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Entry 2019/07/28
Update

韓国映画『出国 造られた工作員』あらすじネタバレと感想。実話を基にイ・ボムスが北朝鮮スパイとなった男を演じる

  • Writer :
  • 西川ちょり

全てを奪われスパイにされた男。衝撃の実話を基に描いたスパイ・サスペンス映画大作!

『神の一手』や『オペレーション・クロマイト』などの話題作で知られる、イ・ボムスが主演を務め、北朝鮮スパイとなった男の実話を基に演じています。

1980年代後半、冷戦の時代に巧な勧誘によりスパイにならざるを得なかった男が、人質となった妻子を取り戻すために国家に挑む、韓国映画『出国 造られた工作員』をご紹介します。

映画『出国 造られた工作員』の作品情報


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【公開】
2019年公開(韓国映画)

【監督】
ノ・ギュヨプ

【キャスト】
イ・ボムス、ヨン・ウジン、パク・ヒョックォン、イ・ジョンヒョク、パク・チュミ、ロバート・ミカ

【作品概要】
北朝鮮に行けば、仕事も認められ、家族も良い暮らしができるという勧誘に乗ったためにスパイに仕立て上げられた男性の実話をもとにしたスパイ映画。

離れ離れになった妻子を取り戻すために冷戦時の東ドイツと西ドイツを奔走する経済学者を『オペレーション・クロマイト』などの作品で知られるイ・ボムスが演じている。

映画『出国 造られた工作員』あらすじとネタバレ


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経済学者のオ・ヨンミンは、西ドイツに留学しますが、かつて韓国政府に対する反対運動を行っていたため韓国に戻ることができなくなり西ドイツに亡命、という経歴を持っていました。

しかし、西ドイツでは、経済学者として認めてもらえているとはいえず、その境遇に苛立ちを募らせていました。

そんな中、ある人物から北朝鮮に渡れば大学教授として認められると勧められます。自分の論文は北では評価されていると聞き、ヨンミンは、自分の経済論が役に立ち評価されれば、今よりも良い暮らしができるだろうと考え、妻ウンスクの反対を押し切って北朝鮮へと向かいました。

しかしそこで彼を待ち受けていたのは、工作員となる訓練でした。彼はまんまと北朝鮮の諜報部に取り込まれてしまったのです。

そしてついに、工作員としての指令がくだされました。時は1986年、冷戦の末期。再び西ドイツに渡り、同胞を勧誘して北朝鮮に送り込めと言うのです。

西ドイツ行きの飛行機に乗ったヨンミン一家には一人のスパイが偵察役として同乗していました。

空港で見張りを振り切り、一家は逃亡を図りますが、娘の一人ギュウオンが、敵に囚われ、それを助けに向かった妻も相手の手に渡ってしまいます。

もうひとりの娘、ヘウォンだけは助かりましたが、彼女は父への反発心と母が自分の手を離したことのショックで、反抗的な態度を取り続けます。

警察から取り調べを受けたヨンミンはあっさり釈放されます。しかしその裏には彼を使って北朝鮮の諜報部の正体をつかもうとするCIAの姿がありました。

釈放される際、警察に電話が入り、刑事が「東ベルリンに女と子供が?」と声を出したのをヨンミンは聞き逃しませんでした。

妻は東ベルリンのリヒテンベルグにいるらしいということがわかります。なんとしても妻と娘を取り戻さなければなりません。しかし果たして国境を越えることはできるのでしょうか!?

彼は西ドイツで、まず旧友のムヒョクを訪ね、事情を話して、しばらくここに泊めてもらうと半ば強引に告げます。

ムヒョクはかつては領事館に勤めていたのですが、今は食材の配達業をしているのだそうです。

西ドイツのブレーメン大学を訪ねたヨンミンは一人の韓国人の女性教師を掴まえると「やつらの居場所を言え」と締め上げました。

彼女も彼を北朝鮮に行くようそそのかした一人でした。しかし女はこのことには関与していないようでした。女は彼に「チュングには会った?」と言い、彼なら何か知っていると示唆します。

ヨンミンは、チュングを訪ね、「金のために友だちを売った」と彼に恨みの言葉を投げつけました。

チュングは、ヨンミンの家族を取り戻そうと必死になっている姿を見て、リヒテンベルクに入る裏のルートを教え、東ドイツに入った時に必要になると言って、ヨンミンに偽造パスポートを手渡してくれました。

ヘウォンにママと妹に会いたいならパパを手伝ってくれ、と説得し、彼女を車に乗せて敵のアジトへと向かいます。検問所は無事に通過することができました。

「決して車を降りてはいけないよ」とヘゥオンに言い聞かせ、古びて荒れた建物の中に入っていくヨンミン。

そこで彼はある死体を発見します。それは西ドイツにやって来るとき、彼ら家族についていた見張りの男でした。

東ベルリンで諜報活動を行っている北朝鮮の長であるキム参事は、平壌の本部のチェ・ギチョル課長に、失敗の報告をしていませんでした。報告するように主張したヨンミンの見張り役の男を殺害していたのです。

