連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第186回
中国の人気俳優ファン・ビンビンの主演映画『緑の夜』。人生を懸けた危険な冒険に挑む2人の女性を描いています。
『緑の夜』は、2024 年1月19 日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷シネクイントにてロードショー!
自由のため大きな賭けに出るジン・シャをファン・ビンビン、謎めいた緑の髪の女を是枝裕和監督の『ベイビー・ブローカー』(2022)に出演したイ・ジュヨンが演じています。
監督は、長編デビュー作『Summer Blur』(2020)で世界的に高く評価されたハン・シュアイです。
2人の女性の魅かれあうあやしげな絆とは・・・。『緑の夜』をご紹介します。
映画『緑の夜』の作品情報
【日本公開】
2024年(香港映画)
【原題】
GREEN NIGHT
【脚本・監督】
ハン・シュアイ
【脚本】
レイ・シェン
【製作】
リウ・ジイ、ワン・ジン
【編集】
トム・リン
【キャスト】
ファン・ビンビン、イ・ジュヨン、キム・ヨンホ、キム・ミングィ
【作品概要】
ハン・シュアイ監督が脚本も手掛けた『緑の夜』は、2023年ベルリン国際映画祭でワールドプレミア上映され、テディ賞/パノラマ観客賞にてノミネートされた作品です。
中国から韓国に渡ったヒロインを演じるのは、ハリウッド作品『355』(2022)や『武則天-The Empress The EmpressThe EmpressThe EmpressThe Empress 』(2015)などで活躍した、ファン・ビンビン。『梨泰院クラス』(2022)でのブレイクや是枝裕和監督の『ベイビー・ブローカー』(2022)で好演したイ・ジュヨンが、緑の髪の女を演じています。
本作は、ファン・ビンビンの俳優復帰作としても大きな話題を呼び、2023年東京国際映画祭 ガラ・セレクション部門にも出品されました。
映画『緑の夜』のあらすじ
苦難に満ちた過去から逃れようと中国を離れ、韓国で保安検査員の仕事をするジン・シャ。
ある日、保安検査場での仕事中、ミステリアスなオーラを放つ緑の髪の女と出会います。
彼女が何か怪しいと察知し、上司に報告しますが、上司は取り扱いません。
そのうちに、彼女は去っていきました。
そのまま仕事が終わり帰宅するジン・シャの前に、先ほどの緑の髪の女が現れます。
そして、緑の髪の女はジン・シャの家についてきました。
2人は、ふとしたきっかけで危険で非合法な闇の世界に巻き込まれていきます。
果たして、彼女たちの運命の先に待ち受けるものは……。
映画『緑の夜』の感想と評価
夫から離れ韓国で仕事をする中国人のジン・シャ。華僑の彼氏から運び屋の仕事を請け負っている、緑の髪の女。
本作『緑の夜』は、この2人が遭遇する人生の岐路ともいうべき大冒険の夜を描いています。
次々と困難に見舞われた主人公ジン・シャが、そこから追い立てられるように、出会ったばかりの緑の髪の女と逃走を図ります。
監督のハン・シュアイは、「本作の最初の草案は、『テルマ&ルイーズ』(1991)に似ていました。」と語っています。犯行後に逃走する2人の女性を、それぞれ異なる視線で撮影したかったそうです。
リドリー・スコット監督作品の『テルマ&ルイーズ』(1991)は、平凡に暮らしていた女性2人が、ある事件をきっかけに犯罪者として逃亡するロードムービーです。
窮屈な男性優位社会から逃れるように、2人の女性は逃避行を続けながら人生を謳歌。女性の逞しさを感じる作品です。
本作『緑の夜』でも、ジン・シャと緑の髪の女は、ある出来事をきっかけにバイクで香港の夜の街へ走り出します。
もやがかかったような夜の闇に浮かび上がる街の灯りは美しもありますが、これから何が起こるのかと、予測不可能な不穏な感じを与えます。
道路を照らす街灯のひとつひとつにも、魔法がかかったような夜の演出がされて、主人公の心の内を表現したかった監督の創意工夫が見受けられることでしょう。
予期せぬことから逃避行の夜を迎えるジン・シャを演じるのは、中国の俳優ファン・ビンビン。
韓国映画やハリウッド作品にも出演する実力派の彼女が、次々と襲い掛かる困難に立ち向かわざるを得なかった女性の複雑な心理を見事に表現しています。
まとめ
ファン・ビンビンとイ・ジュヨンが演じる2人の女性の逃避行を描いた『緑の夜』をご紹介しました。
事件に巻き込まれ逃亡する2人の行く末はどうなるのでしょう。
夫や社会から虐げられた生活を送っていたジン・シャのラストの決断は、ある意味「女性解放」とも言える小気味の良いものです。
本作は香港と韓国での共同制作。韓国語、中国語をお互いに学び合って演技するファン・ビンビンとイ・ジュヨンのコミュニケーション力の高さにも注目です。
映画『緑の夜』は2024 年1月19日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷シネクイントにてロードショ!
星野しげみプロフィール
滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。
時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。