連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第54回
2021年8月20日(金)にNetflixで配信されたリベンジアクション映画『スイートガール』。
ジェイソン・モモアとイザベラ・メルセードが拝金主義の製薬会社に復讐する父娘を演じています。
製薬会社の利権により妻を失った男が、娘と共に亡き妻の復讐の果たすための逃避行に出かけます。事件の真相に迫る彼らを待ち受けていた衝撃の事実とは、一体何だったのでしょうか。
今回は、ジェイソン・モモア主演のアクション映画のプロデュースを手がけてきたブライアン・アンドリュー・メンドーサが監督を務めた『スイートガール』のあらすじと作品情報をネタバレありでご紹介します。
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CONTENTS
映画『スイートガール』の作品情報
【公開】
2021年配信(アメリカ映画)
【原題】
sweetgirl
【監督】
ブライアン・アンドリュー・メンドーサ
【キャスト】
ジェイソン・モモア、イザベラ・メルセド、マヌエル・ガルシア=ルルフォ、エイミー・ブレネマン、アドリア・アルホナ、ラザ・ジャフリー、ジャスティン・バーサ、レックス・スコット・デイヴィス、マイケル・レイモンド=ジェームズ
【作品概要】
監督を務めたのは『フロンティア』(2018)『Road to Paloma(日本未公開)』(2014)『ワイルド・ブレイブ』(2019)などでジェイソン・モモアとタッグを組んできたブライアン・アンドリュー・メンドーサ。
脚本を務めたのは『イベント・ホライゾン』(1997)の脚本でも知られるフィリップ・アイズナーとグレッグ・フルビッツ。
父娘による復讐劇にて、父親レイ役を演じたのは『アクアマン』(2018)『コナン・ザ・バーバリアン』(2011)『DUNE/デューン 砂の惑星』(2021)で知られるジェイソン・モモア。
娘のレイチェルを『トランスフォーマー/最後の騎士王』(2017)『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』(2018)で知られるイザベラ・メルセード(旧芸名:イザベラ・モナ―)が演じます。
映画『スイートガール』のあらすじとネタバレ
ペンシルベニアの夜の街中で、警察の追跡に追い詰められたレイ。
スタジアムの屋上でFBI捜査官サラの説得を受ける彼は「こんなはずじゃなかった」と言い残し、川へ飛びこみました。
数年前、レイは家族3人での思い出作りに、妻と娘を連れ、山でキャンプをしていました。夢のようなひと時もつかの間、ほどなくして妻、アマンダのガンは深刻な状態に陥っていました。
ガン治療には「インファーマム」という高額な薬が必要でした。既にこれまでの治療費で生活が困窮していたレイは「スペロ」というジェネリック薬に希望を見出したものの、「インファーマム」の販売元であるバイオプライムという製薬会社が製造元に圧力をかけたことで販売が延期になってしまいました。
時を同じくしてバイオプライムのCEO、キーリーがテレビ出演していました。
彼と対談するモーガン下院議員は、大手製薬企業の利権によって薬の価格が不当に吊り上げられていると語ります。
テレビを観ていたレイは、「ジェネリック薬の販売を延期されたことで、妻の治療費が払えず、死んでしまう」と電話をしました。
キーリーはレイの批判に対し、まともに取り合いません。レイは「妻が死んだらお前を殺す」とだけ言い、電話を切りました。
病状が悪化していくアマンダはレイと娘のレイチェルが看取る中、静かに息を引き取りました。
それから6ヶ月後、悲しみが癒えぬまま、怒りに任せてジムでサンドバッグを殴るレイ。
そんなある日、ベネットという記者からバイオプライムには犯罪が絡んでいるという連絡を受けます。
ベネットに電話で指示される通り電車に乗り込み、駅を降り、彼の後を追いかけるレイ。その後をレイチェルが追いかけます。
ベネットはキーリーが黒幕であり、ダミー会社を通して行った賄賂収賄の証拠にたどり着いていました。
レイが取材の依頼を断ろうとした途端、ベネットは謎の男に刺殺されてしまいます。
