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Entry 2025/11/14
Update

『希望と不安のはざまで』あらすじ感想と評価考察。アサド政権が倒れ期待と恐怖に揺れる“シリアの今”を映し出す|いま届けたい難民映画祭2025vol.4

  • Writer :
  • 菅浪瑛子

連載コラム『いま届けたい難民映画祭2025』第4回

難民映画祭は、難民をテーマとした映画を通じて、日本社会で共感と支援の輪を広げていくことを目的とした映画祭で、世界各地で今まさに起きている難民問題、1人ひとりの物語を届けています。

今年で20回目を迎える難民映画祭。それは、「節目」であると同時に、「続いてしまった現実」を映す鏡でもあります。

2025年11月6日(木)〜12月7日(日)開催の第20回難民映画祭では、困難を生き抜く難民の力強さに光をあてた作品をオンラインと劇場で公開。公開される9作品をCinemarcheのシネマダイバー菅浪瑛子が紹介します。

今回紹介するのは、独裁の終焉を迎えたシリアで、将来への期待と未知への恐怖に揺れるシリア国民の声を映し出したドキュメンタリー『希望と不安のはざまで』(2024)です。

2024年12月、50年にわたるアサドの独裁政権が崩壊します。喜びに湧く群衆や10年ぶりに国に帰ってきた人々がいる一方で、新政権に不安を感じ国外へ逃亡する人々がいました。本作では、岐路に立つシリアの現状を映し出していきます。

【連載コラム】『いま届けたい難民映画祭2025』一覧はこちら

映画『希望と不安のはざまで』の作品情報


(C)Babel Doc

【日本上映】
2025年(フランス映画)

【原題】
Syria:Between Hope and Fear

【監督】
Jahouar Nadi、Yael Goujon、Apolline Convain

【作品概要】
2024年12月。シリアのアサド政権が崩壊し、50年にわたる独裁政権が終わりを告げました。独裁政権に対する反体制派やイスラム過激主義者ら、クルド人勢力などによる内戦で多くの人が国を離れました。

そんなシリアでは今、国外に逃れた人々が帰還し、街中では市民が喜びの声をあげるなか、新体制に不安を感じ、国を逃れる人々がいました。これからのシリアはどうなるのか、期待と不安が入り混じる人々の様子を捉えたドキュメンタリー。

難民映画祭では『アレッポ最後の男たち』(2017)や『ザ・ケーブ』(2019)、『シリア・ドリーム~サッカーにかけた未来』(2021)などシリアに関するドキュメンタリーをいくつも上映してきました。独裁政権が崩壊してもなお、見通せない現状が続いています。

映画『希望と不安のはざまで』のあらすじ


(C)Babel Doc

シャーム解放機構(HTS)が打倒アサド政権を掲げ武力活動を展開、2024年12月アサド大統領一家が国外に逃亡し、50年にわたるアサドによる独裁政権が崩壊しました。

独裁政権の崩壊を国民は喜ぶ一方で、新政権の体制に危機感を覚える人もいました。その多くはシーア派やアラウィ派、キリスト教徒など少数派の人々です。

HTSはイスラム主義の組織であり、最高指導者アブ・モハンマド・アル=ジャウラニは、西側からはテロリストとされ、かつてISやアルカイダ、ヌスラ戦線との関わりがあった人物です。そもそもHTSはヌスラ戦線から離脱・独立する形で生まれた組織でした。

HTSが少数派の宗教を弾圧してもおかしくないと、少数派の人々は国外へ逃れるため列を作っています。その一方で、アサド政権の弾圧や内戦によって国を逃れた人々が帰還しています。

そのような市民の様子とともに、大統領宮殿からアサド政権下で多くの人々が処刑されたサイドナヤ刑務所まで、アサド政権の闇の部分と、新体制を担うHTSの最高指導者アブ・モハンマド・アル=ジャウラニについて浮き彫りにしていきます。

期待と不安に揺れるシリアの今と、これからの展望とは。

映画『希望と不安のはざまで』感想と評価


(C)Babel Doc

2024年12月、アサド政権が崩壊し50年にわたる独裁政権が終わりを告げました。シリアにとうとう自由がやってきた、暗黒の時代は終わったのだと、喜ぶ人々の姿が映し出されると思いきや……そうではありません。

確かに、アサド政権の崩壊を喜び、新政権を歓迎している人々がいます。その一方で、新政権によって弾圧されるのではないかと危機感を覚え、国を逃れる人々がいました。

象徴的なのは、国境沿いの風景です。列をなして国外に逃れようとする人々がいる一方で、反対側では帰国する人々の姿が映し出されます。

なぜ、国を逃れようとするのでしょうか。それは、アサド政権に代わって国を掌握したのが、シャーム解放機構(HTS)だからです。

HTSはイスラム主義を掲げる組織であり、最高指導者アブ・モハンマド・アル=ジャウラニは、西側からテロリストとされている人物。他の宗教を認めないイスラム主義により弾圧されるかもしれないと不安視し、国を逃れる人の多くはシーア派やアラウィ派、キリスト教徒など少数派です。

そのように国を逃れる人がいる一方で、さまざまな事情により国に残るキリスト教徒の女性は、女性だけで外出せず必ず男性と共に外出するようにしていると言います。

しかし、必ずしもシリアの未来に希望がないわけではないでしょう。

若い世代の女性は今まで家でも息を潜め、声を上げずにいましたが今は自由に声を上げることができる、シリアは変わったと希望を言葉にしていました。

希望と不安に揺れるシリアの未来に希望があるように願うばかりです。

まとめ


(C)Babel Doc

アサド政権が崩壊し、50年にわたって続いた独裁から解放されたシリアの希望と不安に揺れる姿を映し出した『希望と不安のはざまで』。

本作は、市民の声を映し出すと共に、アサド政権が権力を把握していった様子や、シャーム解放機構(HTS)の最高指導者のアブ・モハンマド・アル=ジャウラニについての説明を映し出されます。

市民の声だけでなく、そのようなダイジェスト的な作りのドキュメンタリーにすることで、シリアに詳しくない人でもみやすいドキュメンタリーになっていると言えます。

第20回難民映画祭は2025年11月6日(木)〜12月7日(日)までオンラインにて開催されます。

難民映画祭詳細はHPにて

【連載コラム】『いま届けたい難民映画祭2025』一覧はこちら


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