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Entry 2020/08/04
Update

映画『エクスペリメント・アット・セントレオナルズ女子刑務所』ネタバレ感想と考察評価。ゾンビVS女囚人のプリズンバトルが勃発!|未体験ゾーンの映画たち2020【延長戦】見破録15

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  • 20231113

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2020【延長戦】見破録」第15回

世界のあらゆる国の、隠れた名作から怪作・珍品映画まで紹介する、劇場発の映画祭「未体験ゾーンの映画たち2020【延長戦】見破録」。第15回で紹介するのは『エクスペリメント・アット・セントレオナルズ女子刑務所』。

世界各国から集めた死刑囚を収容する、絶海の孤島の刑務所。そこでは囚人たちを利用して、様々な医療実験を行っていました。

ここまで聞けば、カンのいいB級ホラー映画ファンなら察するでしょう。こんな実験、ロクな結果になりません。そう、刑務所という閉鎖空間でゾンビが大発生したのです。

……というゾンビ映画の定番的な設定で展開するこの作品。果たして誰が生き残り、どんな結末が待っているのでしょうか。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2020延長戦見破録』記事一覧はこちら

映画『エクスペリメント・アット・セントレオナルズ女子刑務所』の作品情報


(C)2019 GOLDEN CRAB FILM PRODUCTION LIMITED ALL RIGHTS RESERVED.

【日本公開】
2020年(イギリス映画)

【原題】
Patients of a Saint / Inmate Zero

【監督・脚本】
ラッセル・オーウェン

【キャスト】
ジェス・チャンリャウ、フィリップ・マッギンリー、クリストファー・デューン

【作品概要】
死刑囚相手に怪しい実験を行う医療刑務所にゾンビが発生、人々の脱出劇を描くパンデミック・サバイバルホラー映画。映像業界でストーリーボードやコンセプトアートを手がけ、その後アートディレクター、脚本そして監督と活躍の場を広げた、ラッセル・オーウェンの作品です。

主演はアメリカ生まれでフランスに育ち、今はイギリスを中心に演劇などでも活躍しているジェス・チャンリャウ。ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』第3シーズン(2013)やイギリスのドラマに出演するフィリップ・マッギンリー、『28日後…』(2002)で主人公のキリアン・マーフィーの父親役を演じた、クリストファー・デューンらが出演しています。

映画『エクスペリメント・アット・セントレオナルズ女子刑務所』のあらすじとネタバレ


(C)2019 GOLDEN CRAB FILM PRODUCTION LIMITED ALL RIGHTS RESERVED.

晴れた日の浜辺に座る女、ストーン(ジェス・チャンリャウ)。波内際に立つ老いた女は、彼女の母でしょうか。その女はストーンの前で、海の中に入っていきます。

我に返ったストーンは、今は刑務所にいました。目の前に座るブルックス博士(フィリップ・マッギンリー)が、彼女と面談をしていました。

博士は死刑囚である彼女に、減刑と引き換えに医療実験に協力するよう求めていました。彼女の経歴も何もかも把握している博士は、説得を試みます。

彼女はアメリカで、警護官としてアレン議員の護衛を務めていました。その護衛対象の議員と家族を殺害した罪で、死刑判決を受けていたのです。

ストーンに対し、実験に協力すれば間もなく予定された死刑が延期され、再審を求める時間稼ぎも出来る、と提案するブルックス博士。

しかし彼女は刑務所を出る望みを捨てていました。そして博士の言う実験にも、不信感を抱いているようです。そこに窓を突き破って鳥が落ちてきました。

何事かと駆け付けた看守に、博士は何でもないと説明します。監房に戻される彼女に、もう一度考え直せと告げた博士。

アイルランド本島から南西に1209㎞離れた、人口1109人のセントレオナルズ島。そこにセントレオナルズ国際刑務所兼医療研究所は、251名の様々な国籍を持つ重罪犯を収容していました。

