FILMINK-vol.22「McCarthy, Haddish and Moss: Out of The Kitchen」
オーストラリアの映画サイト「FILMINK」が配信したコンテンツから「Cinemarche」が連携して海外の映画情報をお届けいたします。
「FILMINK」から連載22弾としてピックアップしたのは、 映画『ザ・キッチン』に出演している3人の女優たち。
メリッサ・マッカーシー、エリザベス・モス、ティファニー・ハディッシュによる、個性的でユーモア溢れるインタビューをお楽しみください。
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CONTENTS
出演の決め手は
映画『ザ・キッチン』で共演したメリッサ・マッカーシー、ティファニー・ハディッシュ、エリザベス・モス。本作での役割について、インタビューに答えました。
──本作の監督・脚本を手がけたアンドレア・バーロフは、あなたたちが今まで演じたことのないような役柄だったため、もう出演は決まりだと考えていたそうです。それも本作の魅力の一つでしたか?
メリッサ・マッカーシー(以下メリッサ):私はアンドレアが脚本を書いたこと、彼女が初めて監督することに本当に興味をそそられました。キャラクターも物語も本当に魅力的で大好きで、その一部になりたかったんです。いつもそのようなモチベーションから出発します。
ティファニー・ハディッシュ(以下ティファニー):私はオファーされたわけではなくて、アンドレアを“狩りに”行ったんです!
──それはどういう意味ですか?
ティファニー:脚本を読んでタイトルを検索したら、コミック・ブックが原作なことに驚きました。色んな人にアンドレアの所へ連れてってと頼んみ込んで、彼女にやっと会えた時に「やっぱりこの映画に出なけゃいけないわ」と感じたんです。
──どのように脚本を入手したのですか?
ティファニー:マネージャーのアシスタントが持っていて、彼女は「これはクールな脚本だけれど、あなたには向いていないかも」って答えたんです。私は「なになに、読ませてよ。…やだ、絶対出たい!」
──ご自身がその役に相応しいと感じた理由は?
ティファニー:私は本作が描いている、抑圧された世界を知っていて、そこにいたことがあるからです。そこから自分自身や家族、女友達、人々にとってより良い生活を送る方法を見つけ出そうと奮闘する。
映画のキャラクターたちが強いシスターフッド(女性解放の目標における女性間での連帯)で結ばれていて、皆で力を合わせて動いているのが大好きなんです。女性が力を与えられ、一緒に素晴らしいものを作るために働く。そんな物語が大好きです。
──エリザベス、あなたはどうですか?
エリザベス・モス(以下エリザベス):私は一番最後に出演が決まりました。アンドレア・バーロフが監督と脚本、それにメリッサとティファニーが出演。それだけで「オーマイゴッド、今まで一番クールな体験になる!」と確信しました。
そして、本当に素晴らしかった!カーブを描いた脚本の中で役作りをすることができ、とても楽しかったです。
役へのアプローチ方法
──キャラクターにご自身をどうやって投影させたのですか?
メリッサ:キャラクターを分解して観察し、深く掘り下げていくことから取り組んでいきます。自分自身の事はあまり考えません。自分とは全く異なったキャラクターを演じる事はとても興味深いです。映画で“私”を見せる必要は無いと考えています。
ティファニー:私は衣装を身につけてヘアセットも終えた時、自分のおばあちゃんがそこにいるかと思いました。それから時々母親も!ですから「この状況なら、おばあちゃんとママはどうする?」と想像しました。彼女たちはギャングスタだから!
──アンドレアは制作にあたって多様性を重要視し、“ブロンドの完璧なエンジェルたち”は求めていないと語っていました。
エリザベス:ちょっと!私たちに失礼じゃない?(笑)
ティファニー:完璧なブロンドのエンジェルでしょ?
──多様性はどれほど重要ですか?
