不朽の人気を誇る、お気楽ロードレース・コメディ映画!
かつて香港を代表する映画会社であったショウ・ブラザース。そこを離れたレイモンド・チョウらが設立した映画会社ゴールデン・ハーベストです。
彼らはカンフー映画など世界的成功を収める映画を、次々に製作します。
そのゴールデン・ハーベストがハリウッド進出第一弾の作品として、20世紀フォックスと共に製作した映画が『キャノンボール』です。
映画『キャノンボール』の作品情報
【公開】
1981年(アメリカ・香港合作映画)
【原題】
The Cannonball Run
【監督】
ハル・ニーダム
【キャスト】
バート・レイノルズ、ロジャー・ムーア、ファラ・フォーセット、ドム・デルイーズ、ディーン・マーティン、サミー・デイビス・Jr.、エイドリアン・バーボー、ジャック・イーラム、ジャッキー・チェン、マイケル・ホイ、ピーター・フォンダ
【作品概要】
この映画はアウトローな公道レース、「Cannonball Baker Sea-To-Shining-Sea Memorial Trophy Dash」をモチーフに制作されました。
“キャノンボール”とは1910年代から30年代にかけて、長距離の公道トライアル記録の樹立にこだわったレーサー、アーウィン・ジョージ・ベイカーに因んでいます。彼のニックネームこそ“Cannonball Baker”でした。
1970年代に、“Cannonball Baker”の活躍にインスパイアされて、市販車によるアウトローな公道レースとして開始された「Cannonball Baker Sea-To-Shining-Sea Memorial Trophy Dash」。
このレースを主催した自動車ジャーナリスト、ブロック・イェーツが、映画『キャノンボール』の脚本にも参加しています。
映画『キャノンボール』のあらすじとネタバレ
荒野に伸びる自動車道を疾走する、黒いスーパーカー、カウンタック。追跡するパトカーを散々弄んで引き離します。
J・J・マクルーア運送に現れたビクター・プリンズム(ドム・デルイーズ)を、遅刻だと注意する経営者のJ・J・マクルーア(バート・レイノルズ)。ハムスターが病気だったと言い訳するビクターに、調子を合わせて話します。
J・Jに“キャノンボール”の勝利を、俺とお前とハムスターと“あいつ”で分かち合おう、と言うビクターのセリフにギョッとなるJ・J。彼は“あいつ”の話はするな、と警告します。
賭けを仕切るブックメーカーに、“キャノンボール”のオッズはどう決める、と尋ねるモーリス・フェンダーバーム(サミー・デイビス・Jr.)。
自分に賭けてみないかと語るフェンダーバームも、相棒の元F1ドライバー、ジェイミー・ブレイク(ディーン・マーティン)と共に、“キャノンボール”の優勝を狙っていました。
警察の規制線を突破しようとして、事故を起こすポルシェ。呆れる警官の前に現れたのは、コスプレをして“キャプテン・ケイオス(カオス)”と名乗るビクター。車にはウンザリした顔のJ・Jが座っています。彼らの言う“あいつ”とは、“キャプテン・ケイオス”の事でした。
セスナに乗って“キャノンボール”に向かうJ・Jとビクター。ビールが無くなると市街地の道路に着陸し、店で調達するなんとも無茶な旅路です。
2人は公道をルール無用で走る“キャノンボール”レースで、警察に捕まらないにはどうすべきか作戦を練っていました。黒のトランザムに乗ったらダメだろうな、と話す2人。
大金持ちの御曹司、シーモア・ゴールドファーブ・Jr(ロジャー・ムーア)も、“007”になりきっている息子を心配する母を気持ちをよそに、“キャノンボール”に出場します。
どう乗り継いだのか、今度はモーターボートで向かうJ・Jとビクター。水着のおネエさんにJ・Jが気を取られ、事故を起こします。救急車で搬送される2人に、アイデアが閃きます。
その頃日本のTV番組で、優れた日本人レーサーのジャッキー・チェン(ジャッキー・チェン)とコンピューターエンジニアのマイケル・ホイ(マイケル・ホイ)が紹介されていました。
中国語を喋る日本人設定の2人も、ハイテク装備のスバル車で“キャノンボール”優勝を狙いますが、マイケルが美女にイイ所を見せようとして、番組内で車を暴走させてしまいます。
中東の王族、シーク・アブダルベン・ファラフェルも、世界最速の王族の名誉にかけて、ロールス・ロイスで“キャノンボール”に参戦。
ハーレー・ダビッドソンのバイクで参加する会社社長、ブラッドフォード・コンプトンは、バイクに跨ったまま、輸送機からパラシュート降下する、派手なパフォーマンスで参戦です。
シボレー・マリブに乗ったメルとテリーのお気楽コンビは、警察に追われ車をプールに水没させます。
シボレーを調整しようとして建物のガラスを破り、安全推進委員会にコネのあるフォイト氏が“キャノンボール”を目の仇にするきっかけを作ります。
GMCピックアップトラックの2人組、マッドドッグとバットマンは事故を起こしながら、“キャノンボール”のスタート地点のモーテルに現れます。
救命士の格好をしたJJとビクターは、事故で気を失った人物を、いい加減な対応で蘇生させます。2人は警察に止めれられない、救急車でレースに参戦する作戦でした。
