天才漫画家・赤塚不二夫の人気作品『おそ松くん』
015年と2017年にテレビシリーズが放送され、爆発的な人気アニメとなった作品の劇場版『えいがのおそ松さん』。
テレビシリーズとは違ったテイストとなった「泣けるおそ松さん」と評判の、本作をご紹介します。
CONTENTS
映画『えいがのおそ松さん』の作品情報
【公開】
2019年3月15日(日本映画)
【原作】
赤塚不二夫
【監督】
藤田陽一
【脚本】
松原秀
【キャスト(声の出演)】
櫻井孝宏、中村悠一、神谷浩史、福山潤、小野大輔、入野自由、遠藤綾、鈴村健一、國立幸、上田燿司、飛田展男、斎藤桃子、井上和彦、くじら
【作品概要】
ニートと化した、大人になった六つ子のダメっぷりが人気となり「2016年ユーキャン新語・流行語大賞」にもノミネートされるほどの、大ブームとなった人気アニメ『おそ松さん』の劇場版作品。
監督はアニメ『銀魂』シリーズの藤田陽一。
映画『えいがのおそ松さん』登場人物紹介
『おそ松くん』では、六つ子は全員同じ性格で「同じ人間が六人いる」という事がギャグになっていましたが、『おそ松さん』では、それぞれのキャラクターが強くなっています。
ここでは『おそ松さん』のメインキャラクターを紹介していきます。
松野おそ松
松野家長男ですが、ギャンブルと女の子が好きなだらしない性格。
「六つ子の中で一番のクズ」とも呼ばれています。
六つ子全員の性格を把握しており、たまーに長男としてリーダーシップを発揮する事もあります。
松野カラ松
ナルシストで、異次元のファッションセンスを持つ松野家次男。
実は兄弟想いの優しい性格ですが、六つ子の中で空気扱いされる事も多いです。
松野チョロ松
松野家三男。六つ子の中で一番しっかりした発言をしますが、そのほとんどが口先だけの無駄な意識高い系。
アイドル好きで、興奮しすぎると理性を通り越した行動に走ります。
松野一松
マイペースな松野家四男。
ネガテイブ思考の持ち主で、毒のある言動が目立ちますが、実は動物好きで心を通じ合わせる事が出来ます。
松野十四松
いつも笑顔で、天真爛漫な性格の松野家五男。
その天真爛漫すぎる性格は、時に人の常識さえも吹き飛ばします。
やたら野球好きをアピールしますが、野球の事を何も知りません。
松野トド松
松野家六男。末っ子特有の、甘え上手なスキルを発揮して生きている通称「トッティ」。
その発言には心が無く「ドライモンスター」とも呼ばれています。
チビ太
おでん好きの少年だったチビ太は、大人になり「ハイブリットおでん」という屋台を開業。
六つ子に当たり前のように、食い逃げされています。
イヤミ
かつて「シェーッ」というギャグを流行らした、自称「主役」。
生活レベルが地の底まで落ちており、事あるごとに六つ子の邪魔をしてきます。
弱井トト子
地下アイドルとして活動する魚屋の娘。
可愛い見た目をしており、本人も自分の可愛さを否定しません。ボディブローが得意技。
デカパン
常に大きなパンツ1つで過ごしている、心優しい発明家。ダヨーンと仲良し。
ダヨーン
なんでも吸い込む大きな口が特徴的で「ダヨーン」が口癖。デカパンと仲良し。
ハタ坊
頭に付いた旗をなびかせ、ただ漠然と生きている男の子。
大物投資家への適当なアドバイスで成功し「ミスター・フラッグ」とも呼ばれています。
映画『えいがのおそ松さん』あらすじ
高校時代の同窓会に出席した六つ子は、自分たち以外の同級生が、就職や結婚をしている現実を見せつけられます。
肩身の狭い思いから、自分たちも就職していると嘘を吐きますが、すぐにニートである事がバレてしまいます。
同級生に罵倒され嘲笑の的となった六つ子は、意気消沈で帰宅し、ヤケになったようにお酒を飲みます。
そこで、自分たちの高校時代にろくな思い出が無いことを嘆きますが、一松が高校の卒業式前日に起きた、ある事件を思い出します。
それは、突然街に現れた象に追いかけられていたハタ坊が、車にぶつかり吹き飛ばされ、近くを飛行していた飛行機にぶつかり墜落させたという事件です。
六つ子の中でも、覚えている者と覚えていない者に別れますが、すぐに興味を失い就寝します。
次の日、起床したカラ松は、自分たちの部屋が高校時代に戻っているという異変に気づきます。
カラ松に起こされた他の六つ子も、異変に気づき、窓の外にいる黒猫が自分たちを見ている事に気づきます。
一松は、黒猫を中に入れようとしますが、黒猫はその場を去ります。
そして、六つ子は、突然街に現れた象に追いかけられていたハタ坊が、車にぶつかり吹き飛ばされ、近くを飛行していた飛行機にぶつかり墜落させるという光景を目にします。
高校の卒業式前日まで、タイムスリップした事を確信した六つ子は、部屋に入ってきた18歳の自分達から逃げるように家を出ます。
突然のタイムスリップに戸惑う六つ子ですが、外の光景は巨大なブラックホールが街の中央に位置し、街の光景全体が崩壊しかかっている異様な光景でした。