メリッサ:私たちは物語を語る上での一部であり、現実の世界を見せたいと思っています。
エリザベス:(この映画で描かれている) 70年代、地獄のキッチンのテーマは多様性です。
メリッサ:そう、私たちが住んでいる世界を見せたいんです。サイズ、形、色、愛、様々なものをもつ世界を。観客は「まるで私みたい、あれは私の母、こっちは嫌いな人、こっちは好きな人」って共感することができる。それが語り手としての責任の一部だと思います。
参考にした作品は
──今まで犯罪者の女性と会ったことがありますか?
メリッサ:実は、キャンディーバーを一回盗んだことがあって。5歳の私は犯罪者でした。
ティファニー:みんな知ってるわよ。
エリザベス:みんな会ったことがあるの?私は一度もありません!
映画の冒頭での私のキャラクターは、最終的に彼女自身も身をおとす犯罪について何も知りません。無実であることを確かめたかったんです。映画のためにアイルランドの暴徒に関するドキュメンタリーを最近たくさん見ました。
ティファニー:私は“ブラックスプロイテーション”(70年代に生まれたアフリカ系アメリカ人がターゲットのバイオレンスな映画ジャンル)をチェックしました。「アフロヘアにするべき?」って。
エリザベス:「私の髪はどうなるの?」って感じだったもんね。
ティファニー:『コフィー』(1973)の主人公みたいによ!って。
──アイルランドの暴徒に関するドキュメンタリーをご覧になったのですか?
エリザベス:ええ、何が当時起こっていたのか知りたかったので。おかげで撮影開始した時、そんなに世間知らずには見えなかったはずです。
──具体的に暴徒について教えてください。
エリザベス:例えばどこた対立していたか?イタリアの暴徒たち?でも彼らは同じことに興味があったようです。それは近隣の支配と人々を殺すこと。
ティファニー:あとはコーンビーフとスパゲッティ?
エリザベス:食べ物ね!それは違うと思うけど…(笑)。
とにかく、マフィアについて興味深いのは、彼らは膨大な暴力と冷酷さで結び付けられていることです。これは異質で興味深い事実でしたから、ドキュメンタリーの鑑賞は映画のキャラクターを現実的に受け止めるのに役立ちました。
女性監督との仕事と男性監督との違い
──女性監督との仕事と男性監督との仕事、大きな違いは何ですか?
ティファニー:女性監督たちは、あの足のひどい痛みについて、よく理解してくれますね。
エリザベス:分かりません、質問自体が性差別的だと感じるのでいつも答えに苦労するんです。「男性と女性の間に違いがあると確信している」という風に感じます。
…そうですね、ナイーブになりすぎないように答えましょう。
ティファニー:女性監督たちはよく話を聞いてくれますよね。
エリザベス:私もそう思います。でも女性はよく聞いてくれる傾向があるからといって…全ての女性がそうではありません。
メリッサ:監督とよくコミュニケーションをとるか、繋がるかだと思います。監督の良し悪しは性別に関係ありません。
私は信じられないほど繊細で素敵な男性監督に会ったことがあります。私の夫、ベン・ファルコーンもその一人です。素晴らしい映画は“女性によって”というよりも、本当に優れた映画製作者によって作られます。
エリザベス:その通り。そして、私が一緒に働いたほとんどの女性映画製作者たちに、メリッサが言ったようなことを感じました。
本作でのキャラクターについて
──映画で皆さんが演じるキャラクターについて教えてもらえますか?
メリッサ:私は70年代の伝統的な二児の母です。いつも家にいて子どもたちの世話をし、仕事に参加することは決して許されない。ところが夫は刑務所に行って請求書を支払うことができず、子どもを養う余裕もなくなってしまう。
知っている仕事といえば育ってきたこのマフィアの環境にあることのみ。それで、「私たちがマフィア業を継げないかしら?」という考えに行きつくんです。
ティファニー:私は白人男性と結婚している黒人女性を演じています。白人女性を演じることができるか尋ねたんですけど、彼らは聞いてくれなくて…。
私のキャラクターは、旦那の母親が「息子は間違った相手と結婚したわ」と思っている、そんな場所で生活しています。ところが旦那は刑務所に行ってしまって、どうにか生き残る術を探さなきゃいけない。そしてこのガールズと出会って一緒に行動するんです!
