ディズニーによる2018年の傑作アニメーション『シュガーラッシュ オンライン』
『シュガーラッシュ』のゲームキャラクター、ラルフとヴァネロペが今度は広大なインターネットの世界へ⁈
映画『シュガーラッシュ オンライン』は、最新技術でインターネットの世界観をわかりやすく具現化してみせるだけでなく、メタギャグ、友情物語に、ド派手なレースアクションも盛り込まれた弩級のエンタメ作品です。
2018年の年末にあなたのベストムービーを更新する傑作がやってきました。
CONTENTS
映画『シュガーラッシュ オンライン』の作品情報
【公開】
2018年(アメリカ映画)
【原題】
Ralph Breaks the Internet
【監督】
フィル・ジョンストン、リッチ・ムーア
【キャスト】
ジョン・C・ライリー、サラ・シルバーマン、ガル・ギャドット、タラジ・P・ヘンソン、アラン・テュディック、ジャック・マクブレイヤー、ジェーン・リンチ、アルフレッド・モリーナ、エド・オニール、ショーン・ジャンブロン、パメラ・リボン、ジェニファー・ヘイル、ジョディ・ベンソン、ペイジ・オハラ、リンダ・ラーキン、アイリーン・ベダード、ミンナ・ウェン、アニカ・ノニ・ローズ、マンディ・ムーア、ケリー・マクドナルド、イディナ・メンゼル、クリステン・ベル、アウリー・クラバーリョ
日本語吹替版キャスト:山寺宏一、諸星すみれ、菜々緒、小鳩くるみ、鈴木より子、すずきまゆみ、小此木まり、平川めぐみ、麻生かほ里、土居裕子、鈴木ほのか、中川翔子、大島優子、松たか子、神田沙也加、屋比久知奈、HIKAKIN
【作品概要】
2012年制作、日本では2013年に公開され大ヒットとなった『シュガーラッシュ』の続編でインターネットの世界を舞台にした作品。
ラルフの声を務めるのは前作に続きハリウッドの一流バイプレーヤーのジョン・C・ライリー、ヴァネロペは人気コメディエンヌのサラ・シルヴァーマン。
ヴァネロペを虜にするカリスマ女レーサー・シャンク役に「ワンダーウーマン」のガル・ガドット、動画サイトの女性管理人イエスを『ドリーム』の実力派女優タラジ・P・ヘンソンが務めます。
日本語吹替版も引き続き山寺宏一、諸星すみれが務め、シャンク役に菜々緒が入るなど豪華な顔ぶれとなっています。
映画『シュガーラッシュ オンライン』のあらすじとネタバレ
古びたゲームセンター。
「フィックスイットフェリックス」の悪役キャラクターのラルフと、レースゲーム「シュガーラッシュ」のレーサーキャラクターのヴァネロペは、6年前の大冒険で親友になっていました。
店の営業が終わると、別のゲームで合流して遊びまくるという日々を過ごしています。
ある日、ゲームキャラクターたちの住処に新たに「Wi-Fi」へ通じるルートが出現します。
そこから先に行くとインターネットへ通じており、みんな興味津々になりますが、監視員のサージは「ネットの世界は危険です」と立ち入り禁止のテープを張ってしまいました。
ヴァネロペはラルフに、シュガーラッシュのレースコースは、走り尽くして新鮮味がなくなってきたとこぼします。
ラルフは、親友のために持ち前の怪力でシュガーラッシュのレースコースを開拓し、新しいコースを作ります。
その日もやって来た子供たちから選択され、いつもどおりのコースを他のプレーヤーを引き離して走っていたヴァネロペは、ラルフの新コースを見て大喜びで飛び込みます。
しかしプレイヤーの子供はそんなコースがあるとは知らず、勝手に動くヴァネロペを引き戻そうと無理にハンドルを動かして、破損させてしまいます。
「シュガーラッシュ」の土台を作った会社は既に倒産しており、途方にくれる店主。
子供たちは「E-BAY」というオークションサイトでハンドル部品が売っているのを見つけますが、店主は200ドルという金額を見て「シュガーラッシュの年間売上より高い」と購入を断念。
2日後に業者に引き取ってもらおうと言い出しゲーム機に近づく店主を見てキャラクターたちは「コードを引き抜く気だ!」と大パニックでゲーム世界を脱出し広場に避難します。
コードを抜かれ「シュガーラッシュ」の世界はダウンしてしまいました。
途方にくれるシュガーラッシュのキャラクターたちを別のゲームキャラクターたちがそれぞれの世界に引き取ってあげることにします。
