“もっと、もっと 強くなれる”
『劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~』は、2019年4月19日全国ロードショー。
武田綾乃の原作による小説を『涼宮ハルヒの憂鬱』や『けいおん!』などで知られる京都アニメーションが劇場版として制作。
アニメ化したテレビシリーズの続編として、北宇治高校吹奏楽部に属する主人公の黄前久美子と仲間を再び描いています。
人間関係をはじめとする様々な困難に直面しながらも全国大会出場を目指す彼女たち姿をあらすじと感想とともにご紹介します。
CONTENTS
映画『劇場版 響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ』作品情報
【公開】
2019年(日本映画)
【監督】
石原立也
【キャスト】
黒沢ともよ、朝井彩加、豊田萌絵、安済知佳、石谷春貴、藤村鼓乃美、山岡ゆり、津田健次郎、小堀幸、雨宮天、七瀬彩夏、久野美咲、土屋神葉、寿美菜子、櫻井孝宏
【作品概要】
製作陣は監督の石原立也や構成、脚本の花田十輝を始め、これまでのシリーズのスタッフが再集結し、アニメーション制作も同様に京都アニメーションが担当しています。
テレビシリーズでは主人公の黄前久美子たちは、1年生でしたが劇場版では2年生になっており、新たに入部してきた新入生とともに全国大会金賞を目指す様子を描いています。
演出に石原立也監督、脚本は花田十輝、テレビシリーズのスタッフとキャストが再結集で見せてくれます。
映画『劇場版 響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ』のあらすじ
春先のある夜、北宇治高校2年生に進級した黄前久美子は同級生の塚本秀一を呼び出します。
目的は、以前、誕生日プレゼントをもらったお返しに秀一の誕生日にストラップをプレゼントすることでした。
ストラップを渡し、立ち去ろうとする久美子を秀一は呼びとめ、久美子への想いを告白、久美子は赤面します。
入学式を迎えた北宇治高校で吹奏楽部の面々は新たに新入部員の獲得に励みながらも練習に勤しんでいました。
自分の楽器、ユーフォニアムを準備がてら演奏する久美子を物陰から一年生が覗いています。
入部希望かと尋ねる久美子に迷っていると答える一年生は久美子の音色を「優しい」と言い残し去っていきます。
翌日、音楽室には入部希望者が集まってきます。
前年度、全国大会に出場した北宇治の実力と顧問の滝 昇の評判を聞きつけ、多くの希望者が集まり、喜ぶ吹奏楽部員達ですが、コントラバス、チューバ、ユーフォニアムで構成される低音パートのメンバーは冷めていました。
多くの希望者がいても、低音パートは人気がなく奏者を獲得できるか不安がっていましたが、久美子に声をかける1年生がいました。
前日、たまたま、久美子の演奏を聞いた1年生、久石奏でした。
ユーフォニアム希望の奏のほか、チューバには鈴木美玲、鈴木さつきの二人、コントラバスには月永 求が入部し、低音パートの面々は喜びます。
その後の全体ミーティングで顧問の滝は部員全員に今年の目標を尋ねます。
黒板に「全国大会出場」と書きながら昨年の目標に順ずるか尋ねる滝に部長でトランペット担当の吉川 優子は滝が書いた黒板を「全国大会金賞」と書き直し部の目標とすることを提案し、部員達は承認します。
こうして、北宇治高校吹奏楽部は新たな体制でスタートを切り、久美子は3年生の加部と共に1年生の指導係に就任します。
久美子と加部は1年生へ説明を行い、その中で美玲は大会出場者はオーディションで決まると言う話の真偽を尋ねます。
質問の意図が分からない久美子に奏が学年による序列が考慮されるのかと補足、加部と久美子は考慮されないと答えます。
それからしばらく経ち、低音パートではさつきが徐々に慣れ、求は同じコントラバスの2年生、川島緑輝に懐き、奏も周りと上手く関係を気づいていましたが、美玲だけが馴染めずにいました。
久美子は2年生のトランペット担当、お互いを親友と認める高坂麗奈に美玲のことを相談します。
自分じゃ出来ないなら、誰かにやってもらえばいいと言う麗奈の助言に久美子は奏を呼び出し、美玲と皆との仲をそれとなく取り持つように頼みます。