2人の看守、ストーンに敵意を抱くウッドハウスと、老いて親切なレノンにより、ストーンは囚人たちが騒ぐ女子房に戻されます。

1つの房では大柄な黒人の女囚ブッチャーが、キッセル神父(クリストファー・デューン)に懺悔していました。

彼女の牢には新たな囚人、コンウェイがいました。ストーンを見て、特殊部隊の隊員がするタトゥーをしている、と指摘したコンウェイ。

しつこく話しかける相手に、お前とは仲間じゃない、そして自分の領域を犯すな、と告げるストーン。2人のやりとりを、他の囚人たちは注目していました。

コンウェイはカミソリで自作した武器を隠し持っていました。最初からスートンを襲う意図も持っていた彼女が襲い掛かるや、この喧嘩騒ぎを大声で煽り始める他の女囚たち。

ストーンは足を切られましたが、コンウェイを取り押さえ失神させました。看守のウッドハウスとレノンが騒ぎを知って駆け付けます。

レノンは出血したストーンを、病室に連れて行きますが、そこの女医は囚人を世話する意志など持ちません。多くの病人がぞんざいに扱われている、病室のベットに寝かされたストーン。

女医は乱暴に彼女の傷口を縫い始めます。そこに看守が容態の悪い男囚を連れてきました。女医は治療を放り投げ、ここは女子房だと抗議します。

しかし実験室から広がった病人が溢れ対応しきれず、患者は病室に寝かされました。その容態は尋常ではないと判断した女医は、男のベットの脇に仕切りを立てました。

病室にはコンウェイも運び込まれ、彼女はベットに拘束されました。女医は現れたキッセル神父に、男囚に臨終の秘跡を授けるよう告げます。

結局ストーンの傷はブルックス博士が縫いました。女医はどこかに電話して事態を報告しています。神父と会話を交わすストーン。

その夜、彼女はふと目覚めます。どこかから唸り声が聞こえていました。あの男囚にベットの横に立つ仕切りから、手が姿を現します。

そこには異様な姿の男囚がいました。受けた医療実験の結果なのか、今日はガンが直った、と呟いて倒れる男。女医は死んだと思った男囚が動いて驚きました。

眠りについたものの、異様な気配でまた目覚めたストーン。見るとあの男囚が、ベットの女囚の肉を喰っていました。すると手が伸び、ストーンの口を塞ぎます。

それは看守のレノンの手でした。レノンは音を立てぬようゆっくり彼女のベットを動かし、病室から連れ出そうとしました。

しかし病人の1人が叫び、その声でゾンビ化した男囚が、彼女とレノンに気付き襲いかかってきます。急いでベットを出すと、病室の扉に鍵をかけるレノン。

しかしゾンビは扉を破り、レノンに掴みかかります。ストーンはレノンが落した銃でゾンビを撃ちますが、レノンはゾンビが吐いた血を浴びました。

警報が鳴り響く中、彼女はレノンに何が起きたか聞きます。コンウェイを含む病室の他の囚人も今やゾンビと化し、逃げ遅れた女医に襲い掛かります。

女囚房の囚人たちは牢から出ると、不安げに様子を伺っていました。そこにウッドハウスら看守が来て、監房に戻れと叫びますが誰も従いません。

ブルックス博士は事態を刑務所の女所長に報告します。ゾンビと重罪犯が溢れた状況に博士は不安を訴えますが、所長は耳を貸さず酒を飲み続けます。

女囚房ではリーダー格の囚人、ブッチャーが皆を代表して看守たちに向き合います。ウッドハウスは彼女に銃を向けましたが、その時唸り声が聞こえました。

房の近くまで戻ってきたストーンは、危険な気配を感じレノンと隠れます。突然発症し、ゾンビ化して痙攣する看守を、思わず撃ってしまうウッドハウス。

しかし周囲には闇に紛れてゾンビが潜んでいました。一斉に走りだし襲いかかるゾンビに、看守たちは無我夢中で発砲します。

看守は次々襲われ、囚人たちも逃げまどいます。ブッチャーは落ちていた銃を奪うと、ウッドハウスを殴り倒しました。

ゾンビが通りすぎた隙をつき、ストーンはブッチャーに呼びかけると、レノンと共に逃げ出します。看守のレノンの持つ鍵で、女囚房から逃れ出たストーン。

それに続いてブッチャーほか何人かの女囚と、ウッドハウスら看守らが脱出したのを確認すると、ストーンは房の扉を閉めました。

厨房に逃げ込んだストーンたちは襲われましたが、ブッチャーが肉切り包丁でゾンビの首をはねて倒します。看守と囚人たちは言い争い、単独行動しようとした囚人はゾンビの餌食になります。

