2018年4月5日に亡くなられた日本を代表するアニメーション監督、高畑勲。
代表作『パンダコパンダ』、続編『パンダコパンダ 雨ふりサーカスの巻』が、新文芸坐にて5月1日~5月3日、ユジク阿佐ヶ谷にて5月26日~6月8日まで劇場公開されます。
映画『パンダコパンダ 雨ふりサーカスの巻』の作品概要
【公開】
1973年(日本映画)
【監督】
高畑勲
【原案・脚本】
宮崎駿
【キャスト(声の出演)】
杉山佳寿子、熊倉一雄、丸山裕子、太田淑子、山田康雄、和田文雄、安原義人、松金よね子、弥永和子
【作品概要】
本作は宮崎駿原作・脚本を、高畑勲が監督を務めた『パンダコパンダ』(1973)の続編。宮崎、高畑の二人は本作も続投しています。
映画『パンダコパンダ 雨ふりサーカスの巻』のあらすじとネタバレ
ミミ子・パパンダ・パンちゃんが暮らす竹林の家に、二人組の男が忍び込みます。彼らは「トラちゃん」を探しているようです。3人の姿、特にパパンダに怯えた男たちは逃げだしてしまいます。
気を取り直して、3人は食事。しかしパンちゃんの分のカレーが食べられてしまっています。パンちゃんがにおいを追うと、トラの子ども・トラちゃんが家に迷い込んでいました。仲良くなった3人とトラちゃん。
翌朝、ミミ子の買い物について行くパンちゃんとトラちゃん。ミミ子が目を離した隙に、トラちゃんとパンちゃんはどこかへ行ってしまいます。パンちゃんとトラちゃんを探すミミ子。ミミ子は友達からサーカス団が巡業でやってきた事を知ります。ミミ子はサーカス団の元へ。
トラちゃんはサーカス団からはぐれていたのです。家に忍び込んでいた男の正体はサーカス団の団長と団員でした。
パンちゃんがトラの檻に入ってしまったと聞いたミミ子は、トラの檻へ向かいます。トラはトラちゃんのお母さんでした。再会を喜ぶミミ子とパンちゃん、トラとトラちゃんの親子2組。
ミミ子は団長からサーカスのチケットを親子3人分貰います。トラちゃんに会う事を楽しみに待つパンちゃん。しかし、大雨が降って町は水に沈んでしまいます……。
映画『パンダコパンダ 雨ふりサーカスの巻』の感想と評価
前作以上にファンタジックな作風となった『パンダコパンダ 雨ふりサーカスの巻』。
前作『パンダコパンダ』は『アルプスの少女ハイジ』や『となりのトトロ』に繋がる要素が多々ある映画でした。
本作にもその後の宮崎駿作品に繋がる要素があります。
それは後半に登場する大雨による洪水で沈んだ町です。
水に沈んだ町のイメージはその後の宮崎駿作品に多く登場します。
具体的に上げると、『未来少年コナン』(1978)、『ルパン三世 カリオストロの城』(1979)、『天空の城ラピュタ』(1986)、『崖の上のポニョ』(2008)があります。
こうして見てみると、水没した町というイメージを宮崎駿がかなり好んでいることがわかります。
それが初めて登場したのが本作です
高畑勲、宮崎駿の他、作画監督の小田部羊一、大塚康生の二人も本作に続投しています。
一方、美術監督は福田尚朗から小林七郎に代わりました。
小林七郎は日本のアニメーションの美術(背景画)を語る上で、重要な人物です。
小林が美術監督を務めた作品はテレビアニメ『ど根性ガエル』(1972)、『元祖天才バカボン』(1975)、『魔法の天使クリィミーマミ』(1983)、『のだめカンタービレ』(2006)など多数。
また、押井守監督の『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(1985)、『天使のたまご』(1985)、幾原邦彦監督の『少女革命ウテナ』(1997)など、有名監督と組んだ作品も多数あります。
特に出崎統監督の仕事は有名です。『ガンバの冒険』(1975)、『劇場版エースをねらえ!』(1979)、『あしたのジョー2』(1981)の他、多くの作品で二人は組んでいます。
アニメーションというと、やはり、作画に目が行きがちですが、美術は作品全体の空気を左右する重要な要素です。
本作ではあたたかさを持った筆致の美術が印象的です。
小林は宮崎と『ルパン三世 カリオストロの城』で再び仕事をしますが、先述のようにこちらにも水没した町のイメージが登場します。
宮崎のイメージを具現化するのに、小林の表現力が一翼担っているのです。
本作には背景スタッフで男鹿和雄も参加しています。男鹿は小林の弟子にあたる美術監督。
『となりのトトロ』(1988)、『平成狸合戦ぽんぽこ』(1994)、『もののけ姫』(1997)『かぐや姫の物語』(2013)など、スタジオジブリ作品の美術で高い評価を得ています。
男鹿が高畑・宮崎両名と初めて仕事をしたのが本作です。
まとめ
前作『パンダコパンダ』同様に、本作も高畑勲、宮崎駿のその後の作品に繋がる重要な作品です。
水没した町のイメージのほか、美術(背景画)に注視してみてはいかがでしょうか。
背景画がいかに作品の空気を描く上で大切かがわかると思います。