連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile065
莫大な資本力によって映像化困難とされてきた脚本を次々と映像化してきたNETFLIXオリジナル映画の世界。
2018年には配信からわずか1週間で4500万人以上が視聴したとされるNETFLIXオリジナル映画『バード・ボックス』が公開。
目視したら死亡してしまう「何か」に支配された地球を舞台に、「見ない」ことで生き残ろうする人間を描いた本作は目隠しをして様々な挑戦を行う「バード・ボックス・チャレンジ」を生み出してしまい、悪い意味でも世界で話題となってしまった作品でもあります。
今回はそんな『バード・ボックス』をあらすじネタバレを交え、作品としての魅力をご紹介します。
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映画『バード・ボックス』の作品情報
【日本公開】
2018年(NETFLIX独占配信映画)
【原題】
Bird Box
【監督】
スサンネ・ビア
【キャスト】
サンドラ・ブロック、トレヴァンテ・ローズ、ジョン・マルコヴィッチ、サラ・ポールソン、ローサ・サラザール
【作品概要】
『未来を生きる君たちへ』(2011)でアカデミー外国語映画賞を受賞したスサンネ・ビアが監督したNETFLIXオリジナル映画。
『ゼロ・グラビティ』(2013)のサンドラ・ブロック、『ムーンライト』(2017)のトレヴァンテ・ローズ、そして様々な映画に出演するジョン・マルコヴィッチなど名だたる俳優が出演していることでも話題となりました。
映画『バード・ボックス』のあらすじとネタバレ
無線から「安全な場所がある」と男の声がマロリーに語りかけます。
しかし、その場所は川を下っていく必要があり子ども連れではとてもたどり着ける場所ではないとも言っていました。
マロリーは男の子(ボーイ)と女の子(ガール)に、家を出て川を下っていく事を宣言。
耳を澄まし、会話をせず、何かがあったら知らせ、そして何より絶対に目隠しを外さないことを約束させます。
自身も目隠しをし2人の子どもと一緒に家を出るマロリーは、予め張っておいた線や、覚えている手すりへの歩幅を頼りに川沿いに辿り着き、そこに隠してあったボートに乗り込みます。
5年前、画家として生計を立てていたマロリーは、姉のジェシカから世間がパニックになっていることを聞きます。
ロシアで集団自殺が流行し、動機も原因も不明であることから世界に動揺が広がっていました。
他者と関係を持たない生活を続けるマロリーは自身が妊娠し、出産間近であるにも関わらずあまり出産を望んでいませんでした。
病院で経過をみる産婦人科医の女性も、望まない子であるなら、子どもが欲しくても出来ない人に面倒を見てもらうべきではと養子に出すことを提案。
ジェシカに付き添ってもらった病院の渡り廊下で、数分前には普通だった女性が診察後にはガラス窓に頭を自ら叩きつけている様子を目撃したマロリーはロシアと同じ現象が始まったと勘付き、ジェシカに車を出すように指示します。
街中でも同じ現象が次々と発生していて道は大混乱となり、マロリーがスマートフォンを取るため後ろの座席を見た際にジェシカが空に浮かぶ「何か」を目撃したことでジェシカが自殺衝動にかられわざと車を横転させ、自ら車から出た後にトラックにはねられ死亡してしまいます。
妊娠しているマロリーが事故にあった現場を目撃し、助けに駆け付けた女性も空の「何か」を目撃し、炎上した車に自ら入り焼死。
その様子を見たトムは空を見上げないようにマロリーに言い、近くの家へと誘導します。
マロリーを助けるために死亡した女性の夫ダグラスが彼女の保護を反対しますが、家主が迎え入れてくれたためマロリーとトムは家の中へ避難することが出来ました。
何人かの避難者と共に現状を語り合うマロリー。
彼女は自分を助けようとした女性が、空を見て「ママ…」と言ったことを話しますが、ダグラスによると彼女の母は既に死亡しているとのことでした。
3日が経過し、ニュースも放送されなくなりました。
食料が底をつき始めたころ、玄関に何者かのノックが響き渡ります。