うめき声と悲鳴、そして銃声が響き渡るセントレオナルズ刑務所。

1人酒を飲みモニターに映し出された刑務所内の混乱を見つめている刑務所長。その部屋にストーンたちが逃げ込んで来ました。

ストーンやブッチャーに銃を向ける所長。しかしドアの外にゾンビが現れると、差し迫った危機を理解します。

ストーンは所長の机の上に、囚人たちの医療カルテがあると気付きます。医療実験に同意しなかった者も、研究の対象にされていたと知り憤る囚人たち。

薬が切れ騒ぎ出した女囚をなだめるブッチャー。看守のウッドハウスは、一般房のフランシスが脱走し女子房の紛れていたと、女装した彼を追求しました。

周囲が混乱する中ストーンはモニターを見て、ブルックス博士が取り残されていると気付きます。

彼女は単身、銃と懐中電灯を手にして博士の救出に向かいます。そして電灯を点けた時、ゾンビ一群がいると気付いたストーン。

そのゾンビたちは立ったまま天井の蛍光灯を見つめ、全く動きませんでした。ストーンが手でゾンビの視界から蛍光灯に光を遮ると、ゾンビは彼女に対して反応しました。

しかし、また蛍光灯を見つめ始めるゾンビ。ストーンはゾンビをそのままにして、先へと進み博士の部屋に到着します。

ストーンは博士と共に部屋を抜け出します。彼女は死んだ看守の銃を博士に渡し、2人は無事刑務所長の部屋に到着しました。

所長は刑務所の外に住む、島の住人である妹の身を案じていました。ウッドハウスは自分だけでも逃れる方法を考え、ブルックス博士は薬の切れた女囚モーゼスを世話します。

看守のレノンは発熱を訴えていました。それでも看守と囚人たちは、共に刑務所長室に身を潜めるしかありません。

セントレオナルズ国際刑務所兼医療研究所の中に、ゾンビのうめき声が響き渡ります…。

以下、『エクスペリメント・アット・セントレオナルズ女子刑務所』のネタバレ・結末の記載がございます。『エクスペリメント・アット・セントレオナルズ女子刑務所』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2019 GOLDEN CRAB FILM PRODUCTION LIMITED ALL RIGHTS RESERVED.

所長室では、刑務所の図面を見ながらストーンとブッチャーが、脱出の方法を検討していました。刑務所を出ても、島から逃れる術は無いと告げる刑務所長。

本土と連絡が途絶えても、確認が来るのは5日後になると所長は教えます。するとゾンビの血を浴びた看守のレノンが発症しゾンビ化し始めました。

彼に銃を向けても撃つことの出来ないストーンは、彼を椅子に縛りました。しかし発症を止める術は、ブルックス博士にもありません。遂にゾンビ化したレノンを、ストーンは泣きながら射殺しました。

