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映画『Out Stealing Horses』キャスト【ステラン・スカルスガルドのインタビュー:スキャンダラスな話】FILMINK-vol.21

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FILMINK-vol.21「Stellan Skarsgård: Scandilous」

オーストラリアの映画サイト「FILMINK」が配信したコンテンツから「Cinemarche」が連携して海外の映画情報をお届けいたします。

映画『Out Stealing Horses』

「FILMINK」から連載21弾としてピックアップしたのは、 『Out Stealing Horses(英題)』出演のステラン・スカルスガルド

本作におけるアプローチの方法や、息子のアレクサンダーやビルも俳優として活躍中のスカルスガルド家独特の育児術まで、シニカルなユーモアに溢れたインタビューをお楽しみください。

【連載レビュー】『FILMINK:list』記事一覧はこちら

都会派のステラン・スカルスガルド

ペール・ペッテルソンの小説を原作とした映画『Out Stealing Horses』にて、スウェーデン出身の名優ステラン・スカルスガルドは、ノルウェーの映画監督ハンス・ペテル・モランドと再会を果たしました。

──『Out Stealing Horses』はノスタルジックな要素が詰まった作品でしょうか?

ステラン・スカルスガルド(以下 スカルスガルド):私はあまり郷愁を感じるタイプではないんですが、映画にもあるように、子どもの頃、森で馬が丸太を引っ張っていたのを覚えています。それは夏ではなく冬の出来事でした。

──スウェーデンの田舎の地ならではの懐かしさもありましたか?

スカルスガルド:ええ。私は田舎で過ごしたあと都会に移り、また田舎に移ったのですが、感覚としては都会派です。もちろん森の匂いや音などは覚えています。でもノルウェーで生まれ育ったハンス・ペテル(・モランド)監督のようには自然とのつながりを感じません。彼はアウトドア・マンで、ノルウェーの自然と強く関係していますから。

──都会を必要としているんですか?

スカルスガルド:都会が好きですし、そこで暮らす人も、美味しい食べ物も好きです。新しい出会いがあって、レストランに行き、映画を見たり、劇場に行ったり、そんな都会のペースが好きなんです。ですからのんびり屋のハンスとせっかちな私は本当にタイプが異なっています。

──映画『『Out Stealing Horses』であなたは無口なキャラクターを演じておられます。その役作りは難しかったですか?

スカルスガルド:いいえ。イタリアのネオリアリズムとフランスのヌーヴェルヴァーグ以来、私たちは言葉を捨てて、映画の言語をイメージに変えました。それは素晴らしいことです。

ハンスとは以前『A Somewhat Gentle Man(原題)』という映画を作り、私は主役を演じたのですが、脚本を40ページまで読んでも…私は一言も喋らなかったんですよ!本当に面白かった。他のキャストは皆「あのシーン?スカルスガルドは出演してないよ!」とよく言っていたのですが、私はちゃんと自分のキャラクターがいることを知っていました。

監督は嫉妬深い生き物!?

動画:映画『Out Stealing Horses』予告編

──ペール・ペッテルソンの原作『Out Stealing Horses』はお読みになりましたか?それは映画化に適した作品だと思いますか?

スカルスガルド:ハンスが関わる前にアダプト中の原稿を少し読みましたが、あまり良いものではありませんでした。本に書いてあることをそのまま映像にしても面白くないからです。それは何も起こらないに等しい。

脚本にはペール・ペッテルソンが書いた詩と自然の存在を含まなければならず、ハンスが仕上げたものにはきちんと織り込まれていました。ハンスには自然とのつながりがありますし、彼が目指しているものも知っていたので心配はしていませんでした。もしかしたら最悪の映画かもしれないし、最高の映画かもしれないと。

──ハンス・ペテル・モランド監督との関係について伺いたいのですが。

スカルスガルド:『Zero Kelvin』(1995)までは互いのことを知らなかったんです。北極圏で撮影したのでかなり特別な状況下でした。撮影場所は、まともなレストランよりも北極に近いくらいだったんです。しかしとても充実していて、そのあとの作品『Aberdeen』(2000)などにつながりました。

──ハンス監督は今までに仕事をした中で、最も親しい監督でしょうか?

スカルスガルド:ええ、彼のほとんどを理解しています。ラース(・フォン・トリアー監督)とも親しいですが、互いを気にしたり、理解し合うような関係ではないんです。ハンスとは全く異なる関係ですを築いています。

──彼ら監督は互いについて、あなたに尋ねることはありますか?

スカルスガルド:監督たちは滅多に他の監督について尋ねることはありません。互いに存在しないフリをするんですよ。それに彼らは非常に独占欲が強くて嫉妬深いんです。自分以外の監督と親しく仕事をしていると、それに嫉妬したりします。私は売春婦じゃなくて俳優なのに(笑)!

──よく食事の話をされますが、好きな料理はなんですか?

スカルスガルド:特には決まっていません。何でも食べます。腐ったニシンの缶詰である“ Surströmming”というスウェーデン料理を以外は!アイスランドにも腐ったサメに小便をかけて埋めたような料理があるんです。それは貧困から生まれたものです。それから食用の家畜の胃である“トライプ”も長年苦手でした。非常に複雑な味なので楽しむ秘訣を10年かけて探して、今は好んで食べています。腐ったニシンだけはダメですね。

──『Out Stealing Horses』では引退した男を演じていますが、実際に俳優を引退することを考えたことはありますか?もしくはその可能性は?