父が戻るのをおとなしくまっていたヘウォンでしたが、建物に他の人間が車で乗り付けるのを見て不安になります。彼女は車を離れ、父を探しに行きました。

ヘウォンは敵に見つかり、ヨンミンはなんとか相手を倒そうとしますが歯が立ちません。間一髪のところでムヒョクが現れ、2人を助けてくれました。「なぜ、お前がここに?」とヨンミンは驚きます。

その騒ぎを聞いて、目を覚ましたウンスクは天井のガラスを破り、夫と娘の名前を叫び続けていましたが、北朝鮮のスパイたちによって、別の場所に移されてしまいます。

ムヒョクは自分が韓国の国家安全企画部の一員であることを告白します。俺を見張っていたんだな、いつからだ!?と憤るヨンミンに反政府運動の時からだとムヒョクは答えます。

ヨンミン親子を自分の住処に連れて帰ったムヒョクは「俺を信用できないだろうが、ここにいろ」と言い2人を匿います。

彼は任務とは別にヨンミンへの友情の気持ちを変わらず持ち続けていました。平壌の本部はまだお前のことを知らされていないようだとムヒョクは言いました。

チュングからキム参事が会いたがっているという連絡が入りました。広場の真ん中にある公衆電話から言われた番号に電話するとキム参事が応答しました。

彼は広場の前の建物のブラインドを少し上げ、ヨンミンを見下ろしていました。「一人で来いといったのに、たくさん連れてきたもんだな」と彼は言い、CIAや韓国の国家安全企画部の面々が彼を尾行してきていることを告げます。

驚き、あたりを見回すヨンミンにキム参事は、妻と娘の命を守りたければ、スパイ活動を行うよう、命令します。

旧友の大学教授を訪ねたヨンミンは、かつて自分がされたように、北朝鮮に行けば、学者としても評価されると教授を説得していました。教授は乗り気でしたが、その家の娘に話しかけられたヨンミンは罪の意識からその場を逃げるように去りました。

ヨンミンは資料の中から、祖国統一教会の会長であるキム・ヨンホという人物の名前を見つけ出します。その男の顔写真を見て、ヨンミンは驚きました。かつて自分たち家族に親切にしてくれた医師のカンだったからです。カンもまた、彼に北朝鮮行きを勧めた一人でした。

そんな折、教会で祈りを捧げていたヘゥオンが北のスパイたちに連れ去られました。ヨンミンは、ムヒョクから拳銃を奪いキム・ヨンホのところに乗り込んでいきます。

ムヒョクは国家安全企画部の上司にヨンミン一家を救うように頼みますが、上司はヨンミンを利用して少しでも多くの“アカ”を掴まえるのが俺の仕事だと言って笑い飛ばすのでした。

キム・ヨンホと対峙したヨンミンは「私の過ちは人を信じすぎることだ」と言い、彼に銃をつきつけました。拳銃を持った男がかけつけましたが、ヨンミンはその男を撃ち、ヨンホに拳銃を突きつけると、そのまま自分の車に乗せました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『出国 造られた工作員』ネタバレ・結末の記載がございます。『出国 造られた工作員』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

ヨンミンはキムに連絡し、東西ドイツの国境近くの誰もいない見渡すばかりの平原で人質交換をするよう求めました。話にのらないならヨンホを韓国側に引き渡すと告げて。

ヨンミンは約束の場所に車を走らせました。背後にはCIA、国家安全企画部があとをつけていました。

北朝鮮側とはかなり離れた場所に車を停めたヨンミンは拡声器で先に家族を返すよう求めました。家族を安全な場所に連れて行ったあと、再び自分はヨンホを連れて戻ると提案しますが、北朝鮮側がそんな話を受けるわけがありません。

ちょうど真ん中で交換しようじゃないかとキムは言い、実行に移されましたが、北朝鮮側はヨンミン一家を殺害するつもりでいました。

ヨンミンに銃が向けられ、今にも引き金が弾かれようとしたその時、ムヒョクが現れ、ヨンミンを救いました。しかし撃ち合いになり、ムヒョクは負傷してしまいます。

CIAはその様子を見ながら、東ドイツの秘密警察がこちらにやってくる情報を掴んでいました。

その時、数台の車が近づいてきました。秘密警察ではないようです。なんとそれは平壌からはるばるやってきたチェ・ギチョル課長たちでした。

ヨンミンがチェ・ギチョル課長に直接電話して、キム参事が本部に何も報告せず隠蔽しようとしていることを知らせたのです。

チェ・ギチョルはキム参事を撃ち殺し、逃げようとした人質のヨンホも撃たれました。妻と娘は助けてくださいと泣いて頼むヨンミンに向かって言いました。「家族全員いかしてやる。ただし君は孤独を味わえ」

