連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile144
2020年9月、東京ディズニーランド内のエリア「トゥモローランド」にアトラクション「ベイマックスのハッピーライド」が新設されました。
ベイマックスのフォルムは年齢や性別を問わず広く愛され、2021年の4月からは体験型のフォトロケーションのオープンも予定されています。
今回はヒューマンドラマとしてのイメージが強いディズニー映画『ベイマックス』(2014)を、本作の真の顔である「ヒーロー映画」としての魅力をネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。
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CONTENTS
アニメ映画『ベイマックス』の作品情報
【公開】
2014年(アメリカ映画)
【原題】
Big Hero 6
【監督】
ドン・ホール、クリス・ウィリアムズ
【声の出演】
スコット・アドシット、ライアン・ポッター、ダニエル・ヘニー、T・J・ミラー、ジェイミー・チャン、デイモン・ウェイアンズ・Jr、ジェネシス・ロドリゲス、ジェームズ・クロムウェル
【作品概要】
ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ製作による54作目の長編映画。
監督を務めたのはウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオに所属し『くまのプーさん』(2011)などの監督作を持つドン・ホール。
アニメ映画『ベイマックス』のあらすじとネタバレ
未来の都市サンフランソウキョウ。
天才少年ヒロはその能力を違法な賭博として行われるロボット・ファイトに注いでおり、育ての親である叔母に迷惑をかけてばかりでした。
みかねた兄のタダシは自身の通うロボット大学にヒロを案内します。
電磁サスペンションの研究をするゴー・ゴーやプラズマの研究をするワサビ、炭化タングステンの研究をするハニー・レモン、そして科学好きのフレッドと出会ったヒロは、兄がケアロボット「ベイマックス」を制作していることを知ります。
兄の師が世界的な研究者ロバート・キャラハンであること知ったヒロは大学への入学を希望し、そのためには研究発表会に出展しキャラハンの目に留まるような研究を見せつけることだと、タダシに焚き付けられます。
発表会当日、ヒロは頭に装着した装置から脳波を発信する神経電動装置を用いた「マイクロボット」を発表。
マイクロボットは1つ1つは小さいロボットでありながらも、多数を用い吸着させあうことで物の運搬から人間の移動までさまざまなことを可能にする画期的な発明でした。
大企業クレイテックの社長であるクレイから発明の販売を求められるヒロでしたが、キャラハンがクレイの性格と過去の悪道を批難しヒロに販売を断らせ、代わりにヒロを大学へと推薦します。
目論見が成功しタダシはヒロを褒め称えますが、直後に発表会場で火事が発生。
多くの生徒たちはすでに会場を後にしていましたが、キャラハンがまだ会場内にいることを知ったタダシはヒロを会場外に待たせると会場へと走っていきます。
しかし、その直後に爆発が発生しキャラハンとタダシは帰らぬ人となりました。
失意に暮れ大学にも通わないヒロは、心配するゴーゴーたちの連絡も無視していたある日、ヒロの声に反応しベイマックスが起動します。
ベイマックスはヒロの服にあった1つのマイクロボットが何かに反応していることを知ると、ヒロの精神状態の安定のために反応先を突き止めようと行動。
急いで後を追うヒロとベイマックスは、廃工場へとたどり着きます。
工場内では何者かによってマイクロボットが大量に複製されており、2人は歌舞伎柄の仮面を着けた男に襲われ命からがら逃走。
家へと逃げ延びたヒロはタダシが死んだ火事が、マイクロボットを盗み出すために意図的に起こされたものだと勘付き、兄の仇討ちを決意します。
ヒロはベイマックスに戦闘プログラムを書き加え、ベイマックス専用のアーマーを制作し犯人の正体を探るため動き出します。