スカルスガルド:ダニエル・デイ・ルイスのように引退する俳優もいます。でも彼らが二度と戻らないか、または戻ってくるかなんて誰も分かりません。私はまだ色々な役やプロジェクトに携わって楽しんでいますし、今も学んでいます。

タブーの無い環境で育った幼少期

画像:第69回ベルリン国際映画祭でのステラン・スカルスガルドと共演者のジョン・レーンズ


PHOTO BY FRANZISKA KRUG/GETTY IMAGES FOR AUDI AG

──仕事が楽しくない時もありましたか?

スカルスガルド:アメリカで働き始めた時は「ああ、難しいし疲れるしもう菜園でも始めるか」と考えたこともありました。その状況が何日も続きました。異なる言語と環境に身を置くのは本当にストレスが溜まります。適切な仕事をするのに十分な時間と酸素があるとは思えませんでしたね。でも、それは短い時間でした。

──私生活でも問題に立ち向かうことは好きですか?

スカルスガルド:ええ。私は色々とタブーの無い環境で育ったんです。もし望めば、三歳の時でも自分の両親にセックスについて尋ねることも可能でした。聞かなかったのはその時セックスしたことがなかったからです。そのようにタブーは無く、全てについて話すことができました。

──何か厳しいルールのようなものは?

スカルスガルド:夕食に遅刻することは許されませんでした。言ってはいけない言葉もありませんでしたが、“ファシスト”とか“クソ野郎”だとか、あとは人をブランディングするような言葉はコミュニケーションを低下させますし、ダメだと言われましたね。

──ご自分のお子さんも同じ育て方をしましたか?(彼には8人の子どもがおり、そのなかに俳優の道を選んだアレクサンダー、グスタフ、ビル、ヴァルターがいます)

スカルスガルド:ええ、彼らは何でも話すことができます。私の妻はアメリカ人で2人の幼い子どもがいるのですが、アメリカの家族に会いに行く時は「言っちゃいけない言葉は?」「カント、ファック、マザーファッカー、ビッチ」と確認しなきゃなりません。

──彼らはアメリカでそれらの言葉をだいぶ使っているようですが…。

スカルスガルド:そうなんですよね。だから良い家族では無いかも。カント(女性器を指すスラング)、アメリカで愛される言葉だ。誰かは言いませんが、息子の一人がパーティーで「カント!」と言って追い出されたんですよ。「ここでそんな言葉を使うんじゃない」と指摘され「いい意味で言ったんだよ!」と返したらしいです。

──使えない言葉があることに関して、どのように個人的に対処されていますか?

スカルスガルド:分かりません。特定の言葉が使えないのはエキゾチックに感じます。そしてとても馬鹿馬鹿しい。

いつもモンティ・パイソンの『ライフ・オブ・ブライアン』の1シーンを思い浮かべるのですが、彼らが“エホバ”の人々を罰している時、ジョン・クリーズ演じるキャラクターが「エホバって言うことは許されん!」って言うんです。

家族とプライベートについて

──映画製作の合間に時間は必要ですか?

スカルスガルド:働かないことが得意なんです。1年に4ヶ月の間撮影し、残りの8ヶ月はオムツを替えたりとか普通のことをしています。

──あなたのお子さんは皆成人していたような?

スカルスガルド:一番小さい子はまだ6歳なんです。もうこれ以上オムツは変えなくて済みます。次のオムツは自分のですね。

──まあ、それはご自分で何とかできますね。

スカルスガルド:ええ。それに私は精管切除術を受けたので、ちびっこはこれ以上やってきません。

──今あなたにとって重要なこと、大切なことは何ですか?

スカルスガルド:プライベートのすべての瞬間、子ども達を見ている時、美味しい料理を作り良いワインを飲むこと。自分が何者で何になるのかなんて心配することがありません。

──ご子息が出演する映画をすべて見ていますか?

スカルスガルド:見ようとは試みているんですが、彼らは永遠に続くTVシリーズに出ているものですから…。幾つかのエピソードは鑑賞しようとしていますよ。

──お子さんが互いに仕事に関してライバル視している、なんてことは?

スカルスガルド:ないと思います。兄弟が成功した時、皆幸せを感じています。もちろんすべての俳優と同じく、一週間仕事が無かった場合があればそろってイライラしていますが。

──お子さん方とは定期的に会っていますか?

スカルスガルド:ええ!今はストックホルムの徒歩圏内に、すべての子どもたちと、私の兄弟も3人住んでいるんですよ。

FILMINK【Stellan Skarsgård: Scandilous

英文記事/James Mottram
翻訳/Moeka Kotaki
監修/Natsuko Yakumaru(Cinemarche)
英文記事所有/Dov Kornits(FilmInk)www.filmink.com.au

本記事はオーストラリアにある出版社「FILMINK」のサイト掲載された英文記事を、Cinemarcheが翻訳掲載の権利を契約し、再構成したものです。本記事の無断使用や転写は一切禁止です。

映画『Out Stealing Horses』の作品情報

参考動画:第69回ベルリン国際映画祭での記者会見

【製作】
2019年(ノルウェー・スウェーデン・デンマーク合作映画)

【日本公開】
未定

【原題】
Ut og stjaele hester(英題:Out Stealing Horses)

【原作】
ペール・ペッテルソン

【監督・脚本】
ハンス・ペテル・モランド

【キャスト】
ステラン・スカルスガルド、ビョルン・フロベリー、トビアス・サンテルマン、ダニカ・クルチッチ、ジョン・レーンズ

【作品概要とあらすじ】
2019年・第69回ベルリン国際映画祭コンペティション部門出品。

撮影のラスムス・ビデベックが芸術貢献賞を受賞。

ステラン・スカルスガルド演じる、自動車事故で妻を亡くした男が故郷ノルウェーに帰ってきます。

愛、喪失、失望から罪悪感、取り返しのつかない人生のトラウマまで、さまざまな感情を巧みに描いた壮大なドラマです。

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