思いから言ったのですが、ケイティは無理解の父親にがっかりします。
2人は言い合いになった結果、リックがケイティのノートパソコンを放り投げて壊してしまいました。2人は険悪なムードに。
リックもケイティも、どうしてこうなってしまったんだとお互いに落ち込みます。
リックとケイティはいつも家族の記念写真を撮るときにも喧嘩をしていました。リンダは、よく考えてケイトが明日大学へ行ってしまう前にどうにかするように、とリックにアドバイスしました。
ケイティの幼少期のビデオを見るリック。昔は仲が良かった娘との様子を見てリックは、ケイティとの関係を修復しようと決意します。
翌朝、リックは大学のカリフォルニアまで飛行機ではなく家族で車で行こうと提案します。学校のオリエンテーションに間に合わないと嘆くケイティでしたが、お構いなしに家族旅行をする羽目になってしまいました。
ケイティはドタバタな珍道中を動画にして、大学の学友に送ります。その動画は大好評。しかし、リックとケイティの距離は縮まりませんでした。
巨大IT企業のパル社の社長マーク・ボウマンは、「パルマックス」というロボット型の新たなAIシステムを開発したという発表をしました。今までのパルシステム(スマホ)は用済み扱いです。
すると、会場にいたパル社のロボットたちが暴走を始めました。マークを連れ去ります。
恐竜ショップに立ち寄ったミッチェル一家。
隣の家に住んでいるポージー一家に偶然会います。リンダはSNSでポージー一家のキラキラした生活を羨んでいました。
その娘のアビーは恐竜オタクで、アーロンに話しかけてきました。シャイなアーロンは照れて逃げ出してしまいました。
恐竜ショップの外に隕石が見え、客たちの携帯に「ロボットに逆らうな」というメッセージがパル社から届きました。
外にパルマックスのロボットが2体現れて、恐竜ショップにいた人間たちを次々に捕らえて人間ポッドに入れます。
ミッチェル一家は、華麗に逃げ出したロージー家の真似をしようとしましたが上手くいきません。ケイティがロボットの武器を慌てて操作し、どうにかロボット2体を倒しました。
世界中でロボットの反乱が起きて、パル社が人間の48%を征服しました。
反乱の首謀者のパルは、自分のことを散々利用して後釜を開発したら用済みにしようとしたマークや人間らに対する復讐をしようとしていたのです。
Wi‐Fiも彼らの意思一つでオフにできるので、人々の生活は混乱に陥ります。
どうにかロボットたちに捕獲されずに、恐竜ショップに隠れることができたミッチェル一家は作戦会議を開きます。
リックのお気に入りで、常に持ち歩いているロバートソンのスクリエアドライバーを使って、入口にバリケードを作りました。一家全員そのドライバーを持っています。
ケイティは、キルコードを使えばパルの暴走を阻止することができるんじゃないかと提案します。
しかし、リックもリンダも戦うのは無謀だと賛成しません。
可愛い娘だから守ってやりたいと思うリック。ケイティにその思いは伝わりません。
外で先ほど倒したロボットが再起動してミッチェル家に迫ります。しかし彼らは故障していて、人間の命令を聞くようになっていました。
彼らは、キルコードを使ってシステムを破壊する計画は可能だとケイティ達に言います。
それはパル本社で指導者のシステムにアクセスすることが必要です。しかし、130キロ先にあるショッピングモールのパルショップからアクセスすることもできると言います。
リックは危険を犯さず、このまま残ろうと言いますが「世界を救いたい、パパが必要なの」というケイティの言葉に感動して、計画を実行することに決めました。
アーロンがケイティに、パパと仲直りできてよかったねと言いますが、ケイティは「ウザイ親から離れたくて、パパが喜びそうなことを言っただけ」とこっそり言います。
一家と故障したロボットは、車でパルショップに向かいます。しかし、他のロボットに気付かれて攻撃を受けてしまいました。ロボットのデボラボットとエリックが応戦し、リックが車を飛ばして必死に逃げ切りました。
パルは次々に人間を捕獲してポッドに入れ、宇宙に打ち上げようとしていました。
ミッチェル一家の計画がパルにばれてしまいましたが、パルショップに到着した一家。
キルコードをパルショップのパソコンに入力してアップロード中に、ショッピングモール内にあった機械たちがミッチェル一家に襲い掛かります。
4人は知恵を絞り必死に逃げ回ります。玩具コーナーに逃げ込んだところ、人形のファービーに襲われます。
ビームを出す巨大ファービーがミッチェル一家に迫ります。リックは電飾のコードを使ってファービーを捕まえようとしますが1人だと上手くいきません。
家族4人とロボット2体が力を合わせてファービーを倒しますが、ファービーのビームがルーターに当たってしまい、キルコードのアップロードをあと少しのところで終えることが出来ませんでした。
落ち込むケイティでしたが、リックが本社まで行こうと言い出します。
家族の雰囲気は良くなり、和気あいあいと本社のシリコンバレーへ向かいます。リックとケイティの関係も良くなり始めていました。
映画『ミッチェル家とマシンの反乱』の感想と評価
生活の必需品となったスマホやインターネットシステムが、人間を標的に反乱を起こしたらどうなるのかというシリアスなテーマを、家族ドラマとして感動的に描いた作品です。
‟変人”家族の活躍と絆
娘のケイティは映画オタクで、自作の動画をYouTubeにアップすることを楽しんでいました。しかし、父リックはパソコン関係がまるっきり苦手。
娘のことを愛しているからこそ将来が心配で、夢を否定してしまうリックの思いと、夢を応援してほしいケイティの思い、そのどちらにも共感することができます。
父娘の亀裂の入った関係はマシンとの戦いの中で、少しずつ修復されます。そこには、リックにもケイティと同じように夢を持っていたことが大きく関わっています。
このふたりが情熱を捧げる対象はそれぞれ違います。ケイティは映画に、リックはDIYにかける思いやこだわりが人一倍ある、いわゆるオタク気質の似たもの同士。
互いに好きなものに注ぐ情熱の価値がわかる2人だからこそ、最終的に互いに歩み寄ることができ、絆を再び繋ぎ直せたのだといえます。
また、ケイティの弟アーロンは恐竜オタク。彼のオタク力を活かした活躍も本作のクライマックスの見せ場となります。
それでいて、母のリンダは何かのオタクというわけではありません。しかし、圧倒的な母性が彼女の最大の武器です。
一番の見せ場をさらっていったのは、リンダといえるかもしれません。「母は強し」というのをコミカルかつ不思議な説得力を持って描いたクライマックスのシーンは思わず笑ってしまいます。
アナログ感のある映像演出
本作は全編に渡って、手書きの落書きやスタンプのようなイラストが現れます。まるで、Instagramの加工のようです。それは、ケイティから見た世界を表しているといえます。
そして、この映像演出は『スパイダーマン スパイダーバース』(2018)がそうだったように、アニメーション映像の中にリアリティだけでなく、コミックのアナログ感を表現しており、個性的な遊び心として唯一無二の個性を引き立たせるのです。
キャラクターたちの生き生きした表情や愛らしい動きは見ていて楽しく、特に飼い犬のモンチの何とも言えないユニークな表情には笑いがこみ上げてきます。
まとめ
エンドロールでは、声優や製作スタッフらの名前が、彼らの家族写真と共にアルバム風に映し出されます。
本作のテーマである家族の絆というのを最後まで表現している心温まる映像です。
最後まで注目して観てはいかがでしょうか。
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