連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile109
進化し続ける技術の先にある未来はキラキラとした便利な社会。
様々な「SF」映画でそんな輝かしい未来が描かれる一方で、輝かしい未来とは真逆の絶望の未来も描かれてきました。
今回は「輝かしい未来」と「絶望の未来」のちょうど中間にあたるような「サイバーパンク」な世界観を持った映画『MUTE ミュート』(2018)をネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。
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映画『MUTE ミュート』の作品情報
【日本公開】
2018年(NETFLIX独占配信映画)
【原題】
Mute
【監督】
ダンカン・ジョーンズ
【キャスト】
アレクサンダー・スカルスガルド、ポール・ラッド、ジャスティン・セロー、セイネブ・サレー、ギルバート・オーア
【作品概要】
『月に囚われた男』(2010)や『ミッション: 8ミニッツ』(2011)で知られるダンカン・ジョーンズが製作したSFサスペンス映画。
主演にドラマシリーズ「トゥルーブラッド」で知られるアレクサンダー・スカルスガルド、共演に「アベンジャーズ」シリーズで「アントマン」を演じるポール・ラッドが起用されたことでも話題となりました。
映画『MUTE ミュート』のあらすじとネタバレ
幼少期、レオは首を切る大きな怪我をしたものの、母親の宗教的理由で適切な処置を受けることが出来ず、声を発することが出来なくなってしまいます。
30年後のベルリン、文明が発達した世界でもテクノロジーに頼ることなく生きるレオは恋人のナディーラから携帯電話をプレゼントされます。
ナディーラはナイトクラブのウェイトレスであり、レオは同じ店でバーテンとして働いています。
世間では脱走兵の問題や、企業によるクローン人間の作成が社会問題となっていました。
ある日、接客中にナディーラに手を出そうとしたイギリス人の客に掴みかかったことで、レオはクラブの支配人であり裏社会のボスとも言われるマクシムから叱責を受けます。
その騒動の後、ナディーラは誰かと電話をし、夜になるとレオの家に憔悴しきった面持ちで現れました。
疲れ切っているナディーラにメモ帳に描いている絵のことを聞かれたレオは、彼女を自身の工房に案内し、様々な装飾をあしらった自作のベッドを見せます。
そのベッドはまだ完成していないようでしたが、いずれ自分とナディーラで使いたいと伝えるレオに対し、ナディーラはレオに伝えていない自身の過去を理由に身を引きたいと言います。
お互いを想っていることからなし崩し的に一夜を共にしますが、翌朝、目を覚ましたレオの前からナディーラは姿を消していました。
仕事の時間になってもナディーラが現れないことを不安に思うレオは、再び現れたイギリス人の客に煽られたことで殴りかかってしまい、クラブを解雇されます。
娼館で働くナディーラの同居人ルーバから「ナディーラには秘密がある」と聞いたレオ。
家に帰るとナディーラからプレゼントされた携帯電話に謎の人物から「ブラックマーケットへと行け」とメッセージが届きます。
そのころ、ブラックマーケットではマクシムお抱えの闇医者であるビルが、自身の娘ジョシーをドイツから脱出させようと偽造IDの発行をブラックマーケットの取締役に依頼していました。
しかし、ブラックマーケットの取締役であるスチュワートはクラブでレオを煽った張本人そのものであり、ブラックマーケット内でレオの姿を見つけると彼を追い出そうと躍起になり、ビルは偽造IDを手にすることが出来ませんでした。
スチュワートとレオは一触即発の状況になりますが、対峙の途中でレオはナディーラが誰かと電話をした際にレオのメモ帳を使っていたことを思い出します。
残されたページに炭をつけることで彼女のメモした住所を知ることが出来、レオはおとなしくブラックマーケットから去っていきました。
ナディーラのメモの住所はオズワルドと言う金持ちの家で、レオはオズワルドを訪ねることにします。
オズワルドは「ニッキー」と呼ばれる人物から男女関係なく買う買春商売の客であり、レオをニッキーの使者と勘違いします。