地下鉄の車内で男と格闘になるレイ。激しい争いの末に腹部を刺され、レイチェルと共にホームへ投げ出されまでしまいました。レイとレイチェルは意識を失います。
それから2年が経ち、ジムでキックボクシングを会得したレイチェルはレイ同様に怒りを原動力とし、自身を鍛えていました。
ちょうどその頃、ガン治療薬を値下げする法案をモーガン議員が発表していました。バイオプライム製薬が抱える高額な治療薬の問題を議員が解決したのです。
レイはレイチェルに「背景に何があったか調べる」とだけ伝え、バイオプライムの資金調達パーティに潜入します。
無造作にピックアップした女性用ドレスを手に、消化器を準備し、裏口のトイレを封鎖します。
そしてウェイトレスに変装してキーリーに接近します。
身辺を警護するボディガードを消火器でかく乱、気絶させた後、キーリーを裏口へと追い詰めました。
レイは「地下鉄で記者を殺したのはお前の差し金か」と問い詰めます。
キーリーは自身の関与を認めつつも、バイオプライム会長のシャーが黒幕であると明かします。
その後意識を取り戻したボディガードの一人と乱闘になり、ボディガードを射殺。キーリーを締め上げて窒息死させ、その場から逃走しました。
家に帰ったレイは、「やめろと言ったのに」というレイチェルの声を無視し、逃走の支度を指示しました。
ピッツバーグ付近は既に警察が捜査網を敷いていました。気絶させたもう1人のボディガードがレイとキーリーの会話を聞いており、FBI捜査官のサラは犯人の捜索を始めます。
警察は過去にあったキーリーを脅迫したジアンからレイとキーリーのテレビ出演を通した電話音声へ到達。レイを指名手配にします。
殺人を犯し、逃走することを不安に思ったレイチェルは、レイに気付かれぬよう警察に電話します。
電話を取ったのはサラでした。レイチェルがキーリーの悪事を必死に訴えると、サラは力になると約束した上で、翌日プリペイド携帯でかけ直すよう助言しました。
翌朝、モーテルに現れた追手2人に勘づいたレイは、彼らの先回りをして殺し屋2人を返り討ちにしました。
警察はレイの家を捜索中に、モーテルでの逆襲を聞きつけ、親子の足取りを掴んでいました。
「こんなことは続けられない」と訴えるレイチェル。レイはバイオプライム会長のシャーについて調べていました。
レイが銃の試し撃ちをしている間に、レイチェルはプリペイド携帯でサラに掛けなおします。身の上話をした後、サラはレイチェルに対し、父親の復讐に付き合わされているだけなのではないかと質問します。
レイチェルの意思を確かめるため、「あなたはレイチェルよ」と語り掛けました。
森を移動し、道路へトラップを仕掛ける2人。シャーが豪邸から出てくるのを見はからい、護送車にトラップをはめていきます。
シャーの乗った車をトンネルの後方からショベルカーで足止めするレイ。その時、前方から謎の男がシャーに向かって焼夷弾を放ちました。
後方のレイは爆竹で目眩し。その後逃げてきたシャーに銃を突きつけ、記者殺しの黒幕を吐かせようとするものの、シャーは謎の男に射殺されてしまいました。
レイは車で逃走しようとするも、後輪に銃弾を受け、タイヤがパンクしてしまいます。
レイチェルは男の顔を覚えていました。謎の男とは地下鉄で記者を刺殺した殺し屋だったのです。
レッカー車を盗んだ2人は街のダイナーに殺し屋の車が停まっているのを発見。1人で食事する殺し屋の男に接触します。
男は「雇い主の命のを守っているだけだ」と言い、復讐に同情を示すものの、レイの邪魔をすると明言します。
男の雇い主とは、バイオプライムと会見した下院議員のダイアナモーガンでした。
その頃サラは、監視カメラの映像からレイたちの居場所を割り出します。
ピッツバーグに向かう途中の橋で追い詰められ、徒歩で逃走するレイ。
大量の警官に追い込まれ、レイはスタジアムへ逃げ込みました。観客席の裏からハシゴをつたい、屋根の上へと追い詰められました。
警察のヘリがレイにライトを当てました。サラが「助けに来た」と必死に説得するものの、レイは「こんなはずじゃなかった」と呟きました。
映画『スイートガール』の感想と評価
ジェイソン・モモア主演の女性アクション
本作で監督を務めたブライアン・アンドリュー・メンドーサは、数多くのモモア主演作品のプロデュースに携わってきました。
