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Entry 2017/02/06
Update

映画『ウエスタン』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も

  • Writer :
  • リョータ

クリント・イーストウッド主演の「ドル箱3部作」を経て、新たな境地へと達した監督のセルジオ・レオーネ。

そんな彼の西部劇への愛が詰まった傑作『ウエスタン』をご紹介します。

映画『ウエスタン』の作品情報

【公開】
1968年(イタリア)

【原題】
Once Upon a Time in the West

【監督】
セルジオ・レオーネ

【キャスト】
ヘンリー・フォンダ、チャールズ・ブロンソン、クラウディア・カルディナーレ、ジェイソン・ロバーズ、ガブリエル・フェルゼッティ、フランク・ウォルフ、キーナン・ウィン、ウディ・ストロード、ジャック・イーラム、パオロ・ストッパ、マルコ・ザネッリ、ライオネル・スタンダー、ジョン・フレデリック、 エンツォ・サンタニエッロ

【作品概要】
『夕陽のギャングたち』、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』へと続く、「ワンス・アポン・ア・タイム3部作」の第1作目に当たり、「アメリカの良心」とも称されるヘンリー・フォンダが極悪非道の男フランクを演じたことで全米に衝撃を与えたマカロニ・ウエスタンの傑作。

原案にベルナルド・ベルトルッチとダリオ・アルジェントを迎え、音楽はセルジオ・レオーネ作品おなじみのエンニオ・モリコーネが担当している。

映画『ウエスタン』のあらすじとネタバレ

西部開拓時代のアメリカ。荒野の中にぽつんとある小さな鉄道の駅にダスターコートを羽織った3人のガンマンが現れます。どうやら誰かを待っている様子でした。しばらくすると1台の列車が到着し、男たちは拳銃を構えます。

すると、どこからともなく聞こえてくるハーモニカの音色に辺りを見回す男たち。列車が通り過ぎた後、そこには一人の男が立っていました。3人の男の拳銃が火を噴きます。しかし、最後まで立っていたのはハーモニカの男ただ一人でした。

一方、マクベインは子供たちと共に妻を迎える用意をしていました。西部へと移り住んだ彼らの下へ、再婚相手であるジルがやってくるのです。

準備にいそしんでいたマクベイン一家でしたが、ふと気付くと辺りが静かすぎることに違和感を覚えるマクベイン。すると突然藪の中から現れたのは、フランク率いる5人のガンマンでした。容赦なく殺されるマクベイン。子供たちに至っては、フランクの名前を知ってしまったという理由だけで殺されてしまったのです。

そうとは知らず、鉄道で駅へと到着したジル。マクベインが迎えをよこすはずだったのですが、待てど暮らせどやってきません。不審に思いながらも、駅馬車に乗って彼の家へと向かうことにします。

途中、ジルが酒場にて休息をとっていると、何やら外の様子が騒がしいことに気付きます。激しい銃撃戦が行われていたのです。しばらくして外が静かになると、一人の男が酒場へと入ってきました。その男は殺人の罪を犯したならず者で、どうやら脱走してきた様子。

すると店の奥の方からハーモニカの音色が聞こえてきます。ハーモニカの男は、そのならず者の手下の服装を見て、何やら気付いた様子でした。先ほど殺した男たちと同じダスターコートを着ていたのです。

その後、ようやくマクベインの下へと辿り着いたジルでしたが、彼女を待っていたのはこれから家族になるはずだった人たちの声なき姿でした。葬儀を執り行った後、身内たちからシャイアンという悪党どもの仕業だと教えられます。

一方、何やらきな臭いにおいを嗅ぎつけていたハーモニカの男はジルを尾けて、ここまで辿り着いていました。彼には、マクベイン一家の下手人がシャイアンではないことが分かっていたのです。

しばらくマクベイン家にて過ごすジル。そこへ数人の男たちが突然現れます。コーヒーを飲ませてくれとジルに要求するリーダーと思しき男は、酒場で出会ったならず者でした。シャイアンと名乗るその男は、マクベイン一家の事件が自分の仕業とされていることを聞きつけてやってきたのです。

