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『青くて痛くて脆い』原作小説ネタバレと結末までのあらすじ。映画化キャストに吉沢亮と杉咲花が挑んだ青春サスペンス|永遠の未完成これ完成である13

  • Writer :
  • もりのちこ

連載コラム「永遠の未完成これ完成である」第13回

映画と原作の違いを徹底解説していく、連載コラム「永遠の未完成これ完成である」。

今回紹介するのは、2020年8月28日公開予定の『青くて痛くて脆い』です。


『君の膵臓をたべたい』がアニメ・実写映画化で話題となった住野よるの同名小説が、吉沢亮と杉咲花主演で映画化となりました。

タイトル通り、青春時代の「青くて痛くて脆い」体験を描いた原作は、コミュ障の田端楓とKYの秋好寿乃の大学生2人が巻き起こす青春サスペンス小説です。

なぜ大切な人を傷つけてしまったのか。ただ相手のためだと思ってしたことなのに。ただ理想の自分になりたかっただけなのに。

映画公開に先駆け、原作のあらすじ、映画化で注目する点を紹介します。

【連載コラム】「永遠の未完成これ完成である」記事一覧はこちら

映画『青くて痛くて脆い』の作品情報


(C)2020「青くて痛くて脆い」製作委員会
【公開】
2020年(日本)

【原作】
住野よる

【監督】
狩山俊輔

【キャスト】
吉沢亮、杉咲花

映画『青くて痛くて脆い』のあらすじとネタバレ

(C)2020「青くて痛くて脆い」製作委員会

あらゆる自分の行動には相手を不快にさせてしまう可能性がある。そのため、人に不用意に近づきすぎない。誰かの意見に反する意見を出来るだけ口にしない。

大学生になった田端楓は、相手を不快にさせないために、そして自分が傷つかないために、自らの人生におけるテーマを決めていました。

そんな楓の前に現れた秋好寿乃は、だれかれ構わず自分の理想論をぶつけ、意見をブラッシュアップしたいと考える、正義感あふれる人物でした。

秋好に声を掛けられた楓は、はじめ距離を詰めないように気を付けていましたが、秋好の純粋さを目の当たりにしていくうちに、いつしか気を許す相手になります。

秋好の大学生活の目標は「なりたい自分になる」というものでした。「大それた目標だな」とからかう楓に、秋好は「ほんの小さなことでもいい、自分ルール。君にもあるでしょ」と聞きます。

楓は、自分の人生のテーマを初めて他人に話しました。自分の意見を主張し続ける秋好とは相いれないと思っていた楓に、秋好は「ちょー、優しいじゃん」と感動の言葉を発します。

そこから楓と秋好は、自分たちの居心地のいい場所づくりとして、秘密結社「モアイ」というサークルを立ち上げます。

2人だけの「モアイ」の活動は、世界を良い方向に向かわせる知識を増やすという目的のもと、美術館や展覧会、映画や講演会など興味のあるものに出掛けました。

一見デートにも見えるこの活動は、受け身の楓にとって、秋村に振り回されながらも楽しい日々でした。

「楓がいなかったら寂しい大学生活になってたよ。友達になってくれて良かった」。そう言って笑った秋好はもうこの世界にいない…。

楓は大学3年生になっていました。就活は肉体的にも精神的にも厳しいものでしたが、順調に内定を取り付けることが出来ました。

しかし、楓は虚しさを抱いていました。自分じゃない自分を演じ就職しても、偽りの人生しかないのではないのか。大学生活で自分は何をしていたのか。なりたい自分も見つからない。

楓は秋好を思い出していました。「なりたい自分になる」という「モアイ」の精神は、今はもうどこにもありませんでした。

楓と秋好が立ち上げた秘密結社「モアイ」は、今や多くの学生が所属する人気サークルとなり、結成当初の目的や活動の意味は捻じ曲げられ、それぞれの利益を求める集団へと変貌を遂げていました。

楓は、決意します。秋好の意思を受け継ぎ、本当の「モアイ」を取り戻そう。現「モアイ」と戦うことを。

楓は、自分と同じ「モアイ」の連中を毛嫌いしている友達・薫介(とうすけ)に、協力を仰ぎます。

薫介は、人付き合いが得意で面倒見のいい奴です。楓が「モアイ」の創始者と知り驚くも、「モアイ」討伐に力を貸してくれることになりました。

そして2人は、現「モアイ」に所属しているという薫介の後輩・ポンちゃんから内部事情を探ります。

ポンちゃんは、就活を有利にするために、OBOGとのコネがあり、教授たちにも評判がいい「モアイ」に入っているというだけで、熱心な「モアイ」信者ではありませんでした。