妻と娘だけを北に連れて帰ろうとするギチョルに「私も連れて行ってください」と泣き叫ぶヨンミン。しかし、ギチョルたちがそれを受け入れるとは到底思えません。

その時、妻が叫びました「生きてちょうだい! 私の夫として、娘たちの父親として! 生きていればまたいつか会える」

妻と娘だけを車に乗せると、彼らはヨンミンを置き去りにしてその場を去っていきました。その直後、秘密警察が到着。CIAも韓国も撤収を決めました。

CIAの男は言うのでした。「西ドイツ側に連絡しろ。彼は二重スパイではないと」

1989年11月9日、ベルリンの壁崩壊が始まります。1991年、冷戦終了。ヨンジュンは在独スパイとして活動していたことを自首します。

2009年、平壌。平壌の街を取材する一行を案内している若い女性がいました。遊覧船に乗っている時、若いカメラマンがその女性に声をかけ、明るく振り返った女性の写真を撮影しました。

ソウルでは国家情報院に勤務するムヒョクに部下から報告が入りました。ヨンジュンの家族の安否についてでした。上の娘、ヘウォンの無事が確認されたということでした。

ヨンジュンはすっかり年を取り、ソウルで一人暮らしを続けていました。これまでに出した妻と娘の救出嘆願書が机の上に積まれていました。

そんな彼に一通の手紙が届きます。開けてみると、「平壌の人たち」という写真展の案内でした。

写真展にやってきたヨンジュンは平壌の人々の暮らしぶりを伝える様々な写真を興味深げに眺めていました。

そしてある一枚の写真が目に飛び込んできました。彼の足は止まり、その写真に釘付けになっていました。美しく成長したヘゥオンの顔が映し出されていたのです。

ヨンジュンは思わず写真にかけよると、慈しむように写真に手をあて、涙を流し始めました。

映画『出国 造られた工作員』の感想と評価


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時は1980年代。アメリカを盟主とする資本主義・自由主義陣営と、ソ連を盟主とする共産主義・社会主義陣営との対立が続いた冷戦時代に、その時代だったからこそ悲劇に巻き込まれることとなった一人の男性とその家族の実話をもとにした物語です。

言葉巧みに北朝鮮での生活を勧誘され、より良き生活を夢見て北朝鮮に渡ってみれば、スパイ訓練所に強制的に収容され、工作員にさせられてしまう。なんとも恐ろしい話です。

が、映画はそのあたりは回想で描くにとどめ、北のスパイに妻子を人質に盗られた主人公がなんとかして妻子を取り返そうと必死に組織に挑んでいく姿を緊張感たっぷりに描いています。

そのたった一人の男をCIAや韓国の国家安全企画部がそれぞれの思惑で監視しており、スケールの大きな話であることは、主人公が北の参事に公衆電話で電話をかけるシーンに象徴的に現れています。彼を遠巻きに取り囲むそれぞれの国の工作員たち。カメラはドローン撮影でどんどん上昇していき、宇宙的視点でその光景を見下ろします。

スパイ訓練を受けたとはいえ、武術をたしなむでもなく、巨漢でもなく、スーパーヒーローでもない経済学者がどのように国家の組織に闘いを挑むのかが、この作品の最大のみどころでしょう。

直接の敵となる北朝鮮のキム参事のふてぶてしさも、これまでにない目新しいキャラクターとして記憶に残ります。

それにしても、この悲劇的な家族を力のあるはずの組織がどこも手助けをしようとしない様に、個人の脆さと世界の複雑さを実感せずにはいられません。

ラストの写真展でのショットは美しく、非常に感動的ですが、国家情報院の力でも、北朝鮮から妻子を救い出すことができない現状が表されています。それは我が国でも拉致被害者問題が一向に進展しない様子と重なります

まとめ


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主人公のオ・ヨンミンを演じているのは、『オペレーション・クロマイト』(2016/イ・ジェハン)、『神の一手』(2014/チョ・ボムグ)などの作品で知られるイ・ボムス

韓国・国家安全企画部に所属するムヒョクには『ときめきプリンセス婚活期』(2018/ホン・チャンピョ)のヨン・ウジン、チェ・ギチョルには『飛べない鳥と優しいキツネ』(2018/イ・ギョンソプ)のイ・ジョンヒョク、キム参事には、『タクシー運転手 約束は海を越えて』(2017/チャン・フン)のパク・ヒョックォンが扮し、がっちり脇を固めています。

特別なスターが出演しているわけではないので、一見地味ですが、スケールは大きくしっかりしたドラマとアクションが楽しめるスパイ映画の秀作です。

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