フェリックスと妻のカルホーン軍曹は、ヴァネロペ以外の15人のレーサーを子供として引き取りますが、彼女たちは予想以上のいたずら好きで彼らの手を焼かせます。
その夜、ラルフは落ち込むヴァネロペに「これからは仕事もなく毎日遊べるじゃないか」と励ましますが、彼女は「シュガーラッシュの世界を愛してた。レーサーじゃないあたしって何?」と暗いまま。
ラルフは「君は俺の親友だ!」と言いますが、ヴァネロペは「友情だけじゃ満足した生活にはならない」と言い、彼はショックを受けます。
その後、酒場で子育てに翻弄されるフェリックスと愚痴り合っていたラルフは、ふとした会話で子供たちが言っていた「E-BAY」という場所を思い出します。
「そこに行けばハンドルが手に入る!シュガーラッシュの世界を取り戻せる!」
ラルフは早速ヴァネロペを誘い、監視員の目をかいくぐって、Wi-Fiルーターの中に入ります。
そのタイミングでパソコン初心者の店主がようやくインターネットを開通させ、ラルフとヴァネロペはものすごい勢いで回線の中に吸い込まれてしまいました。
長い回線を抜けた先には無限に広がるインターネットの世界がありました。
LINE、Instaglam、Twitter、snapchat、楽天・・様々なサイトやSNSのエリアがあり、そこにアバター化された人間が集まって楽しんでいます。
広場のような場所に着き、ここからハンドルを探すにはどうすればいいか考える2人。
ラルフたちは背後にキーワードで行き先を教えてくれる検索エンジンのノウズモアがいることに気づき、彼に助けを求めます。
シュガーラッシュ、ハンドル、で尋ねると、ノウズモアはE-BAYを紹介して、すぐさま足元から車が現れてラルフたちを運んでくれます。
E-BAYサイトに着くと、会場に入るまでの場所で広告を持ったポップアップたちがラルフたちやアバターを勧誘していました。
様々な品のオークションが行われている会場内を探すと、シュガーラッシュのハンドルを落札しようとしているアバターがおり、2人は慌ててオークションに参加します。最終的に2万7001ドルという非常識な高額でハンドルを落札してしまいました。
購入して決済場所に持っていった2人は担当者からクレジット番号を聞かれて初めてお金が必要ということに気づきます。24時間以内に支払いができないと落札が取り消されると言われてしまい、ラルフは2万7001ドルという大金をどう用意するか途方にくれます。
そこで彼は、先ほどのポップアップたちの中に「ゲームプレイでお金を稼ぐ方法」という広告があったことを思い出し、そのポップアップ“JPスパムリー”に話しかけます。
JPスパムリーは2人を彼の事務所に案内してくれます。
ゲームでお金を稼ぐ方法とはオンラインゲームにアクセスして、レアアイテムを手に入れてマニアにそれを買い取って貰うというもので、お金になるアイテム候補を見ていると1つだけ4万ドルという高額がついたものがありました。
「スローターレース」というスラム街が舞台のゲームレースの女ボス・シャンクが所有しているレースカー。
ヴァネロペも得意なレースゲームならクリアできると、2人は「スローターレース」の世界に向かいますが、そこは予想以上に治安が悪くラルフは怖がります。
しかしヴァネロペは「シュガーラッシュ」とは比べ物にならない作りこまれた世界観に目を輝かせていました。
目当てのレースカーの周りにはシャンクとその部下たちがおり、ラルフがゲーム内キャラクターのフリをして彼らに話しかけている間に、ヴァネロペが車に乗り込んで急発進します。
そのままラルフを乗せて逃げ切りを図りますが、シャンクのドライビングテクはヴァネロペをも凌ぎ、追いつかれて車強奪は失敗に終わります。
しかし、シャンクはお金が必要という2人の事情を聞くとラルフに向って送風機を当て、風圧で変顔になった彼の様子を動画に収めます。
彼女はBuzzTubeという動画サイトにその映像を投稿し、この動画が人気になれば一気にお金が稼げると教えてくれました。
美しく強く、そして優しいシャンクに心惹かれるヴァネロペ。
ラルフはその様子が面白くありませんでした。
シャンクはBuzzTubeを仕切っているイエスという女性を紹介し、彼女に聞けば動画で稼げる方法がわかると言います。
ラルフはシャンクのアドバイス通りにするのを嫌がりますが、もう支払いの期限まで8時間しかなく、ヴァネロペにも説得され仕方なくBuzzTubeに行くことに。そこでは既にラルフの変顔動画が大人気になっていました。
