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Entry 2019/11/23
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映画『ばるぼら』あらすじと感想。二階堂ふみがヌードの濡れ場で稲垣吾郎を相手に手塚漫画に挑む|TIFF2019リポート23

  • Writer :
  • 村松健太郎

第32回東京国際映画祭・コンペティション作品『ばるぼら』

2019年にて通算32回目となる東京国際映画祭。

令和初の開催となった本映画祭は、2019年10月28日(月)に無事開会の日を迎え、11月5日(火)までの10日間をかけて国内外の様々な映画が上映されました。

そして、本映画祭のコンペティション部門に出品された映画の一本が、『ばるぼら』です。

第32回東京国際映画祭・上映後Q&Aでの手塚眞監督


(C)Cinemarhe

“漫画の神様”手塚治虫が1970年代に発表した漫画「ばるぼら」。あらゆるタブーへと踏み込み、“映画化不可能”と言われた本作が、手塚治虫生誕90周年を記念し初映像化。

監督は手塚治虫の実子でもある手塚眞。撮影監督はウォン・カーウァイ作品で知られる名匠クリストファー・ドイル。

そしてW主演を務めたのは、稲垣吾郎と二階堂ふみです。

【連載コラム】『TIFF2019リポート』記事一覧はこちら

映画『ばるぼら』の作品情報


(C)Barbara Film Committee

【上映】
2019年(日本・ドイツ・イギリス合作)

【原作】
手塚治虫

【監督】
手塚眞

【脚本】
黒澤久子

【撮影】
クリストファー・ドイル

【出演】
稲垣吾郎、二階堂ふみ、渋川清彦、石橋静河

【作品概要】
手塚治虫の漫画「ばるぼら」を、彼の実子にして映画監督の手塚眞が実写映画化。

ダブル主演を務めたのは、稲垣吾郎と二階堂ふみ。タブーへと足を踏み入れてゆく人気小説家の美倉洋介、そんな彼が出会ってしまった謎の女“ばるぼら”をそれぞれ演じました。

また国際的に活躍する撮影監督クリストファー・ドイルが参加したことでも話題になりました。

キャストのプロフィール


(C)Barbara Film Committee

稲垣吾郎

映画・演劇など様々な分野にて活躍の幅を拡げ続ける俳優。

東京国際映画祭には2018年の阪本順治監督作『半世界』、そして2019年の『ばるぼら』と二年連続で自身の主演作品が出品されています。

二階堂ふみ

2009年の俳優・役所広司による監督作『ガマの油』のヒロイン役にて映画デビュー。

その後、2012年の園子温監督作『ヒミズ』に俳優の染谷将太とのW主演で出演。同作により、ベネチア国際映画祭における新人賞「マルチェロ・ヤストロヤンニ賞」の日本人初の受賞を染谷とともに成し遂げました。

近年の出演作品には『人間失格 太宰治と3人の女』『翔んで埼玉』『生理ちゃん』など。また2020年4月には主演作『糸』の公開が決定しています。

渋川清彦

日本映画界を代表する名バイプレイヤーにして、稲垣吾郎とは『半世界』でも共演しています。

第32回東京国際映画祭には自身の出演作品が『37セカンズ』『ウィーアーリトルゾンビーズ』『ばるぼら』と三作が出品・上映されました。

また2020年には『37セカンズ』と『ばるぼら』、若手実力派女優の松本穂香と主演を務める『酔うと化け物になる父がつらい』などの公開が控えています。

映画『ばるぼら』のあらすじ


(C)Barbara Film Committee

人気小説家の美倉洋介は国会議員を父に持つ恋人、献身的に支えてくれる秘書など周囲にも恵まれ、小説家として一定の地位を築き上げていました。

その一方で、周りに集まる人間たちを「俗物」と評し、誰からも理解されることのないであろう自らの異常性欲という悩みと相まって、どこか満たされない感覚を抱きながら日々を過ごしていました。

ある日、都会の地下道で酔いつぶれている少女と出会います。

「ばるぼら」と名乗った彼女は、いつも酒瓶片手に酔っぱらっている少女でした。洋介はばるぼらのだらしなさに閉口しながらも、どこか彼女に惹かれてゆきました。

ばるぼらとの奇妙な生活が始まると、徐々に洋介の周りで怪異な現象が起き始めます。

恋人の父が不可思議な死を遂げ、その謎に触れてしまった秘書も突如交通事故に遭ったのです。

徐々に狂気へと近づいてゆく洋介を周囲の人々は心配しますが、それに反発するかのようにかえって洋介はばるぼらへとのめり込んでいきます…。

映画『ばるぼら』の感想と評価


(C)Barbara Film Committee

「鉄腕アトム」「ジャングル大帝」など、少年漫画のイメージが強い“漫画の神様”こと手塚治虫。ところがその一方では、かなりアダルトなテイストの作品も手掛けています。“大人向け漫画”などと表現されがちな作品群ですが、この代表作の一つが本作の原作となった「ばるぼら」です。

映画を手掛けたのは、手塚治虫の実子でもある手塚眞。自らを“ヴィジュアリスト”と名乗り、学生時代から作品を制作し続けてきた映像作家です。

長編作品では坂口安吾の同名小説を映画化した『白痴』、サイコスリラー『ブラックキス』などがあり、どちらかといえば本作の劇中でも描かれているスピリチュアリズム・オカルティズムを取り扱った作品で知られています。

その点でいえば、「ばるぼら」という作品のチョイスは正解でしょう。原作からの大きな改変を行なっているものの、その結果非常に映画的な作品に仕上がっています。

最大の勝因は、稲垣吾郎と二階堂ふみという戯画化された世界観が何よりも“はまる”二人を主演に迎えることができたからでしょう。

大きめのサングラスをかけた稲垣吾郎は、手塚漫画の世界ではお馴染みのキャラクターであるロック・ホーム(間久部緑郎)にそっくり。『翔んで埼玉』に続き強烈な漫画世界の住人を見事に演じきった二階堂ふみもまた、本作の世界観にはまっています。

最高の二人とともに制作された映画『ばるぼら』。手塚漫画の実写化作品はそのハードルの高さ故に本数自体が少ないですが、本作は大健闘の部類に入ると言っていいでしょう。

まとめ

出演作品が二年連続で東京国際映画祭・コンペティション部門に出品された稲垣吾郎。2018年にエントリーされた阪本順治監督の『半世界』では、「40歳を迎えた炭焼き職人」という現実世界と地続きのキャラクターでした。

一方、今回は「狂気と魔性に飲み込まれていく小説家」という現実離れしたキャラクターです。

どの作品においても魅力的な演技を見せる稲垣吾郎。ただかつて金田一耕助や明智小五郎を演じた経験もある彼は、やはり現実の「外」の住人の方が“はまる”のかもしれません。オムニバス映画『クソ野郎と美しき世界』の一編「ピアニストを撃つな!」でも、浮世離れしたピアニストを演じていました。

二階堂ふみも『人間失格太宰治と3人の女』をはじめ、激情的な役がはまります。たとえ比較的等身大の役だったとしても、『SCOOP!』『生理ちゃん』のようなどこかぶっ飛んだ要素のある作品の方がどこか活き活きとしています。

本作の劇中には二人の大胆な濡れ場シーンも描かれていますが、どこか現実離れしている二人が興じるその様は、様式美や神話性を感じさせます。

原作からの改変など、賛否は少なからずあるかもしれません。ですが、手塚治虫の漫画世界を映画を介して表現しようと試みた作品として、手塚眞監督作としては素晴らしい作品といえるのではないでしょうか?

【連載コラム】『TIFF2019リポート』記事一覧はこちら





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