「このすば」待望の映画が2019年8月30日に公開されました。
小説投稿サイトから始まった暁なつめのライトノベル『この素晴らしい世界に祝福を!』。
角川スニーカー文庫で書籍化され、その後テレビアニメも2期まで作られています。
本作『この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説』はその劇場版。
人気の秘密はそのキャラクター造形。主要な登場人物には皆どこか残念な部分があり、そのギャップこそがこの作品の大きな魅力です。
そのキャラクターたちから生まれる休む間もないギャグの応酬を楽しんでください。
CONTENTS
映画『この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説』の作品情報
【日本公開】
2019年(日本映画)
【監督】
金崎貴臣
【キャスト】
福島潤、雨宮天、高橋李依、茅野愛衣、豊崎愛生、堀江由衣、西田雅一、原紗友里、稲田徹、長縄まりあ
「このすば」の世界をおさらい
「このすば」の略称で親しまれているこの作品の世界観をおさらいしておきましょう。
主人公カズマこと佐藤和真は引きこもりの高校生。事故で死んでしまったカズマは死後の世界で、天国ではなく異世界への転移をすすめられます。
それを持ちかけてきた女神アクアを道連れにして、カズマはロールプレイングゲームの勇者のような冒険の世界へ飛び込んだのです。
その世界でのカズマは初級の“冒険者”。運が良いこと以外取柄はありません。ちょっとこずるくて腹黒でスケベ。でも、いざというときは仲間思いの面を見せることも。
カズマとパーティを組むのは、口の悪い駄女神アクア。上級の“アークプリースト”で回復魔法担当ですが、なぜか水芸やマジックなどの宴会芸が得意です。
攻撃担当は、能力の高い紅魔族の中でも特に強い爆裂魔法が得意なめぐみん。彼女は上級の“アークウィザード”ですが、一日一回しか爆裂魔法は使えず、しかもそのあとは歩けなくなります。
防御を担当するのは上級“クルセイダー”のダクネス。攻撃は苦手ですが、壁になるのは得意。ドMで、常に蹂躙される妄想をしている残念な美女です。
このように一癖も二癖もあるキャラクターが、魔王討伐を目指してクエストに挑み、お金を稼ぎながら強くなっていく、というのが「このすば」の基本的な物語です。
映画『この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説』のあらすじとネタバレ
今日もめぐみんの爆裂魔法でアクセルの街に甚大な被害を出してしまったカズマたち。落ち込むカズマのもとに、めぐみんの友だち、紅魔族のゆんゆんが突然やってきました。
「カズマさんの子どもがほしい」
唐突なお願いにカズマは大興奮!
話を聞いてみると、紅魔の里が魔王の部下に襲われ滅亡の危機に瀕しているといいます。
カズマとゆんゆんの間に生まれた男の子が勇者となり魔王を倒す、と紅魔族の長であるゆんゆんの父からの手紙に書いてありましたが、その部分はゆんゆんのクラスメイト、あるえ(作家志望)の創作でした。
ゆんゆんは里に戻り、気になったカズマたちも後を追うように紅魔の里へ、マジックアイテム屋店主ウィズの魔法でテレポートしてもらうのでした。
しかし紅魔の里は、ゴブリンの襲撃を受けてはいたものの、紅魔族の方が圧倒的に強いため相手にならず、里のピンチといった風情は全くありません。
一行はめぐみんの家へ。可愛い妹こめっことめぐみんの両親が暮らすその家は粗末で、日々の食事にも窮している様子。カズマをめぐみんの恋人だと勘違いした両親は、カズマに大金が手に入る予定があると知るや手のひらを返したようにカズマを持ち上げ始めます。
めぐみんの母ゆいゆいの策略によってカズマとめぐみんは一室に閉じ込められ、一夜を共にするよう仕向けられてしまいます。熟睡するめぐみんの横で、カズマは悶々と歩き回りますが、どうせ疑われるならと覚悟を決めた瞬間、めぐみんは目を覚まします。
結局めぐみんは窓から逃げ出しゆんゆんの家へ。翌日、カズマはめぐみんを襲おうとしたゲス野郎として扱われるのでした。
めぐみんの案内で紅魔の里を観光するカズマとアクア。よくわからない何かが封印されている施設を見たあと、三人はめぐみんの通っていた魔法学園レッドプリズンを訪れました。
そこでゆんゆんやあるえなどめぐみんの同級生に会ったカズマたちは、まじめなゆんゆんが里では浮いた存在で、友だちのいない「ぼっち」だったことを知ります。
今でこそ中級と上級両方の魔法が使える優秀なアークウィザードのゆんゆんですが、学生時代こめっこを助けるため、めぐみんの代わりにとっさに中級魔法を習得し、そのせいでポイントが減ってしまい上級魔法の習得が遅れたという過去があったのです。
