連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第294回
脚本家・映画監督としても活躍する俳優・佐藤二朗が漫画原作を手がけ、脚本・主演を務めた映画『名無し』が、2026年5月22日(金)より全国ロードショーを迎えます。
触れた物体は人々の視界から消え、生物に触れるとその命を奪うという右手の能力を持つために、数奇な運命を背負う“名無しの怪物”の希望と絶望を描くサイコ・サスペンスです。
「山田太郎」と名付けられた“名無し”を演じるのは、『爆弾』(2025)の怪演が評価され、第49回日本アカデミー賞で最優秀助演男優賞を初受賞した佐藤二朗。
監督は『悪い夏』(2025)で社会の闇に落ちていく人間を克明に描いた城定秀夫。
目に見えない凶器を振りかざし、無差別殺人が行われる狂気に満ちた映画『名無し』をご紹介します。
映画『名無し』の作品情報

(C)佐藤二朗 永田諒/ヒーローズ(C)2026映画「名無し」FILM PARTNERS
【日本公開】
2026年(日本映画)
【原作・脚本】
佐藤二朗
【監督・共同脚本】
城定秀夫
【キャスト】
佐藤二朗、丸山隆平、MEGUMI、 佐々木蔵之介 他
【作品概要】
俳優をはじめ、脚本家・映画監督としても活躍する佐藤二朗が、初めて漫画原作を手がけたサイコ・バイオレンス漫画『名無し』を実写映画化。『悪い夏』(2025)の城定秀夫が監督を務めました。
『爆弾』(2025)で怪演を魅せた佐藤二朗が、本作では主演として「山田太郎」と名付けられた謎の男“名無し”を演じます。
また、身寄りも名前もなかった少年期の“名無し”の名付け親となる巡査・照夫役を丸山隆平、“名無し”と同じ児童養護施設で育ち共に暮らしていた山田花子役をMEGUMI、そして無差別殺人を止めるべく奔走する刑事・国枝役を佐々木蔵之介がそれぞれ演じています。
映画『名無し』のあらすじ

(C)佐藤二朗 永田諒/ヒーローズ(C)2026映画「名無し」FILM PARTNERS
昼下がりのファミレスで、何人もの客が殺害されるという残忍な殺人事件が発生。
防犯カメラには、犯人と思われる坊主頭の中年男が映っていましたが、男の手に凶器らしき物は何もなく、「男が近づいて軽く接触するだけで、人が血を吹き出して倒れていく」という異様な光景が記録されているのみでした。
捜査を進めていった警察は、坊主頭の男が11年前に万引きの疑いで調書を取られた「山田太郎」と同一人物であることを突き止めました。
少年期の山田太郎は、名前も無く身寄りも無い孤児の少年でした。同じような境遇の少女と一緒にいるところを親切な警官・照夫が保護し、「山田太郎」と名付けられて養護施設で育ったのですが……。
保護された時から、山田太郎は頑なに右手を縛って使わないような素振りをしていました。
そして年月が経ち、中年男となった山田太郎の周囲で無差別殺人が発生。事件の鍵を握るのは、やはり彼の右手でした。
その手が向かう先には、必ず何かが起こる……真相を究明しようとする警察は、目に見えない力の秘密に隠された、恐るべき真実から逃がれることはできるのでしょうか。
映画『名無し』の感想と評価

(C)佐藤二朗 永田諒/ヒーローズ(C)2026映画「名無し」FILM PARTNERS
本作で佐藤二朗が演じる“名無し”は、右手で触れた全てを消してしまうという異能を持つ未曾有の怪物です。それを持つがゆえに、彼は社会で生きていくのに苦しんでいました。
ですが、男は少年期からこれまで、殺人鬼として表沙汰に出ることなく生きてこられました。それには、ある理由がありました。そして、狂気の殺人を犯すようになったのにも、理由があります。
誰もが何かのきっかけで、誰かを殺したくなり凶器を振り回すことになる可能性はあるでしょう。‟名無し”は見えない凶器でその恐怖を実現してしまったから、未曾有の殺人鬼となってしまったと言えます。
「悲しきモンスター」とも言える‟名無し”。ラストのワンシーンでは、彼の存在の意味が描かれると共に、‟普通の人として生きる難しさ”が浮き彫りにされています。
本作の原作と主演は佐藤二朗が務め、監督はクズのようなキャラクターや陰湿な人間ドラマを、滑稽でありながらもシビアに描き出す手腕に優れた城定秀夫です。
個性的なコンビで映画化され、ここで描かれる‟怪物の無差別殺人”は、凶器が目に見えないだけに恐ろしい。日常生活に潜む異常心理を見えない凶器で表した究極のサイコサスペンスの誕生と言えるでしょう。

(C)佐藤二朗 永田諒/ヒーローズ(C)2026映画「名無し」FILM PARTNERS
まとめ

(C)佐藤二朗 永田諒/ヒーローズ(C)2026映画「名無し」FILM PARTNERS
俳優・佐藤二朗が脚本と主演を務めた映画『名無し』をご紹介しました。
‟名無し”の行く先には、血の雨がふり、殺害された人々がバタバタ倒れていきます。無差別大量殺人に正視できない残虐シーンもあります。
作品の生みの親である佐藤二朗も、‟名無し”については自分が放心状態にならなければできない役だったと述べています。
被害者の血しぶきを浴びながらも、終始無表情で次の獲物に向かう‟名無し”。何を考えているのか、時折虚空を見上げて顔を歪める‟名無し”。
無言で打ち下ろす素手の凶器に、言い尽くせない恐怖を醸し出す佐藤二朗の圧巻の演技、インパクトのあるラストシーンに注目してください。
映画『名無し』は、2026年5月22日(金)より、全国ロードショー。
星野しげみプロフィール
滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。
時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。




