ならず者であることは認めるが、今回の件には一切関わっていないと主張するシャイアン。罠にはめられたというシャイアンは、ジルに黒幕を見つけてやると約束します。

その頃、マクベイン殺しの真犯人フランクは、鉄道会社を経営するモートンを前にしていました。鉄道を通すためにマクベイン家の土地を手に入れたがっていたモートンが、フランクに依頼したことだったのです。しかし、モートンはフランクに脅せとは言ったが殺せとまでは言っていないと彼を責めるのでした。そんな言葉も一切意に介さないフランク。策があるから任せろとすごみます。

ハーモニカの男は、やがてフランクとモートンの居場所を突き止めます。列車の中が彼らのアジトでした。中へと侵入するハーモニカの男。一方、様子を窺っていたシャイアンも列車へと近付いてきます。

やがて捕らえられてしまったハーモニカの男。この謎の男がなぜ自分に近づいてきたのか分からないでいるフランクは、この場を部下に任せ、ジルの下へと向かいます。

フランクが姿を消した後、シャイアンも列車に入り込み見事ハーモニカの男を救出します。マクベインが鉄道会社に屈せず、自らの手で駅を作り、この辺りを発展させようとしていたという強い意思の持ち主であることをシャイアンへと伝えるハーモニカの男。その志を知ったシャイアンは、ハーモニカの男に力を貸すことを決意するのでした。

以下、『ウエスタン』ネタバレ・結末の記載がございます。『ウエスタン』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
一方のフランクは、ジルをそそのかして土地を売るよう持ち掛けます。こんな土地など女一人でどうにかなるものではないと。ここを離れるつもりだったジルはその誘いに応じ、町で競売にかけることに。しかし、それはフランクの策略であり、裏で手を回して安値で買い叩こうという魂胆があったのです。

いよいよ始まった競売に潜り込んでいたフランクの手下が、あらかじめ決めていた値段を告げ、落札されようとしたその時、「5000ドル!」との声が上がりました。ハーモニカの男です。予定外のことにどうすることも出来ないフランクの手下。

その5000ドルという金額は、シャイアンの首に掛かった懸賞金と同じ額でした。彼を保安官へと引き渡し、土地の権利を手にしたハーモニカの男。

その一部始終を見ていたフランクは、ハーモニカを買収しようと持ち掛けますが、もちろん彼は応じません。

憤懣やるかたない様子で出ていったフランクでしたが、突然彼を襲う銃声が聞こえます。もはや用済みになったとモートンが仕組んだのです。しかし、そこへ何故か助太刀に入るハーモニカの男。フランクは彼の思惑を推し量れずにいました。

一方のシャイアンは、計画通り護送中に見事脱走。彼にとっては朝飯前でした。そして、シャイアンは手下を引き連れてある場所へと向かいます。

アジトへと戻ったフランクの目の前には異様な光景が広がっていました。それは、そこかしかに横たわる自分の手下たちとシャイアンの手下たちと思しきものの死体の山。いざ中へと踏み込むと、まだ辛うじて息のあるモートンを発見しますが、彼を見捨ててフランクは去っていきます。

その頃、マクベイン家の前では彼の意思を受け継いだ者たちによって鉄道建設が進められていました。ハーモニカの男も彼らと共に働いています。そこへ現れたフランク。そして、そのあとに続くように駆け付けたシャイアンは、どうやら先ほどの銃撃戦で傷を負った様子でした。

「お前が生きていると落ち着かない」とフランク。ハーモニカの男へ決闘を申し込みます。対峙するハーモニカの男とフランク。おもむろにハーモニカの音色が聞こえてきます。

引き金を引く二人。ガクッと膝をつくハーモニカの男。しかし、致命傷を負ったのはフランクでした。地面へと崩れ落ちたフランクの下へと近づくハーモニカの男。彼は、いまだに自分が何者なのか分からないでいるフランクの口にハーモニカをくわえさせます。

するとフランクの脳裏にある光景が蘇ってきます。それは、まだ幼いハーモニカの男の兄を自分が殺したんだという記憶でした。復讐を果たした男を目の当たりにしながら、事切れるフランク。

そして旅立っていく男と、その後を追うシャイアン。しかし、負傷が悪化したシャイアンは倒れ、彼の亡骸と共にハーモニカの男は去っていくのでした。

映画『ウエスタン』の感想と評価

クリント・イーストウッドが主演した「ドル箱3部作」に続いてセルジオ・レオーネ監督が挑んだのは、アメリカの歴史を描いた「ワンス・アポン・ア・タイム3部作」でした。その記念すべき一作目であり、西部開拓時代の末期を舞台としたのが『ウエスタン』です。