再び廃校上を訪れたヒロは、工場裏の港で仮面の男が海底から装置の破片を拾い上げている現場を目撃。
隠れながら様子を伺うヒロでしたが、ヒロを心配し後をつけていたゴーゴーたちが車で駆けつけたことによって、仮面の男にバレてしまいます。
激しいカーチェイスの末に何とか逃げ切ったヒロたちは、実は大富豪の御曹司であるフレッドの家に匿われます。
アーマーをつけたベイマックスでも歯が立たなかったことから、ヒロはベイマックスのスキャン能力と戦闘力を向上させるアーマーを作成。
ゴー・ゴー、ハニー・レモン、ワサビ、フレッドは自分の研究と特性を活かしたアーマーをヒロと共同で作成します。
ベイマックスの広範囲スキャンによって仮面の男が離島にいることが判明し、6人は離島へと降り立ちます。
隔離地区に指定されている離島は元は何かの研究施設のようであり、監視カメラにはクレイテックがかつてテレポーテーションを可能にする装置を実験していた様子が撮影されていました。
しかし、人間を利用した実演の際に装置が壊れ、機械に搭乗していたアビゲイルが次元の狭間に取り残されただけでなく、施設も再建不可能となってしまいます。
実験に使われていた装置を仮面の男が海底か引き上げていたことを思い出したヒロは、仮面の男の正体がクレイではないかと疑います。
直後、6人は仮面の男に襲われますが、ベイマックスの新しい機能によってマイクロボットを制御している仮面を剥がすことに成功しました。
アニメ映画『ベイマックス』の感想と評価
マーベル・コミック原作のヒーロー映画
日本では主人公のヒロとケアロボットのベイマックスによる絆を中心とした「ヒューマン映画」として宣伝された映画『ベイマックス』。
実際に本作はヒロが兄のタダシが残したベイマックスと出会ったことで、兄を失った悲しみと怒りを乗り越えていくヒューマン映画としての魅力を持っています。
しかし、本作はヒューマン映画としての魅力だけでなく「アベンジャーズ」シリーズでお馴染みの「マーベル・コミック」原作ならではの「ヒーロー映画」としての強い魅力を持ち合わせていました。
天才ロボット工学者と言うスキルを持ち合わせた主人公の挫折と再起、仲間たちとの出会い、ヒーローとしての決起、そしてヒーローグループ「ビッグ・ヒーロー・シックス」の結成。
各登場人物の特性を活かしたハイクオリティな戦闘シーンも存在する本作は、ディズニー映画であると同時に「マーベル映画」としても自信を持っておすすめ出来る作品です。
日本を舞台としたサイバーパンクSF
原作コミックス「ビッグ・ヒーロー・シックス」が日本のヒーローを題材としていたこともあり、本作も舞台が日本をアレンジした国「サンフランソウキョウ」となっています。
「日本」という国は不思議なことに「未来都市」との組み合わせの相性が非常に良く、古風でありながら最先端という真逆の要素が視覚的な映像効果を引き出します。
中でも、名作映画『ブレードランナー』(1982)を始めとした「サイバーパンク」においては「日本」の持つ印象は強く、本作でも「歌舞伎」や「桜」と言った和の要素が印象的に描写されていました。
映画好きにはたまらない要素でもある「少し間違った日本感」もあり、映像を見ているだけでも楽しめる作品です。
まとめ
「マーベル映画」にお決まりの要素である「マーベル・コミックの名誉会長スタン・リーのカメオ出演」も存在し、ヒーロー映画として胸を張って紹介できる映画『ベイマックス』。
「アベンジャーズ」シリーズとして馴染み深い作品となったマーベル・コミック原作映画シリーズ「MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)」がディズニーの傘下での製作となった現在、本作は「MCU」との繋がりや続編が期待されている1作でもあります。
ヒーロー映画の足がかりとしても、ヒロとベイマックスの2人の絆を描いたヒューマン映画としても、高いクオリティで描かれるサイバーパンクSF映画としても、映画『ベイマックス』は年齢を問わずおすすめしたい作品です。
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