エリザベス:私はと大人しくてやや抑制された環境にある、アイルランド系カトリックの女性を演じています。彼女は夫から暴力を振るわれていたんですが彼が逮捕され、お金が必要になり、闇商売を引き継ぐことになり…そんな状況に陥ります。
でも彼女たちに出会い、実際にこの地域を運営して自分のお金を使うことができるようになり、パートナーに依存せず、楽しく生きるようになるんです。
──メリッサの役は彼女たちのリーダーですか?
メリッサ:それは…。
エリザベス:…ちょっと複雑な質問です。
メリッサ:言うことができないというか、なんというか…。
エリザベス:この脚本の興味深い点の一つは、“三人の女性が奮闘する!”なんていうお決まりの話ではなく、彼女たちがシームレスに協力しあう親友同士ということです。
最初は一緒に仕事をする必要があってしばらくは行動を共にしますが、それぞれ目的やすべきことが異なる非常に複雑な女性たちなんです。この複雑さに惹かれましたし、賢いと思いました。
メリッサ:常に刺激的なことが起こります。権力や大金の関係が映画に劇的な変化をもたらします。突然お金や権力を持つことの意味やそれに対しての反応など、様々な変化を彼女たちは経験します。通常、映画の中で描かれるこのようなことはあまりスムーズではありませんから。
自分が稼いだお金で生きるということ
─人生で力とお金を得るという経験についてお聞かせ下さい。
メリッサ:電気代を初めて支払ったのを覚えています!確か32ドルほど小切手を書いたんです。その後は「口座なんて見なくて結構」だって数百ドルがそこにあることを知ってますから!
エリザベス:そうよね!ボス・レディー。
メリッサ:文字通り有頂天でした。両親は、私が「あの、もう三十歳だとは自覚してますが、人生パンク状態で…お金助けてもらえません?」と言いださないで済んだので安心していました!(笑)
エリザベス:本当に小さなことで実感しますよね。「SAG(映画俳優組合)に電話して残りの小切手がいつ来るかを見る必要はないんだ、来週請求書を支払うことができる!」って。その実感は時間がかかるもので、目が覚めたら大金のプールで泳いでた、なんてものじゃありません。
ティファニー:それに食事のために“デート”に出かけることもない。それについてはどう?
エリザベス:体を武器に援助してもらうことはもう無いですね。大きな一歩!
ティファニー:自分の食べ物を買うことができるって最高!私は食べ物が大好きです。女の子は食べ物のために、たくさんのデートに行くこともあるんですから。
FILMINK【McCarthy, Haddish and Moss: Out of The Kitchen】
英文記事/Gill Pringle
翻訳/Moeka Kotaki
監修/Natsuko Yakumaru(Cinemarche)
英文記事所有/Dov Kornits(FilmInk)www.filmink.com.au
*本記事はオーストラリアにある出版社「FILMINK」のサイト掲載された英文記事を、Cinemarcheが翻訳掲載の権利を契約し、再構成したものです。本記事の無断使用や転写は一切禁止です。
映画『ザ・キッチン』の作品情報
【製作】
2019年(アメリカ映画)
【日本公開】
未定
【原題】
The Kitchen
【監督】
アンドレア・バーロフ
【キャスト】
メリッサ・マッカーシー、ティファニー・ハディッシュ、エリザベス・モス、ドーナル・グリーソン
【作品概要】
オリー・マスターズとミン・ドイルが発表した漫画『The Kitchen』が原作。
映画『ザ・キッチン』のあらすじ
1978年、ニューヨークのヘルズ・キッチン地区。
同地区には質屋や性風俗店がひしめいており、アイルランド系マフィアの支配下に置かれていました。
キャシー、ルビー、クレアの3人はマフィアのメンバーと結婚しており、居心地が良いとはとても言えない同地区に暮らしています。
そんなある日、3人の夫がFBIに逮捕されてしまいました。
彼女たちは夫がやっていた闇商売を引き継ぐことにしましたが、敵対勢力との闘争に巻き込まれることに…。