ヘンリー・フォンダやチャールズ・ブロンソンなどのハリウッドの大物たちを迎えて製作されたこの作品の巨額な費用は、一つのセットだけでも『荒野の用心棒』(1964)の全予算を上回るほどだったと言われています。

さて、そんな本作でまず注目してご覧頂きたいのは、冒頭のハーモニカを待つ3人のガンマンのシーンです。特にセリフもなく、ただただ待っているだけのガンマンたちの姿を延々と映し続けるレオーネ。ここに彼の特徴がぎっしりと詰め込まれているといえます。

カタカタと回る風車、ぽたぽたと垂れる水の滴。様々な自然の音色が混然一体となり、形成されていくリズム。徐々に高まっていく緊張感と期待感。

肌の細かな凹凸すら識別出来るほど極端なクローズアップで映し出されるガンマンたちの顔面は周りの荒野と相まって、あたかも風景の一部であるかのように一体化し、芸術とさえいえる絶妙なバランスを保った構図を生み出します。

これほど見事で完成されたオープニングの数分間は、映画史上においても稀有な存在といって良いでしょう。

このように、極端なまでのクローズアップと長尺を費やすことを厭わない独特の溜めは、レオーネの作品群全てに共通する特徴的な演出となっています。もし、全く同じシナリオに違う監督が取り組んだら、おそらくもっと全体の尺が短くなるのではないかと思えるほど、レオーネが一つ一つののシーンに込める労力は凄まじいものがあるのです。

そういった彼の演出方法は、ややもすると退屈だとか冗長であるといった批判の対象になりがち。しかし、この溜めこそレオーネ作品には欠かせないもので、それがなければラストの決闘シーンがこれほど素晴らしいものにはなりえないでしょう。もしかしたら、たった一発の銃弾を放つことに最も多くの時間を費やしている映画監督は、レオーネなのかもしれません。

また、レオーネのさらなる特徴は段階的なフラッシュバックの挿入にあります。『夕陽のガンマン』(1965)、『夕陽のギャングたち』(1971)、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(1984)でも見られるその手法ですが、本作の場合はハーモニカの過去を明らかにするという意図を持ったものでした。

セリフやナレーションなどでは一切説明することのなかったハーモニカがフランクを追う理由を段階を踏んで挿入することによって、復讐を企てているのは何となく感じられはするものの、核心部分は最後の最後まで謎のまま物語は進行していくのです。

最初はぼんやりとした、まだ若い頃のフランクが遠くから近づいてくる場面に始まり、段階を経て少しずつ彼が近づいてくると、フランクが下卑た笑みを浮かべているのが分かります。

そして今までハーモニカの視点だったものが、最後の最後でフランクの視点に切り替わることによって観客は(フランクと同時に)その全貌を知るのです。その時の衝撃たるや大変なもので、こればかりは実際体験して頂くしかありません。ぜひあなたの目で確かめてみて下さい。

まとめ

この作品の原題である『Once Upon a Time in the West』というものは、3部作の最期を飾る『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』と対をなすものとなっているということもあり、これをそのまま活かしても良かったのでは?と一瞬思ったりもしてしまうのですが、一方でこの『ウエスタン』という日本語タイトルを付けたくなる気持ちも非常に良く分かります。

なぜなら、この作品からは西部劇への深い愛情がひしひしと伝わってくるからに他なりません。例えば、ジョン・フォード監督の『捜索者』(1956)や『アイアン・ホース』(1924)、ジョージ・スティーブンス監督の『シェーン』(1953)などといった往年の西部劇ファンにはたまらない引用の数々が、劇中のそこかしこに散りばめられているのです。

このことは、西部劇オタクとしても知られるベルナルド・ベルトルッチが原案として参加しているということがかなり影響しているようです。ベルトルッチ曰く、彼が詰め込んだオマージュの中には、当のレオーネも気付いていなかったものがあるのだとか。

これらの引用を発見していくということも、この作品の楽しみ方の一つといえるのかもしれません。また、あまり西部劇には詳しくないという方にとっては、過去の名作の数々に触れることの出来る最高のきっかけとなってくれることでしょう。

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