連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』第5回
日本公開を控える新作から、カルト的評価を得ている知る人ぞ知る旧作といったアクション映画を網羅してピックアップする連載コラム、『すべての映画はアクションから始まる』。
第5回は、2019年12月20日(金)から新宿武蔵野館ほかで全国公開される『野獣処刑人 ザ・ブロンソン』です。
一般公開に先駆け、主演のロバート・ブロンジーを招いてのジャパン・プレミアが、11月5日(火)に新宿武蔵野館にて行われました。
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CONTENTS
映画『野獣処刑人 ザ・ブロンソン』の作品情報
【日本公開】
2019年(アメリカ映画)
【原題】
Death Kiss
【監督・脚本・撮影・編集・音楽】
レネ・ペレス
【キャスト】
ロバート・ブロンジー、リチャード・タイソン、ダニエル・ボールドウィン、エバ・ハミルトン、リーア・ペレス、ストーミー・マヤ
【作品概要】
2003年に死去したアクション俳優チャールズ・ブロンソンに瓜二つな新人俳優、ロバート・ブロンジーが映画初主演を果たした、2018年製作のバイオレンスアクション。
ブロンジー扮する謎の男が、街にはびこる悪党たちを次々と葬っていく様を描きます。
共演に、『ブラックホーク・ダウン』(2002)のリチャード・タイソン、『ヴァンパイア 最期の聖戦』(1999)のダニエル・ボールドウィン。
監督は、『カウボーイ&ゾンビ』(2012)や『エンドレス・ナイトメア』(2016)などの低コストアクション映画を手がけるレネ・ペレスで、ほかに脚本・撮影・編集・音楽も兼任しています。
映画『野獣処刑人 ザ・ブロンソン』のあらすじ
犯罪はびこるアメリカ。
その夜も、少女を拉致・監禁する人身売買組織が暗躍していました。
しかしそこへ、スーツとコートを纏って銃を持った謎の男が現れ、組織の人間を次々と射殺し、金品を奪います。
男はさらに麻薬の密売人も突き止め、同様に始末するのでした。
地元ラジオの人気DJダン・フォーサイトは、警察の怠慢によって犯罪が増加するこの街の危機を叫びます。
そんな中、車いす生活を送る少女イザベルを育てるシングルマザーのアナは、郊外に一軒家を買って暮らしていました。
実はその資金は、毎月送られる多額の現金が入った差出人不明の封筒を元手にしていたのです。
不審に思いつつその現金を当てにしてしまっているアナと、彼女を遠巻きに見つめる男。
彼こそ、夜な夜な悪党どもを始末してさまよう男“K”でした。
一方、麻薬密売組織を牛耳るボス、タイレルは、組織の一員で逮捕されてしまった息子を救うべく冷酷非道な手口を企てており、任務を失敗した仲間にも容赦ない制裁を加えていました。
そこへ、銃を持ったKが現れ、激しい銃撃戦へとなだれ込みます。
はたして、Kの狙いとは?そして、彼とアナとの関係とは?
映画『野獣処刑人 ザ・ブロンソン』の感想と評価
本作『野獣処刑人 ザ・ブロンソン』の基本的なあらすじは、主演のロバート・ブロンジーと瓜二つなチャールズ・ブロンソンの代表作『狼よさらば』(1974)からなる「デス・ウィッシュ」シリーズを、そのままなぞっています。
ブロンソンが演じた警察官でもFBIでもない一般人のポール・カージーが、悪党を殺すために夜の街に繰り出す様を描く同シリーズは、彼の当たり役となりました。
とりわけ本作は、『狼よさらば』とシリーズ第2作『ロサンゼルス』(1982)の影響を色濃く受けており、ブロンジー演じる謎の男Kがスーツ姿にコートを羽織って街を歩く姿は、まさにカージーそのもの。
寡黙なKが悪党たちを容赦なく始末していくシーンは、本当にブロンソンが蘇ったような錯覚に陥ることでしょう。
それでいて、『荒野の用心棒』(1965)や『ダーティーハリー』(1972)といったクリント・イーストウッド主演作にオマージュを捧げたであろうシーンも盛り込むなど、アクション映画マニアでもあるレネ・ペレス監督の趣向が全開となっています。
映画『野獣処刑人 ザ・ブロンソン』ジャパン・プレミアレポート
11月5日には、新宿武蔵野館にて本作のジャパン・プレミアが行われ、上映後には来日中のブロンジーが登壇、舞台挨拶を行いました。
第一声で、「日本に来られたことを大変光栄に思います」と感謝の意を述べたブロンジーは、日本の印象について、「とても教育が行き届いた素晴らしい国。東京の街はアメージング。次来ることがあれば、ぜひとも日本全国を回りたい」と、とても気に入った様子。
ハンガリー出身のブロンジーは、俳優になる前は軍人、大工、ミュージシャン、スタントマンなどの職を経て、スペインの西部劇テーマパークでチャールズ・ブロンソンのそっくりさんとして働いていたそう。
そこに訪れた本作監督のレネ・ペレスが、ブロンジーの写真を見て、ブロンソンとのあまりの激似ぶりに驚いたことが、出会いのきっかけとなったのだとか。
2017年に、ペレス監督による『From Hell To The Wild West』(日本未公開)で俳優としてデビューし、続く『野獣処刑人 ザ・ブロンソン』が初主演作となりました。
「撮影で苦労したシーンは?」という質問には、「冒頭の人身売買組織の住みかに乗り込むシーンや、空港でのバトルシーンは、夜中に撮影したので寒くて大変だった」と振り返りました。
「いつ頃から自分がブロンソンに似ていると自覚するようになった?」という質問には、「馬のブリーダーをしていた25歳ぐらいから、周りから似ているねと言われるようになった」と答え、さらにピーターという当時の同僚に呼ばれたあだ名「ブロンジー」をそのまま芸名にしたと明かしました。
「一番好きなブロンソン作品は?」という問いには、「彼の作品は全部好きだから、一つには絞れないよ」と悩むも、「強いて言うなら『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』(1969)かな」と回答。
「ブロンソンは私にとって尊敬するロールモデル」と語るブロンジーは、「私は彼の映画を観て演技を学んだし、今もなお彼に近付けるように役作りをしているから、彼に似ていると言われることは本当に光栄」と、あらためてブロンソンへの敬愛の念を表しました。
ファンサービスや気配りもまさに“ブロンソン級”
質疑応答の後で行われた写真撮影では、ブロンソンがかつて出演した化粧品「マンダム」のCMで見せた、「うーん、マンダム」と言ってアゴをさする仕草を披露し、観客を喜ばせたブロンジー。
さらには、観客一人ひとりとの写真撮影の場も設けてくれました。
その際もブロンジーは、「もう少しポスターの位置を変えた方がいいかな」と、自らポスターを移動させて写真写りが良くなるようセッティング。
些細なことかもしれませんが、こうした細かい気配りができるあたりからも、彼の人柄がうかがえるというもの。
真偽の程はさておき、チャールズ・ブロンソンも漢気あふれる人物だったとされますが、そういう意味でも、ブロンジーは身も心も“ブロンソン級”な人物でした。
まとめ
今後も出演作が控えているというブロンジーですが、2020年1月には、ペレス監督と三度目のタッグとなる新作の撮影に入る予定だとか。
「次回作ではボディガードを演じるよ」と語るブロンジーの今後に、注目しましょう。
「野獣処刑人 ザ・ブロンソン」は、12月20日より新宿武蔵野館で公開。