数日が経ち、帰り道に久美子は偶然、秀一と一緒になります。
秀一の告白以降、秘密裏に交際する二人は不自然に距離をとりながらも低音パートの人間関係について話します。
低音パートのギクシャクした感じをなんとなく感じ取っていた秀一は久美子に早く関係を改善するように促しますが、美玲との仲を取り持ってくれるはずの奏が思ったように成果を出していないことを明かします。
その上、奏は、それが分かっていてわざと成果を出していないような違和感を久美子は感じていました。
5月に開催されるサンライズフェスティバルに出場する北宇治高校はマーティングバンドの練習を始めます。
行進しながらの演奏に苦戦するさつきは練習後も自主的に残って練習します。
一方、美玲は練習が終わるとすぐに帰ってしまいます。
その姿を見ていた久美子に奏は美玲とさつき、どちらが好きかと尋ねます。
久美子は毎日残って練習するさつきは好感が持てるが、美玲は少ない練習時間で十分、成果を上げており、実力もあるため、どちらも吹奏楽部にとって必要だと答えます。
しかし、久美子はそんな美玲が自分で壁を作り、周りから阻害されたと思い込み、低音パートでの居場所をなくしているように感じていました。
サンライズフェスティバル当日。
本番前にチューバ担当の2年生加藤 葉月が美玲の衣装を直そうと手を伸ばした時、美玲はとっさに葉月の手を払い、「触らないで下さい!」と思わず言ってしまいます。
それをさつきにたしなめられた美玲はいたたまれなくなり、逃げ出してしまいます。
追いかけた久美子と奏は影で泣いている美玲を見つけます。
久美子は美玲が壁を作っているだけで、低音パートの皆は美玲と仲良くなりたいと思っていると美玲を説得します。
こうして、皆のところに戻った美玲は少しずつ、低音パートに馴染んでいきます。
それからしばらく経ったある日の帰り道、父親と一緒になった久美子は父親に将来の展望を尋ねられますが、久美子は何も思いつきませんでした。
その後、久美子は「あがた祭り」と呼ばれる近隣の祭りに秀一と共に出かけます。
祭りを楽しんだ二人は通り過ぎる車を避けようとします。
映画『響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ』感想と評価
本作は吹奏楽部の活動をテーマに描かれているため、音へのこだわりが感じられました。
物語の冒頭で久美子が一人、ユーフォニアムを演奏するシーンでは久美子が途中で息継ぎをする呼吸音や、クライマックスの演奏シーンの始まりで静まり返った会場で滝が指揮を始めるために動かす腕の衣擦れの音など細かい所まで表現されていました。
他には、演奏を行う環境での演奏の響き方の違い、例えば、教室の中ではこもって聞こえ、屋外では遠くまで響いていくなど大切に表現されてるのが感じられました。
また、本作では主人公・久美子の心境の変化が強く描かれていました。
これまでのシリーズでは状況に流され、巻き込まれながら、状況を解決しようとする印象が強かったのですが、本作では、自ら、問題を解決しようと悩み苦しむ姿にこれまでの経験からの成長や上級生の自覚や責任のようなものが感じられました。
それとは逆に奏を説得する際に語った「ただ、演奏が上手くなりたい。先のことは分からない」と言うセリフは、責任や自覚といったことからではなく、久美子自身の思いが素直に出たものであり、高校生だからこそ言える飾らない言葉に感じられました。
まとめ
『響け!ユーフォニアム』は、単純に高校生の部活に励む姿を描いた「青春もの」ではなく、10代ならではの不安や葛藤を描き、それ故に生じる人間関係の軋轢など濃く描き、高校生の頃に誰もが感じていた「気持ち」が表現されていることが多くの人の共感を呼び、大ヒットしました。
そんな『響け!ユーフォニアム』の劇場版である本作は、これまで以上に困難な問題が発生します。
その問題を乗り越えることで、一人一人が成長し、より素晴らしい演奏することが出来る過程が描かれていました。
クライマックスの演奏シーンはそんなドラマも相まって心に響く演奏でしたが、全国大会への出場はかなわず、残念な結果になってしまいましたが、久美子がこれまでの先輩達の意志を引き継ぎ、新たに吹奏楽部を率いることとなりました。
久美子たちが最後の年に奏でる曲はどんなものになるのでしょうか?