その夜、再び一室に閉じ込められたカズマとめぐみんは珍しくいい雰囲気に。すると里に魔王軍が侵入したとの情報が入り、カズマが外に出るとそこには魔王軍幹部シルビアがひとりで潜入していました。
取り込み中のところを邪魔されたカズマは不機嫌そうに向かっていきますが、最弱の男の攻撃は全く効かず、あっさりとつかまってしまいます。というよりむしろ自ら捕らわれ、シルビアのたわわな胸の谷間に埋もれるのでした。
シルビアに捕らえられたカズマは、例のよくわからない施設に連れて来られました。シルビアは、その地下格納庫にある古代の魔道具「魔術師殺し」の力を手に入れようとしていますが、扉を開ける暗号がわからず困っていました。
それはまるでゲームコントローラーのようで、カズマがサクサクとコマンドを打ち込むとすぐに扉は開きました。シルビアは中に入りますが、すきを見てカズマは再びコマンド入力して閉じ込めてしまいます。
しかしシルビアは他者を取り込み一体化するグロウキメラ。「魔術師殺し」と合体したシルビアは半身蛇のような姿になり、施設を破壊して外に出てきました。
今までの恨みを晴らすかのように、シルビアは口から炎を撒き散らして紅魔の里は火の海に。もう里を捨てるしかないのでしょうか。
映画『この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説』の感想と評価
映画でも気負わないいつもどおりのギャグが炸裂
公開初日の劇場には、親子連れから10代とおぼしきカップル、そして大きいお子さんまで、これ何の映画?と思うような幅広い客層が詰めかけ、おなじみのギャグに笑いの絶えない雰囲気でした。
シリーズ初の劇場版ということで、「このすば」の魅力であるギャグやエロさが損なわれてしまうのでは?という懸念も聞かれましたが、どうしてどうして。十分に笑い、そして小さいお子さん大丈夫かなーというくらいに下ネタもちゃんと織り込まれていました。
紅魔族お得意の長ったらしい口上や変な名前、そして魔王軍シルビアのエロかっこいい姿とそれに似合わないリアルな悩みなどなど、フフっとみる者を脱力させるセンスはさすがです。
今回のヒロインは、爆裂魔法の使い手めぐみん
本作は「紅伝説」のサブタイトルとおり、紅魔の里、紅魔族にフィーチャーしたお話なので、おのずとめぐみん(とゆんゆん)がヒロインという扱いでした。
今回は実家の様子や妹、同級生との関係など、めぐみんのバックボーンがよくわかる内容でした。特にゆんゆんとの関係は思春期の不安定な感じがよく出ていて、クライマックスでの共闘やその後の決意など、めぐみんの成長が感じられる映画らしい展開です。
ちなみに駄女神アクアとは、「頼んだぜ、相棒」「まかせて」というやりとりのとおり、男女というより同志といった関係のようです。
ダクネスは、お色気シーンをシルビアやオーク(メス牛!)に取られてしまったせいか、若干影が薄かったような。今後の彼女の活躍に期待しましょう。
一番の魅力はゲスのカズマ
この作品の一番の魅力、それはなんといってもカズマのキャラクターから繰り出される言葉の数々。
どんな相手に対しても等しく毒を吐き、見下したり、あきれたり。世の中ななめにみているような、そんなキャラを立たせているのはカズマ役福島潤の声によるところが大きいのです。
ちょっとハスキーで小憎らしい声。でもいざというとき、今回の映画でいうとシルビアを倒すために誘うところやめぐみんとの寝室のシーンなど(色っぽいシーンばかりですが)、そういうときに出す声のイケボ感がすごいです。
これはいわゆるギャップ萌えですね。カズマに限らず、この作品のキャラクターたちはギャップしかありませんが。
とにかく、カズマの声を福島が担当したことがこの作品の最大の勝因だと断言します。それくらい、その声はカズマそのものなのです。
まとめ
今回の映画では制作会社がテレビシリーズの「スタジオディーン」から「J.C.STAFF」に変更になりましたが、監督やスタッフの多くが変わっていないためか全く違和感はありません。
むしろ、めぐみんお得意の爆裂魔法がメインの話なので、その視覚効果の美しさや爆発音の重厚さに磨きがかかっています。
爆発音といえば、そう、この作品の音響監督は岩浪美和です。「ガルパン」や「幼女戦記」「ジョジョの奇妙な冒険」でおなじみ、音響の魔術師と呼ばれる彼が携わる作品の音は、立体的で、腹の底に響いてきます。
ぜひこの映画『このすば』も、劇場でその素晴らしい画と音を体験してみてください。
そして、原作のストックもまだまだあるようですし、アニメ3期、または次の映画など、続編を期待して待ちましょう。
映画『この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説』は2019年8月30日より全国ロードショーです。