イエスのところに行くと最初はあしらわれてしまいますが、ラルフが人気者になっているのを知った彼女は手のひら返しで彼に動画のアドバイスをしてきます。
BuzzTubeはユーザーからもらったイイネをお金に変えられるシステムで、イエスは人気の動画を真似するように勧めてきました。
動物の動画、クッキング、メイク、身体を張ったチャレンジなど、ラルフは言われた通り全部実行します。
動画を見ていた大人たちは昔「フィックスイットフェリックス」をやっていた世代も多く、ラルフをみて懐かしくなり再生数を増やしていきます。
だんだんとお金が貯まっていきますが、まだ足りないのでヴァネロペはポップアップとして他のサイトに宣伝に行きます。
ノウズモアに聞いた人々に大人気の場所、それはデイズニーの公式ファンサイト「オーマイディズニー」でした。
大勢の人がディズニーの有名キャラを見に集まっており、MARVELキャラのグルートなどもステージにいます。
ヴァネロペはポップアップとしてたくさんの人に声をかけて動画へ誘導しますが、パトロールをしていたスターウォーズのストームトルーパーに追いかけられ、目に付いた部屋に入ります。
そこはなんと歴代のディズニープリンセスたちの控え室でした。
彼女たちはヴァネロペを不審者だと思って取り囲みます。
ヴァネロペは自分もプリンセスだというと、プリンセスたちは彼女を質問責めにしてきました。
ヴァネロペが大きくて強い男性に幸せにしてもらったというと、一同は「本物のプリンセスよ!」と色めき立ちます。
彼女たちはヴァネロペのラフな服装を見て、ドレスからTシャツなどの部屋着に着替えておしゃべりを始めます。
『リトルマーメイド』のアリエルが自分の夢を語っていると、彼女が急に歌いだしどこからともなく照明が当たるのを見てヴァネロペはびっくりします。
ヴァネロペは「プリンセスは本当にしたいことを語るときは歌うのよ」と言われますが、彼女は歌ったことなどありませんでした。
プリンセスたちは仕事の出番が来て部屋を出て行ってしまい、ヴァネロペは外に出ます。
彼女は自分の本当にしたいことについて考え始めていました。
映画『シュガーラッシュ オンライン』の感想と評価
2018年最後にディズニーが決定版とも言うべき傑作を放ちました。
前作『シュガーラッシュ』はゲームの世界を実在キャラなども大胆に登場させながら見事に描いていましたが今回はより身近なインターネットの世界が舞台。
そんなインターネットの世界をアニメならではの戯画化と擬人化で見事に表現し、自分たちの作品をメタ的視点で批評して爆笑ギャグにしてみせ、キャラの心の闇をファミリー映画としてはギリギリに攻めた表現で描写し、最後は意外かつ切ないストーリーで感動させてくれるという、全方位的に良くできた映画です。
作りこまれたアニメならではのインターネット描写
まず誰もが驚き楽しんでしまうのはインターネット世界の描き方です。
ユーザーをネット世界に旅するアバターとして描き、各種サイトやSNSを店やビルなどで具現化し、検索エンジンや誰もがネットを使う際に鬱陶しく感じるポップアップ広告などの機能を擬人化して描いておりそのアイデアには感心させれっぱなしです。
今の世の中、ネットと無関係な人間はなかなかいません。
この映画を見ている間中「あ~あるある」という反応をすることになるでしょう。
またたくさんの実在する企業名やサイトやSNSがそのまま出てくるのも驚くべきところで、さすがディズニーといったポイントです。
今回クライマックスに訪れるピンチもインターネットならではのウイルスという要素を活かしており、前作から6年を経て進化した技術でインターネットの世界を描くという選択は大成功しています。
細かい風景まで作りこまれネットに詳しい人ほど「あ~!!」となる小ネタがあるので何回も見たりDVD化されてから細かくチェックするのも楽しいでしょう。
ディズニーによる全力のディズニーイジリ
予告編でもフィーチャーされているように、今作の目玉として中盤に「オーマイディズニー」というディズニーのファンサイトに行くという展開があります。
そして歴代のディズニープリンセスや有名キャラがそのまま出てきます。
プリンセスの声は存命している人はみなそれぞれの映画と同じ俳優が演じており、彼女たちが一堂に会するところはディズニーファンには夢のようなシーンでしょう。
