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Entry 2020/03/30
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映画『はじまりはヒップホップ』あらすじと感想レビュー。高齢者ダンスグループ(平均年齢83歳)の彼らが挑むチャレンジとは|だからドキュメンタリー映画は面白い45

  • Writer :
  • 松平光冬

連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』第45回

お年寄りダンスグループが、ヒップホップの世界大会を目指す!

今回取り上げるのは、2016年に日本公開の『はじまりはヒップホップ』

平均年齢83歳のギネス公認世界最高齢ダンスグループが、世界最大のヒップホップ選手権へ挑戦するまでを追います。

【連載コラム】『だからドキュメンタリー映画は面白い』記事一覧はこちら

映画『はじまりはヒップホップ』の作品情報


(C)2014 Rise And Shine World Sales / Inkubator Limited / photo_Ida Larsson

【日本公開】
2016年(ニュージーランド・アメリカ合作映画)

【原題】
Hip Hop-eration

【監督・脚本】
ブリン・エヴァンス

【製作】
ポーラ・ジョーンズ

【編集】
ピーター・ロバーツ

【撮影】
ビーバン・クローザース

【キャスト】
ビリー・ジョーダン、メイニー・トンプソン、テリー・ウールモア=グッドウィン、カーラ・キット・ネルソン

【作品概要】
ニュージーランド在住の平均年齢83歳のダンスグループが、2013年8月のラスベガスで開かれたヒップホップダンスの世界大会に挑戦するまでに密着。

本国ニュージーランドでは2014年公開されるや否や話題を呼び、国内最大の映画祭であるニュージーランド映画賞で 監督賞、撮影賞、ドキュメンタリー賞の3部門を受賞。

また、アカデミー賞の前哨戦として注目されるサンタバーバラ国際映画祭で、観客賞を受賞しました。

監督・脚本は、地元ニュージーランドでテレビドキュメンタリーを多数手がけ、本作で劇場映画デビューをはたしたブリン・エヴァンスです。

映画『はじまりはヒップホップ』のあらすじ

(C)2014 Rise And Shine World Sales / Inkubator Limited / photo_Ida Larsson

ニュージーランドの東側に位置する、人口8,000人の島ワイヘキで、2013年に本格始動したダンスグループ、「ヒップ・オペレーション・クルー」。

実は彼女たちは、なんと平均年齢83歳で、しかも踊るのはヒップホップでした。

下は60代、上は90代という年齢層で構成されるメンバーを率いるのは、振り付け担当兼マネージャーのビリー。

振り付け師といっても彼女はプロではなく、YouTubeや本でダンスの知識を補うというレベルです。

そんな中、ビリーがある目標を提案します。

それはなんと、アメリカ・ラスベガスで行われる 世界最大のヒップホップダンスの大会への出場を目指すというものでした。

「ラスベガスに行く」 という夢のために一致団結するメンバーでしたが、現実的な問題が山積み。

はたして、彼女たちの夢は実現するのか?

フラッシュモブで話題沸騰となった、高齢ヒップホップグループ

(C)2014 Rise And Shine World Sales / Inkubator Limited / photo_Ida Larsson

メンバー全員が腰(ヒップ[Hip])の手術(オペレーション[Operation])を受けていたというのがグループ名の由来という、ヒップ・オペレーション・クルー。

2012年に行なったオークランドでのフラッシュモブ動画が話題となり、300万回以上再生されたことをきっかけに、2013年に正式に活動を開始しました。

その動画に目を付けた監督のブリン・エヴァンスを筆頭とする製作スタッフは、平均年齢83歳の彼らがヒップホップダンスに挑戦しようとしていると知り、ドキュメンタリー映画として密着することを決意。

彼らが住むワイヘキ島という穏やかな風土と対照的な場であるラスベガスに、シニアダンスチームが足を踏み入れる…その分かりやすいギャップが十分な“引き”となるという思惑で、撮影が進められました。

ただ、「本当にベガスまで辿り着けるのか?」という不安と、もっと言えば「彼らはそれまで生き続けていられるのか?」という危惧が、常にあったといいます。

立ちはだかる現実的な問題

(C)2014 Rise And Shine World Sales / Inkubator Limited / photo_Ida Larsson

スタッフたちが想像していた通り、クルーたちにはさまざまな障害が降り注ぎます。

第一に体力面。

さすがに若者のような激しい動きはできないため、振り付けも単純な動きに特化。

それでもやはり、昔のように体は動かない上に、耳なじみのないリズムに乗ることすらままなりません。

持病を抱えていたり、視力が衰えて足元がおぼつかないメンバーなどにしてみれば、それはさらに制限されます。

中には、長期の渡航がネックとなり、ドクターストップがかかる者も…。

金銭面でも不安が。

大会が開かれるラスベガスまでの旅費は、基本的に参加者持ち。

その費用が決定的に不足していることから、マネージャーのビリー・ジョーダンは、スポンサー探しに乗り出します。

しかし、フラッシュモブ動画で話題を呼んだとはいえ、興味本位で資金を提供してくれる者はそう現れません。

苦渋の末、メンバー自身も費用を捻出するしかないという案を出すビリーですが、今後の生活のために、少しでも貯金しておきたいという考えを持つ者も当然現れます。

歳を重ねても新たなことにチャレンジする意味

(C)2014 Rise And Shine World Sales / Inkubator Limited / photo_Ida Larsson

そこまでしてビリーがクルーに世界大会参加に固持するのは、「いつも通りの日々から一歩踏み出してほしい」という思いからでした。

劇中では、メンバーのこれまでの人生も掘り下げていますが、彼女たちの話からは、劇的ではないにしろ、さまざまな紆余曲折な人生を送ってきたことが分かってきます。

それでもなお、静かに余生を過ごすのではなく、新たな目標を見つけることが生きがいとなる。

いみじくもクルーの一人が、「有名になりたいのではなく、若者の世界に触れたいから」と参加の理由を語ります。

(C)2014 Rise And Shine World Sales / Inkubator Limited / photo_Ida Larsson

見た目は畑違いの分野に挑戦する人々を追った実話ベースのドラマ映画は、これまでに多数製作されています。

近年だと、『フィッシャーマンズ・ソング コーンウォールから愛をこめて』(2020)では、屈強な漁師たちがコーラスグループを結成し、歌手デビューを目指そうと奔走します。

また、4月10日(金)公開の『チア・アップ!』は、平均年齢72歳のチアリーディングチームが主人公となっており、両作とも実在する人物たちに着想を得た作品です。

参考映像:映画『チア・アップ!』予告

本作『はじまりはヒップホップ』も、有名なシニア俳優が主演のドラマ映画となる可能性は、今後十二分にあります。

しかし、それが蛇足と思えるほど、ヒップ・オペレーション・クルー全員が魅力的に映っています。

人間とは、いくつになっても好奇心と勇気を持つ生きものなのです。

次回の連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』もお楽しみに。

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