また、街の通行人も、顔が朧気になっており、六つ子はパニックになります。
そこへ通りかかったデカパンを頼り、六つ子は現在自分達の起きている不可解な状況を説明します。
デカパンからは「今いる世界は六つ子の中の誰かの、思い出の世界である」事を告げられます。
崩壊しかけている街並みは、当時の記憶がハッキリしていない為に起きた現象で、通行人の顔が朧気なのも、記憶の主が覚えていない事が原因でした。
六つ子の中の誰か1人が、過去に後悔の念を抱いており、その後悔を消さないと元の世界に戻れない事が判明します。
また、デカパンからは「この世界に長くいるとミジンコになってしまう」事と「必要以上に人と接触し、この世界の人間でない事がバレると、世界が崩壊してしまう」事も告げられます。
六つ子は、後悔をしているのは誰かを探るため、過去の自分達を調査します。
映画『えいがのおそ松さん』感想と評価
原作の『おそ松くん』が、赤塚作品の中でも人情派ギャグ漫画として知られており、『えいがのおそ松さん』も泣ける作品である事は予想していましたが「こう来たか!」と言うのが正直な感想です。
ここでは『えいがのおそ松さん』の見どころを、ご紹介していきます。
映画である事を意識した作品
『えいがのおそ松さん』はテレビ版の延長上ではなく、一本の映画である事を意識した作品となっています。
監督の藤田陽一は「どうすれば映画になるか?」を考え、あらゆるアニメ作品を見て、クライマックスの映画的な動きを研究した事を語っています。
また、藤田監督が「『おそ松さん』の始まりでもある物語を描きたかった」事から18歳の六つ子達を描き、『おそ松くん』と『おそ松さん』を繋ぐ物語として制作された本作は、いい意味で勢いだけのエピソードが多かったTV版とは別のテイストの、練り込まれた作品という印象です。
TV版と比べると、悪乗りしたギャグは抑えめに、それでも一つ一つのギャグシーンは変わらないノリという、かなり考えられたバランスとなっています。
「忘れたい思い出」という誰にも心当たりがあるテーマ
本作のテーマは「悲惨すぎて忘れてしまいたい思い出」という、いわゆる「黒歴史」です。
六つ子は、高校時代の思い出を、ハッキリと覚えていませんが「悲惨だった事」という共通認識だけは持っています。
その為、高校時代の六つ子は仲が悪かった事すら覚えていませんでした。
しかし、高校時代の六つ子を、別の視点である高橋さんから見ると、いつも一緒で楽しそうな学園生活を送っていたように見えていました。
そして、六つ子の存在が、高橋さんの高校生活を充実した毎日にしていたのです。
生きていれば、嫌な記憶の1つや2つは誰もが当てはまるでしょう。
しかし、本人にとって嫌な過去でも、別の人には大切な思い出になっているかもしれません。
本作では、違う角度から事実を見つめ直す事の大切さが語られています。
皆さんも、ご自身の「黒歴史」と一度対峙してみてはいかがでしょうか?
胸をえぐるレベルのノスタルジー
本作で特筆したい場面があります。
それは、大人の六つ子と、18歳の六つ子が崩壊を始めた世界の中で、高橋さんに会いに行くクライマックスです。
18歳と言えば、自身のコントロールが出来ず、社会での立ち回り方も分かっていない為、必要以上に無理をしたり強がっていた時期です。
作中の六つ子同様、誰もがその頃の自分を見ると、痛すぎて恥ずかしい思いをするでしょう。
大人の六つ子は、そんな18歳の自分達へ「自分らしくある事の大切さ」を語り、「そのままでいれば大丈夫」と勇気づけます。
「もし自分が、18歳の頃の自分に会ったら、どう声をかけるか?」という事を考えると、かなりノスタルジックな気持ちになり、もうノスタルジーが胸をえぐってくるレベルの感動を受けました。
『おそ松さん』は、女性人気が高いイメージがありますが、『えいがのおそ松さん』は中年男性に好評のようです。
クレヨンしんちゃんの劇場版シリーズが、2001年の映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』で大人も泣けるアニメとして評判になりましたが、『えいがのおそ松さん』にも似たような印象を受けました。
まとめ
映画である事を意識して制作された『えいがのおそ松さん』ですが、テレビ版のファンへ向けた「お祭り映画」的な要素も持っています。
特に六つ子が3つのグループに別れて行動する場面では、おそ松とカラ松、チョロ松と十四松、一松とトド松という、テレビ版では見られなかった組み合わせで行動します。
暴走するチョロ松相手に、十四松がツッコミ役に回るなど、映画ならではの特別感も満載です。
ただ、基本的な設定さえ分かれば、誰でも楽しめる作品になっていますので、ご鑑賞の際は本記事のキャラクター紹介を参考にして下さいね!