レイの娘レイチェルが大事にしているぬいぐるみの名前「パロマ」はWWEスタジオ配給作品、ジェイソン・モモア主演監督作『Road to Paloma(日本未公開)』(2014)にちなんでいます。監督なりの心配りなのでしょう。
これまで2人がタッグを組んできた映画作品はどれもアクションの演出が優れており、限定的な空間にて、置かれた環境や道具をうまく利用するという小気味良いアクションを生み出してきました。
例えば、映画『ワイルド・ブレイブ』(2019)では、助けを呼べない雪山を舞台に、麻薬組織と父息子との対決を描いていました。
現代を舞台にしながらも、非常に西部劇を思わせる作品で、電波が通じない、武器に限りがある、小屋に籠城するしかない、など様々な制約の中で、工夫が凝らされたアクションを見せていました。
本作も小気味良いアクションが見どころです。
キーリーを暗殺する資金集めパーティーのシーンでは、「実はレイチェルの幻視だった」という後の伏線となる「女性用ドレス」というキーワードがさり気なく提示されながら、かく乱に使用する消火器と他ルートをふさぐ準備とが丁寧に描かれていました。
モーテルで追手を返り討ちにするシーンでは、人が通れば音がする仕掛けを仕込む準備の描写がありました。
シャーを乗せた護送車をトンネルへと誘導するシーンにおいても、道路へのトラップ、大木を切り落として進路をふさぐなどの描写が丁寧に描かれており、この後の本番で使用する道具や仕掛けの前準備が丁寧に描かれることによる、襲撃が成功した時の達成感、カタルシスが感じられました。
ジェイソン・モモアによる安定感のあるアクションは言うに及ばずですが、本作の真の主人公である、イザベラ・メルセード演じるレイチェルのアクションが非常に逞しかったのが印象的です。
これまで戦う超ロボット生命体を応援したり、人質になっていた彼女が、己の拳とその場にあった道具と機転を利かせ、様々な困難に立ち向かっていく様子は、生きる権利を奪われた社会的弱者が拝金主義の金持ちに復讐するという構図とマッチしており、エンターテインメントと社会性との両立を見事に体現していました。
オープンワールドな舞台とストーリー
本作の出来事はピッツバーグの街とその郊外で繰り広げられます。この箱庭感が本作にゲームっぽさをもたらしているのではないでしょうか。
犯罪を犯し警察から追われる身となりながら、復讐を成し遂げていくストーリーにはミッション性があり、まさに『グランド・セフト・オート』のようです。
観客は犯罪者として警察に追われるレイの目線で本作を鑑賞するので、いかにして復讐を果たすか、警察に追いつかれないよう逃げるかを非常にスリリングに観ることが出来ます。
同ゲームでは犯罪を犯した後、警察官に見つかれば見つかるほど、指名手配のレベルが上がります。
本作のクライマックスでは、ゲーム同様にパトカーに追いかけられ、車を乗り捨てた後も、ヘリコプターで追跡されるという逃走模様が描かれていました。
段々と逃走が困難になり、追い詰められていく焦燥感は、ゲームで指名手配のレベルが星4以上になってしまう焦りに通じるものがありました。
また、パンクして使えなくなった車の代わりに選んだ盗難車がレッカー車というのも非常にGTAらしさを感じさせます。
まとめ
『スイートガール』は、イザベラ・メルセードの逞しいアクションが堪能できる作品です。
文字通りジェイソン・モモアが彼女に憑依することで、怒りを原動力に弱者を踏みにじる金持ちへの復讐を遂げていきます。
ストレスフルな時代に一縷の爽快感を感じることが出来る作品ですが、主人公が切り替わるクライマックス、生きる希望は楽しかった過去の思い出のみという悲観的なエンディングには胸が締め付けられます。
それは本作のアクションをはじめとした演出が細やかで丁寧だからであり、忙しない観客の感情誘導テクニックは、メル・ギブソン監督作品のようでもあります。
これから更なる活躍が期待されるイザベラ・メルセードのアクション、そして監督ブライアン・アンドリュー・メンドーサとジェイソン・モモアタッグの確かさが確認できるオススメの映画作品です。
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