時だけが過ぎていきます。所長室のモニターは、刑務所の門に押し寄せる人々を映し出していました。刑務所の外にも感染が広がっていたのです。

生存者は救いを求め、刑務所にやって来たのです。彼らをどうすべきか看守と囚人たちの意見は割れました。

ストーンと博士、外に娘がいるブッチャーと、妹がいる所長の4人が正門に向かいます。何とか脱出できないかと考えを巡らす、残った看守のウッドハウスたち。

4人は門に到着します。しかし外には生存者だけでなく、ソンビもいるようでした。所長は覚悟を決め、門を開きました。

なだれ込むゾンビを射殺する銃声が響きます。結局1人の娘クロエを救えただけでした。自分の娘とは会えずブッチャーは泣き崩れます。

蛍光灯の光を見つめ停止したゾンビが、日の光の下では活動していたことはストーンの計算外でした。4人はクロエを連れ所長室に戻りました。

クロエに自分の妹を見なかったか訊ねる所長。しかしショック状態の彼女は何も答えません。クロエに絡み出す女囚を制止したブッチャー。

結局彼らは刑務所から動けず、刻々と時が経過していきました。ブルックス博士は、改めてストーンになぜこの刑務所にいるのか尋ねました。

9年間殺人者のプロファイリングをしていた博士は、彼女はそれに当てはまらないと考えていました。一連の行動からその思いは確信に変わります。

ストーンは博士に真実を打ち明けます。彼女が護衛していた議員は、家族を虐待していましたが、彼女はそれを見て見ぬふりをしていました。

しかしある日、議員は自分の家族を殺害します。それを知ったストーンは議員を殺しましたが、全ての殺人が彼女の罪だとされたのです。

彼女は議員の家族の命が失われたことを、自分の責任だと痛感していました。その結果自分を罰する思いで、判決を受け入れたと語るストーン。

彼女の言葉を博士は信じます。その時クロエがラジオの音楽を流します。その調べを聞いた皆は、それぞれの思いに浸ります。

クロエの元に現れ、ゾンビに気付かれぬよう音楽を停めるストーン。謝るクロエに、必ず助け出すと約束します。博士は不安な時の頼りとして、常用していた薬を捨てました。

一方で仲間と共に、自分たちだけで脱出を計画している看守のウッドハウス。そしてストーンが所長室に入った時、刑務所長が突然自殺を試みます。

医療刑務所で起きた惨劇の責任から、自らを撃とうとした所長をストーンは止めました。しかし銃声を聞いて、扉の外に集まったゾンビたち。

ストーンはなぜ外に連絡し、ヘリコプターによる救助を求めないと責めますが、所長は自分たちは見捨てられたと、深く絶望していました。

部屋に1体のゾンビが入ってきます。それは所長の妹でした。ぞのゾンビを撃とうとするストーンを、必死に制止する所長。

ゾンビは所長が飾っていた自分の写真を見て、記憶を取り戻したようです。その写真立てを砕くと、唸りながらも襲撃を止めました。

ウッドハウスたちは、鉄格子扉の向こうに押し寄せたゾンビを銃で撃ちますが、その勢いを停められません。そこにブッチャーが現れ、ゾンビの手を切り落とします。

するとゾンビが動きを止めました。ゾンビは銃声は臭いなどに引き寄せられる、と考えたウッドハウスは、囮でゾンビを引きつければ逃げられると考えます。

同僚を電気ショックで気絶させ、その手に斬り付け出血させ、ゾンビの囮にして従う者を引き連れ脱出を図るウッドハウス。

所長とストーンは、ゾンビと化した所長の妹を鎖で縛り、引き連れて脱出を図っていました。そのゾンビを見たウッドハウスは驚いて発砲します。

ウッドハウスに従う女囚は、一般房から逃げて来たフランシスは刑務所内の抜け道に詳しいとにらみ、脅して道案内をさせていました。

所長の連れたゾンビを殺すことを諦め、去って行くウッドハウス。クロエの元には銃を手にした、彼女を邪魔者に思う女囚が現れます。

博士と合流したストーンは、ブッチャーからウッドハウスの所業を見せられます。そこに銃声が響き、その方向へと走り出した3人。

クロエを殺そうとした女囚は、博士に薬を与えられた女囚モーゼスによって射殺されました。クロエを抱きよせるブッチャー。

皆で逃げようとしたストーンたちに、ウッドハウスが銃を向け武器を捨てさせます。そして彼は、所長から救助ヘリを呼ぶコードを聞き出そうとします。

所長自身の要請でないと意味はないと言われ、ゾンビと化した妹に銃を向け、所長を従わせようとするウッドハウス。

クロエが抵抗し、その隙に隠し持った注射をウッドハウスに従う女囚に打ったストーン。

ウッドハウスはゾンビに噛まれます。パニックになり、ゾンビ化が始まる彼を蹴り、電気椅子に座らせて感電死させたブッチャー。

生き残った者は一緒になって脱出を目指します。フランシスの手引きで進みますが、所長自身が救助を要請せねば助けは来ません。

連絡する必要がありますが、ホットライン電話がある部屋の様子が判りません。小柄なクロエがダクトに入り様子を伺うと、部屋には5体のゾンビがいました。