ポンちゃんの付き添いとして薫介は「モアイ」主催の交流会に潜り込みます。楓は「モアイ」の幹部に顔がわれているので、会場の外で情報収集に励みます。

「モアイ」は精力的に、学生と社会人との交流会を行っていました。実際に就職先が決まる学生の例もあるようです。

代表はヒロと呼ばれる女性で、一部の学生にはカリスマ的存在とされていました。ヒロと並び人気があるナンバーツー・テンは、見た目からチャラい男で、友達が多いことで有名です。

交流会に参加した薫介は、持ち前のコミュニケーション能力を発揮し、普通に楽しんでいるようです。おまけに、テンと連絡先を交換するほど距離を縮めます。

楓は、テンの女関係に目を付けます。交流会で知りあった社会人の女性と関係を持ち、すぐに捨てるという噂を聞きつけたからです。

薫介と楓は、テンに誘われバーベキュー会に参加することにしました。「モアイ」の会ではないということで楓も油断していました。

そこには、楓と同じバイト先の後輩・川原の姿がありました。楓が密かにヤンキー女子と呼んでいる川原は、「モアイ」のメンバーでした。

川原に「モアイ」のことを教えたのは楓です。「モアイ」の内部情報を入手したいがために、川原の好きそうな「モアイ」を紹介したのです。

「モアイ」の信念に共感した川原は、熱心に集会に参加しているようです。おかげで、楓は「モアイ」の集会日を探ることが出来ていました。

そんな楓の思惑など知りもしない川原は、「モアイ」を紹介してくれた楓に好感を抱いているようです。

バーベキュー会でのテンは、気さくで友達にも好かれ、集まった皆も楽しそうです。そこで聞いたテンの噂の真相は、こうでした。実は、振られていたのはテンの方で、女性をかばうために自分が振ったと周りには言っていたとのこと。

薫介は、テンと個人的に遊ぶようになっていました。テンは、普通にいい奴かもしれないと言い出します。楓は、頑としてテンを、「モアイ」を認めたくありませんでした。

そんな時、楓の待ち望んだ「モアイ」の弱点が見えてくるのでした。

以下、『青くて痛くて脆い』ネタバレ・結末の記載がございます。『青くて痛くて脆い』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
楓と薫介は、テンとメールアドレスを交換した日から、多くの企業の優待メールや迷惑メールが相次いで届くようになったことに気付きます。

楓は、「モアイ」が学生の個人情報を、スポンサーの企業側に無断で流していることを確信します。あとは証拠を突きつけるだけです。

楓は「モアイ」の幹部を装い、会社側から個人情報の資料を返却してもらうことに成功しました。

あとはこの事件をSNSでばら撒き拡散するだけです。薫介は、意気込む楓を止めることはしませんが、自分は降りると言います。

「テンともう少し話してみろよ。ヒロも本当はいいやつかもしれない。モアイのヒロじゃなく、同級生の秋好だって思ってみろよ」。

現「モアイ」の代表は、結成当初から秋好寿乃のままです。秋好はいなくなってなんかいませんでした。ヒロというあだ名で呼ばれ、多くの人脈と行動力を持って「モアイ」メンバーを率いる秋好。

秋好はいなくなった。秋好は変わってしまった。そう思っていたのは楓だけでした。

楓が流した「モアイ」の悪い噂は、想像を超える広がりをみせ、マスコミにも取り上げられる大事件となりました。

解散に追い込まれた「モアイ」。楓は、この目で秋好の様子を見たい衝動にかられます。もしかしたら、秋好の目を覚まさせ、元の秋好に戻ってくれるかもしれない。そんな期待もありました。

「モアイ」の最後の集会日。今日は、秋好からモアイメンバーに直接謝罪が行われるはずです。楓は、こっそり会を覗こうと待ち構えていました。

そこで、誰よりも早く到着した秋好とばったり鉢合わせしてしまいます。「久しぶり、田端くん」。秋好からの苗字呼びに距離感を覚える楓。

「モアイが今、大変なんだ……」。「そうなんだ」。秋好は、どこか悲しそうです。「あれ、君だよね。なんで、あんなことしたの」。

「モアイは下品に大きくなり変わってしまった。理想をうたって、周りをかき乱し、犠牲者をだした」。楓は自分の正義を秋好にぶつけます。

そして「もう一回作り直そう。必要なら僕も手伝うから」と歩み寄ります。

秋好は、「ふざけんな、ふざけんなっ!」と耐えてきたものが噴き出したような剣幕で、「何も知らないくせに。モアイは変わっかもしれないけど、それは悪いことじゃない」。

秋好は、自分の理想をかかげ集まってくる者たちを受け入れ、共に頑張ってきたつもりです。相談をしても何も手助けしてくれず、勝手に距離を取り、離れて行ったのは楓の方でした。