家の中に迎え入れられた女性のオリンピアは妊婦であり、外の世界は食料も少なくなりパニック状態であると言います。
食料が尽きてきたことに危機感を覚える家主は、監視カメラ越しに外を見ることで「何か」の正体を見破りチャンスを得ようと自らを椅子に縛り付け監視カメラの映像を見ることにしました。
しかし、監視カメラ越しにも自殺衝動を引き出す効果があるらしく家主は自らの頭を机に強打し死亡。
食料を調達する必要が出たマロリーたちはスーパーで働くチャーリーの証言をもとに、彼が勤めるスーパーへ向かうことを決断します。
視界ではなくカーナビや接近警報センサーを頼りに運転するため、全てのガラスを黒く塗った車で複数人を家に残しスーパーへ出発。
道の途中で「何か」の襲撃を受けたものの、スーパーへ車を突っ込ませることで無事スーパーにたどり着くことに成功しました。
鍵がかかっていたためかスーパーの物資は手つかずであり、食料や必要物資を集めるマロリーたち。
途中マロリーはスーパーの中で生き延びていたインコを保護します。
搬入口への扉から助けを求める声が聞こえマロリーたちはドアを開けようとしますが、その男が狂乱した男だと分かり、チャーリーが身を挺して外へ追い出します。
狂っている男は「何か」を見ても死亡せず、チャーリーを殺害すると再びスーパーへと入ろうとしました。
玄関から逃げ出し無事家へと戻ったマロリーたち。
しかし、警察官の女性と麻薬の売人の男性の2人は全員の隙をつき車を奪って逃走してしまい、ダグラスは全員が敵であると疑心暗鬼を深めます。
数日が経過し、またしてもノックの音が響き渡ります。
狂乱した男の件もありマロリーたちは警戒しますが、オリンピアが助けを求める声に同情しゲイリーと言う男を家に入れてしまいました。
ゲイリーの話によると、精神病棟から逃げ出した人間が「何か」を見せるために人を襲っていると話し、保護を求めます。
精神を病んだ人間は「何か」を見ても自殺衝動を起こさないと言うことでした。
ゲイリーを家に入れることを反対したダグラスを眠らせ車庫に入れたトム。
その夜、ゲイリーを無断で入れたことをオリンピアはマロリーに謝罪し、自分に何かがあったらお腹の中の子どもを頼むと言いました。
映画『バード・ボックス』の感想と評価
『ドント・ブリーズ』(2016)の登場によって「音を立てたら死亡」と言うジャンルが一躍人気となり、『クワイエット・プレイス』(2018)や『ザ・サイレンス 闇のハンター』(2019)など後続作品が次々と製作され、1つのジャンルと言えるほどに発展しました。
2018年に配信され世界で話題となった本作は、それら作品と同じ方向性でありながら「見たら死亡」という斬新な発想で新たな物語を展開。
音を立てずに生きることは注意していれば決して不可能ではありません。
しかし、視界を失うことはしっかりとした訓練を受けていなければ容易なことではなく、そこには様々な困難が待ち受けています。
本作の中でもガラスを全面目張りした状態の車を運転するシーンは特に斬新かつ緊張感がたっぷりで、カーナビと接近警報センサーを駆使し目的地を目指す不可能ではなさそうな描写が「バード・ボックス・チャレンジ」を生み出してしまったとも考えられます。
出演俳優も豪華であり常に緊張感に満ちた2時間を楽しむことができる本作は、「未知の生物の襲来」や「ポスト・アポカリプス」が好きな人にオススメしたい1作です。
まとめ
「見たら死亡」と言う奇抜なアイデアを前面に出しながらも、本作で描かれるのは主人公の「母」としての成長の物語。
子どもを望まなかったが産まないと言う決断も養子に出すという決断も出来なかったマロリーが、崩壊する世界の中で何を想うのか。
マロリーの成長と彼らの旅路の行き着く果てをぜひNETFLIXでご覧になってください。
しかし、本作を鑑賞しても命を伴う危険性があることを理解し、決して「バード・ボックス・チャレンジ」には手を出さないようにしてください。
次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…
いかがでしたか。
次回のprofile066では、カナダ製の静かなゾンビホラー映画『飢えた侵略者』(2017)をネタバレあらすじを交えご紹介させていただきます。
9月11日(水)の掲載をお楽しみに!