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Entry 2021/08/13
Update

『平家物語 犬王の巻』映画原作ネタバレあらすじと結末感想。劇場アニメとして能楽師犬王と琵琶法師友魚の“運命と友情”を描く

  • Writer :
  • 星野しげみ

小説『平家物語 犬王の巻』が劇場アニメーションとして2022年5月28日(土)全国ロードショー!

軍記物の名作『平家物語』の現代語訳を手掛けた古川日出男による『平家物語 犬王の巻』。

南北朝から室町期に活躍した能楽師・犬王の実話を元にした『平家物語』に連なる物語が、『夜は短し歩けよ乙女』(2017)『きみと、波にのれたら』(2019)などを手掛けた湯浅政明の長編アニメーション映画となりました。

同時代を生きた観阿弥、世阿弥とともに、三代将軍足利義満の愛顧を受けたと言われている犬王ですが、彼が描いたという数々の名作は、現在までいっさい残されていません。

ミステリアスな犬王と平家物語を歌う琵琶法師の友魚との友情が、能楽という一つの芸の花を見事に咲かせます。

小説『平家物語 犬王の巻』の映画公開前に、原作小説のネタバレあらすじをご紹介いたします。

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小説『平家物語 犬王の巻』の主な登場人物

【犬王】
京の都・近江猿楽の比叡座に生まれた男子。生まれつき奇怪な容姿をしているために、面を着けられます。

【友魚】
壇ノ浦の漁師の生まれ。宝剣を海から引き揚げたことで盲目となり、上京して琵琶法師となります。

小説『平家物語 犬王の巻』のあらすじとネタバレ


書影『平家物語 犬王の巻』

平氏が京の都で栄えた平安時代末期。

驕りたかぶって栄華を極めた平氏一門ですが、やがて源氏を代表とする反平氏政権に追いやられます。

京の都から西へ落ちのび、瀬戸内海の壇ノ浦で最終戦を迎え、平氏は滅びたとされました。

壇ノ浦合戦から数10年後。

壇ノ浦の海人の家に、友魚と名付けられた男子が生まれました。友魚の家族は、イオの一族と呼ばれる海人集団の一員でもありました。

イオの一族は海で生きる民としての潜水能力を高く評価されていました。

その力を利用しようと、都からやってきた都人が友魚に地図を渡し、記された場所に眠っている物を取ってきてほしいと頼みます。彼はこれを承諾し、父と一緒に海に潜りました。

父が海に沈んだ物を見つけます。それは宝剣のようでした。

手にすると、突然それが光り輝きはじめ、その影響で父は亡くなりました。友魚も光を間近で見てしまい、命は取り留めたものの、視力を奪われてしまいました。

彼が目にしたのは、皇位の象徴である三種の神器の一つの「草薙の剣」という宝剣。それは、壇ノ浦合戦で平氏が擁する安徳天皇が入水するときに一緒に失われたものでした。

友魚は、自分たち家族をこんな目に合わせた者を探すために京の都へと向かいます。そして道中で同じく目の見えない琵琶法師と出会います。

その琵琶法師は、平家物語を琵琶の音に載せて語っていました。琵琶の音色に惹かれ、友魚は琵琶法師の後をついて行き、ついに弟子となります。

その後、師匠から琵琶を習い、都でも有名な琵琶法師として名を馳せていきます。

一方、友魚誕生よりも数年遅れ、猿楽の能を披露している一座・比叡座に、ある男の子が生まれました。男の子の名前は犬王。

彼は、誰もが腰を抜かし恐れ、逃げ惑う程のおぞましい姿をしています。実の母でさえ産まれた当初の彼を直視できないほどの醜態でした。

母乳すら実母が器に絞り出し、犬王がそれを犬猫のようになめて育ちました。そう、彼は忌み嫌われるほどの醜態でしたが、食べることは出来、身体を動かすことができたのです。

なんとか3歳まで成長した彼は、面を被り体の全てを人前に晒さない格好を強いられます。

ですが、犬王は自分の生まれを嘆くことはせず、むしろ自分の素顔を晒して、同じ年頃の子共達を驚かして喜ぶという、豪胆さすらありました。

ある時、犬王は一人の琵琶法師を見かけ、ひょうたんの面を取っていつもと同じように驚かそうとします。

その琵琶法師こそ友魚だったのですが、友魚は恐れもせずにはっきりと言いました。

「どんな姿をしているのか、わたしは見えないのだ」。

自分の姿が見えないから驚かない友魚を見て、犬王はなんだか嬉しくなりました。

こうして、盲目の琵琶法師・友魚と、醜い姿で生まれた犬王は出会い、無二の親友となります。

当時の犬王は、大勢の兄たちが猿楽を練習しているのを熱心に見て、秘かにその技を練習していました。

そして美しい歩き方を習得したとき、兄たちと同じく美しい両足になっていることに気がつきます。

以後、犬王は技を一つ習得するたびに、自身の穢い身体から美しい身体に変化することを知ります。

犬王は美しい身体を手に入れるため、努力を惜しまず、まい進し続けます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『平家物語 犬王の巻』ネタバレ・結末の記載がございます。『平家物語 犬王の巻』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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犬王の父は大和猿楽の一座として名を馳せていた比叡座の現棟梁。彼は自分の代が繁栄することを望んでいました。

