『ベルヴィル・ランデブー』は2021年7月9日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国順次公開予定。
フランス映画として初のアカデミー賞長編アニメーション映画部門にノミネートされた『ベルヴィル・ランデブー』が、2021年7月9日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国順次公開予定です。
フランス語圏のマンガ『バンド・デシネ』作家でアニメーターのシルヴァン・ショメによる、21世紀フランス・アニメーション映画の傑作とも言われている、2002年製作の長編アニメ初監督作品です。
2004年の初公開時に大きな話題となった伝説のアニメが、製作20周年を前にしたプレアニバーサリー企画としてリバイバル公開が決定しました。
CONTENTS
映画『ベルヴィル・ランデブー』の作品情報
【日本公開】
2021年(フランス、ベルギー、カナダ合作映画)※日本初公開は2004年
【原題】
Les triplettes de Belleville(英題:The Triplets of Belleville)
【監督・脚本・絵コンテ・グラフィックデザイン】
シルヴァン・ショメ
【製作総指揮】
ディディエ・ブリュネール
【音楽】
ブノワ・シャレスト
【声の出演】
ジャン=クロード・ドンダ、ミシェル・ロバン、モニカ・ヴィエガス
【作品概要】
フランス語圏のマンガ『バンド・デシネ』作家でアニメーターのシルヴァン・ショメによる、2002年製作の長編アニメ初監督作。誘拐された孫の救出のため奔走する祖母の物語を、ユーモアたっぷりに描きます。
第76回アカデミー賞ではフランス映画として初の長編アニメーション賞と主題歌賞にノミネートされ、カンヌ国際映画祭では、登場する犬のキャラクターのブルーノに対してパルム・ドッグ(特別賞)が与えられました。
日本では2004年に劇場初公開された本作は、製作20周年を前にしたプレアニバーサリー企画として、今年リバイバル公開されます。
映画『ベルヴィル・ランデブー』のあらすじ
第二次世界大戦が終戦した直後のフランス。
両親を亡くした上、友達もおらず孤独な孫シャンピオンを見かねて、おばあちゃんのマダム・スーザは犬のブルーノと三輪車をプレゼントします。
自転車に夢中になったシャンピオンは、おばあちゃんと二人三脚で厳しいトレーニングを重ねながら成長し、ついに世界最高峰の自転車競技の祭典、ツール・ド・フランスに参加するまでに。
ところがレースの最中に、シャンピオンが謎のマフィアに誘拐されてしまいます。
孫を救うため、海を越えて摩天楼そびえ立つ巨大都市“ベルヴィル”に辿り着いたおばあちゃんと愛犬・ブルーノ。
そこで偶然出会った、伝説の三つ子歌手の老婆たちを巻き込み、不思議な大冒険が始まるのでした。
映画『ベルヴィル・ランデブー』の感想と評価
フランスのマンガ・アニメ界の巨匠による初長編
参考動画:シルヴァン・ショメ監督からのコメント
本作『ベルヴィル・ランデブー』は、フランス語圏のマンガ『バンド・デシネ(Bande Dessinée、以下BD)』作家でアニメーターのシルヴァン・ショメによる監督作品です。
BDといえば、リドリー・スコットやリュック・ベッソンらのSF映画に影響を及ぼした作家のメビウス、スティーヴン・スピルバーグによってアニメ映画化された『タンタンの冒険』あたりが有名どころです。
日本でも大友克洋、松本大洋、荒木飛呂彦といった名だたるクリエイターたちがリスペクトを捧げるBD界において、ショメは美術学校時代に知り合ったニコラ・ド・クレシーと組んだ、『The Secret of the Dragonflies』や『レオン・ラ・カム』で高い評価を受けます。
その後アニメ界に進出し、自ら監督・脚本した短編『老婦人とハト』(1998)がアヌシー国際アニメーション映画祭グランプリを受賞。
この成功を受け、2002年にショメが初めて長編アニメとして発表した本作は、フランス映画として初のアカデミー賞長編アニメーション部門にノミネートされる快挙となりました。
2010年の長編第二作『イリュージョニスト』でも再度アカデミー賞にノミネートされたほか、ヨーロッパ映画賞とセザール賞の最優秀アニメーション映画賞を受賞し、その名を一層高めることとなります。
“デフォルメ”が織りなす毒っ気交じりのアドベンチャー
ショメ作品には、いくつかの特徴が挙げられます。
まずひとつは、セリフの少なさ。テレビの音声や周囲の雑音はあるものの、メインの登場人物はほとんどセリフを発しません。これは、彼が敬愛するジャック・タチ作品やチャップリン、キートンなどのサイレント作品の影響からで、後の『イリュージョニスト』でも通底しています。
次に、皮肉かつ風刺が効いた毒っ気たっぷり描写。
BDの『レオン・ラ・カム』では、エキセントリックな祖父と臆病な孫をグロテスクかつ悪意に描き、『老婦人とハト』は、まるでホラーかと言わんばかりのブラックユーモアに満ちていました。
メイン登場人物が世代の離れた者同士な点も、ショメ作品には欠かせません。祖父と孫が登場する「レオン・ラ・カム」は言わずもがな、謎の老婆と中年男性警官が主軸となる『老婦人とハト』、『イリュージョニスト』では老奇術師と口の利けない少女の交流が描かれます。
愛する孫シャンピオンを探しにベルヴィルを奔走するおばあちゃん(と犬)、異常なほどツール・ド・フランスにのめり込みカエルを食するフランスの国民性、セリフに頼らず状況や動作で把握できる演出……本作には、ショメ作品の特徴が全部詰まっています。
三角だったり四角だったり手足が木のように細長かったりと、極端にデフォルメされたデザインのキャラクターたちが織りなす先行きが読めないアドベンチャーは、一度観たら忘れられないでしょう。
音楽面でも聞き逃せません。
ジャズのジャンゴ・ラインハルト、ファドのアマリア・ロドリゲスといった実在のミュージシャンにオマージュを捧げ、伝説の三つ子歌手が歌うアカデミー賞歌曲賞&グラミー賞ノミネート曲『Belleville rendez-vous(ベルヴィル・ランデブー)』の軽妙なサウンドは、思わず口ずさみたくなります。
まとめ
アニメ映画というと、どうしても日本やアメリカ製を連想しがちですが、『キリクと魔女』(1998)や『アヴリルと奇妙な世界』(2019)、『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』(2019)などのフランス製も忘れてはいけません。
その中で本作『ベルヴィル・ランデブー』は、2021年2月10日のNewsweek(電子版)発表の批評家が選ぶ100本のアニメーション映画15位、21世紀のアニメーション映画の傑作(IndieWire)、100本のアニメーション映画(タイムアウト)など、世界各国の名作アニメーション・ランキングに必ず選出されています。
三つ子の老婆たちの協力を得たおばあちゃんは、はたして孫を取り戻すことができるのか?
おばあちゃん賛歌あふれる、観るたびに驚きと興奮を与えるフランス・アニメーションを、是非ご堪能ください。
映画『ベルヴィル・ランデブー』は、2021年7月9日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国順次公開予定。