するとモーゼスが自分が囮になり、ゾンビを引きつけるので、その隙に部屋に入ってくれと提案します。ブルックス博士は止めましたが、彼女は行動を開始します。

彼女のおかげで一同は無事部屋に入れました。しかしモーゼスはゾンビに傷つけられ、自分の運命を悟りました。

フランシスが電話をつなぎ直すと、所長は相手にコード伝え状況を報告します。

電話を終えた時、引き連れていた所長の妹であるゾンビが、いきなり所長を襲い噛み付きました。ブッチャーはゾンビの頭に肉切り包丁を叩き込みます。

傷付いた体で、刑務所だけでなく全島が実験対象だった、と打ち明ける所長を、銃で撃って止めを刺したブルックス博士。

ホットラインの回線も切断されていました。そこにゾンビの群れが近づいてきます。ブッチャーは扉を閉め、その隙に皆が逃げ出します。

しかし1人で隠れ、逃れようとしたフランシスはゾンビの犠牲となりました。

ストーンは博士とクロエと共にゾンビが潜む女囚房を進みます。キッセル神父もゾンビ化していました。ストーンは2人を先に逃げさせます。

自分の房に戻り、獄中生活の希望であった「宝島」の本を手にしたストーン。しかしそこに潜んでいた、ゾンビ化した女囚コンウェイに襲われます。

あわやという時、現れたブッチャーが包丁でゾンビを首を切断し、彼女を助けました。

足を掴まれたクロエは、落ちていた銃でゾンビは射殺します。しかし恐怖に駆られた彼女は、駆け寄ってきた博士を誤って撃ってしまいます。

気にするな、と彼女に語りながら絶命したブルックス博士。

動揺するクロエの元にブッチャーが駆け寄り、慰めながら立たせると、ストーンと共に脱出を図り、電気椅子のある部屋の前に到着します。

椅子には囮となった女囚モーゼスが座り、体は電流で痙攣していました。ストーンが外に通じる扉の鍵を壊している間に、ブッチャーは電流を止めました。

ブッチャーはモーゼスを電気椅子から解放しようとして、ゾンビと化した彼女に噛まれます。そしてクロエは、自分が発症しゾンビ化が始まったと気付きます。

騒ぎを聞きつけ集まってくるゾンビの群れ。ブッチャーはクロエを固く抱きしめ、自ら電気椅子に座ると、ストーンに逃れるよう言いました。

ソンビの群れが迫った時、ケーブルを咥え、クロエと共に感電死したブッチャー。

1人セントレオナルズ国際刑務所刑務所から脱出したストーンは、浜辺にたどり着きます。そこは母との思い出に現れた、美しい場所でした。

そこにヘリコブターが降りてきます。武装した男たちが降り立つと、ストーンに手錠をかけてヘリに乗せ、島から脱出します。

刑務所が、そして島が小さくなります。しかしストーンの身に感染の兆候が現れました。

激しく痙攣し発症したストーンの体は、徐々にどす黒くなっていきます…。

映画『エクスペリメント・アット・セントレオナルズ女子刑務所』の感想と評価

参考映像:『28日後…』(2002)

死者が甦って人を襲う!ゾンビ映画お馴染みの設定ですが、ゾンビ発生の理由付けにクリエイターたちは苦労してきました。

ジョージ・A・ロメロ監督の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968)、『ゾンビ』(1978)のように、原因不明の不条理劇にするのもアリでししょう。

やがてゾンビが凶暴化し人を襲い始めた原因を、感染症に求める映画が登場します。

多くの国では、まだ身近な存在の狂犬病。狂犬病の犠牲者こそ、世界に伝わる多くのモンスター伝説の、原型であるとも考えられています。

感染症に原因を求めた結果、お馴染みのゾンビ化現象が一気にリアルな存在となりました。

感染症による凶暴化映画には様々な作品がありますが、一番有名なのはダニー・ボイル監督の『28日後…』でしょう。全力疾走で迫る感染者の群れは、新たなゾンビ像を世界に提示しました。

『28日後…』公開の同じ年、ゲームの映画化作品『バイオハザード』(2002)が公開されます。実験により生み出されたウィルスがゾンビ化の原因、凶暴で様々な姿となったゾンビが登場し、ゾンビ映画の世界観は一気に広がりました。

『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』登場後、無数に生まれたゾンビ映画。しかしこの2作品が登場した2002年以降、ゾンビ物は新たな設定とファン層を獲得したといえるでしょう。

そしてドラマ『ウォーキング・デッド』(2010~)シリーズに代表される、現在のゾンビブームがやって来たのです。

『エクスペリメント・アット・セントレオナルズ女子刑務所』も、まさに2002年以降のゾンビ映画のスタイルに忠実な作品です。

大きな役ではないですが、『28日後…』のクリストファー・デューンが出演しているのは、原点へのリスペクトでしょうか。

密閉空間でゾンビと対決!