オズワルドはニッキーから買った人物の写真を残しており、その写真の中からナディーラを見つけたレオは自身の知らないナディーラを知ることになります。
娼館の近くで買春を生業としているグループの飛空艇を発見したレオはマクシムの車を奪い飛空艇を追跡し、買春商売を行っているニッキーと対面します。
レオはニッキーからナディーラの情報を聞き出そうとしますが、ニッキーから情報を得ることは出来ず、逆にニッキーの怒りを買い用心棒たちに襲われそうになります。
しかし、レオはニッキーが娼館の元締めであるマクシムに内緒で娼館の女性を使い買春商売を行っていることを見抜いており、ニッキーに対して逆に脅迫を仕掛けることで、無傷でその場を切り抜けることに成功。
未だナディーラの情報がなく途方に暮れるレオは電話番号から電話の場所を追跡できることを知り、ナディーラの携帯の場所を追跡してみようとします。
電話の追跡機能がオフになっていたため追跡をすることはできませんでしたが、電話番号に登録された住所を知ることが出来、レオはその場へと足を運びます。
そこはナディーラとルーバの家であり、2人の家からナディーラの母親の電話番号を手に入れたレオはその電話番号から住所を見つけ出そうとします。
一方、ビルはマクシムからマクシムに内緒で買春商売を行っていたニッキーを拷問するように命令されます。
ジョシーのIDや戸籍が未だ手に入らず不満を抱えるビルでしたが、移植手術の天才であり相棒である医者のダックと共にニッキーを拷問。
マクシムはニッキーが、ニッキーの秘密を知るレオと何を取引したのかに注目していました。
ダックとビルはレオは単にナディーラを探していただけだと勘づいていましたが、マクシムが納得しないと感じ仕方なく拷問を続けることにします。
拷問が終わり、ダックの経営する移植病院を訪ねたビルは病院内の診察室や更衣室に隠しカメラがあることに気づきます。
録画されていた内容に少女の着替えの動画があり、ダックが小児性愛者であることを確信したビルは激昂しダックを殴り、二度と少女への治療を行わないようにと脅します。
マクシムから連絡があり、ビルとジョシーのIDの準備が終わりアメリカへ渡ることが出来ると聞いたビルは喜び、ダックと共に祝いとしてショッピングモールのダイナーへと向かいました。
映画『MUTE ミュート』の感想と評価
ダンカン・ジョーンズ監督が『ブレードランナー』(1982)に感銘を受け、5年の歳月を使い製作した映画『MUTE ミュート』。
本作は監督が描きたかった「サイバーパンク」な世界観を堪能できる作品で、今の社会よりも明らかに進んではいるもののどこか荒んだ街並が眼前に広がり、「SF」映画でありながら強い「人間味」を感じます。
言葉を喋ることの出来ないレオを演じたアレクサンダー・スカルスガルドの演技も秀逸で、顔や所作だけでレオの怒りや悲しみを全て表現しきっており、「無言(mute)」が「無感情」とはイコールにならないことが分かります。
「サイバーパンク」な世界観での人間味溢れる追跡劇が臨場感たっぷりに描かれる本作は、「SF」が好きな人にも「ハードボイルド」が好きな人にもオススメの出来る作品です。
まとめ
『月に囚われた男』の精神的続編でもある本作は、同作でサム・ロックウェルが演じたサム・ベルがとあるシーンで登場します。
画面内がサム・ロックウェルだらけとなる異常な空間はダンカン・ジョーンズ監督らしい表現で、『月に囚われた男』を未鑑賞の方にも印象に残ること間違いなしといえます。
Netflixオリジナル映画『Mute ミュート』は、綺麗なだけじゃない少し荒んだ未来を描いた「サイバーパンク」な世界を鑑賞したい人にオススメの作品です。
次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…
いかがでしたか。
次回のprofile110では、SNSから見る「表の顔」だけで構成された人格の問題を描いた『ブラックミラー シーズン2 ずっと側にいて』をネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。
7月8日(水)の掲載をお楽しみに!
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