そのために、魔物と恐ろしい契約を結びます。

当時もっとも都で流行していた平家物語を語る琵琶法師たちの命と、まだ母親のお腹の中にいた犬王の穢れの無い姿を魔物に捧げたのです。

こうして、犬王は歪な姿で生まれました。彼の身体中には父によって命を奪われた多くの琵琶法師の霊が取り付いていたのです。

美しい身体を手に入れる術を知った頃、犬王は友魚に言いました。「俺のことを琵琶の曲にしろよ」と。

「語り方」が魅力的な琵琶法師の友魚は、犬王の人生を物語『犬王の巻』として綴り、聴衆に披露しだしました。

成長した犬王が平家物語の新たな演目を演じれば、たちまち友魚は彼の話を聴衆に謡います。

犬王がみごとな技で観客をわかしていくたびに呪いが解け、身体にまとわりついた琵琶法師の霊たちは成仏していきました。

呪いが解き放たれると、穢れた身体が美しくなり、誰もが見惚れる美貌を手にした犬王は、比叡座の棟梁にまで上り詰めます。

一方の友魚は、友一、友有と改名をし、平家物語の語り部としてその名を馳せていきます。

ある時、三代将軍足利義満に呼び出され、「犬王は自分の偏愛する者だから、その怪異な話をしてはならない」と、犬王の物語の演奏を禁止するよう、言い渡されました。

おまけに、友魚が所属する座の解散までも……。

行き場をなくした友魚は、室町時代の初代征夷大将軍・足利尊氏の墓の前で、禁断とされた『犬王の巻』を謡います。

一心不乱に禁断の物語を謡う友魚ですが、当然の報いとして罰を受け、賀茂の河原で斬り捨てられました。

さて、猿楽師の第一人者として名声を得た犬王。観世弥、世阿弥とともにその芸を極めた後、いよいよ人生の最期を迎えます。

しかし、犬王は迎えにきた阿弥陀仏に「ちょっと待て」と言いました。

「尊氏殿の墓に寄ってくる。そこにあいつがいるんだよ。成仏できずに、まだいるんだよ。あいつが。縛られて。あいつが、盲いた友魚が。つまり、俺の朋が。その呪縛の様を、この犬王が解いてやらないと。ねえ、俺がね。いいや、俺たち二人でね、解き合うよ。それから最後に、こう言うんだよ。『さあ、お前、光だ』って」

彼らは生涯、お互いを無二の友として大切に思っていたのです。

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小説『平家物語 犬王の巻』の感想と評価

『平家物語 犬王の巻』は、軍記物の名作である『平家物語』の現代語訳を手掛けた古川日出男が、南北朝時代から室町時代に活躍した能楽師・犬王の実話をもとにしています。

この小説の見どころは、琵琶法師として名を馳せてきた友魚と、呪いを受けて生まれた犬王が出会った時からなのですが、まずは2人の生い立ちから述べられています。

壇ノ浦の合戦で滅んだ平氏の怨念の塊のような宝剣を海から引き上げ、その輝きを見たがために視力を失った友魚。

芸の道のトップの座のため他者排斥を目論み、魔物と取引をした実父のせいで、恐ろしい怪物のような様相で生まれた犬王。

2人の主人公たちはそれぞれが人生の宿命を背負っていました。

琵琶の音で語り継がれる『平家物語』のように、小説も語り口調で、2人の主役の出生、出会い、友情、別離、人生の結末を述べています。

犬王は実在の人物とされていますが、本当に醜く生まれてきたのかどうかはわからず、その芸なども現存していません。それゆえに、一層ミステリーな人物として興味を掻き立てられました。

友魚が作って語る『犬王の物語』に載せて、犬王がみごとな舞で踊る……。

2人の息のあった芸能は、数奇の運命を経て勝ち取った永遠の友情とも言えるでしょう

映画『犬王』の見どころ


(C)“INU-OH” Film Partners

実在の能楽師・犬王をモデルにした古川日出男の小説『平家物語 犬王の巻』を、『夜明け告げるルーのうた』(2017)の湯浅政明監督が手掛けた長編ミュージカルアニメ。

キャラクター原案は、アニメ『ピンポン』の漫画家・松本大洋が務め、『アイアムアヒーロー』(2016)やドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(2016)の野木亜紀子が、脚本を書きあげました。

声のキャストは、犬王にアヴちゃん、友魚に森山未來がそれぞれ担当。数奇な運命で結ばれた犬王と友魚に命を吹き込みます。

犬王と友魚というバディを組んだ2人から、現在の能楽スタイルが定着する前の猿楽が登場します。

世界最古のミュージカルとも言われる「能楽」ですが、本作はそのスタイルが完成する前の時代のことであり、監督の手腕で自由な発想のトンデモ能楽が見られるのではないかと期待します。

アニメーションだからこそ実現できた犬王の「穢れた身体」から「美しい身体」への変身ぶりや、自由奔放な猿楽の舞が楽しめることでしょう。

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映画『犬王』の作品情報


(C)“INU-OH” Film Partners

【公開】
2022年(日本映画)

【原作】
古川日出男:『平家物語 犬王の巻』(河出書房新社)

【脚本】
野木亜紀子

【監督】
湯浅政明

【声のキャスト】
アヴちゃん、森山未來

まとめ

『平家物語』を主軸にした、古川日出男の『平家物語 犬王の巻』が2022年5月、劇場アニメーションとして登場します。

小説の主人公は、猿楽の覇者・犬王と盲目の琵琶法師・友魚。

世知辛い世の中を生き抜くためにバディを組んだ2人は、固い友情で結ばれていました。

舞台で観客を魅了するようになった犬王は、演じるたびに身体の一部を解き、唯一無二の美を獲得し、友魚は語り手としてその名を馳せていきます。

小説の中では描き切れない華やかににぎわう都や広々とした海の様子が、主役2人のストーリーと共に、アニメーションで観れるのも楽しみです。

2人の友情と芸の美しさに惚れ惚れとし、更には犬王が背負ってきた呪いの正体が分かった時、人の心の浅はかさも思い知ることでしょう。

劇場アニメーション『犬王』は、2022年5月28日(土)全国ロードショー!

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