(C)2019 GOLDEN CRAB FILM PRODUCTION LIMITED ALL RIGHTS RESERVED.

怪しげな実験が行われる刑務所、キャットファイトを繰り広げる女囚、迫るゾンビに協力を余儀なくされる囚人と看守たち。刑務所、そして絶海の孤島から逃げられるのか! というB級映画ファンなら、泣いて喜びそうな設定が詰まった本作。しかし映画を見ると、意外な印象を受けるかもしれません。

世界に死刑囚を集めた、国際刑務所兼医療研究所という凄い設定ながら、『バイオハザード』的な実験室・研究所を見せる描写はありません。無くてもいいですが、きっと予算的にそんなセットは用意できなかったのでしょう。

そしてゾンビの描写。アブない表情で走り迫り来る、実におっかないゾンビですが、ゴアシーンは少な目。生首を転がしただけとか、音だけで表現したお手軽描写が多数登場します。

派手なスプラッター描写を期待したゾンビ映画ファンなら、がっかりする展開です。

限られた空間を舞台にしながら、この手のジャンル映画にしては長めの、100分を超える上映時間を持つ本作。監督のこだわりは、一体どこにあるのでしょうか。

登場人物の描写を重視したゾンビ映画


(C)2019 GOLDEN CRAB FILM PRODUCTION LIMITED ALL RIGHTS RESERVED.

死刑囚として収監された、複雑な過去を持つ主人公。職務に耐え兼ね薬に頼る博士、刑務所の外に家族のいる囚人と刑務所長。

ホラー映画にありがちな類型的な登場人物たちに、監督・脚本のラッセル・オーウェンは深みのある設定を与えました。それが他の人物と絡み、様々なドラマを形成します。

お蔭で話は複雑化、しかも複数の登場人物のエピソードが絡むため、各個人の描写は薄くなり説明不足に陥ります。主人公が大切にする『宝島』の本も、あまり活かされていません。

ゾンビも感情を取り戻したり、弱点があるような無いような、他にない複雑な設定を与えています。ところがそれもストーリーに上手く絡んできません。

劇中で疾走するゾンビが、どういう訳だか立ち止まった様に、映画もテンポ良く疾走できず、つんのめってしまった感があります。

まとめ


(C)2019 GOLDEN CRAB FILM PRODUCTION LIMITED ALL RIGHTS RESERVED.

B級映画ファンのツボにはまる、様々な設定を持つ映画『エクスペリメント・アット・セントレオナルズ女子刑務所』。ハードな描写を期待する人には物足りないかもしれません。

しかしゾンビ映画名物の、登場人物の様々な葛藤…ゾンビ化する仲間を殺していいか悩む姿! といった描写がお好みの方には、そんなシーンが豊富ですからお薦めです。

本作主役のジェス・チャンリャウ、彼女はデヴィッド・フィンチャーの初監督作、『エイリアン3』(1992)に登場した、シガニー・ウィーバーのように頭を丸坊主にして熱演しています。

監督や彼女が『エイリアン3』(この作品は、宇宙刑務所が舞台という設定です)を、どこまで意識しているか判りません。ですが本作は、実のところ数々のゾンビ映画よりも、『エイリアン3』を強く意識した作品ではないか、と私は睨んでおります。

ちなみに『エイリアン3』は製作前からトラブルが絶えず、デヴィッド・フィンチャーは完成した作品を嫌いました。撮影現場では監督とシガニー・ウィーバーが対立するなど、散々なエピソードを数多く残している映画です。

それに引き換え本作の製作風景は、写真で見る限り、実に和気あいあいとした雰囲気。ジェス・チャンリャウと監督が、今後もも活躍できるよう応援させて頂きます。

次回の「未体験ゾーンの映画たち2020【延長戦】見破録」は…


(C)2019 by Trauma Center, LLC, and Trauma Film Production PR, LLC

次回の第16回は、相棒を殺された刑事ブルース・ウィリスが、果たして証人の女性を守れるのか!クライム・アクション映画『THE LAW 刑事の掟』を紹介いたします。お楽しみに。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2020延長戦見破録』記事一覧はこちら




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