このモーテルにフォイト氏とカメラマンのパメラ(ファラ・フォーセット)も現れます。フォイトは“キャノンボール”に参加する連中は、テロリストの同類だと怒りを覚えます。
救急車の偽装を完璧にするには、医者と患者が必要と考えたJ・Jとビクター。
J・Jは美女2人組に患者役にならないかと声をかけますが、この2人こそ冒頭に登場した、黒のカウンタックでレースに挑む、ジルとマーシー(エイドリアン・バーボー)でした。
J・Jはパメラに目をつけ、彼女に話しかけます。イイ雰囲気になりかけた処で邪魔にはいるビクター。
その頃フォイトは安全推進委員会に電話し、“キャノンボール”参加者を摘発して名を上げようと、相手を焚きつけますが、廊下を走るブラッドフォードのバイクに痛い目に遭わされます。
007かぶれのシーモアは、当然アストンマーティンで参戦。なぜか参加者名簿に“ロジャー・ムーア”とサインするシーモア。
金に汚いモーリスとジェイミー組は、警官が摘発しにくいように神父に化けてレースに参加します。モーリスはあらゆる手を使って勝利するつもりでした。
こうして出場者がそろい、世紀の愚行と言われるレース、東海岸のコネチカット州ダリーンから西海岸のカリフォルニア州レドンドビーチを目指し、1万名を超える警官待ち構える中、5000キロ先のゴールを目指して突っ走る公道レース、“キャノンボール”が始まります。
参加車が1台ずつタイムカードを押して出発する中、モーリスは救急車で出場するJ・Jこそ、最大のライバルだと目を付けます。
スバルのハイテク改造車に乗ったジャッキー・マイケル組は、暴走のあまりタイムカードを押さずに出発です。
マッドドッグとバットマンは勝利には近道が一番と、道路以外の森へトラックを突っ込ませ、バイクのブラッドフォードは警察は新婚に甘いはずだと、相棒のデブ男シェーキーを女装させ、後ろに跨らせます。
ジェイミーは神父姿が災いしてナンパにことごとく失敗、モーリスに文句を言いつつ、酒浸り状態でフェラーリを運転。
J・Jの救急車はビクターが見つけた、怪しげな風貌の肛門科のドクター、ニコラス・ヴァン・ヘルシング(ジャック・イーラム)を乗せ出発します。
患者役がいないと言うJ・J。そこに丁度ゲーム参加車を追って事故を起こした、フォイトとパメラの車が現れます。J・Jはパメラだけを患者役として、救急車に乗せ走り出します。
世にも危険で馬鹿げた自動車レース、“キャノンボール”の幕が開きました。
映画『キャノンボール』の感想と評価
参考映像:『激走!5000キロ』(1976)
アウトローな公道レース、あるいはタイムトライアルを扱った自動車映画は、『キャノンボール』以前にも存在しています。
別の有名な公道レース「THE GUMBALL RALLY」をモチーフに、映画化した作品が『激走!5000キロ』です。
そしてテキサスの大富豪が、トラック野郎たちに仕掛けた、無理難題の賭けレースを描いた映画が『トランザム7000』。『キャノンボール』のセリフに登場する、黒のトランザムが活躍する映画です。
この映画でトラックを先導し、また警察の囮となるトランザムを駆るのがバート・レイノルズ、また監督は『キャノンボール』と同じハル・ニーダム。将に『キャノンボール』の原型となる映画です。
公道レースという、極めてアウトロー色の強い背景を持つ作品ですが、そこは映画化するに辺って、娯楽色の強めた改変が成されています。
参考映像:『トランザム7000』(1977)
パロディ豊富なお気楽ロードレース・コメディ
『キャノンボール』製作当時、ハリウッド大手スタジオは低迷期を迎えていました。
70年代にアメリカン・ニューシネマが登場し、『スター・ウォーズ』やスピルバーク作品など、現在のブロックバスター的な興行につながる映画が登場しながらも、大手スタジオは何を作れば観客を獲得できるのか、自信を失った状態が続いていました。
さらにビデオバブルを背景に、イタリア・香港映画が世界を席巻し始め、ハリウッドスターたちも従来のような出演作に、ありつけない状態が続いていました。
そんな時代に、香港のゴールデン・ハーベストがハリウッドに乗り込んで作られた映画が『キャノンボール』。オールスターキャストを揃えた、香港映画テイストのコメディ色の強い作品になっています。
時代のあだ花のような作品ですが、セルフパロディ的な役柄を嬉々として演じるハリウッドスターの姿に、往年の輝かしき時代への郷愁を、感じ取る事も可能な作品になっています。
まとめ
賑やかな笑いの中に、古き良き時代のハリウッドを感じさせる映画『キャノンボール』。
小ネタで笑わせるシーンの多い映画ですが、あらすじ・ネタバレ紹介ではその時代性が判る様に、少々詳しく書かせて頂きました。
また時代背景などを難しく考えなくても、気楽に鑑賞できる娯楽作品。肩の力を抜いてご覧下さい。
2018年にはハリウッドで、『キャノンボール』のリメイク企画が進行中と報じられましたが、その後どうなったでしょうか。
それにしてもゴールデン・ハーベストの作品でありながら、当時のマーケット都合で日本人を演じさせられたジャッキー・チェンとマイケル・ホイ。
その心中は、果たしていかなるものだったのでしょうか。