彼女たちが着るラフなTシャツにも各作品にまつわる内容が書かれているのでぜひ注目してください。
またここ数年でディズニーが権利を買ったスターウォーズシリーズやMARVELシネマティックユニバースのキャラクターも登場します。
最近はディズニーによる他作品の買収を批判する声も多いですが、タブーにせずに全部画面に出すことを選ぶ会社としての度量の深さに驚かされます。
先日死去したスタン・リーのアバターがワンシーンにちらっと映るのも見所です。
また、ディズニープリンスが夢を語りだすと証明が照って、歌が流れるというディズニーの定番を茶化すようなシーンもありディズニーファンほど爆笑できるでしょう。
しかしながら、それがただのギャグに終わらず、ヴァネロペが自分の本当にやりたいことを見つけ、その夢とラルフとの友情に揺れるという本作のテーマにも通じているのが実に巧みです。
最近のディズニー作品の傾向である「王子様に頼らない自立したヒロイン」という要素もしっかり入っており、パロディもやりながら正当な展開に話を持っていっています。
夢と友情
前作『シュガーラッシュ』はずっと友情に飢えてきたラルフが初めての親友ヴァネロペと出会い、嫌いだった悪役という役割も受け入れて人生を肯定的に見るようになるというストーリーでした。
本作では彼は仕事よりヴァネロペとの友情を大事にし、未知のインターネットの世界にも戸惑って帰りたがる消極的で変化を嫌う存在として描かれています。
ラルフは結局まだ自分の役割や自分自身のことをまだ完全に肯定できてはおらず、ヴァネロペという存在に依存してしまっています。
ラルフがヴァネロペがいない時に動画サイトの心無いコメントを見てひどく落ち込んでしまうのも、彼に自信がないからです。
一方のヴァネロペは友情だけでなく自分の仕事や役割に重きを置き、初めて見るインターネットの世界にもすぐに心を奪われます。
そう考えるとラルフとヴァネロペの関係は年の離れた親子のようにも見えてきます。
父親は保守的で娘のことが生きがいで、娘は父を大事に思っているが、自分の夢や可能性を追いかけたい。
本作はそんな二人のすれ違いの物語です。
ラルフはヴァネロペが自分より夢を追いかけるのが裏切りのように感じてしまいそれが元でウイルスが暴走してしまいます。
しかしそこで相手のことを考えずに自分の思いだけを遠そうとする肥大化した自我というものを見ることにより、反省して成長します。
自分の嫌な内面を具現化されるという映画的かつ誰もが身につまされる描写を入れてくるのもファミリー映画としては攻めている点ですね。
そして彼はヴァネロペが離れて夢を追うのを応援しつつ、今までどおりの生活を楽しむというラストも味わい深いです。
ここでラルフがヴァネロペに対抗して大きな夢を見つけるという展開にしてしまうと少し窮屈な話になってしまいますが、本作はそうせず、ささやかに「もといたゲーム世界の住人とさらに仲良くなる努力をする」という程度に抑えているのが優れた点です。
いつものディズニーらしく夢を追って成長していくことの素晴らしさを描きつつ、夢を追わなくても今のありのままの自分を愛し、現状に感謝することの大切さもしっかり描いている非常にバランスのとれた作品となっています。
監督のフィル・ジョンストンとリッチ・ムーアも「自分をきちんと愛せない人は、いい友達にもなれない」とインタビューで語っています。
ラスト、ラルフとヴァネロペは離れていても以前より自分自身が好きになっているのでさらに深い友情を築けています。
子供向けと侮るなかれ、大人にこそ響く深いメッセージを持った映画となっています。
まとめ
大人から子供まで文句なしに楽しめる、エンタメ性とメッセージ性が見事に両立した傑作です。
そこまで前作と関連したストーリーというわけでもないので本作を見てから一作目を見るというのもアリではないでしょうか。
ちなみにあらすじだけだと少し寂しい気持ちになる映画のように見えますが、しっかりエンドロールまで見るとニコニコで劇場を出られるような爆笑オマケもついているので必見です。
綺麗に完結したように思えるシリーズですがフィル・ジョンストンとリッチ・ムーアによると3作目の構想があるようです。
どんな話になるかわかりませんが、本作まで傑作ばかりを創り上げている彼らに更なる期待をしてしまいます。