2人の言い合いは続きます。すれ違ってしまった時間は元には戻りません。「まさか、私のこと好きだったの?」と、秋好はうんざりした表情です。

「馬鹿にすんなっ!」。楓の中の、黒い毒でパンパンだった袋が、破裂しました。

「お前がいない方が幸せだった。きっと、みんな」。楓は秋好の前から立ち去りました。

空っぽ。それからの楓は、まさにそんな状態でした。バイト先の川原は、「モアイ」の解散に残念そうです。

「モアイ」のリーダー・ヒロ、いや秋好は、大勢のモアイメンバーの名前を一人一人覚えていたと言います。確かに、「モアイ」を心の拠り所として、学生生活を楽しく過ごせた人もいたに違いありません。

楓は、今までのSNSを整理していました。アンチモアイの誰かがネット上にあげたであろう、秋好のモアイ解散の日に撮られた動画を見つけます。

そこには、自分の過ちを心から謝罪し、泣き崩れる秋好の姿がありました。その姿を見た楓は、体が震えるほど、後悔と恥を知るのでした。

秋好が傷つく姿を望んでいたわけではない。自分だけが傷ついていると思っていた。自分は秋好に利用されただけだと思っていた。

自分は、秋好が他の人と仲良くなっていくのに勝手に拗ね、自ら距離を置き去ったあげく、大事な人たちを利用した。「僕は、ずっと、モアイにいたかった」。

ぐしゃぐしゃの行き場のない感情を持って楓は、以前の秋好の恋人・脇坂の元へと走っていました。

脇坂は久しぶりにやってきた楓に驚くも、楓のめちゃくちゃな言葉を上手く聞き出し、感情に寄り添ってくれました。

「僕は、モアイを残したい。あの場所を必要としている人のために」。楓は自分の考えをまとめることが出来ました。

大学を卒業し就職、社会人になった楓は、母校の開催する交流会に出席していました。団体のメンバーである川原が迎えてくれます。

運営のテーマに「成長」を掲げて活動するこの団体は「モアイ」のようでした。

楓は、未来への希望で輝いている学生たちに、少しでも自分の経験が役立ってもらえるよう、質問に答えていきます。

「学生時代に経験して良かったこと、多くを学んだ出来事があったら教えて下さい」。学生の質問に楓は答えます。「大切な人を傷つけて後悔したことです」。

「もう二度とあんなことはしたくない。少しづつですが、大切な人を傷つけない、居場所のような人間になれたらと思っています」。

スーツ姿の彼女が楓の目の端に映ります。出口に向かう後ろ姿は正しく秋好でした。幻じゃない。でも自分の行動が相手を不快にさせてしまう可能性がある。けど……。

無視されても、拒絶されてもいい。その時もう一度、ちゃんと傷つけ。楓は、彼女の背中に追いつきました。

映画『青くて痛くて脆い』ここに注目!

住野よる原作の映画化、第2作目となった作品『青くて痛くて脆い』。

主人公・田端楓を演じるのは、映画『キングダム』で第62回ブルーリボン賞・助演男優賞、第43回日本アカデミー賞・最優秀助演男優賞を受賞した、実力派若手俳優のひとり・吉沢亮。

そして、もうひとりの主人公・秋好寿乃を演じるのは、映画『湯を沸かすほど熱い愛』で第41回報知映画賞・助演女優賞、第59回ブルーリボン賞・助演女優賞、そして第40回日本アカデミー賞・最優秀助演女優賞を受賞と、こちらも数多くの賞を受賞し、NHK連続テレビ小説のヒロインとしての活躍からも目が離せない・杉咲花。

青春の青さ、痛さ、脆さを痛烈に描いた作品を、最も旬な2人の今でしか見れない共演でお送りする、最旬青春映画『青くて痛くて脆い』。注目する点を紹介します。

秘密結社「モアイ」

物語は、ひとりぼっち同士だった楓(吉沢亮)と秋好(杉咲花)が、「世界を変える」という大それた目標を掲げ、秘密結社「モアイ」を立ち上げる事から始まります。

人付き合いが苦手な楓の元に、理想論を語るKYな秋好がグイグイと入り込んでいきます。

楓は、始め迷惑そうにしながらも、秋好の純粋さに心を許していきます。それは友達としての尊敬か、恋心だったのかはわかりません。

互いに大切な存在だったはずの2人が、決別するきっかけになったのもまた、「モアイ」でした。

「モアイ」は、社会人とのコネ作りや企業への媚売りを目的とした意識高い系就活サークルへと変わっていました。

大切な仲間、心地いい居場所を奪われた楓の怒りは、「モアイ」へと向けられていきます。

楓の叛逆は、狂気の沙汰とも言えるほど執着し、止められない所まで落ちていきます。そのドロドロの黒い感情をまとっった楓を、吉沢亮がどのように演じるのか注目です。

秋好寿乃=ヒロ

「秋好はもうこの世界にいない…」。楓のこの言葉から、現在の秋好の存在が消えます。その後は、楓の回想に登場するばかりの秋好。

読者は、秋好の身に何かあったのではないかと思います。それは、死かもしれないと。

楓が、秋好のために取り戻そうとした「モアイ」の現代表を務める・ヒロ。楓はヒロを、自分たちの「モアイ」を、我が物顔で納める悪役として登場させます。

しかし、物語の途中で、ヒロ=秋好だということが分かります。

そして、読者は気付きます。ヒロ=秋好は、何も悪いことはしていないと。組織は大きくなったかもしれないけれど、秋好は何も変わっていないということを。

楓のあまりにも捻じ曲げられた感情の行方に、私たちはがっかりするのです。

秋好と楓の関係性

原作は、楓の目線で描かれているので、楓の感情で出来事を捕えることになります。

楓が秋好に抱く想いの変化に注目です。招待面での戸惑いから、徐々に心を許していく過程、そしてそれが憎しみに変わる瞬間。

秋好は変わってしまった。楓は元の秋好に戻って欲しいと願います。しかし果たして、変わるということは悪いことなのでしょうか。

変わるということは成長することとも言えます。いつまでも同じ考えに捕らわれ、進化を恐れていては、前には進めません。

自分の根本的な部分、譲れないコアな部分は持ちつつも、流動的に時代に合わせて変化していくことが必要なのではないでしょうか。

楓は、秋好のためと言いながら、結局は自分の感情のまま行動を起こしてしまいます。その結果、秋好を傷つけ、存在を否定することになってしまいます。

すれ違ったままこじらせた感情は、元に戻ることがあるのでしょうか。映画化でどう描かれるのか注目です。

その他の登場人物

楓と秋好の2人の関係性を軸にして、それぞれの交友関係にも注目です。

人とのコミュニケーションが苦手な楓ですが、正反対の性格の友達・薫介(岡山天音)とのやり取りは自然で、和みます。

また、薫介の後輩のポンちゃんや、バイト先の川原さんと女性陣も個性的で、それぞれの楓が取る距離感にも注目です。

映画化では、原作に登場しない本田朝美(松本穂香)、西山瑞希(森七菜)が登場します。どんな役になるのか楽しみです。

また、「モアイ」のナンバー2・テンこと天野(清水尋也)は、チャラい見た目通りの男なのか、実は隠された顔があるのか。こうご期待です。

まとめ

大切な仲間と、居場所を奪われた青年の、嘘と悪意にまみれた復讐劇。住野よる原作『青くて痛くて脆い』を紹介しました。

気付いた時には、大切な人を傷つけていた。もっとも残酷な方法で。痛みを伴い、あまりにも脆く崩れた関係は、取り戻すことが出来るのでしょうか。

あなたも、青くて痛くて脆かった青春時代を思い出すかもしれません。まさに青春真っ盛りという方々には、人間関係で後悔しないように見てもらいたい作品です。

次回の「永遠の未完成これ完成である」は…


次回紹介する作品は『護られなかった者たちへ』です。

中山七里のミステリー小説『護られなかった者たちへ』が、佐藤健と阿部寛の共演で映画化。2020年中、公開予定となっています。

東日本大震災から9年。宮城県を舞台に、凄惨な連続殺人事件が発生。被害者は皆、善人と評判だった者たちばかり。容疑者は、知人を助けるために事件を起こし服役していた利根だった。

容疑者・利根を佐藤健が、事件を追う刑事・笘篠を阿部寛が演じます。

映画公開の前に、原作のあらすじと、映画化で注目する点を紹介していきます。

【連載コラム】「永遠の未完成これ完成である」記事一覧はこちら

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